下肢(股関節から足指まで)の欠損・変形・短縮の後遺障害
目次
交通事故で下肢に傷害(ケガ)を負って、欠損や変形、短縮などの後遺障害が残ってしまった場合、後遺障害等級で何級が認定されるのかを中心に解説していきます。
足に障害を負うと、その後の生活で不自由を強いられてしまいます。
すると、仕事も制限されてしまうため、収入の問題も起きてきます。
これからの自分の人生、家族の将来など心配や不安は尽きないでしょう。
そこで重要なのが、認定される後遺障害等級です。
というのは、後遺障害等級によって慰謝料などの損害賠償金(保険金)が大きく変わってくるからです。
本記事では、下肢に残った後遺障害の種類別、認定された後遺障害等級別に保険金額などについてもお話ししていきます。
これから、交通事故で負った下肢の後遺障害について解説していきますが、その前に交通事故解決までの全プロセスを説明した無料小冊子をダウンロードしておきましょう。
下肢とはどこからどこまでなのか?
下肢というと足のことだとわかると思います。
では、医学的にはどこからどこまでが下肢になるのかというと、股関節から大腿部、膝、脛、足首、足指まで、ということになります。
骨格で見ると、股関節から大腿骨、膝関節、膝蓋骨、脛骨、腓骨、足関節とつながり、踵骨、足指の足根骨、中足骨、趾骨などで構成されています。
ちなみに、股関節の運動範囲は、上肢の肩関節より狭くなっています。
大腿骨は、いわゆる太ももの骨、脛(すね)の親指側にあるのが太いほうの脛骨で、小指側にあるのが細いほうの腓骨です。
参考資料:下肢の骨格(imidas)
交通事故にあった時にまず知っておいてほしいこと
交通事故発生からの流れを確認
交通事故が発生してケガを負った場合、解決までには通常は次のような流れで手続きなどが進んでいきます。
被害者の方は慰謝料などの損害賠償金(保険金)を受け取ることができるので、全体の流れを知っておくことが大切です。
症状固定後は後遺症が残ることに…
交通事故で負ったケガの治療を続けても、これ以上の効果が得られない、完治しないという段階がきてしまう場合があります。
ここで主治医は症状固定の診断をすることになります。
症状が固定してしまうということは、被害者の方に後遺症が残ってしまうということです。
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後遺症と後遺障害は同じもの?
後遺症というのは大別すると、次のものになります。
「機能障害」
高次脳機能障害による認知や行動の障害、視力や聴力、言語能力の低下や喪失など。
「運動障害」
上肢・下肢の麻痺や関節の可動域制限など。
「神経症状」
しびれや痛みなど。
では後遺障害とは何かというと、これらの後遺症に次の要件が認められて、損害賠償請求の対象になるものをいいます。
つまり、後遺症が後遺障害と認められることで、被害者の方は慰謝料などの損害賠償金(保険金)を受け取ることができるようになる、ということです。
<後遺障害が認められる条件>
・労働能力の低下や喪失が認められること
・その程度が自動車損害賠償保障法(自賠法)で定める
後遺障害等級に該当すること
後遺障害等級について知っておくべきこと
後遺障害等級は何級まである?
後遺障害等級は、1級から14級まで(もっとも障害が重いものが1級)あります。
さらに、後遺障害が残った身体の部位の違いなどによって各号数が設定されています。
国土交通省:自賠責後遺障害等級表
こちらの記事「等級認定手続の注意ポイント」でも詳しく解説しています
また、ご自身が後遺障害等級認定されているようでしたら下の慰謝料計算機を使って、示談金を簡単に確認することができます。
後遺障害等級認定の申請方法は?
