孫の交通事故で祖父母に損害賠償請求権があるか?

最終更新日 2021年 07月08日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

孫の交通事故で祖父母に損害賠償請求権があるか?

【動画解説】死亡事故のご遺族が示談交渉でやってはいけないこと

(質問)

一緒に暮らしていた小学生の孫が交通事故で死亡してしまいました。祖父母である私たち夫婦は、生まれたときから孫をかわいがっており、悲しくて仕方がありません。私たちにも加害者に慰謝料を請求することはできますか?

孫の交通事故で祖父母に損害賠償請求権があるか、について、弁護士が解説します。

(回答)

死亡事故の損害賠償請求できるもの

交通事故で被害者が死亡した場合に、誰が損害賠償を請求できるでしょうか。

この点については、損害賠償請求権が被害者に発生し、それが相続人に承継されるのか、あるいは、相続人や家族の固有の損害賠償請求権が発生するのか、について検討する必要があります。

この点については、被害者に、損害賠償請求権が発生し、それが相続によって、相続人に承継されるとされています。

相続人としては、結婚してる場合には、まず配偶者は必ず相続人となります。

そして、子供がいる場合には、子供は配偶者とともに相続人になります。この場合には、相続分は、配偶者が2分の1、子供が2分の1です。

子供がいない場合には、親が配偶者とともに相続人になります。この場合には、配偶者が3分の2、親が3分の1です。

子供も親もいない場合には、兄弟姉妹が配偶者とともに相続人になります。この場合には、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1です。

本件では、被害者が小学生と言うことであり、配偶者がいませんので、両親が相続人になります。

損害賠償の内容

では、死亡事故の場合には、どのような損害を請求できるでしょうか。

死亡事故の場合には、主に次の項目を損害賠償請求することができます。

①葬儀費用

②死亡慰謝料

③逸失利益

④近親者慰謝料

それぞれ簡単に説明します。

葬儀費用は、原則として、150万円を限度として、実際に支出した費用となります。

死亡慰謝料は、死亡したことによる精神的苦痛であり、一応の相場が設定されています。

家庭の立場によって、金額が設定されており、一家の支柱であれば2800万円、母親や配偶者であれば2500万円、その他の子供や独身者であれば2000万円から2500万円とされています。

今回は小学生と言うことなので、死亡慰謝料は2000万円から2500万円の間で請求することができます。

次に、逸失利益とは、生きていれば将来的に稼げたであろうお金を稼げなくなったことによる損害です。

計算式としては、(基礎収入額×(1ー生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数)となっています。

基礎収入は、小学生の場合、まだ働いていないので、平均賃金等をもとに計算します。

就労可能年数は、18歳から67歳までとされます。

このライプニッツ係数と言うのは、損害賠償金は、将来のお金を今受け取ることになるので、将来にわたる中間利息を控除する観点から計算式に入れられているものです。

近親者慰謝料と言うのは、被害者本人分の死亡慰謝料とは別に、近親者の精神的苦痛を被ることから認められるものです。

【参考記事】
【交通死亡事故】慰謝料請求…ご家族がやるべきことは?

被害者の祖父母の慰謝料


お孫さんの相続人は、お孫さんのご両親であるため、祖父母であるあなた方には、相続人としての慰謝料を請求することはできません。

そこで、近親者として、固有の慰謝料を請求することができるのかどうかが問題となります。

民法711条は、「他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。」と規定しており、被害者の父母、配偶者、子という近親者に固有の損害賠償請求権を認めています。

条文の文言どおりに解釈すると、被害者の祖父母は条文に含まれていないため、慰謝料を請求することができないようにも思えますが、裁判例では、被害者との間に父母、配偶者、子と同視することができる身分関係があり、被害者の死亡によって甚大な精神的苦痛を受けた者には、被害者の父母、配偶者、子と同じように、固有の慰謝料の請求を認めたものもあります。

ですので、祖父母であるあなた方夫婦と、被害者であるお孫さんとの間に、父母、配偶者、子と同視することができる身分関係があり、あなた方夫婦が被害者の死亡によって甚大な精神的苦痛を受けたと認められる場合には、慰謝料を請求できる可能性があることになります。

