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交通事故による左下腿の神経症状、外貌醜状で慰謝料が増額した裁判例

最終更新日 2021年 07月31日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

【動画解説】交通事故で外貌醜状になった場合の後遺障害等級と解決事例

神経障害による自賠責後遺障害等級認定

自賠責後遺障害等級

交通事故で傷害を受けて、治療を続けても、完全に治らず、後遺症が残ってしまう場合もあります。

骨折の場合には、関節の可動域が制限される機能障害や痛みやしびれなどの神経障害が残る場合があります。

後遺症が残った場合には、その後遺症の重さを測るため、自賠責後遺障害等級認定を受けることになります。

神経症状の後遺障害等級は12級13号または14級9号が認定されることになります。

12級13号は、自賠責後遺障害等級認定表では、「頑固な神経症状」とされており、障害が医学的に証明される場合に認定されます。

14級9号は、「局部に神経症状を残すもの」で、神経系統の障害が医学的に説明できる場合に認定されます。

判断の材料は、自覚症状・他覚所見・画像等によります。

自覚症状は自分で自覚している症状のことであり、他覚所見は、ジャクソンテストやスパーリングテストなどの神経学的検査を行い異常所見があるかどうかを判定します。

画像というのはレントゲンやMRI画像ということになります。

神経学的検査方法

末梢神経障害の有無を検査する方法には、以下のようなものがあります。

筋力検査

筋力を評価し、神経障害部位を診断します。

反射テスト

① 深部腱反射
深部腱反射とは、腱の打診により生じる不随意筋収縮です。

② 表在反射
表在反射とは、皮膚の刺激により生じる不随意筋収縮です。

③ 病的反射
病的反射とは、健常者には出現しない反射です。中枢神経系の障害により出現します。

ホフマン(Hoffman)反射は、中指を上から下にはじき、トレムナー(Trőmner)反射は、中指を下から上にはじくと、それぞれ他の指が反射的に屈曲する上肢の病的反射です。

ワルテンベルク(Wartenberg)徴候は、手指掌側をハンマーでたたくと手指が屈曲する上肢の病的反射です。

バビンスキー(babinski)徴候は、足底部の外縁を刺激すると、足指、特に親指がゆっくり背屈し、指が開く下肢の病的反射です。

④ クローヌス
クローヌス(clonus)とは、急激に連続して生じる筋収縮と弛緩の動きです。

神経根症状誘発テスト

① スパーリングテスト(Spurling test)
頭部を患側に傾斜・後屈して圧迫し軸圧を加えます。

② ジャクソンテスト(Jackson test)
ジャクソンテスト(Jackson head compression test)は、頭部を後屈して圧迫し軸圧を加えます。

胸郭出口症候群の誘発テスト

胸郭出口症候群とは腕神経叢と鎖骨下動脈及び鎖骨下静脈が胸郭出口付近で頚肋、鎖骨、第一肋骨等や前斜角筋、中斜角筋、小胸筋等が圧迫・牽引されることで起きる症状の総称です。

腰部神経の誘発テスト

①ラセーグテスト(Lasegure Test)
患者を仰臥位にし、股関節と膝関節を90度に屈曲させ、検者が膝を徐々に伸展させます。椎間板ヘルニア等、坐骨神経(L4、L5、S1、S2、S3の神経根)に圧迫や癒着がある場合、大腿後面から下腿後面に疼痛が生じます。

②下肢伸展挙上テスト(SLRテスト:Straight Leg Raising Test)
患者を仰臥位にし、下肢を伸展挙上させて、床面からどの程度上がるかによって判断します。正常の場合、70度程度まで足が上がりますが、坐骨神経に障害がある場合、大腿後面から下腿後面に疼痛が生じ、足を上げることができません。椎間板ヘルニア患者の場合、30度も上がらないこともあります。

③大腿神経伸長テスト(FNSテスト:Femoral Nerve Stretching Test)
患者を腹臥位にし、膝を90度に屈曲させ股関節を伸展するように持ち上げます。椎間板ヘルニア等、大腿神経(L2,L3,L4の神経根)に障害がある場合、大腿神経に沿った大腿前面に痛みが放散します。

筋電図検査

神経細胞より発した末梢あるいは中枢に伝導する活動電位を記録する検査です。神経細胞より発した活動電位を表面電極あるいは針電極を用いて記録して感覚神経や運動神経の伝導速度(神経を伝わる早さ)、神経や筋肉の機能を測ることができます。

神経伝導速度検査

2点の神経刺激によって得られた筋電位(M波)の潜時差と刺激間距離を図るもの(MCV)と、刺激による神経電位の潜時と、刺激点と記録点の距離から求めるもの(SCV)と2種類があります。

