後遺障害8級の認定基準・慰謝料額と増額事例
交通事故の被害者の方が、慰謝料などの損害賠償金を受け取るためには、後遺障害等級認定を受ける必要があります。
後遺障害8級は、目、背骨、腕、指、足などさまざまな部位で等級が認定され、認定条件も複雑になります。
交通事故の損害賠償問題で争点になるのは、加害者側の任意保険会社が被害者の方が受け取るべき適正な金額よりも、かなり低い金額を提示してくることが多いことです。
本記事では、後遺障害等級8級の「認定基準」や「慰謝料額の算定方法」、「適正な損害賠償額」、さらには「みらい総合法律事務所で実際に解決した慰謝料等の増額事例」などについて解説していきます。
交通事故の損害賠償の正しい知識を得て、示談交渉などに備えていただきたいと思います。
これから、交通事故の後遺障害等級8級の「認定基準」や「慰謝料額の算定方法」、「適正な損害賠償額」などについて解説していきますが、その前に交通事故解決までの全プロセスを説明した無料小冊子をダウンロードしておきましょう。
後遺障害8級の認定基準について
後遺障害8級の内容を確認
後遺障害等級は、もっとも重い1級から順に14級まであり、障害が残った部位や症状などの違いによって各号数が細かく設定されています。
後遺障害8級の認定基準と、弁護士(裁判)基準による後遺障害慰謝料の相場金額は次のようになります。
【参考記事】:「自賠責後遺障害等級表」(国土交通省)
「自賠責後遺障害等級表」
自賠法別表第2
後遺障害 | 後遺障害慰謝料 (弁護士(裁判)基準) |
---|---|
1.一眼が失明し、又は一眼の視力が0.02以下になったもの 2.脊柱に運動障害を残すもの 3.一手のおや指を含み二の手指を失つたもの又はおや指以外の三の手指を失ったもの 4.一手のおや指を含み三の手指の用を廃したもの又はおや指以外の四の手指の用を廃したもの 5.一下肢を5センチメートル以上短縮したもの 6.一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの 7.一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの 8.一上肢に偽関節を残すもの 9.一下肢に偽関節を残すもの 10.一足の足指の全部を失ったもの |
830万円 |
「8級1号」
交通事故による傷害(けが)で片目を失明するか、矯正視力で0.02以下になってしまった場合が該当します。
8級1号は片方の眼の障害であり、もう片方の眼は事故による傷害の影響はなく正常であることに注意が必要です。
なお、障害が残った眼が左眼か右眼かという区別はありません。
「8級2号」
脊柱とは、いわゆる背骨のことで、これを構成する一つひとつの骨を脊椎といいます。
脊柱は7つの頸椎、12の胸椎、5つの腰椎、仙椎、尾椎の計26個の椎骨から成り立っており、これらの骨が変形して神経を圧迫することで麻痺などの運動障害が起こります。
8級2号の認定基準は次の通りです。
②頭蓋骨から頸部、さらに胸腰部の背骨にかけて著しい異常可動性があるもの
脊柱が変形して運動機能に障害を残すものの中で、もっとも重い障害は6級5号ですが、それよりも症状が軽いものが8級2号に認定されます。
「8級3号」
片手の親指を含む2本の指を失うか、親指以外で3本の指を失った場合が該当します。
手指を失った、という場合は、親指とそれ以外の指に分けて判断されます。
「親指」
- 第一関節での離断
- 第一関節より根本側での切断
「その他の指(人差し指から小指)」
- 第二関節部分での離断
- 第二関節より根本側で切断
「8級4号」
片手の親指を含む3本の指、あるいは親指以外の4本の指の機能を失った場合が該当します。
手指の用を廃した、というのは次のような場合が該当します。
②親指の第一関節の可動域が、通常の指と比較して2分の1以下に制限されているもの。
③親指の根元の関節の橈側外転、掌側外転が、通常の指と比較して2分の1以下に制限されているもの。
※橈側外転=ピストルのジェスチャーのように親指を縦に開く動き
※掌側外転=掌を横から見て、親指と人差し指の角度が90度になるように開く動き
④人差し指から小指の根元の関節、または第二関節の可動域が、通常の指と比較して2分の1以下に制限されているもの。
⑤手指の第一関節より先の指先の指腹部、および側部の深部感覚(関節の位置や筋肉の伸張具合など)、表在感覚(皮膚や粘膜などの感覚)が完全に脱失したもの。
※ただし、1.感覚神経が断裂したと判断され得る外傷を負ったこと、2.筋電計を用いた感覚神経伝導速度検査を行ない、感覚神経活動電位が検出されない場合に限られる。