後遺障害等級認定の申請には2つの方法があります。
「事前認定」と「被害者請求」というのですが、どちらにもメリットとデメリットあるので、ご自身の状況によって選ぶのがいいでしょう。
下肢の後遺症と後遺障害等級一覧
下肢の後遺障害は、次の4つに区分されます。
- 欠損障害
- 機能障害
- 変形障害
- 短縮障害
参考資料:肢体の障害(厚生労働省)
下肢(股関節から足首)の欠損による障害
下肢を切断して欠損した場合、その部位によって認定される後遺障害等級は次のようになります。
後遺障害の内容 | 両下肢を膝関節以上で失ったもの(両脚の股関節から膝関節の間) |
---|---|
自賠責保険金額 | 3000万円 |
労働能力喪失率 | 100% |
後遺障害の内容 - 両下肢を膝関節以上で失ったもの
(両脚の股関節から膝関節の間) 自賠責保険金額 - 3000万円
労働能力喪失率 - 100%
後遺障害の内容 | 両下肢を足関節以上で失ったもの(両脚の膝関節から足首の間) |
---|---|
自賠責保険金額 | 2590万円 |
労働能力喪失率 | 100% |
後遺障害の内容 - 両下肢を足関節以上で失ったもの
(両脚の膝関節から足首の間) 自賠責保険金額 - 2590万円
労働能力喪失率 - 100%
後遺障害の内容 | 一下肢を膝関節以上で失ったもの |
---|---|
自賠責保険金額 | 1889万円 |
労働能力喪失率 | 92% |
後遺障害の内容 - 一下肢を膝関節以上で失ったもの
自賠責保険金額 - 1889万円
労働能力喪失率 - 92%
後遺障害の内容 | 一下肢を足関節以上で失つたもの |
---|---|
自賠責保険金額 | 1574万円 |
労働能力喪失率 | 79% |
後遺障害の内容 - 一下肢を足関節以上で失つたもの
自賠責保険金額 - 1574万円
労働能力喪失率 - 79%
膝関節以上というのは、股関節から膝関節の間のことで、股関節と膝関節で切断した場合も含まれます。
足関節以上というのは、膝関節から足関節(足首)の間のことで、足首では脛骨・腓骨と距骨の間で切断した場合も含まれます。
足関節(足首)より下の欠損による障害
足関節(足首)より下の部分を切断して欠損した場合、その部位によって認定される後遺障害等級は次のようになります。
後遺障害の内容 | 両足をリスフラン関節以上で失ったもの |
---|---|
自賠責保険金額 | 1889万円 |
労働能力喪失率 | 92% |
後遺障害の内容 - 両足をリスフラン関節以上で失ったもの
自賠責保険金額 - 1889万円
労働能力喪失率 - 92%
後遺障害の内容 | 一足をリスフラン関節以上で失ったもの |
---|---|
自賠責保険金額 | 1051万円 |
労働能力喪失率 | 56% |
後遺障害の内容 - 一足をリスフラン関節以上で失ったもの
自賠責保険金額 - 1051万円
労働能力喪失率 - 56%
リスフラン関節とは、足の甲の中間あたりにある関節です。
下肢(股関節から足関節)の変形による障害
下肢の骨折などの傷害のため、骨が変形してしまった場合は、その部位によって認定される後遺障害等級は次のようになります。
後遺障害の内容 | 一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの |
---|---|
自賠責保険金額 | 1051万円 |
労働能力喪失率 | 56% |
後遺障害の内容 - 一下肢に偽関節を残し、
著しい運動障害を残すもの 自賠責保険金額 - 1051万円
労働能力喪失率 - 56%
後遺障害の内容 | 一下肢に偽関節を残すもの |
---|---|
自賠責保険金額 | 819万円 |
労働能力喪失率 | 45% |
後遺障害の内容 - 一下肢に偽関節を残すもの
自賠責保険金額 - 819万円
労働能力喪失率 - 45%
後遺障害の内容 | 長管骨に変形を残すもの |
---|---|
自賠責保険金額 | 224万円 |
労働能力喪失率 | 14% |
後遺障害の内容 - 長管骨に変形を残すもの
自賠責保険金額 - 224万円
労働能力喪失率 - 14%
<偽関節とは?>
偽関節とは、骨折部分が治癒していく過程で正常に骨がつかなかったために、その部分が関節のようにグラグラと動く状態になってしまったものです。
そのため、手足を動かすことが困難になります。
