あなたの慰謝料が少ない5つの理由/増額する方法
目次
交通事故の慰謝料というと、みなさんはどのようなイメージをお持ちでしょうか?
被害者が受け取ることができるお金で…加害者が支払うもので…数百万円くらいの金額? それとも数十万円? そのようなイメージでしょうか。
では、実際に交通事故の被害にあった方は、どうでしょう?
加害者本人とは会っていないし、謝罪もないが、加害者側の保険会社から金額の提示があった。
保険会社から届いた書類には慰謝料だけでなく、他の項目も書いてあった。
慰謝料の金額を見ても、これが正しいものなのかどうか、わからない…。
しかし、突然の交通事故被害で後遺症が残ったのに、金額が低いように感じる。
もっと高額の慰謝料を受け取ることができるのではないか?
では、どうすれば慰謝料を増額することができるのか?
このように感じた方も多いのではないでしょうか?
実際、慰謝料が低く提示されるのにはいくつか理由があり、その対応策もあります。
そこで今回は、交通事故の被害者の方が受け取ることができる慰謝料はなぜ低く、少ないのかの理由、そして増額するための方法についてお話ししていきます。
これから、交通事故の慰謝料の増額方法などについて解説していきますが、その前に交通事故解決までの全プロセスを説明した無料小冊子をダウンロードしておきましょう。
まずは知っておきたい!慰謝料の基礎知識
そもそも交通事故の慰謝料とは?
交通事故の慰謝料は、治療費や逸失利益、将来介護費など、さまざまある損害賠償項目の1つになります。
つまり、慰謝料や治療費、逸失利益などの各項目を合計したものが損害賠償金になるわけです。
慰謝料は1つでない!4つの種類がある
交通事故の慰謝料は、被害者の方の精神的苦痛や損害に対して支払われるものです。
ところで、慰謝料は1つのまとまったものと思っている方が多いと思いますが、じつは次の4つがあります。
入通院慰謝料(傷害慰謝料)
・入通院をして傷害(ケガ)の治療をした場合に被った精神的苦痛に対する慰謝料
・ケガの治療を開始してから、症状固定(これ以上の回復が見込めない状態)までの期間が対象
・1日でも通院していることが受け取る条件
後遺障害慰謝料
・治療のかいなく症状固定し、後遺障害が残った場合の精神的苦痛に対して支払われる慰謝料
・被害者自身が後遺障害等級認定を受ける必要があり、等級によって金額が変わってくる
・症状固定後は、入通院慰謝料の代わりに後遺障害慰謝料が支払われるようになる
死亡慰謝料
亡くなった被害者の方の精神的苦痛を慰謝するために支払われる慰謝料(受取人は家族などの相続人)
近親者慰謝料
被害者の近親者(家族など)が被った精神的苦痛に対して支払われる慰謝料
慰謝料の算定では3つの基準が使われる
慰謝料などの算定では次の3つの基準が使われ、それぞれ金額が違ってくることに注意が必要です。
自賠責基準
・法律によって定められている自賠責保険による基準で、もっとも金額が低くなるように設定されています。
それは、自賠責保険が人身傷害の被害者への最低限の補償という目的で設立されているためです。
・加害者が任意保険に加入していれば、通常、その保険会社から慰謝料などの金額提示があります。
その際、保険会社はこの基準で計算した金額を示談案として提示してくることもありますが、当然もっとも低い金額になります。
任意保険基準
・各損害保険会社が独自に設けている基準で、法的拘束はありません。
各社非公表としていますが、自賠責基準より少し高い金額が設定されています。
・保険会社の担当者が、「当社の基準ではこれが限界の金額です」などと言ってくることがありますが、それはこの基準で計算した金額になります。
弁護士(裁判)基準
・これまでに積み重ねられてきた多くの判例から導き出された基準で、法的根拠がしっかりしているため裁判で認められる可能性が高くなります。
・もっとも金額が高額になる基準で、被害者の方から依頼を受けた弁護士が代理人となって示談交渉する際にも用います。
・この基準で計算した金額が適切な慰謝料になります。