末梢神経障害があると伝導速度が低下する。

サーモグラフィ

対象物から出ている赤外線放射エネルギーを検出し、見かけの温度に変換して、温度分布を画像表示する装置です。

外貌醜状


醜状障害には、3種類があります。

外貌醜状とは、交通事故によって、頭部、顔面部、くび又は上肢・下肢の露出面などに、目立つほどの傷跡が残ってしまった場合に、後遺障害として評価するものです。

後遺障害等級認定の評価対象となる外貌の醜状とは「人目につく程度以上の大きさ」であることが必要とされます。

瘢痕、線状痕、組織陥没、色素沈着、ケロイドなどの種類があります。

外貌醜状が残ると、その後の対人関係に悪影響が出ることが予想されます。

そのため、職業選択において、接客業、モデル業その他で制限を受けることになります。

また、対人関係において精神的苦痛を感じることも容易に想像できます。

したがって、その分の損害も加害者に請求できることとされています。

2つめが、「上下肢の醜状障害」です。これは、上腕(肩関節以下)から指先まで、大腿(股関節以下)から足の背までの醜状障害です。

3つめは、「日常露出しない部位の醜状障害」です。これは、胸部、腹部、背部、臀部などの醜状障害です。

今回は、このうちの外貌醜状を取り上げます。

外貌醜状の自賠責後遺障害等級


外貌醜状の後遺症が残った場合には、自賠責後遺障害等級の認定を受けることになります。

外貌醜状で後遺障害の認定が受けられる等級は、次の3つです。

7級12号(外貌に著しい醜状を残すもの)

次のもののうち、人目に付く程度以上のものです。
①頭部については手のひら大(指の部分は含みません。以下同じ。)以上の瘢痕または頭蓋骨の手のひら大以上の欠損

②顔面については、鶏卵大面以上の瘢痕又は10円銅貨大以上の組織陥没

③頚部については、手のひら大以上の瘢痕

9級16号(外貌に相当程度の醜状を残すもの)

顔面部の長さ5センチメートル以上の線状痕で、人目に付く程度以上のものです。

12級14号(外貌に醜状を残すもの)

次のもののうち、人目に付く程度以上のものです。

①頭部については、鶏卵大面以上の瘢痕又は頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損

②顔面部については、10円銅貨大以上の瘢痕又は長さ3センチメートル以上の線状痕

③頚部については、鶏卵大面以上の瘢痕

自賠責の後遺障害認定は、原則として、労災補償の災害補償の障害認定基準に準拠すべきとされています。

【参考記事】
「外貌の醜状障害に関する障害等級認定基準について」厚生労働省

外貌醜状における逸失利益の問題点

後遺症が残った場合には、自賠責後遺障害等級認定を受けることになります。

この後遺障害等級によって、後遺症慰謝料や逸失利益などが計算されることになるためです。

逸失利益というのは、将来の減収の補償です。

後遺症により、仕事に支障が出ることになるので、収入が減る蓋然性が高い、という理由によります。

ところが、外貌醜状の後遺障害においては、加害者側から、「逸失利益はない」と主張されることも多いです。

その理由としては、外貌醜状は、手足切断や関節可動域制限などと異なり、運動機能の障害ではなく、労働に支障がない、というものです。

実際、過去の裁判例では、外貌醜状の逸失利益を否定したものも複数あります。

外貌醜状で逸失利益を認めた裁判例

外貌醜状であっても、外貌醜状の形態、程度、職業などによっては労働に支障が生じることもあります。

そこで、過去の裁判例で、外貌醜状で逸失利益を認めたものをご紹介します。

ちなみに、標準の労働能力喪失率は、7級で56%、9級で35%、12級で14%です。

(1)自賠責後遺障害等級7級の事例

(一)31歳女性の寿司職人が右顔面の変形・醜形の外貌醜状により、自賠責後遺障害等級7級が認定された事案において、他にも味覚低下、複視などもあることを考慮し、36年間56%の労働能力喪失を認めました(東京地裁平成6年12月27日判決)。

(二)25歳女性のアルバイトが、顔面の外貌醜状により、自賠責後遺障害等級7級が認定された事案において、アルバイトとはいえ接客業についていたことなどから、42年間30%の労働能力喪失を認めました(大阪地裁平成17年9月21日判決)。

(三)26歳女性の主婦が、オトガイ部瘢痕による外貌醜状により、自賠責後遺障害等級7級、歯牙損傷による14級の併合7級が認定された事案において、主婦とはいえ全く影響がないとはいえず、ひきつれによる違和感があることなどから、41年間16%の労働能力喪失を認めました(東京地裁平成22年8月31日判決)。

(2)自賠責後遺障害等級9級の事例

37歳女性の地方公共団体の嘱託職員で兼業主婦が、顔面に長さ5.6センチの線状痕及び1.6センチの線状痕の外貌醜状により自賠責後遺障害等級9級が認定された事案において、内容・程度に加え、性別・職種・心理的影響に照らし、29年間25%の労働能力喪失を認めました(神戸地裁平成28年10月26日判決)。

(3)自賠責後遺障害等級12級の事例

(一)29歳女性会社員が、顔面醜状による外貌醜状で自賠責後遺障害等級12級、下顎骨折に伴う左顎痛で12級12号、7歯欠損で12級3号の併合11級が認定された事案において、外貌醜状により接客や対人関係の障害による就労への影響があるとして、21年間20%の労働能力喪失を認めました(東京地裁平成13年8月7日判決)。