「8級5号」
交通事故による傷害のために片方の足の長さが5cm以上短縮してしまった場合が該当します。
8級5号は、短縮障害は下肢(足)だけに認められるもので、上肢(腕)には認められません。
「8級6号」
上肢(腕)の三大関節とは、「肩」「肘」「手首」で、骨折などにより、このうちの1つの関節機能を失い、動かなくなってしまった場合、あるいは神経麻痺のために自分では動かせなくなってしまった場合が該当します。
「関節の用を廃したもの」というのは、次のいずれかに該当した場合になります。
②完全弛緩性麻痺、またはこれに近い状態になったもの。
③人工関節、人工骨頭を挿入置換した場合、正常なほうの関節と比較して可動域が2分の1以下に制限されている。
※強直=関節が完全に動かない、あるいは健康な関節と比較して可動域が10%以下に制限されているもの。
「8級7号」
下肢(足)の三大関節とは、「股関節」「膝」「足首」で、骨折などにより、このうちの1つの関節機能を失い動かなくなってしまった場合、あるいは神経麻痺のために自分では動かせなくなってしまった場合が該当します。
認定要件は次の2点です。
②完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態になったもの
「8級8号」
・片方の腕に偽関節を残し、運動障害がある場合が該当します。
・偽関節とは、骨折が治癒していく過程で正常に骨がつかずに、その部分があたかも関節のように動く状態になってしまい、正常に手足を動かすことができなくなっていることをいいます。
・日常生活や仕事などに著しい障害が残った場合は、手足それぞれで7級9号・10号が認定されますが、補装具を装着すればできる場合は、それぞれ8級8号・9号が認定されます。
・骨折箇所は、肩関節から手首までの間の関節以外であれば、どの部位であっても該当します。
「8級9号」
・片方の足に偽関節を残し、運動障害がある場合が該当します。
・骨折箇所は、股関節から足首の間の関節以外であれば、どの部位であっても該当します。
「8級10号」
・片方の足のすべての指を失った場合が該当します。
・右足か左足かという区別はありません。
・足指の切断とは、指の付け根である中足指関節から失ったものになります。
・後遺障害等級において、足指では親指が第一の足指になり、順に第二、第三となります。
後遺障害等級については、法的な知識の他、医学的な知識も必要で、高い専門性が要求されます。一度ご相談ください。
後遺障害8級の慰謝料計算と相場金額について
次に、後遺障害8級の慰謝料の計算方法と適正な相場金額についてお話ししていきますが、まずは慰謝料についての基礎知識から知っていただきたいと思います。
じつは交通事故の慰謝料は4種類あります
①傷害慰謝料(入通院慰謝料)
交通事故で負った傷害(ケガ)の治療のために入院・通院した際に被った精神的苦痛や損害に対して支払われます。
②後遺障害慰謝料
・治療を続けたものの症状固定の診断を受けて後遺症が残り、後遺障害等級が認定された場合、その精神的苦痛や損害に対して支払われるものです。
・後遺障害等級の違いや計算基準の違いによって金額が大きく変わってきます。
③死亡慰謝料
・交通事故で亡くなった被害者の方の精神的苦痛や損害に対して支払われるものです。
・被害者の方はすで亡くなっているため、受取人はご家族などの相続人になります。
・ただし、相続人には法的に順位や分配割合が規定されていることに注意してください。
④近親者慰謝料
・被害者の方の近親者(家族など)が被った精神的苦痛や損害に対して支払われるものです。
・被害者の方が亡くなった場合や重度の後遺障害が残り、将来に渡る介護が必要な場合などで受け取ることができます。
慰謝料額の算定では基準の違いで金額に差が出る
交通事故の慰謝料の算定では、次の3つの基準が使われます。
そのため、どの基準で計算するかによって金額が大幅に変わってくるのです。
1.自賠責基準
自賠責保険で定められている基準で、もっとも金額が低くなります。
2.任意保険基準
各任意保険会社が独自に設けている基準(各社非公表)で、自賠責基準より少し高い金額になるように設定されています。
3.弁護士(裁判)基準
・もっとも金額が高くなる基準で、被害者の方が本来受け取るべき金額になります。
・これまでの裁判例から導き出されている基準のため、弁護士や裁判所が用います。
・弁護士が被害者の方の代理人として、加害者側の任意保険会社と示談交渉をする際や、提訴して裁判になった場合でも、この基準で計算した金額を主張・立証していきます。
