交通事故の慰謝料を網羅的に解説
交通事故の慰謝料とは、交通事故で被害を受けた被害者等の精神的損害の賠償金です。慰謝料には、本人分で3種類、近親者で1種類あり、以下が慰謝料の相場の早見表です。
①入通院慰謝料 | 通院1ヶ月~15ヶ月で28万円~164万円 |
---|---|
②後遺障害慰謝料 | 110万円~2800万円 |
③死亡慰謝料 | 2000万円~2800万円 |
④近親者慰謝料 | 被害者の慰謝料額の10~30%程度 |
そして、慰謝料の計算基準には、
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 弁護士(裁判)基準
の3つがあります。
弁護士基準が最も適正で高額な計算方法です。
自賠責保険に請求できる慰謝料の金額は、入通院慰謝料が日額4,300円、後遺障害慰謝料が32万円~1,850万円、死亡慰謝料が400万円~1,350万円です。
但し、慰謝料は、被害者が加害者に請求できる損害賠償金総額の一部であることも憶えておきましょう。
慰謝料について示談が成立した場合には、多くの場合、2週間程度で慰謝料を含めた示談金が振り込まれます。
慰謝料には一応の相場がありますが、実際には様々な要素を検討して決定されます。
この記事では、交通事故の慰謝料の計算方法と相場、そして、慰謝料が相場より増減額する場合などについて、一つ一つ丁寧に説明していきます。また、私達が経験した実際の解決事例もご紹介します。
この記事を最後まで読んでいただき、あなたが適切かつ高額の慰謝料を獲得できることを願っています。
目次
もらえる慰謝料の金額
交通事故の慰謝料には、3つの計算方法があります。
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 弁護士(裁判)基準
このうち、弁護士基準が最も高額で適正な金額となります。
交通事故の被害者は、弁護士基準によって慰謝料を計算して請求していく必要があります。
順番に説明していきます。
自賠責基準の慰謝料早見表
自動車を運転する者には法律により自賠責保険に加入することが義務付けられています。
そのため、まず交通事故の被害者には加害者が加入している自賠責保険から損害賠償金が支払われることになります。
その際の基準がこの自賠責基準であり、必要最低限の金額になります。
自賠責保険ではカバーしきれない部分、つまり足りない分の損害賠償が発生する場合は、加害者が加入している任意保険から支払われます。
傷害(入通院)慰謝料
自賠責基準における入通院慰謝料は日額が定められています。
計算式は、以下のようになります。
「対象日数」は、次のうち短い方を採用します。
・治療期間
・実際に治療した日数×2
但し、2020年 3月31日より前の交通事故の場合は、1日あたり4200円で計算します。
また、自賠責保険が負担する損害賠償の上限が定められており、傷害部分については、120万円とされています。
自賠責後遺障害保険金の早見表
後遺障害に関する保障も、自賠責保険には支払限度があり、被害者が死亡した場合は3000万円、後遺障害が残ってしまい、介護が必要な場合は4000万~3000万円。
その他の後遺障害の場合は、 1級から14級の後遺障害等級に応じて3000万円~75万円の金額が支払われることになります。
自賠責法別表第1
第1級 | 4000万円 |
---|---|
第2級 | 3000万円 |
自賠責法別表第2
第1級 | 3000万円 |
---|---|
第2級 | 2690万円 |
第3級 | 2219万円 |
第4級 | 1889万円 |
第5級 | 1574万円 |
第6級 | 1296万円 |
第7級 | 1051万円 |
第8級 | 819万円 |
第9級 | 616万円 |
第10級 | 461万円 |
第11級 | 331万円 |
第12級 | 224万円 |
第13級 | 139万円 |
第14級 | 75万円 |
自賠責保険の詳しい支払い基準については、国土交通省のホームページをご参照ください。
参考記事:国土交通省「自賠責保険(共済)の限度額と保障内容」
任意保険基準
加害者側の任意保険会社が損害賠償額を算定するときに使う保険会社の内部基準です。
内部的な基準なので、明確な基準が公表されているわけではありません。
金額は自賠責基準と弁護士基準(裁判基準)の間で設定されています。
被害者に後遺障害が残った場合、保険会社はそれぞれの社内内部基準によって算出した損害賠償金を提示してきます。
弁護士基準(裁判基準)
実際の交通事故の裁判の事例から導き出された損害賠償金の基準です。
法的根拠がもとになっているため、裁判をした場合に認められる可能性が高いのがこの基準による金額になります。
弁護士など法律関係者が使う書籍「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称「赤い本」)の【最新版】に金額が記載されています。
裁判所や弁護士は、この赤い本を参考に損害賠償額を算定していきます。
自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の中で最も高額になる計算方法なので、被害者としては、この弁護士基準で計算した慰謝料を請求すべき、ということになります。
参考記事:【弁護士基準】交通事故の慰謝料をできるだけ高額で示談する方法とは?
