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交通事故による右股関節・右膝関節・右足関節可動域制限で慰謝料が増額した裁判例

最終更新日 2021年 07月31日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

【動画解説】交通事故で骨折し、後遺障害が残った増額解決事例【弁護士解説】

交通事故解決までの道のり

今回は、交通事故による怪我で、関節可動域制限が残った事案において、慰謝料が相場より増額した裁判例をご紹介します。

その前に、交通事故の解決までの道のりを整理しておきます。

交通事故が発生すると、まず、警察を呼んで、現場検証を行います。

そこで、どのような事故であったのかについて、実況見分調書が作成されます。

この実況見分調書は、後の示談交渉において、加害者と被害者の過失割合を判定する上で重要な書類となります。

したがって、現場検証においては、必ず自分の記憶に基づいて警察に証言をすることが大切です。

警察の手続きと並行して、被害者は、怪我の治療を行うことになります。

ここでは、治療をしっかりと行うことが必要です。

仕事の都合や我慢できるからといって、通院を控えていると、怪我が大した事ではないと判断される可能性があります。

したがって必要な通院及び治療は必ずすることをおすすめします。

治療を継続していると、保険会社の担当者から、そろそろ治療終了してくださいと言われることがあります。

しかし、治療の必要性があるかどうかは、医学的判断なので、医師と相談しながら治療を継続するようにしましょう。

【参考記事】
交通事故の被害にあってしまった場合、すぐにやるべきことを教えてください。

症状固定

治療を継続している際に、医師から、そろそろ症状固定としましょうと言われることもあります。

症状固定というのは、治療を行っても、それ以上治療効果が上がらなくなる状態のことです。

そのような状態になったら、治療終了します。

そして、症状固定の時に、まだ完全に怪我が治らず、障害が残っていると、後遺症が残った、ということになります。

後遺症が残った場合には、将来も障害が残り続けるということになりますので、その後遺症の重さに応じて、損害賠償請求を加害者側にしていくことになります。

その後遺症の重さを測るための基準が、自賠責後遺障害等級認定という手続きとなります。

自賠責後遺障害等級

自賠責後遺障害等級は、後遺症の重さを測るための基準であり、1級から14級までに分類されています。

1級が1番重く、14級が1番軽い後遺症ということになります。

自賠責後遺障害等級認定を受けるには、被害者が直接手続きを行う方法である被害者請求と、任意保険会社に行ってもらう事前認定という手続きがあります。

被害者請求を行うと、示談交渉の前に一定の金額を先に受け取ることができることになります。

ただし被害者請求等事前にではそれぞれメリットデメリットもありますのでこの点については、よく検討してから行うようにしましょう。

また、後遺障害等級認定は、必ず正しい等級が認定されるわけではなく、間違った当局が認定される場合もあります。

その場合には、異議申し立てという手続きを行って、正しい等級認定し直してもらう必要があります。

ただし、ただ異議を述べれば良いというわけではなく、新しく医証を収集して提出するなど専門的知識が必要となってきます。

したがって、自分で行うよりは、交通事故に精通した弁護士に任せた方が望ましい結果になるといえます。

【参考記事】
【後遺障害等級認定】弁護士に依頼する時の注意ポイント6つ

交通事故における骨折とは

本稿では、交通事故により骨折の傷害を負い、上肢(肩、肘、手首)、下肢(股関節、膝、足首)の三大関節に可動域制限の後遺症が残った場合の解説をします。

交通事故により、骨に一瞬に強い外力が加わると、骨折をすることがあります。

骨折とは、外力によって、骨の連続性が断たれた状態をいいます。ひびが入ることもありますし、2つ以上に分かれてしまうこともあります。

骨片が3つ以上に分かれた骨折は、「粉砕骨折」といいます。

また、開放骨折とは創があり骨折部と外界が交通している骨折のことをいいます。

骨折すると強い痛みと腫れを生じ、骨折部とその周囲からの出血が皮下に広がり、数週間は、広範囲にあざができたり、変色したりします。

骨折の治療は、「整復」と「固定」とされています。できるだけ元通りにくっつけて固定しておく、ということです。

開放骨折の場合は、手術が必要となります。

交通事故で骨折した場合、骨折部に近い関節に可動域制限が生じたり、あるいは、神経症状が生じる場合があり、症状固定時に障害が残っていた場合には、後遺症が残った、ということになります。

