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交通事故死の慰謝料の相場と示談のポイント

最終更新日 2019年 11月05日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠



今回は、近親者が交通事故死した場合の示談交渉の流れから請求できる損害賠償項目と内容、相続人の確定、慰謝料の相場など示談交渉におけるポイントについて解説します。

事故発生から示談交渉までに知っておくべき大切なこと

損害賠償請求権の時効について

慰謝料など損害賠償請求権は、ずっと放っておくと、時効によって消滅し、一切を請求できなくなってしまう、ということをご存じでしょうか。

これを、「消滅時効」といいます。

時効は、加害者および損害を知った時から進行します。

交通事故死では、加害者がわかっている場合には、死亡によって慰謝料などの損害賠償額が確定するため、死亡の時点から消滅時効が進行し、3年で時効によって消滅してしまいます。

したがって、事故から3年経過するまでには、何らかの行動を起こしておかなければならない、ということです。

但し、民法改正により、2020年4月1日以降は、損害賠償請求権のうち、人身損害については、3年ではなく、5年となります。

加害者がわからない「ひき逃げ事故」の場合、加害者が判明した時から加害者らに対する損害賠償請求権の時効が進行します。

なお、加害者が判明しないまま事故から20年が経過した場合も、消滅してしまうので注意が必要です。

示談交渉の開始時期

交通事故死では、まず被害者の通夜と葬儀が行なわれます。

加害者が「危険運転致死罪」や「過失運転致死罪」などで逮捕されていない場合は、加害者が通夜や葬儀に参列するのは当然ですが、中には参列しない加害者もいます。
その場合は、保険会社の担当者が代理として参列する場合もありますが、被害者の遺族(家族)が断ることもあります。

被害者が生存している場合に比べて、死亡した場合は遺族(家族)の悲しみは深いものになります。

ですから、保険会社の担当者も通夜や葬儀の際に示談の話を持ち出すようなことはしません。

通常は四十九日が過ぎた時点から、交通事故の慰謝料などの具体的な話し合いが開始されます。

刑事裁判の量刑について

交通事故死の場合、加害者が危険運転致死罪や過失運転致死罪などで逮捕され、起訴される場合があります。

ここで注意しなければいけないのは、加害者の刑が確定する前に示談を成立してしまうと、一応の被害弁償が終わったものとみなされ刑事裁判における量刑が軽くなってしまうことです。

そのため、刑事裁判が終わり、刑が確定してから示談交渉に入ることも少なくありません。

被害者の遺族(家族)としては、刑事裁判の進行を見ながら示談交渉を進めることが大切になってきます。

「被害者参加制度」といって、遺族が刑事裁判に参加できる制度もありますので、そのあたりは弁護士に相談しながら進めるのがよいでしょう。

なお、加害者側が量刑を軽くすることを目的として、慰謝料などの損害賠償金とは別に「贈与」として見舞金の提供を申し出ることがあります。

被害者の遺族(家族)としては、その金額やご自身の気持ちなどを総合的に判断して、加害者側からの申し出を受けるかどうか決めることになります。

相続人の確定と損害賠償請求における注意ポイント

相続人の確定

交通事故死の場合、被害者の家族なら誰でもが加害者らに損害賠償請求することができるというわけではありません。

損害賠償請求することができるのは、被害者の相続人です。

そのため、交通事故死の場合、まずは損害賠償請求権を持っている人を確定する必要があります。

相続人の確定をする際は、被害者の戸籍を取り寄せ、相続人の確定作業を進めていきます。

子供がいないと思っていた被害者に、実は子がいた、ということもあるので、被害者の出生まで遡って相続人を調査することになります。

相続人の種類と順位

相続人の種類としては、配偶者(夫・妻)と親、兄弟姉妹、子などがあげられます。

配偶者がいる場合、配偶者はつねに相続人になるので他の相続人とともに損害賠償請求権を相続することになります。

一方、配偶者以外の相続人の場合には順番があります。

<相続人順位第1位>
相続人順位の第1位は「子」です。
子がすでに死亡しており、子の子供、つまり被害者の孫がいれば、孫が第1位の相続人になります。
なお、子や孫がいれば被害者の配偶者は一緒に相続人になりますが、親や兄弟姉妹は相続人にはなりません。

<相続人順位第2位>
相続人順位の第2位は「親」です。
被害者に子がいない場合には親が相続人になり、兄弟姉妹は相続人にはなりません。
ただし、被害者の配偶者は一緒に相続人になります。