傷害(入通院)慰謝料の早見表
「傷害慰謝料」とは、交通事故によりケガ(傷害)をしたことに対する肉体的、精神的苦痛を慰謝するために支払われる損害賠償金です。
交通事故の弁護士基準による損害賠償実務では、傷害慰謝料は、原則として入通院機関を基礎として、「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(日弁連交通事故相談センター東京支部編)に掲載されている計算表に基づいて計算をしています。
参考記事:【参照】公益財団法人日弁連交通事故相談センター「当センターの刊行物について(青本及び赤い本)」
では、具体的に傷害慰謝料の計算方法を説明します。
(1)むち打ち症で他覚所見がない場合
むち打ち症で他覚所見がない場合、軽い打撲、軽い挫創などの場合は、入通院期間を基礎として下記の表に当てはめて慰謝料を計算します。
通院が長期にわたる場合は、症状、治療内容、通院頻度をふまえて実通院日数の3倍程度を通院期間の目安として計算します。
【弁護士(裁判)基準による入通院慰謝料(むち打ちなど軽傷)の算定表】
(2)(1)以外の場合には、下記の表に当てはめて慰謝料を計算します。
但し、通院が長期にわたる場合は、症状、治療内容、通院頻度をふまえて、実通院日数の3.5倍程度を慰謝料算定のための通院期間のめやすにする場合もあります。
また、傷害の部位、程度によっては、慰謝料額を20~30%増額する場合もあります。
【弁護士(裁判)基準による入通院慰謝料(重傷)の算定表】
- 軽傷と重傷に分かれていますので症状に合わせてご使用ください。
- 入院月数を上の欄から、通院月数を左の欄からお選びください
- 選択した両者が交差する欄の金額が弁護士基準による慰謝料です。
- 入院のみの方は、上の欄の月数の直ぐ下の金額が、入院期間に該当する慰謝料となります。
- 通院のみの方は、左の欄の月数のすぐ右の欄の金額が、通院期間に該当する慰謝料となります。
- たとえば通院期間60日で実通院日数が30日の場合、入通院慰謝料の基準額は、むち打ちなどの軽症で19万円。重傷の場合28万円となります。
死亡慰謝料の早見表
「死亡慰謝料」とは、交通事故により被害者が死亡したことで被った精神的損害に対して支払われるものです。
受取人は、配偶者や子などの相続人です。
被害者本人が死亡の瞬間に慰謝料請求権を取得し、それが相続により相続人に承継されると考えられています。
死亡事故の場合に、ご家族のうち、どのような割合で慰謝料をもらえるのかについて、もっと詳しく知りたい場合は、以下の記事を参考にしてください。
参考記事:【交通死亡事故の相続】被害者の親族で誰が慰謝料受け取ることができるのかを解説
弁護士基準による死亡慰謝料は、被害者の立場や置かれている状況などによって金額が異なってきますが、概ねの相場金額は次のようになっています。
一家の支柱の場合 | 2800万円 |
---|---|
母親・配偶者の場合 | 2500万円 |
その他の方の場合 | 2000万~2500万円 |
ここで、「一家」とは、被害者が扶養義務を負っており、かつ、現実に扶養義務を果たしている親族をいいます。
また、「支柱」とは、被害者がその世帯の経済的支柱であったことをいいます。
同一世帯でなくても、扶養している親族がいる場合は、一家の支柱と扱われる場合があります。(名古屋地判平成26年12月19日判決等)
「母親、配偶者」は、世帯の経済支柱ではないものの、世帯の中で家事の中心を担ったり、子を養育しているような者であり、女性に限定されず、男性でも「母親、配偶者」に該当する場合があります。
共働き夫婦の場合には、それぞれの収入額や家計への貢献度、家事の分担割合などを勘案して「一家の支柱」と「母親、配偶者」の相場金額の間で慰謝料額を定めることになります。