つまり本来、被害者の方が受け取るべきなのは弁護士(裁判)基準で計算した金額ということです。
あなたの慰謝料が少ない理由と対処法①/治療期間・通院日数が短すぎる場合
入通院慰謝料(傷害慰謝料)の計算方法について
自賠責基準の場合
自賠責基準による入通院慰謝料(傷害慰謝料)は次の計算式で求めます。
<入通院慰謝料の計算式>
4300円(1日あたり)× 入通院日数
= 入通院慰謝料
自賠責基準では、1日あたりの金額が
4300円と定められているため、対象となる入通院の日数によって金額が決まります。
(※2020年4月1日施行の改正民法により改定されたもので、2020年3月31日以前に発生した交通事故の場合は4200円で計算する)
<入通院慰謝の注意ポイント>
入通院慰謝では、対象日数に注意が必要です。
次のどちらか短いほうが採用されるからです。
A)「実際の治療期間」
B)「実際に治療した日数×2」
仮に入院はせず、治療期間が3か月(90日)で、おおよそ3日に1回(計30日間)通院した場合は、
A)4300円 × 90日 = 387,000円
B)4300円 × (30日 × 2)
= 258,000円
となるので、
入通院慰謝料はA)の387,000円が採用されます。
<自賠責保険には限度額がある>
ただし、自賠責保険には支払限度額があり、
120万円になっています。
治療費や入通院慰謝料などで120万円を超えてしまった場合は加害者側の任意保険会社に請求しますが、保険会社が認めない場合は交渉をしていく必要があります。
弁護士(裁判)基準の場合
弁護士(裁判)基準での入通院慰謝料(傷害慰謝料)でも通院日数が重要になってきます。
弁護士(裁判)基準では、『損害賠償額算定基準』(日弁連交通事故相談センター東京支部発行)に記載されている算定表を用います。
ケガの程度によって算定表は「軽傷用」と「重傷用」の2種類があります。
「弁護士(裁判)基準による入通院慰謝料の算定表(むち打ちなどの軽傷用)」
「弁護士(裁判)基準による入通院慰謝料の算定表(重傷用)」
たとえば、入院期間は0,通院期間が3か月(90日)の場合、軽傷用の「入院0か月」と「通院3か月」が交わったところを見ると「53」とあるので、弁護士(裁判)基準による入通院慰謝料は、53万円になります。
定期的に適切な日数で通院することが大切
ということは、入通院慰謝料(傷害慰謝料)が増額するには、通院日数が大事ということになります。
交通事故後、ケガはしていないからといって病院に行かない人がいます。
また、初めは通院していたものの、「仕事が忙しくて…」「通院するのが面倒になってしまって…」などの理由で病院に行かなくなってしまう人もいます。
これらはNG行為だということを知っておいてください。
病院に行かないと、通院日数がなく、診断書を作成してもらえないので、入通院慰謝料を請求することができません。
通院をやめてしまうと、通院日数が少なくなるのですから当然、入通院慰謝料は少なくなってしまいます。
ですから、病院の通院は主治医とよく相談しながら、指示に従って、適切に定期的に行なうことが大切なのです。
過剰診療には注意してください!
通院が少なすぎるのはいけませんが、じつは多すぎるのも注意が必要です。
「早くケガを治したい」「病院に行かないと不安でしょうがない」といった理由などで通院しすぎると「過剰診療」を疑われる場合があります。
交通事故の損害賠償の実務では、通院の「必要性」と「相当性」が重要になります。
通院の必要性:通院して治療を受けることで、ケガの状態がよくなる=改善効果があること
通院の相当性:通院して受ける治療の内容、通院の頻度が適正であること
ケガの状態と照らし合わせて、医学的に必要ではないと判断される治療を行なった場合は過剰診療と判断されてしまうことがあります。
すると、治療費の支払いを打ち切られてしまい、入通院慰謝料も減額になる可能性があるので気をつけてください。
接骨院・整骨院に通った場合はどうなる?
