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交通事故で外貌醜状、下顎骨折、歯牙欠損で慰謝料増額した裁判例

最終更新日 2021年 07月31日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

【動画解説】交通事故で外貌醜状になった場合の後遺障害等級と解決事例。

醜状障害

醜状障害には、外貌醜状、上下肢の醜状障害、日常露出しない部位の醜状障害があります。

外貌醜状の外貌とは、頭部、顔面部、頚部など、上肢および下肢以外の日常露出する場所をいいます。

外貌醜状では、自賠責後遺障害等級7級、9級、12級が認定されます。

上下肢の醜状障害の上肢は、上腕(肩関節以下)から指先まで、下肢は、大腿(股関節以下)から足の背までをいいます。

上下肢の醜状障害では、12級相当が認定されます。

日常露出しない部位の醜状障害は、胸部、腹部、背部、臀部などです。

胸部及び腹部、又は背部及び臀部の全面積の4分の1程度以上の範囲に瘢痕を残すものには14級相当が認定され、2分の1以上の範囲に瘢痕を残すものには12級相当が認定されます。

外貌醜状は、後遺障害等級何級か

外貌醜状で認定される後遺障害等級としては、次のとおりとなります。

・7級12号(外貌に著しい醜状を残すもの)
・9級16号(外貌に相当程度の醜状を残すもの)
・12級14号(外貌に醜状を残すもの)

「外貌」とは、頭部、顔面部、頚部のように、上肢および下肢以外の日常露出する部分です。

7級12号「著しい醜状」

次のもののうち、人目に付く程度以上のもの
①頭部については手のひら大(指の部分は含みません。以下同じ。)以上の瘢痕または頭蓋骨の手のひら大以上の欠損
②顔面については、鶏卵大面以上の瘢痕又は10円銅貨大以上の組織陥没
③頚部については、手のひら大以上の瘢痕

9級16号の「相当程度の醜状」

顔面部の長さ5センチメートル以上の線状痕で、人目に付く程度以上のものを指します。

12級14号「醜状」

次のもののうち、人目に付く程度以上のもの。
①頭部については、鶏卵大面以上の瘢痕又は頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損
②顔面部については、10円銅貨大以上の瘢痕又は長さ3センチメートル以上の線状痕
③頚部については、鶏卵大面以上の瘢痕

瘢痕や線状痕が複数あって、それらが1個の瘢痕や線状痕と同程度以上の醜状と評価できるような場合は、それらの面積や長さを合算して等級の認定を行います。

認定手続では、損害調査事務所による面接調査が行われます。

自賠責の後遺障害認定は、原則として、労災補償の災害補償の障害認定基準に準拠すべきとされています。
【参考記事】
「外貌の醜状障害に関する障害等級認定基準について」厚生労働省

外貌醜状の場合の逸失利益

後遺症が残った場合には、障害のために、仕事に支障が生じ、将来の収入が減少することになります。

そこで、その収入の減少分を加害者に対して請求することになります。これを「逸失利益」といいます。

逸失利益の計算式は、(事故前年度の年収✕労働能力喪失率✕ライプニッツ係数)です。

ライプニッツ係数というのは、損害賠償金は将来の分を現時点で受け取るので、中間利息を差し引く、という考え方です。

ところが、外貌醜状の場合には、手足切断や関節可動域制限のように身体機能に障害が出るものではありません。

そこで、仕事への支障がないとして、加害者側からは、逸失利益の支払いを拒絶されることが多くなります。

しかし、過去の裁判例では、外貌醜状でも逸失利益を認めたものがあります。

(1)後遺障害等級7級の事例

ラウンジ風飲食店、鍋料理専門店を経営する52歳の女性の外貌醜状(7級)その他で後遺障害等級併合6級の事例において、17年間60%の労働能力喪失を認めました(大阪地裁平成22年3月15日判決)。

(2)後遺障害9級の事例

空港ラウンジで接客業に従事する契約社員である女性(33歳)が化粧をしても正面から見て右頬の9センチの線状痕が残り、自賠責後遺障害等級9級が認定された事例について、34年間35%の労働能力喪失を認めました(名古屋地裁平成26年5月28日判決)。

(3)12級の事例

2歳の女児の顔面の外貌醜状で12級14号が認定された事案について、18歳から67歳まで14%の労働能力喪失を認めました(福井地裁敦賀支部平成14年5月17日判決)。