「その他」というのは、一家の支柱、母親・配偶者以外の者であり、独身者や子供、高齢者などの場合です。
なお、死亡慰謝料の相場は、時代によって徐々に増額されており、以下のような変遷があります。
一家の支柱 | 母親、配偶者 | その他 | |
---|---|---|---|
平成6年~13年 | 2600万円 | 2200万円 | 2000万円 |
平成14年~平成27年 | 2800万円 | 2400万円 | 2000万円~2200万円 |
平成28年~ | 2800万円 | 2500万円 | 2000万円~2500万円 |
*スワイプすると表の全て見ることができます。
後遺障害慰謝料の早見表
「後遺障害慰謝料」とは、交通事故で後遺障害が残った場合に精神的に被った苦痛に対して償われるものです。
精神的な苦痛の程度というのは、本来は事故ごと、被害者ごとに違うものですが、それぞれの事案によって判断するのは難しいため、大体の相場金額が決まっています。
【弁護士基準による後遺障害慰謝料の相場金額】
等級 | 保険金額 |
---|---|
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
あくまで相場の金額ですから、もちろん金額がアップする場合があります。
これらについても、前掲の「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部)に基づいています。
このように、慰謝料はひとつではないので、加害者側の保険会社から損害賠償金の提示があった場合、何も知らない被害者は、どの慰謝料がいくら提示されているのか正確にわからないということがあります。
そうした場合、安易に示談をしたために被害者が損をしてしまうというケースもあります。
ですから、まずはご自身が請求できる慰謝料の種類や相場の金額を知ることは大切なのです。
入通院慰謝料と後遺障害慰謝料について、もっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
慰謝料自動計算機(交通事故慰謝料計算シート)で簡単シミュレーション
みらい総合法律事務所では、過去の判例や実務の動向を研究し、交通事故の被害者が自分で簡単に慰謝料額を計算できる慰謝料自動計算機のプログラムを開発して設置しています。
交通事故の被害者が自分の知識で慰謝料額を計算するのは困難です。
そこで、慰謝料自動計算ツールで慰謝料額を計算してみて、だいたいの感覚をつかんでいただければと思います。
また、すでに示談金が提示されている場合に、慰謝料自動計算機で計算した金額より低い場合は、交通事故に強い弁護士に相談してみることをおすすめします。
実際、私達の過去の経験でも、この慰謝料自動計算気で自分の慰謝料を計算して、保険会社から提示された示談金が低すぎることに気づいてみらい総合法律事務所にご相談・ご依頼いただいて増額し、ご満足いただいた例が多数あります。
ぜひ、ご利用いただけばと思います。
以下に「後遺障害編」と「死亡事故編」の計算機をご用意しておりますので、まずは計算してみていただければと思います。
慰謝料は示談金の一部
交通事故に巻き込まれた時、多くの被害者は「慰謝料」に目が行きがちです。
確かに、事故で受けた精神的なダメージの補償として受け取れる金額として重要ですが、実はそれだけではありません。
交通事故で加害者側保険会社から受け取るお金に示談金があります。
「示談金」とは、民事紛争を裁判によらず、話し合いなどにより解決する場合にその和解金として受け取るお金のことです。
この示談金の中には慰謝料の他にも様々な項目が含まれていることを知っていますか?
