交通事故の示談交渉の流れと弁護士だと増額する理由
目次
【動画解説】交通事故で慰謝料は相場から大幅に増額される!
慰謝料とは、生命、身体、自由、名誉などの侵害による精神的損害を賠償するものです。
念のため、法律を確認しておきましょう。
第710条(財産以外の損害の賠償)
他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
もちろん、交通事故での損害賠償でも慰謝料が発生しますし、被害者の方には適切な金額の慰謝料を受け取る権利があります。
しかし、慰謝料をめぐってはさまざまな問題が発生することが多く、示談が長引く、あるいはまとまらないといったことの原因にもなりがちです。
そのため、正しい金額の慰謝料を得ずに示談をしてしまう被害者の方が多いという現実もあります。
交通事故で慰謝料に関するトラブルが起きるのは、なぜなのでしょうか?
じつは、示談交渉で交通事故に精通した弁護士が入ると、慰謝料などの損害賠償金額が大きく増額する可能性が高くなります。
ここで、みらい総合法律事務所が実際に解決した事例をご紹介しましょう。
慰謝料増額事例:11歳女児の死亡事故で約2300万円の増額
11歳女児が自転車横断帯を青信号で横断していた際、左折トラックに衝突された交通死亡事故。
加害者側保険会社は慰謝料などの損害賠償金として、ご遺族に対し約3830万円を提示。
ご遺族は、加害者の刑事事件への「被害者参加制度」の利用を希望したことから、みらい総合法律事務所にすべてを依頼しました。
刑事裁判が終了後、弁護士が加害者側保険会社と示談交渉をした結果、示談金額は約2300万円増額して解決となりました。
なぜ、このようなことが起こるのでしょうか?
その理由とは?
今回は、交通事故の慰謝料の請求方法と慰謝料の増額を勝ち取るにはどうすればいいのか、実際の解決事例などを交えてお話していきます。
交通事故の発生から解決までの流れ
発生から解決まで、交通事故の問題は次のような流れで進んでいくのが通常です。
図解で見る!交通事故発生から解決までの流れ
交通事故発生直後にやるべきこと
(1)事故の状況や相手(加害者)の身元の確認
(2)警察へ通報、実況見分調書や供述調書の作成への協力
(3)被害者、加害者双方の保険会社への連絡
詳しい解説はこちら⇒
交通事故の被害にあってしまった場合、すぐにやるべきことを教えてください。
実況見分調書・供述調書とは?
交通事故の発生後、警察に通報すると警察官が現場に駆けつけ、実況見分が行なわれます。
実況見分では、当事者である被害者と加害者の双方が立ち会い、事故の状況について供述して、それぞれの主張を述べます。(ケガの程度が重い場合は、後日に行なわれます)
警察官は、それらの内容を総合して事故の状況を明らかにするために、実況見分調書や供述調書を作成します。
交通事故では、加害者には、1.刑事責任、2.民事責任、3.行政責任、という3つの責任が発生します。
実況見分調書や供述調書は、加害者を刑事事件で処罰して罰則を決定する際や、民事における損害賠償請求や示談交渉などで慰謝料や逸失利益等の金額を決定する際に使われるため、非常に重要なものになります。
詳しい解説はこちら⇒
交通事故で実況見分により慰謝料が減額される理由とは?
症状固定から後遺障害等級認定まで
(1)入院・通院でケガの治療に専念する
(2)主治医から症状固定の診断
(3)後遺障害等級認定の申請
症状固定とは?
入院・通院をしてケガの治療を行なっていくと、ある段階で主治医から「症状固定」の診断を受けることがあります。
症状固定とは、これ以上治療を続けても効果が出ないという状態です。
症状が固定されるのですから、被害者の方には後遺症が残ってしまうことになります。
後遺障害等級認定とは?
後遺症が残ってしまった場合、被害者の方にとって重要なことは、ご自身の自賠責後遺障害等級の認定を受けることです。
後遺障害等級は、もっとも重度の1級から順に14級までが設定されており、後遺障害を負った身体の部位によって号数が決まっています。
【参考記事】:国土交通省「自賠責後遺障害等級表」
後遺障害等級認定の申請には「事前認定」と「被害者請求」という2つの方法があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。
なお、認定された等級に不満がある、あるいは認定されなかったというような場合には「異議申立」をすることもできます。
認定される後遺障害等級によって、慰謝料などの損害賠償金額が数百万円から数千万円も違ってくることがあるので、被害者の方にとってはとても大切なものになります。
詳しい解説はこちら⇒
交通事故で正しい後遺障害等級が認定される人、されない人の違いとは
示談交渉から裁判まで
(1)後遺障害等級が認定され損害賠償額が提示される
(2)示談交渉が開始(相手は加害者側の任意保険会社)
(3)示談成立(法的手続きの後、保険金の受け取り)
(4)示談が決裂した場合は最終手段として訴訟を提起し、裁判での決着を目指す
示談交渉とは?
