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交通事故による右片麻痺、高次脳機能障害、尿失禁で慰謝料が増額した裁判例

最終更新日 2021年 07月31日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

【動画解説】 交通事故の後遺障害等級1級の慰謝料獲得法

脳挫傷による麻痺

麻痺とは

交通事故による脳挫傷により、身体に麻痺が生じることがあります。

麻痺には、運動麻痺と感覚麻痺がありますが、後遺障害等級認定の対象となるのは、運動障害として麻痺です。

麻痺には、次の4種類があります。

(1)四肢麻痺 両側の四肢の麻痺
(2)片麻痺  一個上下肢の麻痺
(3)対麻痺  両上肢または両下肢の麻痺
(4)単麻痺  上肢または下肢の一肢のみの麻痺

なお、脳損傷を原因とする麻痺は、四肢麻痺、片麻痺、単麻痺であり、対麻痺が生じることはないとも言われています。

麻痺による後遺障害等級

1級
①高度の四肢麻痺
②中等度の四肢麻痺で、常時介護を要する場合
③高度の片麻痺で、常時介護を要する場合

2級
①高度の片麻痺
②中等度の四肢麻痺で随時介護を要する場合

3級
中等度の四肢麻痺で介護を要しない場合

5級
①軽度の四肢麻痺
②中等度の片麻痺
③高度の単麻痺

7級
①軽度の片麻痺
②中等度の単麻痺

9級
軽度の単麻痺

12級
運動性、支持性、巧緻性、速度についての支障がほとんど認められない程度の軽微な麻痺

高次脳機能障害とは

交通事故で、脳挫傷など頭部に重大な怪我をした場合に、高次脳機能障害という後遺症が残る場合があります。

高次脳機能とは、文字通り高いレベルの脳の働きのことで、言語機能や思考などをつかさどっています。

高次脳機能障害になると、人格が変わったり、感情的になったり、記憶力や集中力が低下したりという変化が起こります。

また高次脳機能障害が重い場合には、介護が必要となり、1人で日常生活を送ることができなくなる場合もあります。

高次脳機能障害は、難しい後遺障害なので、後遺障害等級認定や、損害額の計算など、専門的な知識が必要となってきます。

高次脳機能障害の症状

高次脳機能障害になると、「認知障害」と「人格変化」が現れます。

認知障害は、記憶力の低下、集中力の低下、判断力の低下、言語障害などです。

人格変化は、怒りっぽくなる、暴言を吐く、感情変化がはげしくなる、無気力になる、などです。

これらの変化は、後の自賠責後遺障害等級認定においても重視されますので、どのような変化が生じているか、ご家族が認識しておく必要があります。

【参考記事】
ドクターズファイル「高次脳機能障害」

高次脳機能障害の後遺障害等級

高次脳機能障害の後遺障害等級は、1級1号、2級1号、3級3号、5級2号、7級4号、9級10号などが認定されることになります。

1級や2級の場合には、将来の介護が必要となる後遺障害ということでとても重い後遺障害となります。

そして、介護は将来的に死ぬまで必要となることから、将来介護費用は多額になります。

そのため、被害者側と保険会社側で、金額の相違が大きくなりやすいので、重い後遺障害の場合には、裁判になりやすい傾向があります。

そのため、重い高次脳機能障害の場合には、早めに弁護士に相談し準備をしていくことが大切になってきます。

それでは、交通事故で高次脳機能障害等の後遺症が残り、慰謝料が増額した裁判例を見てみます。

高次脳機能障害の後遺障害等級認定のポイント

交通事故で怪我をして、治療の甲斐なく、後遺症が残った場合には、自賠責後遺障害等級認定を受けることになります。

自賠責後遺障害等級は、1級から14級まで定められており、それぞれどの等級に該当するかを認定することになります。

後遺障害等級を認定する機関は、損害保険料率算出機構という団体です。

この後遺障害等級によって、後遺症慰謝料や逸失利益などの損害額の計算が異なってくるので、とても重要な手続きとなります。

等級が1級でも違うと、数百万円は示談金額が違ってきますし、重い等級の場合には、数千万円も示談金が違ってくる場合があるので、注意が必要です。

後遺障害等級認定における、高次脳機能障害の認定ポイントは次のようになります。

(1)頭部外傷による意識障害

高次脳機能障害の後遺症が残る場合には、交通事故直後に意識障害が生じやすいとされています。

そこで、交通事故後の意識障害の有無と程度を審査することになります。

(2)急性期の脳内出血が画像で確認できるか

高次脳機能障害では、定期的にMRIなどの画像を撮影します。

そこで画像において、脳内出血を確認することになります。

(3)画像で脳室拡大、脳萎縮を確認できるか

高次脳機能障害の後遺症が残る場合には、事故後3ヶ月ほどで脳室拡大、脳萎縮が固定するとされています。

そこで画像により脳室拡大、脳萎縮を確認することになります。

(4)その他

その他、高次脳機能障害になると、日常生活に変化が現れますので、日常生活状況にどの程度の変化が現れたかを報告書で提出することになっています。

【参考情報】
2018年5月31日「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムの充実について」(報告書)

慰謝料を増額した裁判例

事案の概要

東京地裁平成22年10月27日判決(交通事故民事裁判例集43巻・5号・1336頁)

【死亡・後遺障害等級】
後遺障害等級1級1号

【損害額合計】
255,984,413円

【慰謝料額】
合計37,000,000円
後遺症慰謝料の本人分として、30,000,000円
被害者の妻に3,000,000円
被害者の子2人に各2,000,000円

【交通事故の概要】
平成19年10月12日午前3時02分頃、被害者が東京都墨田区内の青信号交差点を自動二輪車で直進中、加害者の乗用車が信号無視で進入してきて衝突した。被害者は、脳挫傷の傷害を負い、平成20年8月11日に症状固定しました。

被害者には、右片麻痺、右感覚障害、高次脳機能障害(脱抑制、記憶障害、失語、遂行機能障害、集中力低下、若年性認知症状態)、尿失禁ありなどの症状が残り、後遺障害等級表1級1号に認定されました。

被害者は、交通事故当時45歳の男性で、タクシー運転手です。

原告は、被害者の妻、被害者の長女、被害者の次女です。
原告らは弁護士に依頼し、弁護士が原告らの代理人として提訴しました。

判決のポイント

(慰謝料の相場 28,000,000円)

本件交通事故では、以下の事情から、合計で、37,000,000円の後遺症慰謝料を認めました。

①被害者の後遺障害による症状の程度が重いこと。
②被害者が一家の主柱であったこと。
③交通事故の原因が加害者の赤信号無視であり、被害者にまったく責任はないこと。

以上、交通事故で、右片麻痺、右感覚障害、高次脳機能障害、尿失禁などの後遺症により、後遺障害等級1級が認定された事案について、弁護士が解説しました。

高次脳機能障害等で後遺障害等級1級が認定された場合は、弁護士にご相談ください。

【参考記事】
【高次脳機能障害】交通事故の示談金増額事例を解説