主婦の交通事故における慰謝料の相場と示談交渉のポイント

最終更新日 2022年 07月20日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

【動画解説】交通事故で高額の弁護士基準で示談するために大切なこと

この記事を読むとわかること

私たち、みらい総合法律事務所では、毎年1000件以上の交通事故の相談を受けています。

被害者の中には主婦の方もいますが、次のような疑問や不安が多く寄せられています。

・ケガのため家事ができないが、収入のない専業主婦には金銭的な補償は認められないのでしょうか?
・兼業主婦ですが、パートやアルバイト以外の家事の部分には休業補償や逸失利益は認められないのでしょうか?
・収入のない専業主婦は慰謝料も安くなってしまうと聞きましたが、本当でしょうか?

特に専業主婦の場合、

働くことで得る収入がないため、損害賠償額が減ってしまうのではないかと心配だ。

家事も大切な仕事なのだから、それが認められないとしたら納得がいかない。

と感じている人が多いのだと思います。

そこで今回は、主婦の方が交通事故の被害にあって後遺症が残った場合、死亡された場合の慰謝料などの損害賠償金について解説していきます。

これから、主婦の方の慰謝料などについて説明していきますが、その前に、交通事故解決までの全プロセスを解説した無料小冊子をダウンロードしておきましょう。

みらい総合法律事務所の実際の増額解決事例を紹介


ここでは、みらい総合法律事務所で実際に解決した慰謝料などの損害賠償金(示談金)の増額事例をご紹介します。

増額事例①49歳の女性の慰謝料等が約3100万円増額

49歳(主婦)の女性が自動車を運転中、対向車線を走行し、センターラインをオーバーしてきた自動車に衝突されて死亡した交通事故です。

加害者側の保険会社は、ご遺族に対し、慰謝料などの損害賠償金(示談金)として3939万7183円を提示。

この金額は低すぎるのではないかと感じたご遺族が、みらい総合法律事務所の無料相談を利用し、弁護士の説明に納得できたため示談解決のすべてを依頼しました。

弁護士が保険会社と交渉しましたが決裂したため提訴。

裁判では、7060万0783円の判決が出たことで、最終的には約3100万円増額して解決した事例です。

 

解決事例②51歳の兼業主婦が後遺障害4級で約7275万円を獲得

51歳の兼業主婦の交通事故。

事故状況は、被害者女性が自転車で道路を横断していたところ、直進してきた自動車に衝突されたものです。

被害者の方は、頭部外傷などにより高次脳機能障害、てんかん、外貌醜状、嗅覚脱失等の後遺症を負い、自賠責後遺障害等級は併合4級が認定されました。

そこで、ある弁護士に依頼したのですが不満があったため解任。

みらい総合法律事務所の無料相談を利用し、弁護士の説明に納得と安心を得たことで、改めて依頼することにしました。

示談交渉では、弁護士の主張を加害者側の保険会社が受け入れず、損害賠償金(示談金)で折り合いがつかなかったため決裂。

調停となり、話し合いが続けられたところ、最終的に約7275万円で調停が成立した事案です。

解決事例③63歳女性(主婦)の慰謝料等が約5.4倍に増額

63歳主婦の女性が自転車で直進中、路外から出て右折してきた自動車に衝突された交通事故。

頸椎捻挫(むち打ち)などの傷害を負い、治療しましたが残念ながら神経症状とPTSD(心的外傷後ストレス障害)の後遺症が残ってしまい、自賠責後遺障害等級を申請したところ、14級9号と12級の併合12級が認定されました。

