バイク死亡事故の慰謝料請求は、ここがポイントです。

最終更新日 2016年 10月05日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

バイクによる交通事故によって親しい方を亡くされたご遺族の方には、心からお悔やみ申し上げます。

車社会である現代、交通事故は誰の身にも起こり得ることで、決して他人ごとではありません。ある日突然、自分や家族が交通事故に遭い、ケガをしたり亡くなってしまったりすることがあるのです。

特にバイク事故の場合、四輪車と異なり、身体が露出しておりますので、ほとんどの場合で頭部や胸部など身体上の重要な部位を損傷してしまうことになり、死亡という最悪の結果になってしまうことも少なくありません。

死亡事故の場合には、亡くなってしまった被害者に代わって、ご遺族が加害者との損害賠償の問題の処理をしていくことになります。被害者のためにも、せめて適正な損害賠償金を支払ってもらいたいと思うのは当然のことでしょう。

しかし、残念ながら、本来もらえるはずの損害賠償金額よりも低い金額で示談をしてしまっているご遺族の方が多いのが現状です。

なぜなら、ご遺族の方には、交通事故の損害賠償に関する知識がないことが普通であるため、加害者の保険会社から提示された金額を適正な金額であると勘違いしてしまっているからです。

後で詳しくご説明しますが、加害者の保険会社が最初から適正な金額を提示してくることはほとんどありません。

それでは、適正な損害賠償金額とはいったいいくらになるのでしょう?

もちろん事故態様や被害者の年齢、職業、収入等のそれぞれの事情によって損害賠償金額は違いますので、正確な金額を出すのはやはり交通事故に詳しい弁護士等の専門家に相談することが一番なのですが、基礎的な知識を知っておけば、ある程度の判断の目安がわかるようになると思います。

ですので、以下、バイク事故による死亡事故の場合の損害賠償の基礎的な事項についてご説明します。

示談交渉について

示談とは

交通事故の損害賠償の問題の解決について、一般的に「示談をする」という言い方をするかと思います。

示談というのは、具体的には、交通事故によって被害者が被った損害がいくらになるのか、支払いはどのようにするのか等の事項を、当事者の話し合いによって、お互いに譲歩しながら決定し、解決することをいいます。法律的にいうと、民法上の「和解」(民法695条)に該当するものです。

交通事故の死亡事故の場合には、まずは被害者の通夜や葬儀が行われ、その後四十九日が過ぎたあたりで、加害者側から遺族に連絡があり、示談の話を始めるということが多いです。

通常は加害者本人と直接交渉することはなく、加害者が加入している保険会社の担当者が窓口となって示談を進めていくことになります。

具体的には、保険会社の担当者が、保険会社側で算定をした損害賠償額の見積書等を遺族に提示して、遺族はその提示された損害賠償金額を検討し、納得ができた場合には、示談書(「免責証書」という名前の書面の場合もあります)に署名捺印し、示談書に記載された損害賠償金が支払われて終了することになります。

保険会社が提示した金額に納得できない場合には、その後話し合いを続け、話し合いでもお互いが合意できなかった場合には裁判を行うことになります。裁判になった場合は、判決を出してもらって解決する場合と、裁判の途中で当事者が裁判上の和解をして解決する場合があります。

示談の注意点

示談交渉のときに一番やってはいけないことは、保険会社からの提示金額の内容をあまり検討せずに、提示された金額のまま安易に示談してしまうことです。

署名押印すると示談が成立したことになり、交通事故の損害賠償の問題が最終的に解決した、ということになります。示談した後に、実は示談金額よりも多額の損害賠償金を請求することができるとわかったとしても、追加で請求したりすることは原則としてできません。

そして、冒頭でも述べましたが、保険会社が適正な損害賠償金額を最初から提示してくることはほとんどありません。

なぜなら、保険会社は利益を追求する会社という組織ですので、被害者に支払う保険金額が少ない方が会社の利益になるため、なるべく低い金額で示談したいと考えているからです。

ですので、保険会社からの提示金額を適正な金額だろうと勘違いして示談をしてしまうと、損をしてしまう可能性が高いことになります。

また、示談が成立しているかどうかというのは、加害者の刑事罰にも関係してきます。

交通事故の死亡事故の場合、加害者は刑法上の過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪などの罪で逮捕、起訴され、刑事罰を受ける可能性がありますが、裁判所がその量刑を判断するときに、先に示談が成立していると、被害者に対する賠償が済んでいると考慮されて、加害者の量刑が軽くなるということもあるからです。

遺族としては、加害者には刑事罰によってきちんと罪を償ってほしいと思うことは当然だと思いますので、示談交渉は加害者の刑事裁判が終わってから始めるということにしてもいいと思います。

死亡事故の損害賠償請求権の時効

今述べたように、示談は慎重に行う必要がありますので、急がなくてもいいのですが、時効にだけは注意する必要があります。示談や裁判をしないまま時効期間が経過してしまった場合、加害者に対する損害賠償請求権が消滅し、一切請求できなくなってしまうからです。