<相続人順位第3位>
相続人順位の第3位は「兄弟姉妹」になります。
子も親もいない場合は、兄弟姉妹が相続人になります。
兄弟姉妹がその時点で死亡している場合は、兄弟姉妹の子が同順位で相続人になります。
配偶者がいれば、もちろん一緒に相続人になります。

次に、ケースごとに誰が相続人になるのかについて考えてみます。

<ケース1>
交通事故死の被害者に妻、子、親、兄がいる場合は、妻と子が相続人となり、親と兄は相続人になりません。

<ケース2>
交通事故死の被害者に子がおらず、妻、親、兄がいる場合は、妻と親が相続人となり、兄は相続人になりません。

<ケース3>
交通事故死の被害者に妻がいて、子、親、兄がいない場合には、妻が1人で相続人になります。

<ケース4>
交通事故死の被害者に妻、子、親がおらず兄だけがいる場合は、兄が相続人になります。

相続分について

相続人が確定したなら、次に問題となるのは、それぞれの相続人がいくらずつ請求できるのかということです。

仮に、被害者が生前に遺書を残していたとします。

「私の遺産の全部は〇〇に相続させる」というようなことが書かれていれば別ですが、そうでない場合は遺産分割をする必要があります。

なぜなら、誰がいくらの損害賠償請求権を持っているのか確定しなければいけないからです。

遺産分割する際には、法律で定められている「法定相続分」を知る必要があります。

・同順位の相続人の法定相続分は均等
同順位の相続人が複数いる場合の法定相続分は均等です。

日本では複数の配偶者は認められていないため、配偶者が複数いることは考えられません。

しかし、子が複数、親が2人、兄弟姉妹が複数いるというのはよくあるでしょう。
その場合、長男と長女がいるなら2人の法定相続分は均等になります。

ただし、注意が必要なのは、兄弟姉妹については、父親と母親が同じである兄弟姉妹と、父親か母親の一方だけが同じ兄弟姉妹がいる場合があることです。

この場合の相続分は、片親だけが同じ兄弟姉妹は、両親とも同じ兄弟姉妹の2分の1が法定相続分になります。

たとえば、交通事故死の被害者に両親が同じ兄と、母親だけが同じ弟がいて、損害賠償金額が900万円だった場合は、兄の法定相続分が600万円、弟の法定相続分が300万円になります。

・配偶者と他の相続人がいる場合の法定相続分は序列が決まっている
たとえば、交通事故死の被害者に配偶者と子がいる場合、法定相続分は配偶者と子はともに2分の1です。

子が2人いる場合は、それぞれ4分の1ずつでこの合計が2分の1になります。

配偶者と親が相続人の場合は、配偶者が3分の2、親が3分の1になります。

配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1になります。

相続の確定と損害賠償請求

相続人の確定や相続分でもめていると、被害者の遺族はいつまでも損害賠償請求ができません。

そのため、他に相続財産があって全体の相続が確定しない場合は、まずは損害賠償請求権については法定相続分にしたがって「遺産分割協議」を行なって各自の相続分に基づいて請求をするか、「遺産分割未了」のまま請求することになります。

なお、交通事故死の場合、相続の対象となる損害賠償請求権の他にも近親者特有の損害賠償請求権が発生します。

これは、近親者が被害者の死亡により深い精神的苦痛を被っているため、被害者の損害賠償請求権とは別に発生するものです。

ですから、この点は忘れずに請求することが大切です。

また、裁判になった場合、事案に応じて近親者分もすべて本人分として認められたり、本人分を減額する代わりに近親者分を認めるなどして損害分を調整することがありますので、こちらも注意が必要です。

交通事故死で請求できる損害賠償項目とは?