加害者側の保険会社は、被害者女性に対し、既払い金の他、慰謝料など損害賠償金として約110万円を提示。

この金額に疑問を感じた被害者の方が、みらい総合法律事務所の無料相談を利用。

弁護士の説明に納得がいったため示談解決のすべてを依頼されました。

弁護士と保険会社が交渉しましたが決裂したため、提訴。

保険会社は裁判で、「被害者には素因減額ある」と主張しましたが、裁判所は「素因減額はない」と判断。

最終的には、裁判所の和解のすすめにより600万円で解決。

保険会社の当初提示額の約5.41倍に増額したことになります。

素因減額の詳しい動画解説はこちら

解決事例④73歳女性の死亡事故で慰謝料等が約2.4倍に増額

青信号の横断歩道を歩行していた73歳の専業主婦の女性が、右折してきた自動車に衝突され、亡くなった交通事故です。

加害者側の保険会社は、ご遺族に対して慰謝料などの損害賠償金(示談金)として約1955万円を提示。

ご遺族は、この金額の妥当性について疑問を感じ、みらい総合法律事務所の無料相談を利用したところ、弁護士から「まだ増額可能」との意見があったことから示談交渉のすべてを依頼されました。

弁護士が保険会社と交渉をした結果、最終的に2700万円以上増額の4700万円で解決。
当初提示額から約2.4倍に増額したことになります。

【参考記事】
みらい総合法律事務所の解決実績はこちら

このように、交通事故の示談解決を弁護士に依頼すると慰謝料などの損害賠償金(示談金)が増額する可能性がとても高くなるのですが、その理由については後ほどお話します。

交通事故の被害者が損害賠償請求できる項目とは


交通事故の被害者の方やご遺族は、加害者側に対して慰謝料などの損害賠償金を請求することができます。

ここで覚えておいていただきたいのは、慰謝料と損害賠償金は同じものではないということです。

損賠賠償金全体の項目にはさまざまなものがあり、その中のひとつに慰謝料があるということになります。

「損害賠償金を構成する主な項目」

治療費、入院雑費、通院交通費、付添費、休業損害、傷害慰謝料、弁護士報酬、後遺症慰謝料、将来介護費、将来雑費、損害賠償請求関係費用、装具・器具等購入費、家屋・自動車等改造費、葬儀関係費、修理費、買替差額、評価損、代車使用料、休車損、登録手続関係費 など

交通事故で被害者の方が死亡した場合、ご遺族は次の項目について損害賠償請求をすることができます。

「交通死亡事故の場合に請求できる損害賠償項目」
・葬儀費
・死亡逸失利益
・慰謝料
・弁護士費用(裁判をした場合)

これらの他にも、即死ではなく、治療の後に死亡したような場合は、実際にかかった治療費、付添看護費、通院交通費などを請求することができます。

また、損害賠償を請求する際に必要な診断書、診療報酬明細書、交通事故証明書等の書類を取得するためにかかった費用も、損害賠償関係費として請求できます。

交通事故で請求できる慰謝料の種類とは


交通事故の被害者の方が受け取ることができる慰謝料は、じつはひとつではありません。

大きく分けて3つ、「傷害慰謝料」、「後遺傷害慰謝料」、「死亡慰謝料」があります。

(1)傷害慰謝料

交通事故で傷害(ケガ)を負った被害者の方に対して、肉体的、精神的苦痛を慰謝するために支払われるものです。

日弁連交通事故相談センターが発行している『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準』(通称「赤い本」)という書籍に記載されている「入通院慰謝料」の別表Iをもとに、入通院期間を基礎として計算します。

(2)後遺傷害慰謝料

後遺障害が残った場合に被った精神的苦痛に対して償われるものです。

ただし、精神的苦痛の程度は事故ごと、被害者ごとに違うため、各事案によって個別に判断するのが難しく、膨大な時間がかかってしまうことから、あらかじめ概ねの相場金額が決まっています。

<裁判基準による後遺障害慰謝料の相場金額>
後遺障害等級 慰謝料
1級 2800万円
2級 2370万円
3級 1990万円
4級 1670万円
5級 1400万円
6級 1180万円
7級 1000万円
8級 830万円
9級 690万円
10級 550万円
11級 420万円
12級 290万円
13級 180万円
14級 110万円