外貌醜状で慰謝料を増額した裁判例

また、外貌醜状は仕事への影響はないとして、逸失利益を否定しつつ、後遺症慰謝料を増額する裁判例もあります。

(1)自賠責後遺障害等級7級の事例

30歳の専業主婦が顔面に外貌醜状の後遺症を残し、自賠責後遺障害等級7級が認定された事案について、慰謝料基準額1000万円のところ、1200万円の慰謝料を認めました(先代地裁平成7年2月6日判決)

(2)自賠責後遺障害等級9級の事例

顔面の外貌醜状の37歳男性会社員が自賠責後遺障害等級9級の認定がされた事案について、慰謝料基準額690万円のところ、慰謝料900万円を認めました(大阪地裁平成27年7月17日判決)。

(3)自賠責後遺障害等級12級の事例

41歳のクラブのママが顔面の外貌醜状で12級他併合12級が認定された事案について、慰謝料基準額290万円のところ、950万円を認めました(東京地裁平成3年9月27日判決)。

みらい総合法律事務所の解決事例

8歳男子の交通事故で、頭部裂傷、右上腕骨骨幹部骨折などのケガで外貌醜状が残った事例がありました。

自賠責後遺障害等級認定は、12級14号でした。

被害者の両親が保険会社と交渉したところ、示談金額は、308万1441円となりました。

被害者男子の両親が、みらい総合法律事務所の弁護士に示談交渉を依頼しましたが、保険会社は外貌醜状を理由として、逸失利益を拒否しました。

そこで、裁判を起こした結果、裁判所は、逸失利益を認め、当初提示額の約3倍超となる950万円で解決しました。

【参考記事】
みらい総合法律事務所の解決実績はこちら

歯牙障害の後遺障害等級

後遺障害等級

歯牙欠損などの歯牙障害の後遺障害が残る場合には、歯科補綴を加えたものとして等級が認定されます。

自賠責後遺障害等級では、以下のようになっています。

・第10級4号 14歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
・第11級4号 10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
・第12級3号 7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
・第13級5号 5歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
・第14級2号 3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

ここで、「歯科補綴を加えたもの」というのは、喪失又は欠損した歯牙に対して補綴を加えた場合をいいます。

歯牙障害の場合には、労働に影響がないとして、労働能力喪失の有無や程度が争点になりやすいです。

裁判例でも、労働能力の喪失を否定し、あるいは喪失率や喪失期間を制限するものがあります。ただし、この場合、慰謝料を増額することも多いので、裁判になった際は、慰謝料増額の主張を忘れないようにしなければなりません。

【参考記事】
「歯科補綴ってなに?」公益社団法人日本補綴歯科学会

歯牙障害で逸失利益が制限された裁判例

歯牙障害で逸失利益が制限された裁判例を紹介します。

15歳男子高校生の交通事故です。

歯牙障害の後遺障害で、自賠責後遺障害等級10級4号が認定されました。10級に対応する労働能力喪失率は、27%です。

裁判所は、歯科補綴によりある程度機能が回復するため、27%の労働能力喪失率を認めず、20%の限度で労働能力喪失率を認めました。

しかし、後遺症慰謝料について、10級の相場金額が550万円のところ、増額して795万円認めました。

外貌醜状と歯牙欠損等で慰謝料を増額した裁判例

事案の概要

東京地裁平成13年8月7日判決(交通事故民事裁判例集34巻・4号・1010頁)

【後遺障害等級】
後遺障害等級併合11級

【損害額合計】
25,203,071円

【慰謝料額】
5,000,000円

【交通事故の概要】
平成9年1月13日午前8時35分ころ、東京都台東区内の交差点を被害者が原付自転車で直進中、加害者の普通乗用自動車(無保険車)が赤信号を無視して進入してきて衝突しました。

被害者は、びまん性脳挫傷、右大腿骨骨折、顔面挫創、下顎骨骨折、全身打撲、歯牙欠損・歯冠破折等の傷害を負い、平成11年4月22日に症状固定しました。

被害者の後遺障害は、顔面挫創に伴う外貌醜状について12級14号、下顎骨折に伴う左顎痛の神経症状について12級12号、歯牙欠損について12級3号、これらを併合して後遺障害等級併合11級に認定されました。

被害者は、交通事故当時27歳の女性で、金融業勤務である。
被害者が弁護士に依頼し、弁護士が代理人として提訴。

判決のポイント

(相場の慰謝料額 4,200,000円)

本件交通事故では、以下の事情から、5,000,000円の後遺症慰謝料を認めました。

①被害者が、未婚女性として、本件後遺障害により、多大な苦痛や困難を受けることを考慮しました。

以上、未婚女性の外貌醜状等で慰謝料を増額した判例について、弁護士が解説しました。

外貌醜状等の慰謝料増額で争いになった時は、弁護士にご相談ください。