加害者に対する損害賠償の時効期間は、死亡事故の場合は、被害者の死亡によって損害が確定したとみなされますので、事故時(死亡時)から3年です。

加害者がひき逃げした場合など、加害者の特定に時間がかかるときは、加害者が特定された時から3年です。

加害者がずっと特定できないときには、事故から20年経過した時点で時効が成立します。

バイク死亡事故の損害賠償請求ができるのはだれか

交通事故の死亡事故の場合、当事者である被害者が死亡してしまっていますので、加害者へ損害賠償請求ができるのは、被害者の相続人です。相続については、民法(882条以下)で詳しく定められています。

相続人について

被害者の配偶者(夫または妻)は常に相続人となります(民法890条)。
配偶者以外の者の優先順位は、以下のようになっています(民法889条)。

・第一順位 子供

被害者に子供がいた場合、子供が相続人となります。配偶者は常に相続人となりますので、この場合は配偶者と子供が相続人です。被害者に両親や兄弟姉妹がいたとしても、両親や兄弟姉妹は相続人にはなりません。

被害者の子供が被害者より先に亡くなっているが、孫がいるという場合は、孫が代襲相続します。この場合は配偶者と孫が相続人です。

・第二順位 父母

被害者に子供がいない場合は、被害者の両親が相続人となります。配偶者がいる場合、配偶者は常に相続人となりますので、この場合は配偶者と被害者の両親が相続人です。

・第三順位 兄弟姉妹

被害者に子供や両親がいない場合、被害者の兄弟姉妹が相続人となります。配偶者がいる場合、配偶者は常に相続人となりますので、この場合は配偶者と被害者の兄弟姉妹が相続人です。

相続分について

相続人がいくら請求できるのかについては、被害者が法律的に有効な遺言を残していればその遺言通りになりますが、特に遺言がない場合は、民法で定められている法定相続分に従います(民法900条)。

配偶者と子供が相続人の場合、法定相続分は2分の1ずつです。
配偶者と、複数の子供がいる場合は、子供の相続分である全体の2分の1を、さらに子供の人数で均等に割った分が子供一人の相続分となります。このように、同順位の相続人の法定相続分は均等であり、両親や兄弟姉妹が複数いる場合でも同様に考えます。

配偶者と両親が相続人の場合は、法定相続分は配偶者が3分の2、両親が3分の1です。

配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合は、法定相続分は配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1です。

バイク死亡事故の損害賠償金の項目について

交通事故の損害賠償金というと、世間的には、慰謝料をもらうというような言い方をすることもあるかと思いますが、正確に言うと、損害賠償金というのは慰謝料のことだけを指すのではなく、さまざまな損害賠償の項目の合計金額のことをいいます。

交通事故による死亡事故の場合に請求できる損害賠償金の主な項目には、以下のものがあります。

・葬儀費用
・死亡逸失利益
・死亡慰謝料
・弁護士費用(裁判をおこした場合)
・葬儀費用

葬儀費用は、自賠責保険の場合は定額で、金額は60万円です。任意保険会社は、定額で定められている自賠責保険では足りない部分を補うものですが、葬儀費用については、だいたい120万円以内くらいで提示してくることが多いです。

裁判を起こした場合に認められる金額である裁判基準では、葬儀費用は原則として150万円です。ただし、実際にかかった金額が150万円を下回る場合は、実際に支出した額になります。

被害者の社会的地位が高い場合などで、実際にかかった額が相場よりも高額であるような場合は、その支出の必要性が認められれば150万円より高額な金額が認められる可能性もあります。

死亡逸失利益

死亡逸失利益とは、被害者が生きていれば労働などにより将来にわたって得られたはずのお金のことです。

死亡逸失利益は、以下の計算式で算定します。

基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数
基礎収入は、被害者が働いていた場合、原則として事故前年の実際の年収額とします。
被害者が幼児や学生であった場合は、賃金センサスの男女別全年齢平均賃金を基礎収入とします。
被害者が主婦であった場合は、賃金センサスの女性労働者の全年齢平均賃金を基礎収入とします。

生活費控除とは、生きていればかかったはずの生活費を収入額から差し引くことをいいます。

生活費控除率は、被害者の立場によってだいたいの目安が決まっています。

被害者が一家の支柱で被扶養者が1人の場合   40%
被害者が一家の支柱で被扶養者2人以上の場合  30%
女性(主婦、独身、幼児等含む)の場合     30%
男性(独身、幼児等含む)の場合        50%

ライプニッツ係数とは、損害賠償の場合は将来にかけて得られたはずのお金をまとめて受け取ることになるため、将来の収入時までの年5%の利息を複利で差し引く係数のことをいいます。

就労可能年数とは、働くことが可能であると考えられる年数のことです。
就労の終了時期は、原則として67歳までとされています。被害者が67歳よりも高齢であった場合は、簡易生命表の平均余命の2分の1とされています。