(3)死亡慰謝料

交通事故により被害者の方が死亡したことで被った精神的損害に対して支払われるものです。

被害者の方の立場や置かれている状況などによって金額が異なってきますが、概ねの相場金額は次の通りです。

・一家の支柱の場合  2800万円
・母親・配偶者の場合 2500万円
・その他の方の場合  2000万~2500万円

その他の方というのは、独身の男女、子供、幼児、高齢者などです。

なお、被害者の方は亡くなっているので受取人は、配偶者や子などの相続人になります。

慰謝料が相場より増額する場合


上記の慰謝料の相場は、あくまでも相場の金額であり、裁判所が拘束されるものではありません。

事情によっては、裁判所は、相場の金額よりも高額の慰謝料を認めてくれる場合もあります。

ただし、そのためには、被害者の側で慰謝料増額事由を発見し、それを主張立証していくことが求められます。

では、どのような場合が慰謝料増額事由となるか、ですが、事故の悪質性が高い場合(飲酒運転、信号無視、無免許運転など)、被害者側の精神的苦痛が大きい場合(家族が精神疾患にかかるような場合)に認められます。

以下では、主婦の交通事故で慰謝料が相場より増額した裁判例をご紹介します。

東京地裁平成18年10月26日判決(出典:交民39巻5号1492頁)

被害者は、43歳の主婦兼アルバイトで死亡事故です。

事故状況として、加害者は、多量に飲酒をし、正常な運転が困難な状態で自動車を運転していました。

また、そのためもあり、居眠り状態で交通事故を起こしたという事情がありました。

慰謝料の相場としては、当時2400万円だったところ、裁判所は、本人分2700万円、夫分200万円、子3人合計で300万円の合計3200万円を認めました。

【判決の分析】
本判決は、飲酒、居眠りという事故の悪質性を重視して、慰謝料を増額したものと考えられます。

東京地裁平成24年8月27日判決(出典:交民45巻4号982頁)

被害者は、56歳の専業主婦です。

被害者は車を運転し、高速道路で渋滞のため徐行していました。

そこで、制限速度を約40キロオーバーした加害車両がブレーキも踏まずに追突したという死亡事故です。

慰謝料の相場金額は、当時は2400万円であったところ、裁判所は、本人分2600万円、夫分250万円、子2人合計200万円、父親分50万円の合計3100万円を認めました。

【判決の分析】
本判決は、大幅な速度超過で全く前を見ておらず、ノーブレーキで追突した、という事故の悪質性を重視して慰謝料を増額したものと考えられます。

主婦にも休業損害や逸失利益は認められるのか?

ところで、主婦の方が交通事故の被害にあった場合、休業損害や逸失利益は認められるのでしょうか?

専業主婦の方の場合、実際の収入はないので、「休業損害や逸失利益は認められないのでは?」と考える人もいますが、日々の家事労働を行なっており、これには経済価値があると認められているので当然、休業損害や逸失利益は認められます。

なぜなら、専業主婦が交通事故の被害に遭って入院した場合、家事をする人がいなくなってしまいます。その場合、家政婦など外部に委託すると、当然のことながら費用が発生します。そのため、家事労働も金銭的に評価が可能とされています。

したがって、専業主婦が交通事故の被害に遭った場合には、症状固定前は休業損害を、症状固定して後遺障害が残った場合には逸失利益を請求することができます。

では、家事労働をいくらで計算するのか、という点ですが、専業主婦の場合には、賃金センサスの女性労働者の全年齢平均の賃金額を基礎として計算します。

兼業主婦の場合には、上記の平均賃金より給料などの収入が高い時は実収入により計算し、平均賃金より低い時は平均賃金により計算します。平均賃金に給料額をプラスするわけではありませんので、注意しましょう。

主婦の交通事故の損害賠償金額を計算してみます


ここでは、具体的に損害賠償金額について考えてみましょう。

先にお話したように、弁護士が依頼を受けて交渉や裁判を行なう場合、日弁連交通事故相談センターが発行している書籍『民事交通事故訴訟損害賠償算定基準』(通称「赤い本」と言います)を参考に損害賠償金額を算出します。

