交通事故の示談交渉の際、保険会社から素因減額がありますと言われたのですが、素因減額とはなんですか?<弁護士解説>

最終更新日 2015年 09月26日
執筆:みらい総合法律事務所 弁護士 谷原誠

交通事故における訴因減額について、弁護士が解説します。

素因減額とは、交通事故の被害者の性格等の心因的素因や、既往症等の身体的素因が原因となって損害の発生したり拡大が生じたりしたと認められる場合に、損害賠償額を減額することをいいます。

心因的素因によって減額された例では、軽微な追突事故で外傷性頚部症候群(むち打ち)の診断を受けた被害者が、入通院を10年以上続けたという事案で、事故後3年間については因果関係を認めた上で、被害者の特異な性格や過剰反応などの心因的要因が原因で、通常発生する損害の程度を超えていることが明らかであるから、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して、加害者の責任を事故後3年間につき40%についてのみ認めた裁判例があります。(最高裁昭和63年4月21日判決)つまり、被害者の心因的素因を原因に、60%の減額をしていることになります。

身体的素因によって減額された例では、事故前に一酸化中毒にかかったことがある被害者が、交通事故により頭部打撲の傷害を負い、その後精神障害を発生させて事故から3年後に死亡したという事案で、被害者は事故とは無関係の一酸化中毒という疾患が原因となって死亡に至ったと認められるから、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して、損害の50%について加害者が責任を負う、とした裁判例があります。(最高裁平成4年6月25日判決)つまり、被害者の身体的素因を原因に、50%の減額をしていることになります。

どの程度の身体的素因の場合に減額できるかについては、最高裁平成8年10月29日付判決では、「被害者が平均的な体格ないし通常の体質を異なる身体的特徴を有していたとしても、それが疾患に当たらない場合には、特段の事情の存しないかぎり、被害者の右身体的特徴を損害賠償の額を定めるに当たり斟酌することができない」として、通常の人よりも首が長いという特徴は、素因減額の対象とならないとしました。

したがって、身体的素因に該当するかの判断については、一般的にその特徴が疾患に当たるか否かという基準で判断することになります。

なお、交通事故でむち打ちの障害を負った場合、加齢を原因とする頚椎の変性については、原則として素因減額されません。