被害者の方が高額=適正金額での慰謝料を望むなら、弁護士(裁判)基準で計算した金額を主張・立証して、加害者側の任意保険会社に認めさせる必要があるのです。
傷害慰謝料(入通院慰謝料)の計算方法と相場金額
①自賠責基準による傷害慰謝料(入通院慰謝料)
傷害慰謝料を自賠責基準で計算するには、次の計算式を用います。
入通院日数(治療の対象日数)で注意していただきたいのは、次のどちらか短いほうが採用されることです。
A)「実際の治療期間」
B)「実際に治療した日数×2」
ここでは、入通院日数(治療の対象日数)を次の条件で考えてみます。
- 治療期間:1か月の入院+5か月通院……180日間
- 実際に治療した日数:入院1か月+通院5か月のうち平均で週1回の通院をしたと仮定……30日+22日(22週×1日)=52日間
A)4,300円×90日=774,000円
B)4,300円×52日=223,600円
この場合、日数が短いB)が採用されるため、認められる傷害慰謝料は223,600円になるわけです。
②弁護士(裁判)基準による傷害慰謝料(入通院慰謝料)
弁護士(裁判)基準による傷害慰謝料の算定では計算式は使いません。
日弁連交通事故相談センター東京支部が発行している『損害賠償額算定基準』に記載されている「入通院慰謝料の算定表」から金額を割り出します。
算定表には、ケガの程度によって「軽傷用(むち打ち症で他覚症状がない場合)」と「重傷用」があります。
<弁護士(裁判)基準による傷害慰謝料(入通院慰謝料)の算定表(軽傷用)>
<弁護士(裁判)基準による傷害慰謝料(入通院慰謝料)の算定表(重傷用)>
自賠責基準での計算例と同条件(1か月の入院+5か月の通院)で金額を割り出すには、「重傷用」の表で、「入院1か月」と「通院5か月」が交わった部分を見ます。
「141」となっているので、弁護士(裁判)基準での傷害慰謝料は「141万円」になります。
単純計算でも、自賠責基準と弁護士(裁判)基準の金額を比較すると、その差はかなり大きくなることを、ぜひ知っていただきたいと思います。
弁護士(裁判)基準……1,410,000円
◎その差は約6.3倍!
後遺障害慰謝料の計算方法と相場金額
後遺障害慰謝料は、あらかじめ概ねの金額が決められており、認定された後遺障害等級(1級~14級)の違いによって金額が変わります。
自賠責基準と弁護士(裁判)基準での等級別の概ねの相場金額を早見表にまとめました。
金額の違いをぜひ知ってください。
<自賠責基準・弁護士(裁判)基準による後遺障害慰謝料の早見表>
みらい総合法律事務所で実際に解決した慰謝料等増額事例を紹介
ここでは、みらい総合法律事務所で実際に解決した後遺障害8級の事例をご紹介していきます。
示談の際、加害者側の保険会社(加害者が任意保険に加入している場合)は、かなり金額を抑えて提示してくることが多いです。
そこで示談交渉に進むわけですが、さてどうなるでしょうか……解決事例から次のようなことがおわかりいただけると思います。
- 後遺障害8級の被害者の方に、加害者側の保険会社はどのくらいの金額を提示してくるのか?
- 保険会社は、被害者の方が直接・単独で示談交渉をしても、増額の要求を受け入れない実態。
- 弁護士が示談交渉に入ると、どのくらい金額が増額するのか?
- 裁判を起した場合は、いくらくらいの増額が実現するのか?
今後の示談交渉のためにも、ご自身の状況と照らし合わせて参考にしてください。
解決事例①:50歳男性の慰謝料等が約2,000万円増額して4.3倍に!
引用元:みらい総合法律事務所
50歳の男性(会社役員)が、横断歩道を歩行中、右折してきた自動車に衝突された交通事故。
右足指欠損、右足指機能障害、右足底部知覚鈍麻などの後遺症が残り、後遺障害等級は併合9級が認定され、加害者側の任意保険会社は示談金として約609万円を提示。
この金額の妥当性について、みらい総合法律事務所の無料相談を利用したところ、弁護士から「そもそも後遺障害等級が間違っている可能性がある」との指摘があったため、異議申立を含めてすべての交渉を依頼されました。
異議申立の結果、後遺障害等級は併合8級に上り、弁護士が訴訟を提起。
裁判では当初提示額から約2,000万円増額の2,600万円で解決した事例です。
保険会社の当初提示額から約4.3倍に増額したことになります。
動画で詳しく解説しましたので、ご覧ください。
詳細はこちら→
「解決実績」
解決事例②:40歳男性の慰謝料等が約3.4倍に増額して約8,971万円に!