この本に書かれているものが、弁護士(裁判)基準になります。

そのうえで、40歳の専業主婦の方が交通事故により死亡した場合の損害賠償金を算出してみます。

葬儀費

原則150万円です。

実際の費用が150万円を下回る場合は、実際に支出した額となります。

死亡逸失利益

死亡逸失利益とは、交通事故で死亡したことにより、被害者の方が将来の労働によって得られたであろう収入を得られなくなったために失われる利益のことです。

死亡逸失利益の計算式は次の通りです。

基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数

「基礎収入」

基礎収入とは、交通事故で死亡しなければ、将来にわたり労働によって得られたであろう収入のことです。

「生活費控除」

生活費控除とは、生きていれば必要となったはずの生活費分を、基礎収入から差し引くことです。

生活費控除率の目安は次のようになっています。

・被害者の方が一家の支柱で被扶養者が1人の場合は40%
・一家の支柱で被扶養者2人以上の場合は30%
・女性(主婦、独身、幼児等含む)の場合は30%
・男性(独身、幼児等含む)の場合は50%

「就労可能年数」

就労可能年数は、原則として67歳までです。

ただし、職種、地位、能力等によって、67歳を過ぎても就労することが可能であったと思われる事情があるようなケースで場合には、67歳を超えた分についても認められる場合もあります。

「ライプニッツ係数」

ライプニッツ係数とは、本来は将来にわたって受け取るはずであった収入を損害賠償として前倒しで受け取るため、将来の収入時までの年3%の利息を複利で差し引く係数のことをいいます(2020年4月1日以降の事故の場合)。※以後3年毎に数値は変わります。

専業主婦であると実際の収入はありませんが、日々の家事労働を行っているので、逸失利益は認められます。

専業主婦の場合は、基礎収入は、賃金センサスの女性労働者全年齢平均賃金とし、生活費控除率は30%とします。

以上から、専業主婦の女性(40歳)が交通事故で死亡した場合の死亡逸失利益の算定式は次のようになります。

3,826,300円(賃金センサス平成30年女性学歴計全年齢平均賃金)×(1-0.3)×18,327(ライプニッツ係数)=49,087,220円

慰謝料

死亡慰謝料については、前述の通り、概ねの相場金額が次のように決まっています。

・被害者が一家の支柱の場合は2800万円
・母親・配偶者の場合は2500万円
・その他(子供、成人独身者、高齢者等)の場合は2000万円~2500万円

ここでは、被害者は配偶者ですので、慰謝料は2500万円とします。

なお、これら被害者への慰謝料の他、配偶者や子などの近親者にも固有の慰謝料請求が認められるのが通常です。

請求方法など法的な対応には難しい手続きがあるので、詳しいことは一度、弁護士に相談してみることをおすすめします。

弁護士費用

弁護士に依頼して裁判によって損害賠償を請求した場合は、請求認容額の10%程度が弁護士費用として認められます。

ここで認められる弁護士費用の額は、実際に依頼者が支払う弁護士費用とは関係なく、損害賠償金の一部として被害者に支払われるものです。

つまり、裁判で判決が出るところまで進むと、被害者の方やご遺族としては弁護士に支払う報酬分を加害者側に負担させることができてしまう、ということになるのです。

裁判まで進むことを嫌がる被害者の方やご遺族は多いのですがメリットもあるので、このことはぜひ覚えておいていただきたいと思います。

たとえば、今回の例では、請求額は次のように算出されます。

500,000円(葬儀費)+49,087,220(死亡逸失利益)円+25,000,000円(慰謝料)=74,587,220円

74,587,220×0.1=7,458,722(弁護士費用)

以上から、専業主婦の妻(40歳)が交通事故で死亡した場合の損害賠償額の合計は、

500,000円(葬儀費)+49,087,220(死亡逸失利益)円+25,000,000円(慰謝料)+7,458,722円(弁護士費用)=75,335,942円

となります。

【参考記事】
交通事故の弁護士費用の相場と加害者に負担させる方法

 

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