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交通事故で頸部痛と両膝の疼痛等による14級で慰謝料増額された裁判例

最終更新日 2021年 07月31日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

【動画解説】交通事故のむち打ち後遺障害(12級、14級)のポイントと増額事例

むち打ち(頸椎捻挫・腰椎捻挫)とは

交通事故で最も多い怪我が、むち打ち症と言われるものです。

ただし、むち打ち症は、医学用語ではありません。

診断書には、外傷性頸部症候群や頸椎捻挫、頚部痛などと記載されることが多いです。

むち打ちは、追突事故などをされた際に、首が鞭のようにしなることにで発生することからむち打ちという名前があった用いられます。

むち打ちは、発生した日には自覚症状がないことも多く、2 3日経った後に症状が出ることがあります。

したがって、追突事故などにより、首が鞭のようにしなった場合には、症状がなかったとしても、整形外科を受診することをおすすめします。

なぜなら、整形外科に通っていないと、症状がないものとみなされ、後日の示談交渉で不利になってしまう可能性があるためです。

むち打ちでは、主に次のような症状が出ます。

・首周りや腕の痛み
・首周りや腕指先の麻痺
・耳鳴り
・疲労感や倦怠感
・首周りや腕・指などのしびれ
・吐き気
・めまいや目のかすみ

むち打ちの治療としては、湿布を貼ったりして炎症を抑えることから始めます。

期間的には2~3ヶ月で治ることもあれば半年以上かかることもあります。

リハビリテーションとして、理学療法士や作業療法士にプログラムを組んでもらうこともあります。

【参考記事】
「外傷性頚部症候群」公益社団法人日本整形外科学会

頚部痛に対して行われる検査


頚部痛に対して行われる検査としては、まずは画像検査があります。

X線、CT、MRIなどです。特に、MRIが重要となります。

次に、各種神経学的検査があります。

神経学的検査には、主に、以下のようなものがあります。

(頸部)
・ジャクソンテスト
・スパーリングテスト
・反射テスト
・徒手筋力テスト
・イートンテスト
・アドソンテスト
・モーレイテスト
・ルーステスト
・ライトテスト
・エデンテスト

(参考記事)公益社団法人日本整形外科学会「むち打ち症」

むち打ちで請求できる損害とは

交通事故でむち打ちになった場合に請求できる損害の内容としては次のようなものがあります。

・治療費
・通院交通費
・休業損害
・入通院慰謝料

治療費は、治療にかかった費用として請求します。

保険会社が病院に直接払うケースが多いといえます。

通院交通費については通院するにかかった交通費で電車代・バス代・自家用車の場合のガソリン代等を請求することになります。

休業損害は治療のために仕事を休んだことで収入が減った場合の補償ということになります。

専業主婦も休業損害を請求することができます。

入通院慰謝料については怪我を負ったことによる精神的苦痛に対する補償ということになります。

入院した日数や通院した日数で計算することになります。

もし、治療継続しても、後遺症が残ってしまった場合には、別途次のような請求をすることができます。

むち打ち症の後遺症が残った場合には、その後、痛みやしびれが続くことになりますので、その分精神的苦痛が大きいといえます。

したがって後遺症慰謝料を請求することができます。

また、後遺症によって将来の収入が減ることが予想されるため、得られるはずだった収入を請求することができます。

これを逸失利益といいます。

むち打ちの後遺障害等級

むち打ちで後遺症が残った場合の自賠責後遺障害等級認定としては、12級13号か14級9号が認定されることになります。

12級13号は、症状を医学的に証明できる場合に認定されます。

14級9号は、症状を医学的に推定できる場合認定されます。

認定の方法としては、自覚症状と、各種検査による他覚所見とMRI画像等によって判定されることになります。

自覚症状・他覚所見・画像所見のそれぞれが、医学的に整合していることが必要になります。

後遺症慰謝料と逸失利益は、後遺障害等級に応じて計算されることになります。

後遺症慰謝料については、12級の場合には290万円、14級の場合には110万円と決まっています。

したがって後遺障害等級が正しく認定されることが必要となってくるため、後遺障害等級が認定された場合には、交通事故の交通事故に精通した弁護士にその等級が正しいかどうかを判定してもらうことをお勧めしたいと思います。

【参考記事】
むちうちの後遺障害(12級、14級)の慰謝料額と増額事例

頚部痛の労働能力喪失期間

神経障害では労働能力喪失期間が制限されることが多い

治療の甲斐なく、症状固定後も頚部痛や疼痛などの神経障害が残る場合、後遺症が残ったことになります。

後遺症が残った場合には、その後も痛みなどによる精神的苦痛が続くので、後遺症部分の慰謝料が発生します。

また、労働などにも影響があるため、逸失利益を請求できます。

多くの場合、後遺障害が生涯にわたり続くため、就労可能な期間にわたり労働能力が喪失するものとして逸失利益を計算します。

しかし、頚部痛や疼痛などの神経障害の後遺障害では67歳まで認められるケースは少ないです。

多くの裁判例では、12級13号の場合は5年から10年程度で、14級9号では5年以下に労働能力喪失期間が制限されています。

神経障害は上記の期間が経過すれば治癒していくことが一般的であるという医学的判断を理由としています。

ただし、過去の裁判例では、上記期間より長期の労働能力喪失期間を認めたものもあります。

なお、任意保険会社との示談交渉では、14級9号における労働能力喪失期間を2~3年として和解案が提示されることも多いので、注意が必要です。

長期の労働能力喪失期間を認めた裁判例

大阪地裁平成18年7月14日(交民39巻4号972頁)
症状固定時31歳の男性の交通事故です。

自賠責後遺障害等級は、14級10号が認定されました。

裁判所は、労働能力喪失率を基準どおり5%と認定した上で、労働能力喪失期間の相場としては5年程度のところ、10年間と認めました。

理由としては、以下のとおりです。

原告は初診時から左下腿の感覚異常を訴えていること、原告の後遺障害は腓骨神経麻痺で、左膝下の感覚に異常があり、運動筋力が0と診断されているが、筋電図の検査によっても異常は認められず、左下腿の筋萎縮の所見も表われておらず、主治医も原因については不明と判断していること、頚椎捻挫及び腰部打撲の傷害を負い、症状固定時にも頚部痛と腰痛とを訴えていることが認められるところ、これらの事実によれば、左下腿感覚異常、頚部痛及び腰痛について、それぞれ、局部に神経症状を残すものとして14級の後遺障害を負ったものと解するのが相当である。