「慰謝料」と「示談金」の違いを表にすると、以下のとおりです。
慰謝料 | 交通事故で被害者が受け取るお金のうちの精神的損害に関するもの |
示談金 | 慰謝料を含め、被害者側と加害者側が合意して、被害者の方が受け取るお金の総額のこと |
被害者としてあなたが受け取ることができる金額は、事故の内容や被害の度合いによって異なり、様々な損害項目の合計額です。
以下に示す早見表は、あなたが知っておくべき示談金の主な項目をまとめたものです。
1 | 慰謝料 | 交通事故の精神的苦痛に対して支払われる補償 |
---|---|---|
2 | 治療費 | 怪我の治療に要した費用 |
3 | 修理費 | 車両などを修理するのに要した費用 |
4 | 逸失利益 | 事故のせいで失った将来の収入 |
5 | 休業損害 | 怪我の治療で休業したことで減ってしまった収入に対する補償 |
さらに細かく項目を挙げると、以下のようになります。
・入院付添費
・入院雑費
・傷害慰謝料
・後遺障害慰謝料
・死亡慰謝料
・逸失利益
・将来介護費
・将来雑費
・装具・器具等購入費
・車椅子代
・介護ベッド代
・マットレス代
・家屋改造費
・自動車改造費
・葬儀費など
これでも全てではなく、交通事故の示談交渉では、被害者が請求できる損害項目を漏れなく請求していくことが大切になります。
慰謝料が相場より増額する場合
慰謝料には相場があることは前にお話ししましたが、実は相場よりも慰謝料が増額する場合があります。
慰謝料が相場より増額する事例としては、主に以下の3種類があります。
②他の損害項目に入らないものを慰謝料で斟酌して慰謝料が増額される事例
③被害者側に特別の事情がある事例
順番に説明していきます。
被害者の精神的苦痛の程度が通常より大きいと評価される事例
加害者側の過失の大きさや、事故後の態度の悪さなどにより、事故に対する被害者の精神的苦痛が増大したと認められる場合は、慰謝料が増額されることがあります。
過去の裁判例をご紹介します。
高速道を一般道と錯覚して転回して逆送し、謝罪の際も配慮の欠けた面があったことなどを理由として、
慰謝料相場2800万円のところ、3600万円を認めた事例があります
(東京地裁平成15年3月27日判決・出典:交通事故民事裁判例集36巻2号439頁)。
【判決の分析】
本件では、
交通事故を惹起した原因が飲酒酩酊していたにもかかわらず自動車を運転したこと、
高速道路を逆走したこと、
という法律違反の程度が高度であること、
事故後の加害者に反省の態度がなかったことにより遺族の精神的苦痛が増大したものと評価されたと考えられます。
【判決の分析】
本件では、交通事故を惹起した原因としての酒酔い運転とセンターラインオーバーという法律違反の程度が高度であること、
事故後の加害者の悪質な態度により
被害者の遺族の精神的苦痛が増大したものと評価されたものと考えられます。
他の損害項目に入らないものを慰謝料で斟酌(しんしゃく)しようとする事例
顔や生殖機能、嗅覚などの後遺障害が認定されても後遺症逸失利益が算定しにくいような事案の場合は、逸失利益を認めず慰謝料を増額することで賠償額のバランスを取ろうとすることがあります。
過去の裁判例をご紹介します。
同僚などから「どうしたのか」」などと聞かれ、辛い思いをしたこと、
腕の醜状のため半袖等の着用を控えていること、
などを理由として、逸失利益は認めないが、慰謝料相場1000万円のところ、1450万円を認めた事例があります(大阪地裁平成11年8月31日判決・出典:自保ジャーナル1335号3頁)。
【判決の分析】
本件では、外貌醜状により、モデルになるのを諦めたことから労働に支障が出たと考えられるものの、逸失利益を計算しにくいこと、その他実際に若い女性の精神的苦痛の高さに鑑み、慰謝料を増額したものと考えられます。
被害者側に特別の事情がある事例
被害者に特別の事情があり、通常の場合より被害者の無念さが大きいと認められると、慰謝料が増額されることがあります。
精神科に入退院を繰り返し障害等級2級の障害者手帳の交付を受けている事案について、
当時の慰謝料相場額が2000万円~2200万円のところ、本人分2200万円、母親分300万円、父親分150万円の合計2650万円を認めた事例があります(名古屋地裁平成17年11月30日判決、出典:交通事故民事裁判例集38巻6号1634)。
【判決の分析】
本件では、被害者の遺族に精神疾患が生じ、その程度が極めて重いことから、
通常の場合に比して遺族の精神的苦痛が大きいと評価され、慰謝料が増額されたものと考えられます。