(二)12歳女性の小学生が、顔面線状痕及び陥没痕の外貌醜状により自賠責後遺障害等級12級が認定された事案において、今後の進路ないし職業の選択、就業等において不利な扱いを受ける蓋然性があるとして、49年間5%の労働能力喪失を認めました(名古屋地裁平成24年11月27日判決)。
逸失利益を否定されたら裁判を起こす。

以上にみたように、加害者側から、外貌醜状の逸失利益を否定されたとしても、裁判所により認められたケースは多数あります。

また、仮に逸失利益が認められなかったとしても、慰謝料を増額することにより斟酌する裁判例も多数あります。

したがって、外貌醜状の逸失利益を否定されたとしても、裁判を起こすことを検討することをおすすめします。

【参考記事】
交通事故裁判で得する人、損する人の違いとは

慰謝料を相場より増額した裁判例

事案の概要

長崎地裁大村支部平成17年10月28日判決(交通事故民事裁判例集38巻・5号・1493頁)

【後遺障害等級】
後遺障害等級併合7級

【損害額合計】
48,369,701円

【慰謝料額】
11,000,000円

事案

平成7年11月26日午後7時51分ころ、長崎県佐世保市内の交差点を、被害者が自転車で青信号で横断中、右折してきた加害者の普通乗用自動車に衝突しました。

被害者は、左下腿骨折、顔面外傷後瘢痕、知覚異常等の傷害を負い、左下腿骨折については平成11年6月22日、顔面外傷後瘢痕については平成13年6月18日に症状固定しました。

被害者の後遺障害は、左下腿の神経症状で14級10号、顔面外傷後瘢痕について外貌醜状で7級12号(鼻軟骨の欠損、知覚異常の神経症状を含む)、これらを併合して後遺障害等級併合7級に認定されました。

被害者は、交通事故当時22歳の女性で、海上自衛官(三等海曹)です。

被害者が弁護士に依頼し、弁護士が被害者の代理人として提訴。

判決のポイント

(相場の慰謝料額 10,000,000円

本件交通事故では、以下の事情から、11,000,000円の後遺症慰謝料を認めました。

①被害者には、後遺障害等級で認定された鼻から頬部にかけての約80mm、幅約2mmの白色脱色と線状痕のほかに、後遺障害の等級認定では触れられていない眉中央下から鼻中央へかけての長さ約20mmの傷痕と、左眉右側に長さ約30mmの傷痕が残っていること。

②被害者が海上自衛隊への入隊当初から強く希望していた乗船勤務が事実上不可能となっていること。

逸失利益を否定して慰謝料を増額した裁判例


上記裁判例の他にも、外貌醜状で慰謝料を相場の金額より増額した裁判例として、以下のものがあります。

大阪地裁平成19年7月17日判決(交民集40巻4号899頁)

23歳婦人服販売員の女性の交通事故です。

下顎部線に4mm×1mmの線状痕が残り、自賠責後遺障害等級12級15号が認定されました。

裁判所は、給与及び賞与が一貫して上昇傾向にあり、事故2年後には9%を超える昇給があること、醜状痕が就労及び収入に現実的に影響を与えたと認めることはできないとして、逸失利益を否定しました。

しかし、後遺症慰謝料において、上記後遺症、他の外貌醜状(左肩胛骨周囲及び臀部ないし腰部の挫創痕、外傷性刺青。自賠責非該当)も考慮し、12級の一般的な慰謝料額の290万円より30万円増額した320万円を認定しました。

大阪地裁平成20年12月16日判決(自保ジャーナル1797号)

症状固定時16歳の男性の交通事故です。定時制高校に通学しながら、派遣社員として工場員勤務をしていました。

自賠責後遺障害等級は、眉間上部の長さ約34mmの瘢痕拘縮(12級15号)、右足背部の長さ約34mmの瘢痕(14級5号)、右足指の可動域制限(11級9号)との併合10級が認定されました。

相場となる労働能力喪失率は、27%でしたが、裁判所は、醜状部分の労働能力喪失率を認めず、20%としました。

しかし、慰謝料が一般的な基準では傷害部分が180万円程度(入院約1.5カ月、総通院約7.5カ月)、後遺症部分が550万円の合計730万円程度のところ、傷害部分と後遺症部分をあわせて800万円と認定されています。

さいたま地裁平成22年6月25日判決(自保ジャーナル1836号)

5歳男児の交通事故です。

自賠責後遺障害等級は、顔面に3か所にわたり人目につく程度の線状痕で12級14号が認定されました。

裁判所は、具体的な線状痕については明らかではなく、これが改善されることも予想されること等の事情から、将来の労働能力に影響を与えるものと認めることはできないとして、逸失利益を否定しました。

しかし、慰謝料相場290万円のところ、440万円を認めました。

【参考記事】
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