社員の交通事故における会社の責任について

最終更新日 2015年 09月29日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

会社の社員が交通事故を起こした場合の会社の責任について、弁護士が解説します。

会社の社員が仕事中に会社所有の自動車(以下「社用車」とします)で交通事故を起こして被害者にケガを負わせた場合、雇い主である会社には民法の使用者責任あるいは自動車賠償保障法(以下「自賠法」とします)の運行供用者責任が発生します。

自賠法の運行供用者とは、自動車の使用についての支配権を有し、かつ、その使用により享受する利益が自己に帰属する者のこといいます。

自賠法の運行供用者責任が問われる場合、会社は、

  1. 運行供用者および運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと
  2. 被害者または運転者以外の第三者に故意または過失があったこと
  3. 自動車に構造上の欠陥または機能の障害がなかったこと

の3つの要件をすべて証明できない限り、被害者に損害賠償金を支払わなければなりません。(自賠法3条)

社用車の私用運転

それでは、社用車を、仕事とは関係なく私用で、しかも会社に無断で使っているときに社員が事故を起こしてしまった場合にまで、会社に損害賠償義務があるのでしょうか?

この場合の会社が運行供用者に当たるのかどうか、つまり、私用で無断に使っていた場合にまで、会社に自動車の使用についての支配権と使用により享受する利益の帰属が認められるのかどうか、という点が問題になります。

この点については、どのような事情で社員が社用車を運転することになったのか、業務とどの程度関連性があるのか、業務時間内か、業務時間外か、日常的に私用で運転していたのか、会社は私用運転を禁止していたのか、知っていて黙認していたのかなど、個別具体的な事情に応じて判断することになりますが、被害者の救済という観点から、裁判例でも、会社に運行供用者責任を認めたものが多くあります。

たとえば、タクシー会社の従業員が、通常の勤務に引き続いて、メーターを倒さずに知人を同乗させて交通事故を起こした事案で、タクシー会社はタクシーの私用運転を禁じていましたが、裁判所は、勤務時間に近接した時間に従業員がタクシーを運転していた場合には、車両所有者であるタクシー会社に、運行利益、運行支配があるとするのが相当であるとして、運行供用者責任を認めています。(神戸地裁平成10年12月17日判決)

また、自動車のセールスマンが、業務終了後最終電車に乗り遅れたため、私用を禁止されている自社の自動車を運転して帰宅途中に起こした交通事故についても、会社に責任を認めています。(最高裁昭和39年2月4日判決)

逆に、自動車の所有者に運行供用者責任を認めなかった裁判例としては、友人から2時間の約束で自動車を借りた者が、その後所有者である友人が何度も催促したにも関わらず自動車を返さず、32日後に死亡事故を起こした事案があります。(最高裁判所平成9年11月27日判決)

裁判所は、所有者からすれば、自動車をだまし取られたも同然で、約束の2時間を経過した後の自動車の運行は、所有者の意思に反するもので、所有者は自動車の通行を指示、制御できる状況ではなく、運行供用者には当たらないと判断しました。

このように、運行供用者責任を認めない場合というのは、運行の利益や運行支配が完全に所有者から奪われているような特殊な事情があるなど、限定的に判断される傾向にあると考えられますので、質問のように、会社の社員が無断で社用車を私用で使ったという事実のみでは、会社は運行供用者責任を免れないと考えます。

社員の自家用車で仕事中に交通事故を起こした場合

では、社員が仕事中に、社用車ではなく、自家用車で交通事故を起こした場合に、会社は責任を負うのでしょうか?

この場合でも、仕事中に起こした事故ですので、会社に自動車の使用についての支配権と使用により享受する利益が帰属すると考えられるので、会社が運行供用者に当たり、運行供用者責任が認められます。

社員が自家用車で通勤中に交通事故を起こした場合

社員が、自家用車で通勤中に交通事故を起こした場合に、会社は責任を負うのでしょうか?

通勤は業務ではありませんが、事案によっては会社が責任を負う場合があると考えます。

裁判例でも、保険会社の営業所長が、帰宅途中に営業区域内で自家用車で交通事故を起こした事案で、営業所長の通勤は業務に密接に関連しているとして、会社が運行供用者に当たり、運行供用者責任を負うとしたものがあります。(大阪地裁昭和40年12月10日判決)

このように、営業などの業務を自家用車で行っていたり、業務を行う地域内での事故であったり等、業務との関連性がある程度認められるような場合には、会社も責任を問われる場合があるでしょう。

反対に、自家用車を業務に使うことがまったくないような場合や、自家用車での通勤を会社が禁止していたにも関わらず自家用車で通勤をしていたような場合には、会社は損害賠償責任を負わないと考えます。

以上、社員の交通事故における会社の責任関係について、弁護士が解説しました。

会社の法的責任ついて争いになった時は、弁護士にご相談ください。

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