未熟運転で危険運転致死罪が初適用!


無免許で、運転技術が未熟であるにも関わらず、自動車を運転して交通死亡事故を起こした少年に対し、危険運転致死罪(未熟運転容疑)が初適用という報道がありました。

今回は、未熟な運転技術と無免許、そして危険運転致死傷罪の関係について解説します。

「未熟運転容疑で全国初の起訴へ 尼崎・死亡ひき逃げ事件」(2015年10月7日 神戸新聞)

大阪地検は、死亡ひき逃げ事故を起こし、自動車運転処罰法違反(危険運転致死)などの罪で検察官送致(逆送)された大阪府豊中市の少年(16)について、危険運転致死罪の一種である「未熟運転致死罪」で起訴する方針を固めたようです。
起訴理由は、「車を制御する技術がないのに走行した」としています。

事件が起きたのは8月13日。
場所は尼崎市の市道。

少年は無免許でワンボックス車を運転中、左折しようとしたが曲がりきれずに急ハンドルを切り、自転車に乗っていた男性(当時80歳)をはね、そのまま50メートル引きずりフェンスに衝突。

事故後、現場から乗用車を乗り捨てて逃走したものの、現場から南東約1キロの路上を歩いているところを兵庫県警に逮捕され、その後、神戸家裁を経て大阪地検に逆送されていたようです。

少年は県警の調べに対し、「ワンボックス車のような大きな車は運転したことがなかった」と説明。
大阪地検は、少年の運転技術は極めて未熟だったと判断したものとみられます。

同罪で起訴されれば、2014年5月の同法施行後、全国初となるとしています。
今回の事故は、別の報道の情報も併せると、①無免許の過失運転致死容疑で兵庫県警が逮捕⇒②家庭裁判所で少年審判⇒③大阪地検に検察官送致(逆送)⇒④危険運転致死罪(未熟運転)で起訴、という流れになっています。

順を追って見ていきます。

①無免許の過失運転致死傷罪とは?
2014年5月に、「自動車運転死傷行為処罰法」が施行されました。

これは、2012年に京都府亀岡市で起きた無免許運転による登校中の児童の死傷事故など、無免許、飲酒運転等による重大で悪質な危険運転への罰則を強化するためのものです。

詳しい解説はこちら⇒
「自動車運転死傷行為処罰法の弁護士解説(1)」
http://taniharamakoto.com/archives/1234

同法は、それまで「刑法」に規定されてきた、「危険運転致死傷罪」と「自動車運転過失致死傷罪」を抜き出し、新しい類型の犯罪を加え、さらには、それら事故の際、加害者が無免許だった場合に刑を重くするというもので、以下のように構成されています。

・「危険運転致死傷罪」
・「過失運転致死傷罪」
・「準危険運転致死傷罪」
・「過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪」
・「無免許運転による加重」

詳しい解説はこちら⇒
「自動車運転死傷行為処罰法の弁護士解説(2)」
http://taniharamakoto.com/archives/1236

無免許運転による罪が加重されると、最高刑は次のようになります。

・危険運転致傷罪(懲役15年)+無免許→懲役20年
・アルコール等で不覚にも運転困難に至って事故を起こした罪(懲役15年)+無免許→懲役20年
・アルコール等影響発覚免脱罪(懲役12年)+無免許→懲役15年
・過失運転致死傷罪(旧自動車運転過失致死傷罪)(懲役7年)+無免許→懲役10年
②家庭裁判所での少年審判とは?
「少年法」により、加害者が未成年で14歳以上20歳未満の場合、「犯罪少年」(女子も含む)となり家庭裁判所で「少年審判」が行われます。

なお、「刑法」第41条では、「14歳に満たない者の行為は、罰しない。」と規定しており、14歳未満の場合は「触法少年」といいます。
③地検に検察官送致(逆送)とは?
少年審判の結果、犯罪が悪質で刑事処分が相当と認められた場合は、管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致(逆送)されます。(「少年法」第20条1項)

ただし、検察官送致は16歳以上に限られます。
④危険運転致死罪(未熟運転)とは?
さて報道では、今回の起訴での罪名は「未熟運転致死罪」としていますが、このブログの読者にも馴染みのない罪名かもしれません。
というのも、法律上、未熟運転致死罪という罪名はないからです。

これは、具体的には危険運転致死傷罪の構成要件である「進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為」(「自動車運転死傷行為処罰法」第2条3項)のことです。

「進行を制御する技能を有しない」とは、ハンドルやブレーキなどを操作する初歩的な技能すら有しない場合が想定されています。

なお、別の報道では大阪地検が、少年が事故当日に「初めて自動車運転をした」ことを重視、としていることから、今回は同法施行後初の適用となったと考えられます。

ところで、ここでひとつ注意しなければいけないことがあります。
それは、「進行を制御する技能を有しない」=「無免許運転」ではない、ということです。

たとえ無免許であっても、普段運転を繰り返していることで運転技術がある場合は、危険運転致死傷罪は適用されません。
そのため、上記①のように悪質な無免許運転による事故には「無免許運転による加重」として、刑が重くなるようになっているのです。

逆に言えば、それだけ危険運転致死傷罪を適用するのは難しい、ということです。

くれぐれも無免許のお子様に運転をしないよう親が教育しておくことが必要ですね。