後遺障害等級認定の際、たとえば事前認定を選択した場合では、等級が認定されると加害者が加入している任意保険会社から示談金(損害賠償金)の提示があります。
示談金(損害賠償金)には、慰謝料や逸失利益、入通院費、将来介護費などさまざまな項目があります。
これらの合算として提示される示談金額について、被害者と加害者の双方で話し合い、最終的に和解することが示談の目的です。
提示された示談金額で納得したなら、示談成立です。
しかし、交通事故の損害賠償金や示談交渉の実態を知れば、被害者の方は簡単に示談を成立させてはいけない、ということがわかります。
これについては、後で詳しくお話します
なぜ被害者が交渉しても慰謝料は増額しないのか?
さて、先ほど「被害者の方は簡単に示談を成立させてはいけない」ということをお話しました。
それは、加害者側の任意保険会社が提示してくる慰謝料などの示談金(損害賠償金)というのは、ほとんどの場合、本来であれば被害者の方が受け取ることができる金額よりも低いからです。
それを知らず簡単に示談を成立させてしまうと、被害者の方は事故による精神的苦痛や後遺障害を負ったうえに、さらに示談金(損害賠償金)でも損害を被ってしまうことになりかねません。
なぜ、そうしたことが起きてしまうのでしょうか……その理由について説明していきます。
慰謝料には3つの基準がある
ほとんどの被害者の方はご存知ないと思いますが、じつは慰謝料などを算定する際には3つの基準があり、この違いによって金額が大きく変わってきます。
これを知らないと、慰謝料などの損害賠償金を増額させることが難しくなります。
1.自賠責基準
「自動車損害賠償保障法」という法律により、自動車やバイクを運転するすべての人は自賠責保険への加入が義務づけられています。
そもそも、自賠責保険は人身事故の被害者救済の目的で創設されたものです。
そのため、自賠責基準で認められる損害賠償金(保険金)は必要最低限の金額であることから、3つの基準の中ではもっとも低く設定されています。
<自賠責法別表第1>
等級 | 保険金額 |
---|---|
第1級 | 4000万円 |
第2級 | 3000万円 |
<自賠責法別表第2>
等級 | 保険金額 |
---|---|
第1級 | 3000万円 |
第2級 | 2590万円 |
第3級 | 2219万円 |
第4級 | 1889万円 |
第5級 | 1574万円 |
第6級 | 1296万円 |
第7級 | 1051万円 |
第8級 | 819万円 |
第9級 | 616万円 |
第10級 | 461万円 |
第11級 | 331万円 |
第12級 | 224万円 |
第13級 | 139万円 |
第14級 | 75万円 |
被害の方が重度の後遺障害を負い、将来的にもつねに介護が必要な場合は後遺障害等級の1級か2級が認定されます。
その場合の基準は、自賠責法別表第1が適用されます。
それ以外のケガの場合は、自賠責法別表第2の基準が用いられます。
なお、死亡の場合の自賠責保険金は3000万円となっています。
参考:国土交通省「自賠責保険(共済)の限度額と保障内容」/span>
2.任意保険基準
交通事故の状況や後遺障害等級の程度によっては、自賠責保険から支払われる金額だけでは被害者の方への損害賠償金をすべて賄えない、ということも多々起きてきます。
そうした場合に備えて、ドライバーは各保険会社が提供している自動車損害保険に加入するわけですが、これらの保険会社が独自に設定しているのが任意保険基準です。
各保険会社が規定している内部基準のため詳細は公表されてはいませんが、おおまかにいうと自賠責基準と弁護士(裁判)基準の間の金額が設定されています。
3.弁護士(裁判)基準
加害者側の任意保険会社との示談交渉が決裂して裁判をした場合に認められる可能性が高いのが、弁護士(裁判)基準です。
弁護士が被害者から依頼を受けて、代理人として交渉する時に主張するのが、この弁護士基準で算出した金額です。
なぜ裁判基準ともいうかというと、過去から現在までに積み重ねられてきた数多の交通事故裁判の判例から導き出された基準を法的根拠としているからです。
裁判基準による後遺障害慰謝料の相場金額
後遺障害等級 | 慰謝料 |
---|---|
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
