所有権留保車の交通事故と損害賠償

最終更新日 2015年 11月05日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

<質問>

私が自動車で優先道路を直進中に、脇道から一時停止をせずに道路にでてきた自動車に衝突され、胸椎圧迫骨折などの大ケガをしてしまいました。

相手の自動車は、まだローンの支払い中とのことで、所有名義は自動車販売会社となっていました。

この場合は、自動車販売会社にも損害賠償を請求することができますか?

<交通事故弁護士SOS解説>

交通事故で加害車両の名義が自動車販売会社である場合(所有権留保)、自動車販売会社に対しても損害賠償請求できるか、について、弁護士が解説します。

○所有権留保とは

自動車を購入する場合、代金を分割で支払う割賦販売、いわゆるローンで購入するという方も結構多いと思います。

この場合、売主である自動車販売会社は、購入者が代金を支払わなくなった場合に備えて、代金が完済されるまで所有名義を自動車販売会社に残しておくことがあります。

そうすれば、購入者がもし代金を支払わなくなっても、自動車販売会社は所有者として自動車を他に売却するなど処分をし、代金を回収することができるからです。

このように、商品の所有権を売主に残して売買代金債権を担保することを、所有権留保といいます。

所有権留保の場合、所有名義人は、形式的には所有者ですが、実際にその物を使用したりする予定はありません。

○所有名義人に運行供用者責任が発生するか

自動車損害賠償保障法3条は、「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる」と規定しています。

交通事故における運行供用者とは、自己のために自動車を運行の用に供する者のことです。

運行の用に供する、とは、自動車の使用についての支配権を有し、かつ、その使用により受ける利益が自己に帰属する者を意味します。

今回の質問の場合、所有名義人である自動車販売会社が交通事故における運行供用者に該当するか否かが問題となりますが、結論としては、自動車販売会社は運行供用者に該当しないということになります。

なぜなら、自動車販売会社は、単に売買代金債権の担保のために自動車の所有権を留保しているのに過ぎないため、自動車の使用についての支配権も、その利益の帰属もないからです。

交通事故の裁判例でも、所有権留保として自動車を月払いのローンで売却した者は、特段の事情のない限り、販売代金債権の確保のためだけに所有権を留保するものに過ぎず、自動車を買主に引き渡し、その使用を委ねた以上、自動車の使用についての支配権を有し、かつ、その使用により享受する利益が自己に帰属する者ではなく、運行供用者には当たらないとされています(最高裁昭和46年1月26日判決)。

したがって、今回の質問の場合、自動車販売会社に交通事故の損害賠償を請求することはできないと考えます。

「交通事故の被害者が弁護士に相談すべき7つの理由と2つの注意点」は、こちらです。
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