【参考記事】
「骨折」公益社団法人日本整形外科学会

関節機能障害における後遺障害等級


交通事故で骨折などにより下肢の関節が、事故前のように動かなくなってしまう後遺症が残ってしまう場合があります。

この場合、下肢の関節の機能障害として、自賠責後遺障害等級の認定がなされます。

下肢における機能障害とは、下肢関節の用廃、もしくは可動域制限が生じている場合、または人工関節・人工骨頭をそう入置換した場合をいいます。

関節の可動域を測定するには、日本整形外科学会及び日本リハビリテーション医師会により決定された「関節可動域表示ならびに測定方法」に準拠して定めた「関節可動域の測定要領」にもとづき行われます。

【参考記事】
「関節可動域表示ならびに測定法」. 日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会(1995 年)

関節可動域制限の測定については、被害者自身が筋肉を作用させたときに生じる関節運動である自動運動ではなく、被害者自身の随意的努力ではなく、他人の手や器械の補助で可能な関節運動である他動運動で測定を行うのが原則です。

示談交渉のポイント

次に、示談交渉のポイントですが、適正な金額を獲得することが大切な事はいうまでもありません。

そのためには、まず、保険会社が、必ずしも適正な金額を提示してくれることわけではないということを認識しておく必要があります。

保険会社も利益を出さなければならず、そのためには、被害者に対する示談金を低く抑える必要があるためです。

そのため、裁判をして、判決で出される適正金額である裁判基準よりも低い任意保険基準という金額で示談金を提示してくることが多いです。

場合によっては、さらに低い最低保証限度額である自賠責基準で提示してくることさえあります。

自賠責基準で示談が成立すれば、保険会社は、示談金を払った後に、その金額を自賠責に請求して補填することができるため、保険会社の持ち出しがなくなるためです。

したがって、示談交渉を有利に進めるためには、損害賠償額の計算基準をしっかりと認識しておく必要があります。

しかし、被害者が損害賠償額を正確に計算することは難しいと思うため、可能であれば、弁護士に相談しながら進めていくことをお勧めします。

【参考記事】
交通事故の示談交渉で被害者が避けておきたい7つのこと

慰謝料増額事由

そして、交通事故の慰謝料には、相場というものがあります。

裁判所も、原則としては、相場金額に従って判決を出します。

この相場金額というのは、過去の多くの裁判例によって形成されてきたものです。

しかし、常に相場金額で判決が出されるわけではなく、相場より増額して慰謝料が認定される場合があります。

その事情のことを慰謝料増額事由といいます。

ただし、保険会社との交渉では、慰謝料が増額される事はほとんどありません。

慰謝料を相場より増額してもらうには、裁判を起こす必要があるということです。

したがって、慰謝料が増額する理由があるのではないかと思えるような場合には、弁護士に相談して、慰謝料総額事由があるという判断になったときは、迷わず裁判を起こすことをお勧めしたいと思います。

そのためには、交通事故に精通した弁護士に相談をすることも重要です。

【参考記事】
交通事故の慰謝料を相場金額以上に増額させる方法

可動域制限で慰謝料を相場より増額した裁判例

事案の概要

名古屋地裁平成18年12月13日判決(自動車保険ジャーナル・第1710号・17)

【後遺障害等級】
後遺障害等級併合9級

【損害額合計】
52,094,421円

【慰謝料額】
7,500,000円

【交通事故の概要】
平成13年8月5日午後7時05分ころ、愛知県春日井市内の交差点を被害者が自動二輪車で直進中、右折してきた加害者の普通乗用自動車に衝突しました。

被害者は、右下腿挫滅創、右股関節脱臼骨折、右踵骨骨折、右下腿開放性骨折、右足関節両果骨折等の傷害を負い、平成15年4月22日に症状固定しました。

被害者の後遺障害は、右股関節可動域制限・右膝関節可動域制限・右足関節可動域制限の後遺症が残りました。

自賠責後遺障害等級は、それぞれ12級7号、これらについて準用10級、右足関節変形で12級8号、右下肢短縮障害で13級9号、右下肢の醜状痕・植皮術後瘢痕で12級相当、これらすべてを併合して後遺障害等級併合9級に認定されました。

被害者は、交通事故当時56歳の男性で、有限会社の代表者です。

被害者が弁護士に依頼し、弁護士は被害者の代理人として提訴しました。

判決のポイント

相場の慰謝料額 6,900,000円

本件交通事故では、以下の事情から、7,500,000円の後遺症慰謝料を認めました。

①被害者の後遺障害等級9級相当であること、また、後遺障害の内容・程度はかなり重く、これにより特に歩行の際などには大きな支障が生じていることなど。

以上、交通事故で右股関節可動域制限などの後遺症により後遺障害等級併合8級が認定された事案を弁護士が解説しました。

後遺障害等級8級で慰謝料の増額が争いになった時は、弁護士に相談しましょう。