引用元:みらい総合法律事務所
40歳の男性が乗った自動車に後ろから自動車が追突し、頚環軸椎骨骨折などの傷害(けが)を負った交通事故です。
治療をしたものの、症状固定により頚部可動域制限などの後遺症が残ってしまい、後遺障害等級8級と14級の併合8級が認定。
加害者側の任意保険会社は既払い金を除いて、慰謝料など損害賠償金として約2,651万円を提示してきました。
被害者の方は、みらい総合法律事務所の無料相談を利用し、弁護士の説明に納得がいったため、示談交渉のすべてを依頼。
弁護士が保険会社と交渉しましたが決裂したため、訴訟に移行しました。
保険会社は「後遺障害等級が間違っている」として争ってきましたが、裁判所は弁護士の主張を認め、後遺障害8級を前提として、保険会社に約8,971万円の損害賠償金を支払う判決を下しました。
当初提示額から約3.4倍、約6,320万円も増額して解決した事例です。
動画で詳しく解説しましたので、ご視聴ください。
詳細はこちら→
「解決実績」
解決事例③:18歳男性が再示談で1,358万円を追加で獲得
引用元:みらい総合法律事務所
18歳の男子大学生が自動車を運転して交差点を直進していたところ、右折自動車に衝突された交通事故。
被害者の方は本件事故により、右足関節脱臼骨折の傷害を負い、右足関節機能障害の後遺症のため、後遺障害等級10級11号が認定され、一度、加害者側の任意保険会社と示談が成立していました。
ところが、その後に症状が悪化し、再度、後遺障害等級認定の申請をしたところ、8級7号が認定されたため、2度目の示談交渉が可能かどうか、みらい総合法律事務に相談されたという経緯がありました。
当事務所の弁護士の見解は、「損害賠償請求は可能」というものだったため、被害者の方は示談交渉のすべてを依頼されました。
弁護士が保険会社と交渉したところと、当初は追加の支払いを拒否しましたが、最終的には追加分として、1,358万円で示談解決した事例です。
詳細はこちら→
「解決実績」
解決事例④:23歳男性の慰謝料等が約1,280万円の増額
引用元:みらい総合法律事務所
23歳の男性(大学院生)が傘を差しながら横断歩道を自転車で走行中、右折してきた自動車に衝突された交通事故です。
被害者の方は、胸椎と腰椎の圧迫骨折の傷害を負い、治療をしましたが症状固定により脊柱変形の後遺症が残ってしまいました。
後遺障害8級が認定され、加害者側の任意保険会社は治療費など既払い金を除いて、慰謝料などの損害賠償金として約3,099万円を提示してきました。
被害者の方は、この金額が妥当なものかどうか確認するため、みらい総合法律事務の無料相談を利用。
弁護士の見解が「増額は可能」というものだったことから、示談交渉のすべてを依頼されました。
弁護士が保険会社と交渉しましたが、逸失利益で合意が得られなかったため提訴。
最終的に裁判所は、約4,339万円の損害賠償金を認定しました。
当初提示額から約1,240万円の増額で決着した事例です。
受け取ることができる損害賠償項目の中では高額になる1つです。
計算方法などを動画で解説しましたので、ご視聴ください。
詳細はこちら→
「解決実績」
解決事例⑤:51歳男性の慰謝料等が約1,112万円プラスされ約2.2倍に増額
引用元:みらい総合法律事務所
交通事故の被害で、51歳の男性(会社員)に外貌醜状や耳鳴りなどの後遺症が残り、併合8級の後遺障害等級が認定されました。
加害者側の任意保険会社と示談交渉をして、示談金(損害賠償金)が約887万円になったところで、被害者の方がみらい総合法律事務所の無料相談を利用し、そのまま示談交渉のすべてを依頼されました。
弁護士が交渉したところ、保険会社は「被害者は外貌醜状のため、逸失利益はゼロ」と主張してきましたが、弁護士が粘り強く立証・主張したことで、最終的には保険会社が譲歩。
当初提示額から約2.2倍、約1,112万円増の2,000万円で解決となりました。
詳しい解説は、こちらをご覧ください。
詳細はこちら→
「解決実績」
みらい総合法律事務所では、交通事故慰謝料・損害賠償金がすぐにわかる自動計算機をご用意しています。
リンク先の「(8)後遺症慰謝料」の部分で簡単に計算できますので、ご気軽に使ってみてください。
慰謝料自動計算機(後遺障害編)
あなたの金額がすぐにわかる!