たとえば、事前認定で後遺障害等級認定の申請をする場合、加害者側の任意保険会社が被害者の代わりに資料を集め、書類を作成し、等級申請をしてくれます。
そして、自賠責保険から支払われる保険金を肩代わりしてまず被害者に支払い、あとから自賠責保険に任意保険会社が請求するという仕組みになっています。
そのため、任意保険会社としては被害者へ支払う示談金は低い方が都合がいいわけです。
仮に、被害者に後遺障害等級2級が認定され、弁護士(裁判)基準で算出したところ損害賠償金額が5000万円であるにもかかわらず、任意保険会社からの提示金額が2600万円だった場合で考えてみましょう。
任意保険会社が被害者に5000万円を支払うと、任意保険会社にはあとで自賠責保険から2590万円が支払われるので、2410万円の支出ということになります。
しかし、ここで任意保険会社が「任意保険基準で算出したところ、2600万円です」と被害者に提示して、その金額で示談が成立すれば、被害者に2600万円を支払ったとしても、あとで自賠責保険から2590万円が支払われるのですから、実質は10万円の支出で済むことになるのです。
これは、けっして極端な例ではないのです。
交通事故の示談金の相場について、もっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
任意保険会社の目的は収入を増やし、支出を少なくすること
では、なぜこのように任意保険会社が本来よりも低額の示談金を提示してくるのかといえば、彼らの多くは営利目的の法人(株式会社)だからです。
株式会社は利益を出すことが大きな目的ですから、そのための仕組みを考え、実行します。
ですから、できるだけ収入を増やして、支出を少なくするための企業活動をします。
一方、被害者の方としては、精神的、肉体的な苦痛の賠償として、少しでも多くの損害賠償金を求めるのは当然のことです。
つまり、被害者と保険会社では利害がまったく一致しないわけです。
こうした事実を知らずに、被害者の方が単独で交渉をすると、本来よりも低い金額で示談してしまうことになる可能性が高いのです。
実際、示談金額で損をしてしまっている被害者の方が多いという現実もあります。
しかし、保険会社の担当者は交通事故などの損害保険のプロです。
被害者の方が、やみくもに交渉をしても慰謝料増額に応じることは、難しいといってもいいでしょう。
では、どうすれば被害者の方が損をせずに、正しい金額の損害賠償金を受け取ることができるのでしょうか?
なぜ弁護士は慰謝料増額を勝ち取ることができるのか?
被害者の方が慰謝料増額を勝ち取るのはどうすればいいのか……その答えのひとつは、弁護士に相談・依頼することです。
それも、ただの弁護士ではなく、交通事故問題に精通したプロフェッショナルな弁護士に依頼することが、もっとも慰謝料増額の可能性が高く、効率のいい方法です。
これは何も、手前味噌な自慢や営業目的の話ではないのです。
たとえば、被害者の方が1人で加害者側の任意保険会社と示談交渉をしている場合を考えてみてください。
前述したように、多くの保険会社は利益を出すことが事業の目的ですから、交通事故に関する法律や損害保険、後遺障害に関する医学的な知識などについては素人同然の被害者の方の主張など受け入れることなく、退けます。
被害者の方がいくら不満を述べても、それが法的、医学的に根拠があり、説得力のあるものでなければ、保険会社は聞く耳を持ちません。
そして、示談がまとまらず時間だけが過ぎていくことになり、最終的には被害者の方があきらめてしまい、示談書に押印してしまう、ということが起きてしまうのです。
ところが、法律の専門家であり、後遺障害認定システムや損害保険の知識、医学的知見のある交通事故に精通した弁護士が被害者の方に依頼され、示談交渉を進めると、どうなるでしょうか。
弁護士は、正しい知識と経験に基づいて算出した慰謝料などの損害賠償金額を主張します。
加害者側の保険会社としては、弁護士が主張する損害賠償金額は弁護士(裁判)基準によって算出したものですから、訴訟を提起されて裁判になった場合、裁判所で認められる可能性が高いことを知っています。
すると、裁判になれば保険会社のほうでも弁護士に依頼しなければならなくなりますから、時間もお金も余計にかかってしまうことになります。
であれば、裁判にいく前に被害者側の弁護士の主張を受け入れて和解しておこう、という心理が働き、結果として被害者の方にとっても満足のいく慰謝料増額を勝ち取ることができる、ということになるわけです。
