【逸失利益】外国人が交通事故に遭った場合、逸失利益はどのように算定されますか?<弁護士解説>

最終更新日 2015年 09月26日
執筆:みらい総合法律事務所 弁護士 谷原誠

外国人の交通事故における逸失利益について、弁護士が解説します。

逸失利益には、後遺症逸失利益と死亡逸失利益があります。

後遺症逸失利益とは、交通事故により後遺障害を負ったため、事故前の労働ができなくなって収入が減少するために失われる利益のことです。

後遺症逸失利益の算定式は下記の通りです。

基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

死亡逸失利益とは、交通事故による死亡のため労働ができなくなって収入を得ることができなくなったために失われる利益のことです。

死亡逸失利益の計算式は下記の通りです。

基礎収入 × (1-生活費控除率) × 就労可能年数に対するライプニッツ係数

外国人の逸失利益を考える場合、基礎収入は日本での収入を基準にするのか、母国での収入を基準にするのか、また、労働可能年数についても、在留資格との関係でどの程度認めればいいのか等の問題が生じます。

就労可能な在留資格がなく、観光など短期滞在で日本に滞在していた間に交通事故に遭った場合は、通常母国に帰ることが想定されるので、母国での収入額を基礎とすることで問題はありませんが、出稼ぎなど就労可能な在留資格を持って日本滞在中に交通事故に遭った場合に問題となります。

これらの問題について、労災事故の事案である裁判(最高裁平成9年1月28日判決)では、「当該外国人がいつまで我が国に居住して就労するか、その後はどこの国に出国してどこに生活の本拠を置いて就労することになるか、などの点を証拠資料に基づき相当程度の蓋然性が認められる程度に予測し、将来のあり得べき収入状況を推定すべきことになる。

そうすると、予測される我が国での就労可能期間ないし滞在可能期間内は我が国での収入等を基礎とし、その後は想定される出国先(多くは母国)での収入等を基礎として逸失利益を算定するのが合理的ということができる。

そして、我が国における就労可能期間は、来日目的、事故の時点における本人の意思、在留資格の有無、在留資格の内容、在留期間、在留期間更新の実績及び蓋然性、就労資格の有無、就労の態様等の事実的及び規範的な諸要素を考慮して、これを認定するのが相当である」としています。

したがって、個別の事案について事情を考慮し、日本に滞在して就労することに相当程度の蓋然性が認められる期間については、日本での収入を基礎として逸失利益を算定し、母国に戻ることが予想される期間については、母国の収入を基礎として逸失利益を算定することになります。

なお、上記裁判例の被害者は、在留期間が終了したにもかかわらず日本に残り就労している不法就労の場合でしたが、この点について、不法残留外国人は、法律により強制退去の対象となるものであるから、実際は直ちに摘発されずある程度の期間日本に滞在できる場合があるとしても、日本での就労可能期間を長期間認めることはできないとして、日本での就労可能期間を3年としています。

以上、外国人の交通事故における逸失利益については、少し特殊ですので、算定については弁護士にご相談ください。