【慰謝料自動計算機】あなたの金額がすぐにわかる!(後遺障害編)
後遺障害等級と慰謝料で知っておくべき8つのポイント
交通事故解決までの流れを知る
交通事故発生から被害者の方が損害賠償金を受け取るまでのフローチャートを作成しました。今後の示談交渉のためにも、全体の流れを把握しておきましょう。
症状固定とは?被害者がやるべきことは?
交通事故で傷害(けが)を負い、治療を続けていると、ある日こんなことを主治医から言われる場合があります。
「そろそろ、症状固定としましょう」
症状が固定するわけですから、これ以上の治療を続けても、回復する見込みがないという診断であり、これ以降は後遺症が残ってしまうことになります。
残念なことですが、被害者の方としては次のステージに移行することになります。
損害賠償金額の提示を受け、加害者側の保険会社と示談交渉していくために、ご自身の後遺障害等級の認定を受ける必要があります。
こちらは「交通事故の症状固定が被害者にとって重要な理由と注意ポイント」でも詳しく解説しています。
後遺症とは?後遺障害と何が違う?
交通事故による後遺症というのは、被害者の方に残った機能障害や運動障害、神経症状などをいいます。
後遺障害というのは、これらの後遺症について、次の要件が認められることで定義され、損害賠償請求の対象となるものです。
・労働能力の低下や喪失が認められること
・その程度が自動車損害賠償保障法(自賠法)で定める後遺障害等級に該当すること
こちらは「交通事故の後遺症診断と等級認定手続」でも詳しく解説しています。
後遺障害等級認定の仕組みは複雑!?
被害者の方が加害者側に対して損害賠償請求できる項目には、入通院費や治療費、将来介護費、慰謝料や逸失利益など、さまざまなものがあります。
これらを合計して損害賠償金額を算出するわけですが、被害者の方一人ひとりで、その程度や症状に違いがあるため、すべてのケースでその損害賠償額を個別に計算するには膨大な時間と労力が必要となります。
また、慰謝料の算出では、被害者の方一人ひとりが感じている精神的、肉体的苦痛を正確に数値化するのは不可能です。
そうした理由から、損害額を迅速かつ公平に算出するために後遺障害を等級で分類したものが後遺障害等級です。
また、被害者の方がそれぞれどの等級に該当するかを判断し、認定する手続きを正式名称で、自賠責後遺障害等級認定といいます。
後遺障害等級は、もっとも重度の1級から順に14級まで分類されており、後遺障害が残った身体の部位によって、さらに各号数が細かく設定されています。
【参考記事】:国土交通省「自賠責後遺障害等級表
後遺障害等級認定には、法律知識以外に、医学的な知識と後遺障害等級システムの知識が必要です。交通事故に精通した弁護士の力を借りたほうがいいでしょう。
後遺障害等級認定の申請方法は2種類ある
後遺障害等級認定を申請するには、次の2つの方法があることを覚えておいてください。
「被害者請求」
被害者の方が直接、加害者が加入している自賠責保険会社に申請する方法です。
被害者請求のメリット
- ・後遺障害等級が認定された場合、最終的な示談の前に自賠責保険金がまとまった金額で支払われます。
- ・そのため、被害者の方やご家族は金銭的な余裕をもって、加害者側の保険会社と示談交渉を行なうことができます。
- ・被害者側で提出資料を集めて申請するため、手続きの流れや、提出する書類を自分で把握できるというメリットもあります。
被害者請求のデメリット
- ・被害者側で資料を集めなければいけないため手間がかかってしまいます。
- ・そのため、提出書類はよく確認して、もし不備や不足があった場合には担当の医師に新たな検査を依頼するなどして、被害者側が積極的に資料を集める必要があるのです。
- ・裁判まで進んで、判決があった場合、損害賠償金には事故時からの遅延損害金などがつきます。
しかし、被害者請求で最初にまとまったお金をもらうと、最終的に受け取る損害賠償金が少なくなるので、遅延損害金も少なくなってしまいます。
こちらは「遅延損害金|交通事故の損害賠償金に利息をつけて払ってもらえる?」でも詳しく解説しています。
「事前認定」
- ・加害者が加入している任意保険会社を通して自賠責保険に申請する方法です。
- ・自賠責保険では足りない部分の金額を補うのが任意保険という関係になっているため、任意保険会社は最終的な示談の前に自賠責保険の判断としての被害者の方の後遺障害等級、自賠責保険金から受け取る金額などを知っておきたいと考えます。