接骨院や整骨院で治療を受けたいという人もいるでしょう。
その場合も、西洋医学による治療の必要性と相当性の判断が問題になってくるので、主治医によく相談することが大切です。
あなたの慰謝料が少ない理由と対処法②/後遺障害等級が間違っている
ケガが完治しなければ症状固定から後遺障害等級認定に進む
ケガの治療がある段階までくると、主治医から「症状固定」の診断を受ける場合があります。
これ以上の治療をしても完治の見込みがないとなると症状固定となり、被害者の方には後遺症が残ってしまいます。
入通院慰謝料の該当期間は症状固定までのため、以降は後遺障害慰謝料を受け取ることになりますが、そのためにはご自身の後遺障害等級認定を受けて、等級を確定させる必要があります。
ここで注意が必要なのは、認定された等級が正しいとは限らないことです。
低い等級が認定されてしまったり、等級自体が認定されないといったこともあります。
後遺障害等級が認定されなければ、後遺障害慰謝料や逸失利益などを受け取ることができませんし、低い等級であれば金額も低くなってしまいます。
正しい後遺障害等級の認定を受けるために大切なこととは?
最終的な後遺障害等級の認定は損害保険料率算出機構(損保料率機構)という第三者機関が行ないますが、提出書類や資料に不備、不足があると正しい等級が認定されません。
ちなみに、後遺障害等級認定の申請には、「事前認定」と「被害者請求」という2つの方法があります。
<事前認定とは?>
・加害者側の任意保険会社を通して、自賠責保険に申請する方法です。
・必要書類の準備や申請作業などを保険会社が行なってくれるため、被害者の方の負担が少なく済むというメリットなどがありますが、どのような書類が提出されているのかわからないため、提出書類に不足がないかどうか被害者の方は確認できないというデメリットなどがあります。
<被害者請求とは?>
・被害者の方が直接、加害者が加入している自賠責保険に申請する方法です。
・手続きの流れや提出する書類を自分で把握できる点や、最終的な示談の前に自賠責保険金がまとまった金額で支払われる、といったメリットがあります。
・被害者ご自身の手間がかかるといったデメリットがあります。
ということは、後遺障害等級の間違いを失くして、正しい後遺障害慰謝料を受け取るためには、被害者請求で申請するということも大切になってきます。
なお、認定された後遺障害等級に納得がいかない場合は「異議申立」をすることができます。
ただし、被害者請求も異議申立も初めての方には難しい部分もあるので、一度、交通事故に強い弁護士に相談してみることをおすすめします。
結果的に、弁護士を活用することで慰謝料の増額に大きく近づきます。
あなたの慰謝料が少ない理由と対処法③/高い過失割合を主張された
交通事故の過失割合/過失相殺とは?