裁判例

孫が交通事故により死亡した事案で、祖父母らの慰謝料を認めた裁判例としては、以下のものがあります。

【交通事故の判決】

名古屋地方裁判所 平成22年6月4日判決(自動車保険ジャーナル1832号)

【交通事故の概要】

平成17年11月11日午後3時30分頃、愛知県内の交差点を6歳男児の被害者が自転車で直進中、加害者の乗用車と出合頭に衝突して被害者が死亡した事案。

死亡慰謝料について、死亡慰謝料の本人分として2,200万円、同居していた両親に各200万円、長兄、次兄、弟に各30万円、父方の祖母に50万円に加え、同居していなかった母方の祖父母にも各30万円の死亡慰謝料を認め、死亡慰謝料合計額を2800万円としました。

死亡事故で近親者車両が発生するかどうかについては、法律的な判断が必要となりますので、弁護士にご相談いただければと思います。

弁護士 谷原誠
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠(東京弁護士会所属)

平成3年 明治大学法学部卒業
平成3年 司法試験合格
平成6年 弁護士登録
平成13年度 東京弁護士会常議員・代議員

共著 「交通事故訴訟における高次脳機能障害と損害賠償実務」(ぎょうせい)
共著 「交通事故訴訟における脊髄損傷と損害賠償実務」(ぎょうせい)
共著 「交通事故訴訟における典型後遺障害と損害賠償実務」(ぎょうせい)
共著 「弁護士がきちんと教える交通事故示談と慰謝料増額」(あさ出版)
共著 「交通事故被害者のための損害賠償交渉術」(同文館出版)

~交通事故案件に対する私の思い~

このページを訪問していただき、誠にありがとうございます。

弁護士の谷原誠です。私は、1996年に弁護士登録をしており、すでに25年以上、弁護士として多数の事件を解決してきました。

私が最初に交通事故に関わったのは、まだ弁護士として駆け出しの頃です。

被害者の方は、後遺障害が残ってしまい、保険会社から示談金額が提示されたので、その金額が妥当かどうか、見て欲しい、ということでした。
私はまだ当時駆け出しだったので、「大手保険会社だから、まずまず適切な金額が提示されているだろう」と思いました。
しかし、内容を検討してみると、適切な賠償金の何分の1しか満たない、とても低い金額が提示されていました。
私は驚きました。

そこで、私はそのことを被害者に告げ、示談交渉の依頼を受けて、保険会社と交渉しました。
弁護士が出ていって、裁判例等を根拠に交渉すれば、さすがに保険会社も適切な金額を認めざるを得ないだろう、と思いました。 ところが、結果は違いました。保険会社は全く譲歩しませんでした。

そこで、私たちは、裁判を起こし、私たちの主張の正当性を立証しました。
その結果は、賠償金は何倍にも増額しました。

私は思いました。 「世の中の多くの被害者は、保険会社が提示する金額を正しいものだと誤解して示談している例がたくさんあるのでないか。そんなことが許されていいはずがない!」

そこで、私は交通事故に真剣に取り組むようになりました。
その結果、色々なことがわかってきました。

・自賠責後遺障害等級は間違っていることがあり、そのままで示談すると、大変な損をする
・保険会社はたいてい適切な金額より低い金額を提示してくる
・弁護士が示談交渉すると、保険会社が譲歩し、いきなり増額されることが多い

被害者は、何も悪くないのに、交通事故の被害に遭い、痛い思いをし、あるいは愛するご家族をなくし、怒りや悲しみの渦中にいます。
そんな中で、示談交渉のプロである保険会社の担当者と対等に交渉するのは大変だと思います。

私たちは、そんな被害者の皆様のお役に少しでも立ちたいと願っています。
ぜひ、ご相談ください。そして、被害者の方は、決して損をしないようにしてください。


相談件数 年間1000件以上。無料で電話相談する。24時間受付。 メール相談