交通事故の加害者の刑事手続はどのようになるのか?
交通事故で被害者を怪我させた場合には、犯罪が成立します。
そこで、加害者には、刑事手続が進行することになります。
そこで、本稿では、加害者の刑事手続について解説します。
目次
交通事故の3つの責任
・民事上の責任
・刑事上の責任
交通事故を起こした場合、加害者には、行政上の責任、民事上の責任、刑事上の責任の3つの責任が発生することになります。それぞれは別々の制度のため、たとえば、刑事処分を受けたから民事上の責任を免れる、ということはありません。
交通事故の行政上の責任とは、免許の停止や取消しの処分です。
交通事故の民事上の責任とは、自動車損害賠償保障法に基づく運行供用者責任(自動車損害賠償保障法3条)、民法に基づく不法行為責任(民法709条)、使用者責任(民法715条)などの責任をいいます。
刑事上の責任とは、道路交通法違反(信号無視、スピード違反、無免許運転などの違反をした場合)、過失致死傷罪(交通事故で他人に怪我を負わせた場合あるいは死亡させた場合)、危険運転致死傷罪(自動車運転過失致死傷罪の中でも特に悪質な交通事故の場合)があります。刑事罰には、罰金刑、禁固刑、懲役刑があります。
刑事事件のプロセス
加害者の刑事事件は、次のようなプロセスを辿ります。
- 交通事故の発生
- 実況見分調書の作成
- 警察による取り調べ
- 検察庁での取り調べ
- 検察官による、不起訴の判断
- 起訴の場合には、略式裁判が正式裁判
1.交通事故の発生
交通事故が発生し、怪我をした人がいる場合には、運転者は、直ちに運転を止めて、負傷者を救護しなければなりません。道路交通法で義務づけられています。
ここで救護しないで逃げると、いわゆる「ひき逃げ」ということになります。
また、事故車両を安全な場所に移動させて、道路上の危険防止の措置を取らなければなりません。
そして警察に通報する必要があります。
2.実況見分調書の作成
警察が現場に到着すると、交通事故がどのように起こったのかを調べるため、実況見分調書の作成に入ります。
この実況見分調書は、事故の状況を明らかにする公的な書類であるため、後日示談交渉の際に、加害者と被害者の過失割合を判断する資料ともなる重要な書類です。
したがって、実況見分調書を作成する場合には、必ず記憶に基づいて正確に証言をする必要があります。
ときには、警察官が自分の推測に基づいて事故の状況について誘導的に質問する場合がありますが、その誘導に乗って不利な事故の状況が実況見分調書で作成されてしまうと後で覆すのが大変難しくなります。
この点注意しておいていただきたいと思います。
そして、後日の示談交渉において、過失で争いになる場合には、検察庁に請求して、実況見分調書や、刑事記録を取り寄せることになります。
3.警察による取り調べ
交通事故で、被害者を怪我をさせた場合には、刑事事件になります。
場合によっては、逮捕される場合もあります。
その上で、警察により加害者の取り調べが行われます。
逮捕されて捜査が行われる場合を、身柄事件といい、逮捕されない事件の場合を在宅事件や在宅捜査といいます。
在宅事件であっても、警察や検察の捜査に協力する必要があります。
協力しないと、証拠隠滅のおそれがあるとして、逮捕される可能性もあるので、気をつけましょう。
4.検察による取り調べ
警察の取り調べが終わると、事件が検察庁に装置され、検察庁による取り調べが行われます。
5.検察官による起訴、不起訴の判断
検察庁による取り調べが終了すると、検察官は、起訴するか、不起訴にするかを判断します。
6.略式裁判が正式裁判
検察官が加害者を起訴する場合には、略式裁判が正式裁判かを決めます。
正式裁判というのは、通常の刑事裁判手続というものであり、法廷で行われます。
略式裁判というのは、正式裁判を経ずに、一定額の罰金又は科料を科す裁判となります。
刑事裁判手続き
正式裁判では、加害者が有罪か無罪か、有罪の場合にはどの程度の刑罰を科すかについて心理がなされます。
正式裁判については、起訴されてから、1ヵ月半程度で開かれるケースが多いといえます。
そして、加害者が、罪を認めている場合には、1回で診療終了し、2回目の期日に判決が下されることになります。
刑事裁判は、まず冒頭手続きという手続きが行われます。
冒頭手続というのは、加害者を特定するための手続きを行い、検察官が起訴状を朗読し、裁判官から、加害者に対して、黙秘権の告知があり、その上で、加害者が罪を認めるかどうかをという罪状認否の手続きが行われます。
その後弁護人も、意見を述べ、その後で証拠調べ手続きが行われます。
証拠調べ手続きは、まず検察官が立証活動を行い、その後、弁護側が立証活動を行います。
双方が立証活動を終えると、最後に検察官が論告求刑を行い、弁護人が最終弁論を行います。
そして最後に、被告人が最終意見陳述を行って結審となります。
【参考記事】
「刑事事件」裁判所ホームページ
刑罰について
略式裁判の場合には、一定額の罰金を支払うことになります。
正式裁判になる場合には、禁固刑か懲役刑になるのが一般的です。
禁固刑というのは刑務所に入りますが、労働は強制されません。
懲役刑というのは、刑務所に入れられた上、労働を強制されることになります。
懲役刑または禁固刑の判決でなった上で、執行猶予のを言い渡されることがあります、執行猶予というのは、刑罰の執行猶予し、一定期間を経過すれば、言い渡された懲役刑や禁固刑が消滅するということになります。
懲役刑や禁固刑が消滅するという事は、刑務所に入らなくて良いということになります。
【参考記事】
「裁判の執行等について」検察庁ホームページ