交通事故の大きな争点の1つに「過失割合」があります。
過失割合とは、交通事故の発生や当該事故に関する損害の拡大について、加害者側と被害者側にそれぞれ過失(責任)がどのくらいあるのかを表すもので、加害者80%対被害者20%というように表わされます。
被害者の方にも過失があった場合、この割合に基づいて損害賠償額を減額することを「過失相殺」といいます。
たとえば、慰謝料が1000万円で被害者の方の過失が20%とされた場合、200万円分が引かれて、被害者の方が受け取る金額は800万円になってしまうわけです。
正しい過失割合を主張していくことが大切
過失割合を決めているのは誰かというと、示談の相手である加害者側の任意保険会社です。
ここで理解しておくべきなのは、過失割合は保険会社が主張しているだけであって、法的に認められたものではなく、正しいものとは限らないということです。
保険会社は支払額を少なくするために、あれこれと理由をつけて被害者の方の過失割合を高く主張してきます。
そうした場合、被害者の方としては示談交渉で正しい過失割合を主張していくことが大切になってきます。
実況見分調書と供述調書は過失割合の重要な証拠
被害者の方の過失割合を高くされてしまうと、慰謝料は少なくなってしまいます。
ということは、慰謝料で損をしないためには、過失割合を低くする証拠が大切になってきます。
その際、まず重要になってくるのが、「実況見分調書」と「供述調書」です。
交通事故の発生を警察に通報すると、現場では実況見分(現場検証)が行なわれ、実況見分調書が作成されます。
実況見分調書は加害者を起訴するかどうか、また起訴した場合に刑事裁判でどのような判決をするのか、というための重要な資料・証拠になります。
また、被害者と加害者双方には聞き取りが行なわれ、供述調書が作成されます。
これらは刑事事件で使われるだけでなく、民事における示談交渉の際にも重要な資料・証拠になります。
ですから、被害者の方としては、実況見分調書と供述調書の作成には積極的に協力して、正しい主張をしていくことが大切なのです。
あなたの慰謝料が少ない理由と対処法④/低い基準で慰謝料を計算されている
前述したように、慰謝料などの損害賠償金の算定では3つの基準が使われます。
加害者側の任意保険会社は営利法人ですから、支出となる被害者の方への損害賠償金をできるだけ低く抑えようとします。
そこで、金額が低くなる自賠責基準や任意保険基準で計算した金額を提示してきます。
ですから、被害者の方が慰謝料などを増額させるには弁護士(裁判)基準で計算した適切な金額を主張し、保険会社に認めさせなければいけないのです。
ここでは後遺障害慰謝料が基準の違いで、どのくらい金額が変わってくるのかをみてみましょう。
<自賠責基準・弁護士(裁判)基準による後遺障害慰謝料の金額表>
被害者によって、また事故の状況によって後遺障害を負った精神的苦痛はそれぞれ違い、単純に数値化できるものではありません。
そこで数値化するには膨大な時間がかかってしまいますし、裁判官によってバラバラの慰謝料額となって不公平感が出てしまい、速やかな被害者救済にならないという事態が当然考えられます。
そのため、後遺障害慰謝料は概ねの相場金額が決められています。
たとえば、もっとも重度の高い後遺障害等級1級の場合、自賠責基準と弁護士(裁判)基準では1650万円も金額が変わってきます。
入通院慰謝料だけでなく、後遺障害慰謝料も、弁護士(裁判)基準による慰謝料での示談解決を目指すのが、もっとも慰謝料増額への近道であることが、わかっていただけるのではないでしょうか。
あなたの慰謝料が少ない理由と対処法⑤/1人で示談交渉を続けている
加害者側の任意保険会社は手強い交渉相手
これまでにもお話ししているように、加害者側の任意保険会社は手強い交渉相手です。
そして、当然ですが被害者の方の味方ではありません。
被害者の方が単独・自力で保険と交渉のプロである彼らと交渉を続けることは…正直なところ、かなり不利な戦いだと言わざるを得ません。
被害者の方が、いくら弁護士(裁判)基準で計算した金額を主張しても、正しい後遺障害等級や過失割合を主張しても、保険会社が受け入れることはまずありません。
もし被害者の方が1人で示談交渉を続け、提訴して裁判で決着をつけようとするなら、法的な知識、医学的な知識、交渉術などをしっかり身につけてからでないと、難しいのが現実です。
相談・依頼する弁護士によって慰謝料額は大きく変わる!
そんな時、被害者の方の強力な味方となるのが弁護士です。
ただし、弁護士なら誰でもいいわけではありません。
餅は餅屋、ということわざがあるように、弁護士にもそれぞれ専門分野、得意分野があります。
骨折をした時に耳鼻科に行かないように、やはり慰謝料の増額を望むなら、交通事故の損害賠償実務に強い弁護士に相談・依頼するのが、もっとも確実な方法ということになります。