盗難自動車の交通事故の損害賠償責任

最終更新日 2015年 11月11日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

Q.運送会社を経営している者です。先日、事務所の駐車場に停めてあったトラックが盗まれ、盗んだ犯人がそのトラックで人身事故を起こしてしまいました。被害者は、トラックを盗まれた当社の管理体制にも問題があるとして、当社にも損害賠償請求をしてきました。賠償金を支払う必要はありますか?

盗まれた自動車の所有者が交通事故の損害賠償責任を負うか、について、弁護士が解説します。


自動車損害賠償保障法3条は、「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる」と規定しています。

運行供用者とは、自己のために自動車を運行の用に供する者のことです。運行の用に供する、とは、自動車の使用についての支配権を有し、かつ、その使用により受ける利益が自己に帰属する者を意味します。

今回の質問のような、いわゆる泥棒運転の場合、自動車の所有者の意思とは関係なく自動車が運転されているので、所有者に運行支配も運行利益もなく、所有者は運行供用者に当たらないとも言えそうです。

交通事故に関する裁判例でも、タクシー会社の駐車場(高さ2mのブロック塀で囲まれ正門と裏門がついている)からエンジンキーを差し込んだままのタクシーを盗み出し、その後交通事故を起こした事案で、タクシーの所有者はなんらその運行を指示制御すべき立場になく、その運行利益も所有者に帰属していたといえないことが明らかであるから、所有者は運行供用者責任を負わず、また、その駐車場は、客観的に第三者の自由な立入を禁止する構造、管理状況にあると認められるため、たとえ自動車にエンジンキーを差し込んだままの状態で駐車させても、そのために自動車が第三者によって窃取され、かつ、この第三者によって交通事故が惹起されるものとはいえないから、自動車にエンジンキーを差し込んだまま駐車させたことと自動車を窃取した第三者が起こした交通事故による損害との間には相当因果関係が認められないため、民法715条の使用者責任も負わないとしたものがあります。(最高裁 昭和48年12月20日判決)

ただし、泥棒運転者による交通事故の場合でも、所有者に自動車の保管管理について過失があり、また、自動車を盗まれてから交通事故までの時間的・場所的関係が近接するような場合には、その交通事故について、所有者にも責任があると認められる可能性があります。

○所有者にも交通事故の損害賠償責任を認めた裁判例

裁判例では、貨物トラックがエンジンキーを差し込んだままの状態で会社の駐車場から盗まれ、その後交通事故を起こした事案で、トラックが駐車されていた駐車場は、周囲を囲む施設、設備などの工作物が建造されておらず、下請会社の従業員や顧客などが自由に利用でき、第三者の立入りが比較的自由な場所であったこと、エンジンキーの管理を会社がきちんと行っていなかったこと、交通事故現場は駐車場から2㎞という場所的近接性があること、盗まれてから事故が起きるまでの時間がおよそ1時間以内という時間的近接性があることなどから、管理責任と交通事故による損害との間に相当因果関係が認められ、また、その運行は、所有者である会社の自動車に対する運行支配から離脱していたものとはいえないため、運行供用者責任も認められるとしたものがあります。(大阪地裁 昭和61年3月27日)

今回の質問の場合も、事務所の駐車場が客観的に第三者の自由な立入を禁止する構造、管理状況にあったかどうか、エンジンキーの管理は適切に行っていたかどうか、トラックを盗まれてから交通事故までの時間的・場所的近接性が認められるかどうかなどの状況により、会社の責任の有無が判断されることになります。

盗難自動車による交通事故で問題が生じた時は、弁護士に相談することをおすすめします。

「交通事故の被害者が弁護士に相談すべき7つの理由と2つの注意点」は、こちらです。
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