交通事故死で被害者の遺族が加害者側に対して請求できる項目には主に次のものがあります。

・葬儀関係費
・逸失利益
・慰謝料
・弁護士費用

なお、被害者が即死ではなく治療後に死亡した場合は、上記以外にも治療費なども別途請求できます。

では、それぞれの項目について具体的に見ていきます。

葬儀関係費

葬儀関係費は、自賠責保険に請求する場合は定額で60万円です。

60万円をあきらかに超える場合は、「社会通念上、必要かつ妥当な実費」が認められますが、それでも100万円以内となります。

弁護士に依頼して訴訟を起こした場合、150万円が上限になります。
墓石建立費や仏壇購入費、永代供養料などは個別の事案によって判断されます。

加害者側の任意保険会社は、大抵の場合で120万円以内の金額を提示してくるので、150万円に近づけるようにしっかり交渉するべきです。

逸失利益

逸失利益とは、被害者が生きていれば将来に得られたはずのお金です。

将来に得られたはずのお金を算定し、現時点で一時金として受け取ることを前提として「中間利息」を控除することになります。

死亡の場合その時点で所得は100%なくなるので、「労働能力喪失率」は100%です。

また、生きていれば、生活費でいくらかのお金を費消することになります。そこで、賠償金から、生活費でかかるであろう割合を差し引くことになります。
これを「生活費控除」といいます。

そこで、死亡逸失利益の計算式は次の通りです。

(年収)×(就労可能年数に対するライプニッツ係数)×(1-生活費控除率)=(死亡逸失利益)

年収は、働いていた人の場合、事故前年の年収を基本に算出します。
ただし、30歳以下の有職者の場合は、学歴別全年齢平均賃金で算出する場合もあります。

無職者(18歳未満を含む)は、男女別全年齢平均賃金で算出するのが原則です。
ただし、女子の場合は全労働者で算出することもあります。

就労可能年数は、原則として18歳から67歳とされます。
したがって、18歳以上であれば事故時までの年齢を差し引いた年数に対応するライプニッツ係数で計算します。

高齢者で67歳を過ぎても働いていた場合は、その後に何年間くらい働く蓋然性があったかによって判断されます。
年金をもらっていた場合は、その種類にもよりますが、年金額も考慮します。

通常、生活費控除については被害者が男性の場合、生活費控除率は50%とされます。
ただし、一家の大黒柱で被扶養者がいる場合は、その人数によって30~40%になる場合があります。
被害者が女性の場合は、幼児の場合も有職者の場合も30%程度で算定されるのが通常です。

慰謝料

死亡事故の場合、慰謝料は被害者本人と遺族の精神的損害に対するものになります。

相場の目安は次の通りです。

・一家の支柱/2800万円
・母親・配偶者/2500万円
・その他/2000~2500万円

なお、近親者が固有の慰謝料を請求する場合は、上記金額から減額され、それぞれの近親者の固有の慰謝料に割り振られたり、調整が図られたりすることがあります。

弁護士費用

死亡事案に限りませんが、訴訟となって弁護士が必要と認められる事案では、認容額の10%程度を相当因果関係のある損害として損害賠償額に加算されるのが通常です。

過失相殺が問題になる場合とは?

交通事故死の相談を受けている時、よく問題になることのひとつに「過失相殺」があります。

過失相殺とは、慰謝料などの損害賠償額を算定する際に被害者側の過失などの事情を加味して、一定の賠償額を減額することです。

被害者の遺族としては納得できない部分もあるかもしれませんが、これは不法行為に基づく損害賠償請求権が「損害の公平な分担」という理念から認められた権利であることから、被害者側にも一定の事情がある場合はその割合を損害賠償額から差し引くことが公平である、という考え方によるものです。

交通事故死の場合に過失相殺が問題になることが多いのには理由があります。
それは、被害者がすでに死亡しており、事故の状況が主に加害者側の供述に基づいて形作られていくからです。

交通事故が起きると、警察は現場検証を行ない、タイヤのスリップ痕や自動車の状況などを調査します。
そして、加害者と被害者双方から事情を聞いて「実況見分調書」を作成します

しかし、交通事故死の場合は被害者が亡くなっているために、現場の状況に反しない限りは加害者側の説明に基づいて実況見分調書が作成されてしまうため、被害者にとっては不利なものになってしまうことが往々にしてあるのです。

実況見分調書は警察が作成したものということもあって、その後の示談交渉や裁判などで大きな影響力を持つことになります。
そこで、被害者の遺族が実況見分調書の内容とは異なる交通事故の真実を主張していくためには、目撃者を探したり、事故現場近所で聞き込みを行なって証言を得たりということをしなければいけません。

なお、遺族は実況見分調書を取り寄せて確認することができます。

加害者が不起訴になったか、略式命令が確定したか、起訴されて公判になったかなどの違いによって手続きは異なりますが、実況見分調書は検察庁で謄写することができますので、遺族としては示談交渉や裁判の際の分析資料として用意しておく必要があります。