したがって、原告は本件事故で負った後遺障害により労働能力を5%喪失したと解するのが相当であるが、左下腿の自動運動ができないという状態に鑑みれば、喪失期間は10年と認めるのが相当である。

神経症状で相場以上の逸失利益が認定された事例

神経症状の後遺症が残った場合に認定される自賠責後遺障害等級等級は、12級13号か14級9号です。

この場合の逸失利益の計算の基礎となる労働能力喪失率は、12級で14%、14級で5%です。

しかし、事案によっては、相場以上の労働能力喪失率が認められるケースがありますので、過去のの裁判例をご紹介します。

(1)33歳女性のピアノ講師が、頸椎捻挫、頸椎不安定症、右上肢のしびれの神経症状で自賠責後遺障害等級14級が認定された事案において、後遺障害の部位、程度、等級、職業、性別、年齢等を考慮して、相場では労働能力喪失率5%のところ、34年間10%の労働能力喪失を認めました(神戸地裁平成12年11月20日判決)。
(2)38歳男性の石工が、頭部、頚部、左上肢、左手の痛み、しびれ等の神経症状で自賠責後遺障害等級14級が認定された事案において、職業とその仕事遂行上の特殊性、後遺障害の部位、収入の激減状況を総合して、相場では労働能力喪失率5%のところ、5年間10%の労働能力喪失率を認めました(東京地裁平成13年8月29日判決)。
(3)33歳男性会社員が、腰部、臀部、大腿部付近の神経症状で自賠責後遺障害等級14級が認定された事案において、当該神経症状は12級及び頚部痛14級と認定し、身体の離れた異なる部位の神経症状が並存して競合しており、稼働能力が著しく制約される可能性が高いとして、14級であれば、相場では労働能力喪失率5%のところ、12年間20%の労働能力喪失率を認めました(東京地裁平成14年1月29日)。

みらい総合法律事務所の解決事例

では、みらい総合法律事務所において、実際に解決した事例をご紹介します。

43歳女性が、交通事故により、頸椎捻挫等の傷害を負いました。

治療をしましたが、神経症状の後遺症が残り、自賠責後遺障害等級併合14級が認定されました。

被害者が保険会社と交渉したところ、114万3903円になりました。

被害者がみらい総合法律事務所の弁護士に相談したところ、低すぎると意見をもらったので、示談交渉を依頼。

弁護士による交渉で、最終的に430万円での示談解決となりました。

保険会社提示額の約3.7倍にまで増額したことになります。

【参考記事】
みらい総合法律事務所の解決実績はこちら

頚部痛と疼痛で慰謝料を相場より増額した裁判例

事案の概要

東京地裁 平成16年2月27日判決(交通事故民事裁判例集37巻・1号・240頁)

【後遺障害等級】
後遺障害等級併合14級

【損害額合計】
9,246,651円

【慰謝料額】
2,500,000円

【交通事故の概要】
平成7年9月14日午後2時10分ころ、東京都千代田区内を被害者が自転車で進行中、前方で加害者のタクシーが停車し、乗客を降ろすため後部ドアを開けたため被害者に衝突し、被害者が転倒しました。

被害者は、頸椎捻挫、右膝外側側副靱帯損傷、左膝及び右下腿挫傷の傷害を負い、平成9年9月3日に症状固定しました。被害者の後遺障害は、頸部痛等の神経症状について14級10号、両膝の疼痛等の神経症状について14級10号、これらを併合して後遺障害等級併合14級に認定されました。

被害者は、交通事故当時31歳の男性で、会社員です。
被害者は弁護士に依頼し、弁護士は代理人として提訴。

判決のポイント

相場の慰謝料額 1,100,000円

本件交通事故では、以下の事情から、2,500,000円の後遺症慰謝料を認めました。

①被害者が、本件交通事故後、勤務先の会社から勤務形態の変更という温情ある処遇を受けたが、かえって、上記処遇は他の社員に負担をかけ、また、人件費等を増加させるなどの問題を生じさせるものとなり、このような状況の下、被害者が後遺障害による体調不良を理由に休暇を申し出たことで、社内の不満・反発を招き、結局は依願退職を余儀なくされたという事情があり、本件交通事故が退職に原因を与えたことは否定できないこと。

②本件交通事故は、加害者が左後方の安全確認を怠ってドアを開けたことにより生じたものであり、被害者に落ち度は見当たらないこと。

③被害者は、症状固定後も整骨院等に通っているのであり、施術費等を自己負担をしてでも施術等を受けて疼痛を軽快させたいと思う程度の症状に苛まれていたと認められること。

④加害者のタクシー会社の担当者の被害者に対する本件交通事故後の対応が誠実さを欠いたものであったこと。

以上、交通事故により頚部痛等の神経症状の後遺症が残った事案で、慰謝料を増額した判例を、弁護士が解説しました。

神経症状の後遺症で慰謝料増額が争いになった時は、弁護士にご相談ください。