偽関節により著しい運動障害を残すものというのは、原則として、つねに硬性補装具を必要とする状態になります。
<長管骨とは?>
長管骨とは、手足を構成する骨のうち、比較的大きく、細長い骨のことです。
中が空洞の管状であることから、長管骨と呼ばれます。
下肢では、「大腿骨」、「脛骨」「腓骨」が該当します。
下肢(股関節から足関節)の短縮による障害
交通事故の傷害(ケガ)によって下肢の短縮があった場合は、その長さによって次のような後遺障害等級が認定されます。
後遺障害の内容 | 一下肢を5センチメートル以上短縮したもの |
---|---|
自賠責保険金額 | 819万円 |
労働能力喪失率 | 45% |
後遺障害の内容 - 一下肢を5センチメートル以上短縮したもの
自賠責保険金額 - 819万円
労働能力喪失率 - 45%
後遺障害の内容 | 一下肢を3センチメートル以上短縮したもの |
---|---|
自賠責保険金額 | 461万円 |
労働能力喪失率 | 27% |
後遺障害の内容 - 一下肢を3センチメートル以上短縮したもの
自賠責保険金額 - 461万円
労働能力喪失率 - 27%
後遺障害の内容 | 一下肢を1センチメートル以上短縮したもの |
---|---|
自賠責保険金額 | 139万円 |
労働能力喪失率 | 9% |
後遺障害の内容 - 一下肢を1センチメートル以上短縮したもの
自賠責保険金額 - 139万円
労働能力喪失率 - 9%
足指の後遺症と後遺障害等級一覧
足指の欠損による障害
足指を切断して欠損した場合、その部位によって認定される後遺障害等級は次のようになります。
後遺障害の内容 | 両足の足指の全部を失ったもの |
---|---|
自賠責保険金額 | 1574万円 |
労働能力喪失率 | 79% |
後遺障害の内容 - 両足の足指の全部を失ったもの
自賠責保険金額 - 1574万円
労働能力喪失率 - 79%
後遺障害の内容 | 一足の足指の全部を失ったもの |
---|---|
自賠責保険金額 | 819万円 |
労働能力喪失率 | 45% |
後遺障害の内容 - 一足の足指の全部を失ったもの
自賠責保険金額 - 819万円
労働能力喪失率 - 45%
後遺障害の内容 | 一足の第一の足指を含み二以上の足指を失ったもの |
---|---|
自賠責保険金額 | 616万円 |
労働能力喪失率 | 35% |
後遺障害の内容 - 一足の第一の足指を含み二以上の足指を失ったもの
自賠責保険金額 - 616万円
労働能力喪失率 - 35%
後遺障害の内容 | 一足の第一の足指又は他の四の足指を失ったもの |
---|---|
自賠責保険金額 | 461万円 |
労働能力喪失率 | 27% |
後遺障害の内容 - 一足の第一の足指又は
他の四の足指を失ったもの 自賠責保険金額 - 461万円
労働能力喪失率 - 27%
後遺障害の内容 | 一足の第二の足指を失ったもの 第二の足指を含み二の足指を失ったもの 又は第三の足指以下の三の足指を失ったもの |
---|---|
自賠責保険金額 | 224万円 |
労働能力喪失率 | 14% |
後遺障害の内容 - 一足の第二の足指を失ったもの
第二の足指を含み二の足指を失ったもの
又は第三の足指以下の三の足指を失ったもの 自賠責保険金額 - 224万円
労働能力喪失率 - 14%
後遺障害の内容 | 一足の第三の足指以下の一又は二の足指を失ったもの |
---|---|
自賠責保険金額 | 139万円 |
労働能力喪失率 | 9% |
後遺障害の内容 - 一足の第三の足指以下の一
又は二の足指を失ったもの 自賠責保険金額 - 139万円円
労働能力喪失率 - 9%
☑足指の切断は、指の付け根である中足指関節から失ったものになります。
☑後遺障害等級の世界では、足指は親指が第一の足指になり、順に第二、第三となります。
足指の用を廃した障害(機能障害)
足指の用を廃した、というのは次のような場合が該当します。
☑第一の足指(親指)の末節骨を2分の1以上失った
☑第一の足指以外の足指を中節骨で切断した
☑第一の足指以外の足指を基節骨で切断した
☑第一の足指以外の足指を遠位指節間関節(第1関節)で離断した
☑第一の足指以外の足指を近位指節間関節(第2関節)で離断した
☑第一の足指の指節間関節の可動域が通常の関節と比べて2分の1以下に制限された