被害者が幼児や学生であった場合、就労の始まりの時期は、原則として18歳とされていますが、被害者が大学生で大学卒業が具体的に決まっている場合や卒業の可能性が高い場合などは、大学卒業予定時を就労の始まる時期とします。

死亡慰謝料

死亡慰謝料は、被害者の立場によって、裁判基準である程度の相場が定められています。

・被害者が一家の支柱の場合                 2800万円
・被害者が母親、配偶者の場合                2500万円
・その他(独身の男女、子供、幼児等)の場合  2000万円~2500万円

保険会社が提示してきた死亡慰謝料額が上記の相場より低い場合は、交渉することになります。

また、事故態様が、加害者の無免許、ひき逃げ、飲酒、信号無視、薬物等のため正常な運転ができない状態での運転による場合や、事故後の対応が著しく不誠実な態度である場合など、悪質であると考えられる場合には、上記の相場の金額よりも高い慰謝料額が請求できる場合もあります。

弁護士費用

加害者側との示談交渉がうまくいかず、弁護士に依頼して裁判を起こした場合には、裁判で認められた損害賠償金額の10%程度が、弁護士費用として認められることになります。

たとえば、裁判で認められた損害賠償金額が5000万円だった場合、弁護士費用分として10%の500万円が追加され、加害者が支払いを命じられる金額は5500万円となります。

過失相殺の問題

バイク事故による死亡事故の場合に問題となりやすい点として、過失相殺の問題があります。

過失相殺とは

過失相殺とは、交通事故が起きたことについて、被害者側にも何らかの過失があった場合に、被害者の過失を考慮して、その過失の割合を損害賠償額から減額することです。

たとえば、過失割合が「80対20」とされた場合、加害者の過失が80%、被害者の過失が20%ということになります。この場合の損害賠償金額の合計額が1000万円だとした場合、1000万円の20%である200万円を差し引いた800万円が、被害者側に支払われる金額となります。

損害賠償金額が大きくなればなるほど、過失割合が10%違っただけで、被害者側が受け取れる金額が何百万や何千万も変わってしまう場合もありますので、過失割合がどのくらいか、というのは非常に重要な点になります。

バイク事故での過失相殺

バイクでの事故の場合、被害者にもバイクの運転者として注意して運転する義務がありますので、信号待ちで停車中に後方から追突された場合や、対向車の加害者がセンターラインオーバーして突っ込んできた場合など、被害者がどうしようもなかった場合を除いて、被害者にもいくらかの過失が認められる場合が多いです。

過失割合については、裁判所も弁護士も保険会社も、東京地裁民事交通訴訟研究会編の「別冊判例タイムズ16号 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」という書籍を参考にして認定しています。この認定基準では、交差点での事故か否か、信号機があるか否か、直進者と右折車の事故か等、起こり得るさまざまな事故の形態についての基本の過失割合を設定し、そこに具体的な事故の状況に応じて修正を加えて判断します。

死亡事故の場合は、被害者が死亡してしまっていますので、後から被害者の言い分を聞くことができません。過失割合の判断にあたっては、警察の作成した実況見分調書を参考にすることになりますが、その実況見分調書も主に加害者の言い分によって作成されていることになります。加害者が本当のことを述べているのかどうか、判断が難しいこともあるでしょう。

けれど、加害者側が被害者の過失が大きいと主張してきた場合でも、すぐにあきらめることはありません。その場合は、事故態様を再検討したり、目撃者を探して話を聞いたり、同じような事故態様の裁判例を探して被害者の過失が少ないことの立証の資料にしたりと、証拠を集めることによって、相手方の主張を覆すことができる場合もあります。
ただ、一般の方にはなかなか難しいことだと思いますので、過失割合について疑問に感じたり、争いが生じているような場合は、必ず弁護士等に相談した方がいいでしょう。

以上、バイク事故による死亡事故について、ご遺族が知っておいた方がよい基礎的な知識についてご説明しました。

ただ、実際に適正な損害賠償金額を算定するにあたっては、事故態様や加害者の対応、被害者の立場等、さまざまな事情を考慮して算定することになります。

実際にご家族等が被害に遭われた事故の場合に、死亡逸失利益がいくらになるのか、死亡慰謝料はいくらになるのか、過失割合はどのくらいになるのか、など、基礎的な知識を身につければつけるほど疑問に思う点もたくさんでてくると思います。

ですので、示談の前に必ず一度は交通事故に詳しい弁護士等の専門家に相談された方がいいです。

弁護士に相談する場合でも、交通事故の解決の実績がある弁護士であることがポイントです。交通事故の損害賠償に関する知識と経験がないと、弁護士でもわからなかったり、間違うこともあるので注意してください。

私たちの事務所は、交通事故による後遺症と死亡事故に専門特化しており、解決実績も多数あります。相談も無料で受け付けておりますので、ぜひ活用してください。

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