裁判所は、母親の精神的打撃が深刻で現在に至るまで続いていることを考慮し、慰謝料の相場としては、2000万円~2200万円のところ、本人分1800万円、父親分200万円、母親分600万円の合計2600万円を認めた事例があります(東京地裁平成15年12月18日判決)。
【判決の分析】
本件では、被害者の母親が我が子の悲惨な状態を目的した精神的苦痛の大きさ、及び、その後実際にPTSDに罹患し、精神的苦痛の大きさが現実化したこと、から慰謝料を増額したものと考えられます。
以下の記事でも高額慰謝料が認められた裁判例をご紹介していますので、参考にしてください。
みらい総合法律事務所が慰謝料を相場より増額させた実例
裁判で慰謝料を相場より増額させた実例
ここで、みらい総合法律事務所の弁護士が裁判で慰謝料を増額させた実際の体験事例をご紹介します。
被害者の家族は、初めからみらい総合法律事務所に被害者の権利を守るための法的手続きと示談のサポートを依頼しました。
弁護士は、示談ではなく、裁判を通じて加害者の行為の重大性を強調し、より高い慰謝料を求める戦略を取りました。
この結果、通常の慰謝料相場である2500万円よりも高額な3400円の慰謝料が認められ、最終的な解決金額は9400万円に達しました。
ご遺族は加害者の刑事事件に被害者参加することを希望し、事故直後からみらい総合法律事務所に依頼しました。
弁護士は、友人の運転が制限速度の2倍という悪質性があったため、慰謝料増額を狙って裁判を提起しました。
慰謝料の相場は2000万円~2500万円のところ、大幅に増額され、3000万円が認められ、最終的に9489万8610円で解決しました。
交渉で慰謝料増額を実現した体験事例
慰謝料増額は、通常は裁判を起こさないと難しいのですが、稀に、交渉においても増額できる場合があります。
しかし、この場合も、被害者の弁護士が強く慰謝料増額事由を主張していかなければ実現は難しいでしょう。
みらい総合法律事務所で扱った事案のうち、示談交渉で慰謝料増額を勝ち取った実際の体験事例をご紹介します。
被害者や被害者のご家族は、慰謝料をいくらもらったのでしょうか。
この事件について、被害者の家族はみらい総合法律事務所の弁護士に依頼し、弁護士のサポートを受けて加害者の刑事裁判に被害者参加しました。
弁護士は示談交渉を行い、事故が飲酒・ひき逃げによるものだったことを強調して、慰謝料の大幅な上乗せを求めました。
最終的に、通常2000万円~2500万円が相場である慰謝料が、約2800万円に増額されて合意が成立しました。
もう1つご紹介します。
65歳男性が交通事故で骨折等の傷害を負い、関節機能障害等で自賠責後遺障害等級は併合8級が認定されました。
みらい総合法律事務所の弁護士が事案を分析したところ、加害者は無免許でセンターラインオーバーでの事故だったことがわかり、示談交渉で、この点を強く主張しました。
その結果、保険会社が慰謝料増額を認め、慰謝料相場金額8300万円だったところ、約1000万円で合意しました。
示談交渉では慰謝料が相場より増額しないと思い、これを主張しない人もいますが、稀に増額する場合もありますので、ここは強く主張していくべきだと思います。
慰謝料が減額されるケース
これまでは、慰謝料が増額されるケースについて説明をしてきましたが、実は、慰謝料が減額されてしまうケースもあります。
ここでは、以下の3つのケースについて説明をします。
- 素因減額
- 損益相殺
- 過失相殺
素因減額
素因減額というのは、被害者に何らかの負の要素がある場合に、慰謝料額が減額されることを言います。負の要素には、被害者の精神的傾向である「心理的要因」と、既往症や身体的特徴などの「体質的・身体的素因」があります。
被害者が自殺した場合に、交通事故との因果関係が認められる時は、心因的養親の寄与が問題となります。
心因的要因による減額は、交通事故による損害が、事故によって通常発生する程度や範囲を超えるものであって、かつ、その損害拡大について被害者の心因的要因が寄与していると認められる場合に慰謝料が減額されるものです。
たとえば、軽微な追突事故の被害に遭った被害者が、数日後に病院に行って、医師に対して、「当初はなんともなかったが、数日したら気分が悪くなり、頭も痛く、首も痛い。」と訴えたところ、外傷性頚部症候群と診断され、その後入院し、5年間も入退院を繰り返した、というような事例で、医学的には症状の説明が困難なような場合です。
体質的素因としては、無症状の後縦靱帯骨化症について、素因減額したものがあります。
参考情報:「最高裁平成8年10月29日判決」裁判所ホームページ