☑第一の足指以外の足指の中足指節間関節(指の根元の関節)、または近位指節間関節の可動域が通常の関節と比べて2分の1以下に制限された
後遺障害の内容 | 両足の足指の全部の用を廃したもの |
---|---|
自賠責保険金額 | 1051万円 |
労働能力喪失率 | 56% |
後遺障害の内容 - 両足の足指の全部の用を廃したもの
自賠責保険金額 - 1051万円
労働能力喪失率 - 56%
後遺障害の内容 | 一足の足指の全部の用を廃したもの |
---|---|
自賠責保険金額 | 616万円 |
労働能力喪失率 | 35% |
後遺障害の内容 - 一足の足指の全部の用を廃したもの
自賠責保険金額 - 616万円
労働能力喪失率 - 35%
後遺障害の内容 | 一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの |
---|---|
自賠責保険金額 | 224万円 |
労働能力喪失率 | 14% |
後遺障害の内容 - 一足の第一の足指又は
他の四の足指の用を廃したもの 自賠責保険金額 - 224万円
労働能力喪失率 - 14%
後遺障害の内容 | 一足の第二の足指の用を廃したもの 第二の足指を含み二の足指の用を廃したもの又は第三の足指以下の三の足 指の用を廃したもの |
---|---|
自賠責保険金額 | 139万円 |
労働能力喪失率 | 9% |
後遺障害の内容 - 一足の第二の足指の用を廃したもの
第二の足指を含み二の足指の用を廃したもの又は第三の足指以下の三の足
指の用を廃したもの 自賠責保険金額 - 139万円
労働能力喪失率 - 9%
後遺障害の内容 | 一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの |
---|---|
自賠責保険金額 | 75万円 |
労働能力喪失率 | 5% |
後遺障害の内容 - 一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの
自賠責保険金額 - 75万円
労働能力喪失率 - 5%
自分の後遺障害が等級表に記載されていない時の対応
被害者の方が負った後遺障害が等級表に記載されていない場合は、どうすればいいのでしょうか?
たとえば、12級8号は「長管骨に変形を残すもの」ですが、両下肢に変形が残ってしまった場合の記載はありません。
また、短縮障害の場合、片方の下肢についての記載はありますが、両下肢についての記載はありません。
こうしたケースでは、その程度に応じて、
・併合等級で認定される。
・等級表に記載のある後遺障害ともっとも近い系列の後遺障害における労働能力喪失率に相当する等級を準用して認定される。
といった対応などがとられることになります。
このような場合は、被害者ご自身で判断するのは難しいため、交通事故に強い弁護士に相談してみることをおすすめします。
【参考資料】「労働能力喪失率表」(国土交通省)
こちらの記事でも詳しく解説しています
後遺障害等級に不服があれば異議申立ができます
「認定された後遺障害等級は低いのではないか?」
「後遺障害等級が認定されないのはおかしい!」
といった場合、被害者の方は「異議申立」をすることができます。
異議申立は、損害保険料率算出機構(損保料率機構)に申請します。
注意していただきたいのは、この時、「納得がいかない」「等級を上げてほしい」とただ主張しても、新たな等級は認定されないということです。
正しい等級が認定されるためには、新たな診断書やCTスキャン、MRIの画像データなどが必要になります。
こうした資料を医師に作成してもらう必要があるわけですが、交通事故の後遺障害に詳しい医師でなければ正しい判断ができない可能もあります。
やはり、この場合も、交通事故に精通した弁護士に相談・依頼することで医師にも内容がスムーズに通り、適切な等級認定を受けることができます。
ですから、まずは一度、弁護士に相談してみることをおすすめします。
まとめ
今回は、交通事故で下肢に後遺障害が残った場合の後遺障害等級などについて解説しました。
お読みになって感じたと思いますが、後遺障害等級については判断が難しく、専門的な知識がないと正しく対応できません。
みらい総合法律事務所では随時、無料相談を受け付けています。
本記事のような下肢の後遺障害等級が認定された方は一度、ご相談ください。