これが、交通事故の損害賠償における示談交渉の世界なのです。
被害者の方としては、弁護士に依頼することで慰謝料増額を勝ち取り、難しく煩わしい保険会社との示談交渉から解放されるのですから、大きなメリットがあるといえるのではないでしょうか。
弁護士が示談交渉をすると増額する理由について、もっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
実際の慰謝料増額事例を紹介
ここでは、我々みらい総合法律事務所で実際に慰謝料増額を勝ち取った事案についてご紹介したいと思います。
ご自身の状況と照らし合わせながら、参考にしていただきたいと思います。
25歳男性の示談金が3倍に増額
25歳男性がバイクで直進していたところ、左方面から走行してきた自動車に衝突され、脊椎圧迫骨折などの傷害を負った交通事故。
被害者男性は、脊柱変形で後遺障害等級8級、その他の神経症状で14級9号、併合で8級が認定され、加害者側保険会社は慰謝料などの損害賠償金として約1100万円を提示しました。
無料相談後、依頼を受けた弁護士が保険会社と交渉したところ、譲歩しなかったために提訴し、裁判では弁護士の主張が認められ3250万円で解決しました。
保険会社提示額から約3倍の増額でした。
高次脳機能障害で7級認定の21歳女性が約2200万円増額
被害者(21歳・女子学生)が、青信号のため丁字路交差点を自転車で走行中、信号無視をしたトラックに衝突されました。
脳挫傷などの傷害のため、高次脳機能障害と味覚障害が残り、自賠責後遺障害等級はそれぞれ7級4号と14級で、併合7級が認定されました。
保険会社の提示額は約3900万円で、これを低すぎると感じた被害者が依頼し、弁護士が交渉に入りました。
最終的には、約2200万円増額の約6100万円での解決となりました。
40歳男性が約9000万円の示談金を獲得
自動車運転中、後部から追突された交通事故で被害者の40歳男性が頚環軸椎骨折などを負い、頚部可動域制限等の後遺症のため、後遺障害等級8級が認定されました。
加害者側の保険会社は、既払い金額を除いて慰謝料など約2600万円を提示。
依頼を受けた弁護士が交渉しましたが決裂し、訴訟に移行しました。
保険会社は、「後遺障害等級自体が間違いである」と主張してきましたが、裁判所は弁護士の主張を認めて、後遺障害等級8級を前提に損害賠償金額約9000万円を支払うよう命じました。
31歳女性の損害賠償金額が約22倍に増額
31歳の女性が夜間に幹線道路を横断歩行中、直進してきた自動車にひかれてしまった交通事故です。
被害者は右足大腿骨転子骨骨折で後遺障害等級12級13号、外貌醜状で14級5号、併合で12級が認定され、加害者側保険会社から約43万円の損害賠償金が提示されました。
これを不服に思った被害者が、みらい総合法律事務所に相談。
弁護士が交渉したところ、相手は被害者の過失を主張してきましたが、最終的には約950万円で解決。
当初の提示額から約22倍も増額したことになります。
このように、弁護士に依頼すると慰謝料などの損害賠償金が大きく増額する可能性が高くなるのです。
詳しい解説はこちら⇒
交通事故で弁護士に相談依頼するメリットとデメリット
慰謝料の増額理由があれば必ず主張するべき
ここまでご紹介してきたように、みらい総合法律事務所ではこれまで数多くの慰謝料増額を勝ち取ってきましたが、最後にひとつ大切なことをお伝えしておきたいと思います。
それは、基本的に慰謝料には相場があるのですが、場合によっては裁判でその基準を超える判決がなされるケースがあるということです。
たとえば、次のようなケースです。
・通常の場合に比べ精神的苦痛の程度が大きいと判断される場合
・他の損害項目に入らないものを慰謝料で斟酌(しんしゃく)しようとする場合
・被害者に特別の事情がある場合
慰謝料増額事由について、もっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
裁判では、弁護士の実力が判決の行方を左右することになりますので、上記のような理由がある場合は、必ず交通事故に詳しい弁護士に相談してください。
なお、死亡事故の場合の慰謝料増額については以下のページを参考にしてください。
みらい総合法律事務所では、交通事故に精通したプロフェッショナルな弁護士が随時、無料相談を行なっていますので、まずは一度ご連絡いただければと思います。