- ・そこで、事前に後遺障害等級を認定してもらうので、事前認定といいます。
こちらは「交通事故における任意保険の「一括払い制度」とは?」でも詳しく解説しています。
事前認定のメリット
- ・加害者側の任意保険会社が手続きを行なってくれるため、被害者請求ほどの手間がかかりません。
- ・裁判まで進んだ場合、判決の際には損害賠償金にプラスして事故時から計算される遅延損害金がつきます。
- ・被害者の方としては事前認定で申請しておいて、判決後に損害賠償金を受け取ったほうが遅延損害金は多くなるため、最終的な受取金額も増えるわけです。
事前認定のデメリット
- ・被害者の方は、どういった書類が提出されているのかわからないため、提出書類に不足がないかどうか確認することができません。
- ・そうなると、等級が認定されない、間違った後遺障害等級が認定されてしまう、といった問題が生じる場合があります。
それぞれにメリットとデメリットがあり、どちらの申請方法がいいとは簡単には言えません。
被害者の方は、ご自身の置かれた経済状況や後遺症の程度などを考え合わせながら選択することになります。
こちらは「交通事故の被害者が知っておくべき保険の知識」でも詳しく解説しています。
後遺障害等級に不満があれば異議申立ができる
後遺障害等級が認定されない、本来より低い等級しか認定されないという場合には、異議申立をすることが認められています。
しかし、異議申立は簡単に認められるものではありません。
後遺障害等級認定の手続きは、「損害保険料率算出機構」(損保料率機構)という機関が行なっているのですが、「納得がいかない」とクレームを入れたからといって簡単に後遺障害等級が上がるわけではないのです。
異議申立をするには、さまざまな書類や資料を提出し直さなければいけません。
たとえば、医師によって自覚症状欄や他覚所見、運動障害などが漏れなく記載された「後遺障害診断書」や、レントゲン画像では確認できなかった箇所が詳しくわかるようなCT画像やMRI画像などです。
後遺障害等級は、1級違っただけでも被害者の方が受け取る損害賠償金が大きく違ってくるので、あきらめずに異議申立をしていくことが大切です。
身体障害者手帳が交付されると得られるメリットがある
後遺障害を負った場合、後遺障害等級とは別に被害者の方は身体障害等級の認定を受けることができます。
身体障害等級が認定されると、「身体障害者手帳」が交付され、各種手当を受け取ることができます。
さらに医療費の助成、税金の控除、公共料金の減税、福祉サービスの利用など、さまざまなサービスを受けることができます。
また、国や各地方自治体などから、さまざまな福祉支援を受けるとこができる制度もあります。
詳しい内容は、こちらの記事から確認できます。
示談交渉でもめた場合は弁護士に相談してください!
交通事故の示談交渉は、慰謝料や逸失利益、過失割合などが争点となり、なかなか解決しないことが多くあります。
なぜなら、加害者側の任意保険会社は、かなり低い金額を提示してくることがほとんどで、被害者の方が単独で交渉しても増額要求を認めることもほとんどないからです。
示談交渉が長引いてしまい解決しない場合は、交通事故に強い弁護士に相談してください。
弁護士に相談・依頼すると次のことが可能になります。
- ご自身の正しい後遺障害等級を知ることができる。
- 等級が間違っていたら、異議申立を依頼して正しい等級認定を受けることができる。
- 適正な逸失利益や過失割合がわかり、慰謝料などの損害賠償金を適切に算定してもらえる。
- 結果的に慰謝料や逸失利益などの損害賠償金の増額が可能になる。
- 加害者側の任意保険会社との難しい示談交渉から解放される。
- 裁判を起すことで、さらに損害賠償金が増額する場合がある
なお、みらい総合法律事務所では、被害者やご家族がすぐに使える、交通事故の慰謝料などの損害賠償項目のチェックリストをご用意しています。
受け取り漏れがないか、金額は正しいか、弁護士に依頼する際のポイントなど、簡単にチェックすることができますので、ぜひご使用ください。
被害者の方は1人で悩まないでください。
電話でもメールでもかまいません、あなたからのご連絡をお待ちしています。
弁護士へのご相談の流れ
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