交通事故における共同不法行為

最終更新日 2015年 10月02日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

Q交差点で自動車Aと自動車Bが出会い頭に衝突したため、自動車Aが歩道に乗り上げ、私に衝突してきました。自動車Aはプライベートで運転していた個人の運転手、自動車Bは運送会社C社のトラック運転手で、仕事中の事故でした。私は自動車Aの運転手だけでなく、自動車Bの運転手の雇用主である運送会社C社にも損害賠償を請求することができるのでしょうか?また、請求できる場合は、全額請求することができるのでしょうか?

交通事故における共同不法行為について、弁護士が解説します。
○交通事故における共同不法行為の成立

民法719条は、「数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う」と規定しています。これを「共同不法行為」といいます。

質問の場合では、自動車Aと自動車Bの交通事故が原因となって被害者が負傷しているため、共同不法行為が成立することになります。交通事故で共同不法行為が成立する場合、自動車Aと自動車Bは、法律上、連帯して損害賠償責任を負うことになりますので、自動車Aと自動車Bの過失の割合に関係なく、被害者はどちらに対しても全額の損害賠償を請求することができます。

また、自動車Bは運送会社C社の社員であり、業務中の事故であったので、C社には、民法の使用者責任あるいは自動車損害賠償保障法の運行供用者責任が発生するため、被害者はC社に全額の損害賠償を請求することができます。

○共同不法行為者間の関係

それでは、被害者が運送会社C社に全額の損害賠償請求をして、C社が損害賠償金を支払った場合、C社は、自動車Aに自分の負担部分を超えて支払った金額についての支払いを請求することができるでしょうか?

自分の負担部分を超えて支払った金額についての支払いを請求することを、「求償」といいます。つまり、共同不法行為者が負う連帯債務について、他の共同不法行為者に求償できるかどうかということが問題となります。

共同不法行為者が負う債務の性質については、学説では、連帯債務であるとする説と、不真正連帯債務であるとする説がありますが、有力なのは、不真正連帯債務であるという説です。

連帯債務の場合は、損害賠償を行った不法行為者は、他の不法行為者に対して求償できますが、不真正連帯債務であるとすると、特に法律の定めがない場合は、求償できないのが原則です。

しかし、交通事故の場合、不真正連帯債務の原則通り求償できないとすると、支払った者だけが責任を負う形になり、不公平となってしまいます。質問の場合でも、運送会社C社だけが責任を負って、自動車Aはまったく責任を負わないというのはおかしいと考えるのが通常だと思います。また、交通事故の場合に共同不法行為の成立を認めたのは、被害者がどちらにも損害賠償請求できるようにという被害者保護が目的ですので、加害者同士が求償できたとしても、被害者には影響はないので、問題ありません。

そこで、裁判でも、不法行為者の間では、一方が被害者に対し損害賠償額全額の支払いを行った場合には、過失割合にしたがって、他の不法行為者に求償できることが認められました。(最高裁・昭和41年11月18日判決)

質問の場合、例えば、被害者の損害賠償額が1000万円で、自動車Aと自動車Bの過失割合が2:8である場合、運送会社C社が1000万円を被害者に支払った場合には、自動車Bの負担部分を超えて支払った200万円について、自動車Aに求償できることになります。

○使用者から社員に対して行う求償

運送会社C社が被害者に損害賠償額全額を支払った場合、C社は、自動車Aに求償できるだけでなく、C社の社員である自動車Bの運転手にも求償できます。

使用者責任について規定している民法715条には、3項に「前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない」という規定があるからです。

しかし、使用者は、自らの負担額全額を求償できるわけではありません。

裁判例では、石油等の輪送会社の社員であるタンクローリーの運転手が起こした交通事故に関し、輸送会社が運転手に求償した事案で、輸送会社が被害者に支払った金額の4分の1の範囲でのみ、その請求を認めたものがあります。(最高裁・昭和51年7月8日判決)

質問の例に当てはめてみると、自動車Aと自動車Bの過失割合が2:8で、運送会社C社が被害者に損害賠償額1000万円全額を支払った場合は、自動車Aに対し200万円を請求でき、社員である自動車Bの運転手には、負担部分800万円のうち、4分の1の200万円についてのみ、請求できるということです。

使用者の社員に対する求償額の判断の基準としては、先程の裁判例によると、「事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防若しくは損害の分散についての使用者の配慮・程度その他諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度」とされています。

社員への求償を無制限に認めた場合には、通常は資力の乏しい社員に酷であるし、また、会社は、使用者として社員を使用することによって経済的利益を上げることができる分、社員の行動について責任を負わなければならないと考えると、使用者から社員に対する求償は、限定的に考えられる傾向にあるようです。

以上、交通事故における共同不法行為について、弁護士が解説しました。

交通事故で共同不法行為が争いになった時は、弁護士にご相談ください。

「交通事故の被害者が弁護士に相談すべき7つの理由と2つの注意点」は、こちらです。
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