また、新しい裁判例として、大阪地裁令和5年2月27日判決は、小型特殊自動車が、歩行中の被害者(先天性の両側感音性難聴があった当時11歳の女性)に衝突した死亡事故に関して、争点となった逸失利益について、被害者の基礎収入を賃金センサスの全労働者平均賃金の85%に相当する年収422万6200円として計算しました。
慰謝料は、相場金額が2000万円~2500万円のところ、本人分として2600万円、両親がそれぞれ200万円、姉が100万円の合計3100万円を認めました。
損益相殺
損益相殺というのは、交通事故の被害者が、交通事故に起因して何らかの経済的利益を得た場合に、それを損害の填補として、損害賠償額から減額されるものです。
代表的にはものは内払いで、加害者の保険会社から治療費や休業補償を受け取っている場合には、その金額は損害の填補ですので、損害賠償額から減額されます。
また、自賠責保険から損害賠償額を受領した場合や労災保険からの給付なども該当します。
但し、労災保険法に基づく特別支給金については、損益相殺が否定されるのが裁判例ですので、労災事案については、特別支給金を受領することを忘れてはいけません。
過失相殺
過失相殺というのは、交通事故において、被害者に過失がある場合に、その過失の大きさなどを考慮して慰謝料等が減額されることをいいます。
追突事故やもらい事故など、過失割合が10対0であれば、示談金の相場は、損害額の全額となります。1000万円の損害額であれば、示談金は1000万円となるでしょう。
しかし、たとえば、過失割合が加害者80%、被害者20%、慰謝料額が1000万円とすると、被害者の過失分200万円が減額されて、慰謝料額は800万円となります。
過失相殺は、示談交渉の場合には、双方が話し合い、合意によって決まります。
たとえば、本当の過失割合が加害者80%、被害者20%だっとしても、保険会社がいいと言えば、加害者100%で合意してもいいわけです。
当事者間で合意が成立しない場合は、裁判所が過失割合を決めることになります。
過失相殺について、もっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
交通事故の慰謝料に税金はかかるの?
交通事故で被害を受けて慰謝料などを受け取る場合、金銭で受け取ることなります。
では、受け取った慰謝料に税金はかかるのでしょうか。
まず、ケガや死亡事故など、心身に加えられた損害に対する慰謝料、治療費、休業損害、逸失利益などの損害賠償金には、税金はかかりません。
非課税です。
また、同じように、心身又は資産に加えられた損害について、社会通念上ふさわしい範囲の金額を見舞金としてもらった場合も非課税です。
物損も自動車の修理費用などは非課税なのですが、一部課税対象となる場合もあります。
たとえば、商品を配送中に、交通事故の被害に遭ったとしましょう。
その全額を損害賠償金として受け取ったら、どうなるでしょうか。
本来であれば、個人の場合には売却代金が収入金額となり、そこから仕入代金や経費などを差し引いて所得となり、所得税を支払います。
つまり、損害賠償金が事業による収入金額に代わる性質ということになります。
したがって、このような場合には、非課税とならず、事業所得の収入金額となりますので、注意が必要です。
交通事故の慰謝料などに税金がかかるかどうかについて、もっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
参考情報:「No.1700 加害者から治療費、慰謝料及び損害賠償金などを受け取ったとき」国税庁タックスアンサー
交通事故の慰謝料で困ったら弁護士に相談を
本記事では、交通事故の慰謝料について、種類、計算方法、相場、相場より増減額する場合などを解説するとともに、実際の解決事例をご紹介しました。
ただ、慰謝料に関する知識を得ても、実際に被害者が保険会社と交渉すると、適正な金額になることは少ないです。
それは、保険会社が営利企業であり、支出をなるべく低く抑えようとするためです。
しかし、弁護士が代理人として交渉すると増額することが多いので、上手に弁護士を活用していただきたいと思います。
弁護士法人みらい総合法律事務所では、人身事故の被害者からのご相談を無料で受け付けています。
弁護士に相談・依頼することで、以下のようなメリットがあります。
・適正な慰謝料の金額を知ることができる。
・依頼すれば、適正な慰謝料を獲得できる。
・保険会社との難しい交渉から解放される。
・正しい後遺障害等級を獲得できる。
ぜひ、一度ご相談ください。
【交通事故】慰謝料の計算方法と相場