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被害者請求をする場合の注意ポイント

被害者請求のメリットとデメリット

交通事故死の場合、被害者の遺族は自賠責保険に対して「被害者請求」をすることができます。

交通事故死の場合に被害者請求をするかどうかについては、まず第一に近い将来の経済生活の状況を考えることが大切です。

たとえば、一家の大黒柱が交通事故で死亡し、生命保険にも加入していなかった場合、残された家族は経済的に困窮し、路頭に迷うことになってしまいます。

そうした場合では、とにかくまずは自賠責保険に被害者請求をして、ある程度まとまったお金を得て、生活を安定させたうえで加害者側の任意保険会社と示談交渉をする必要があります。

ある程度、経済的に余裕がある場合には、被害者請求を選択するか、任意保険会社とじっくり示談交渉をしていくかを選択することができます。

被害者請求をするメリットとしては、前述のように早期にある程度まとまったお金を得ることができることがあげれられます。
また、先にまとまったお金を得ていれば、後で訴訟をする際の訴訟額が低くなるため、裁判所に納付する印紙額を低く抑えることができるというメリットもあります。

一方、デメリットとしては、申請のための資料を集めるのが大変であったり、手続きが複雑なことがあげられます。

遅延損害金とは?

一方、被害者請求をせずに裁判をするメリットもあります。
たとえば、遅延損害金が高くなることです。

損害賠償請求額に対する遅延損害金は、事故日から年5%の割合になっています。
したがって、損害賠償請額が高ければ高いほど遅延損害金は増額します。

ただ、この遅延損害金は、示談ではつかないのが通常なので、裁判をする必要があります。

しかし、被害者請求で、たとえば3000万円を先に受け取っていると、その分の遅延損害金が加算されなくなってしまいます。金額が大きい場合には、かなりの金額になってきます。

したがって、経済的に余裕がある場合には、被害者請求をせず、訴訟にて決着をつけることも多いでしょう。

その他の注意点

高齢者のように、働いていれば得られるはずだった逸失利益がないような場合、損害賠償額が自賠責保険金額の3000万円より低いことがあります。

そのため、被害者の過失が大きい時も、場合によっては自賠責保険に請求したほうが慰謝料などの損害賠償額が高額になることもあるので注意が必要です。

当法律事務所の解決事例①

31歳の男性がバイクを運転中、交差点で右折車に衝突され、死亡しました。
遺族に対し、加害者側の保険会社は5757万7932円の示談金を提示。

そこで、遺族がこの金額が妥当なものなのかどうかを当法律事務所に相談したところ、「逸失利益の増額が見込めること」、「過失相殺率が不当」とのことから弁護士に交渉の依頼をしました。

保険会社は、「逸失利益について事故前年度の年収で計算しているのは一般的な計算方法でもあることから、金額の譲歩はできない」と主張し、交渉は決裂。

弁護士が提訴し、主張立証を尽くしたところ、裁判所からは、被害者が転職予定だったことから増額された年収での逸失利益が認定され、過失相殺についても被害者に有利な認定が行なわれたため、最終的に7400万円での和解が成立しました。

詳しい解説はこちら⇒ 【死亡事故】提示額から約1600万円増額

当法律事務所の解決事例②

横断歩道を歩いていた67歳の女性に右折してきた自動車が衝突し、女性は高次脳機能障害の後遺障害を負った後、病状が悪化して死亡してしまいました。

高次脳機能障害からの死亡という難しい事案だったため、遺族は交通事故を専門とする当事務所に交渉を依頼し、示談交渉が開始されました。

交渉の結果、加害者側の保険会社は、慰謝料や逸失利益について満額回答だったため、治療費や内払い金の900万円を除いて4690万5967円で示談が解決しました。

詳しい解説はこちら⇒ 【死亡事故】提示額から約4700万円増額

以上、交通事故死で被害者の遺族が知っておくべき損害賠償請求についての知識やポイントなど解説しました。

交通事故死の損害賠償請求では、難しい知識や判断、さらには複雑な手続きが必要であるため、悲しみを抱えた遺族にとっては精神的にも肉体的にも大きな負担を強いられることになってしまいます。

また、示談交渉の相手は保険のプロですから、被害者遺族が優位に交渉す進めていくのは難しいのが現実です。

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当事務所でも、ご相談を受け付けていますので、ぜひ一度、ご相談いただければと思います。

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