交通事故における幼児の過失を弁護士が解説!

最終更新日 2016年 02月26日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

質問

私の3歳の子供がちょっと目を離した隙に道路に飛び出し、自動車にひかれて大けがをしてしまいました。

保険会社から示談の案を出されているですが、子供の方も飛び出したのだから過失相殺をすると言われています。

また、ちょっとでも目を離した親の責任もあると言っています。

3歳の子供でも過失があると認められてしまうのでしょうか?

交通事故における幼児の過失について、弁護士が解説します。

弁護士の解説

過失相殺について

過失相殺とは、被害者に、損害の発生や損害を拡大させたことについて落ち度があった場合には、損害賠償額を減額する制度のことです。

民法で、被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して損害賠償の額を決めることができる、と規定されています(民法722条2項)。

これは損害の公平な分担という考えからできたものです。

たとえば、損害賠償額が総額で1000万円の場合、被害者の過失が20%であるとしたならば、被害者が受け取ることのできる金額は、1000万円から20%の過失相殺をして、800万円になるということです。

過失相殺されると、被害者の過失の割合に応じて、被害者が受け取れる金額が減ることになるのです。

損害賠償額が大きくなればなるほど、割合に応じた金額も大きくなりますので、過失相殺があるのかどうか、あるとしても割合はどのくらいか、というのはとても重要な事項になります。

幼児の場合の過失相殺

では、ご質問のように、3歳の幼児でも過失があるとされてしまうのでしょうか?

この点については、被害者に過失を問える場合に必要な能力が、加害者に損害賠償責任が認められる際の責任能力と同じものであるかどうかが問題となります。

責任能力とは、自分の行為に対して責任を負う能力のことで、注意を怠ったことで悪い結果が起きることが予想できで、それに対して自分がどういう責任を負うのかを理解できる能力のことをいいます。

昔は、過失相殺の場合の被害者にも、責任能力が必要と考えられていました。

しかし、その後、最高裁判所の判決(昭和39年6月24日判決)で、未成年者の過失を考えるにあたっては、その未成年者に事理を弁識する知能(事理弁識能力といいます)が備わっていれば足りるとして、責任能力までは必要ないとしました。

事理弁識能力とは、物事に対していいか悪いかを判断できる能力のことで、具体的にいうと、道路を飛び出したら車にひかれる可能性があるから危ないという考えができるかどうかということです。

飛び出した結果にどのようなことになるのか、それについて自分がどのような責任を負うことになるのか、ということを理解するのは責任能力の話であって、そこまで理解している必要はない、ということです。

上記の最高裁判所の裁判例は、8歳の小学生が自転車で相乗りをしていて交差点でミキサー車と衝突し死亡した事案ですが、裁判所は、8歳であれば学校や家庭で自動車の危険性について教育されていて自動車が危ないものだということは認識していたと考えられるため、事理弁識能力があるとして、過失相殺しました。

そして、この事理弁識能力は、通常、小学生になる5、6歳くらいになれば備わってくると考えられていますが、子供によっても能力の差がありますので、年齢によって一律に決まっているわけではなく、被害者が同じ5歳であっても、事理弁識能力が認められたり、認められなかったりすることもあります。

ご質問の場合は、お子様がまだ3歳ですので、一般的には事理弁識能力が備わっているとは考えられず、お子様の行為に関しては過失相殺されないと思います。

ただし、お子様の行為については過失相殺されないとしても、両親など子供を監督する義務のある者がその監督を怠っていたという過失があった場合には、子供の監督義務違反として、両親の過失が問われる場合があります。

これを被害者側の過失といいます。

被害者側の過失について

裁判例では、被害者側の過失とは、被害者本人と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者の過失をいうとされています。

ご質問の場合、親であるあなたは、被害者本人と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられる関係にあると考えられますので、あなたがちょっと目を離してしまったという点についてやはり監督義務違反という過失があると認められ、過失相殺される可能性は高いと思います。

ただし、一般的に考えてみても、幼児を長時間一人で道路に放置したなど明らかな監督義務違反の場合を除いて、ちょっと目を離してしまった隙に急に子供が走り出してしまったりというようなことは日常的にあり得ることですので、過失相殺の割合としてはそれほどは高くならないと思います。

もちろん、事故の具体的な状況によりますが、親の監督義務違反としては、過失割合は、10%程度か、高くても30%程度と言われています。

なお、被害者本人と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者とはどの範囲までを含むかについては、一般には、未成年者の子供と親、夫婦、同居している兄弟などが含まれると考えられています。

また、裁判例では、両親に雇われている家事使用人(家政婦やベビーシッターなど)も、被害者側に含まれるとしています。

以上、交通事故における幼児の過失について、弁護士が解説しました。

交通事故で幼児の過失が問題になった時は、弁護士に相談しましょう。

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