交通事故による骨挫傷の後遺症と慰謝料を弁護士が解説
交通事故による骨挫傷(こつざしょう)は、外見上の異常が少なく、軽い打撲と誤解されやすい怪我です。
しかし、骨の内部では微細な損傷や出血が生じており、放置すると慢性的な痛みや神経症状など、後遺障害に発展するおそれがあります。
本記事では、弁護士の視点から、骨挫傷に伴う後遺症のリスクや慰謝料の算定基準、後遺障害認定の手続きについて詳しく解説します。
交通事故後に痛みが続く方、骨折がないのに違和感が残る方は、ぜひ参考にしてください。
目次
骨挫傷の原因と症状
骨挫傷は交通事故によって生じる損傷の一つで、骨折とは異なる特徴を持ちます。
治療をせずに放置すると後遺症につながる可能性があるため、症状を正しく理解し、適切な処置を行うことが重要です。
骨挫傷の定義と骨折との違い
骨挫傷とは、骨折には至らないものの、骨内部に微細な損傷や出血が生じている状態です。
骨折は骨の構造が断裂している状態であり、画像診断によって明確に判別されますが、骨挫傷では骨の連続性が保たれているため、レントゲンでは異常が確認できないことが多くあります。
そのため、レントゲンで骨折が見られなくても痛みが続く場合には、MRIなどによる確認が必要です。
骨挫傷の主な症状と発症部位
骨挫傷の症状には、局所的な痛み、腫れ、違和感、可動域の制限などがあります。
特に尾てい骨、膝、肘、足首など、衝撃を受けやすい部位に発症しやすく、座位や歩行などの日常動作に支障をきたすことがあります。
打撲と誤認されることもありますが、内部では骨髄の損傷が進行している可能性があるため、痛みが数日以上続く場合は骨挫傷を疑い、早めに医療機関で診察を受けることが推奨されます。
交通事故で起きる骨挫傷の
特徴と原因
交通事故では、骨折だけでなく、骨挫傷という見逃されがちな損傷が発生することがあります。
交通事故で骨挫傷が起こる
メカニズム
交通事故では、車両との接触や転倒などにより、尾てい骨や膝などに強い衝撃が加わることで骨挫傷が発生します。
また、膝などの関節をひねった際に骨同士がぶつかることで、骨挫傷が起きることもあります。
さらに、転倒を避けようとして無理な体勢をとった場合、関節に強い負荷がかかり、直接ぶつかっていない部位にも骨挫傷が生じる可能性があります。
このように、骨挫傷は衝突部位だけでなく、間接的な力の影響によっても発生するため、痛みがある箇所は広範囲に注意が必要です。
放置するとどうなる?
慢性化・神経症状の可能性
骨挫傷を放置すると、損傷部位の炎症が慢性化し、持続的な痛みや神経症状に発展することがあります。
特に尾てい骨周辺で発生した場合は、座るたびに痛みが生じるなど、日常生活の質に大きな影響を与えるケースもあります。
また、神経が圧迫されることで、しびれや感覚異常が現れることもあり、症状が長期化すると後遺障害として認定される可能性もあります。
こうしたリスクを避けるためにも、痛みが続く場合は見た目に異常がなくても骨挫傷を疑い、早期に医療機関で診察を受けることが重要です。
骨挫傷の治療方法と治療期間
骨挫傷は外見上の異常が少ないため、診断が遅れやすく、適切な治療が開始されないまま放置されるケースもあります。
こちらでは、骨挫傷に対する一般的な治療方法や通院の流れ、回復までの期間について詳しく解説します。
全治期間の目安と回復の段階
骨挫傷の全治期間は、損傷の部位や程度によって異なりますが、一般的には2週間から2か月程度とされています。
骨折ではないものの、骨内部には損傷が生じているため、初期段階では安静を保つことが重要です。
事故後の数日間は患部を冷却し、血流の滞りによる鬱血を防ぐ処置が推奨されます。
痛みが緩和されてきた段階では、徐々に可動域の回復を目指したリハビリを開始します。
特に尾てい骨など体重がかかる部位では、回復が遅れる傾向があり、長期的な通院が必要となる場合もあります。
一般的な治療内容と通院の流れ
骨挫傷の治療は、保存療法が中心です。
具体的には、安静の確保、鎮痛薬の処方、湿布や冷却による炎症の抑制などが行われます。
痛みが強い場合には、神経ブロックや理学療法が併用されることもあります。
通院頻度は週1〜2回程度が目安となりますが、症状の程度に応じて頻度を増やすなどして経過観察を行います。
損傷の程度は診察だけでは判断が難しいため、MRIなどの画像検査を用いて状態を確認し、治療方針を調整する必要があります。
症状が長引く場合の
対応と注意点
骨挫傷の痛みが長引く場合は、単なる炎症ではなく神経症状や骨髄の損傷が関与している可能性があります。
適切な治療を施さずに放置すると、症状が慢性化し、日常生活に支障をきたすだけでなく、後遺症として残る可能性もあります。
そのため、症状が改善しない場合は、医療機関の変更や画像診断の再実施など、早期の対応が必要です。
なお、自己判断で治療を中断すると、後遺障害の認定が受けられない可能性があるため、医師の指示に従って継続的な治療を行うことが重要です。
骨挫傷の後遺障害等級と
認定のポイント
骨挫傷による痛みや神経症状が長期化した場合、後遺障害として認定される可能性があります。
適切な認定を受けることで、慰謝料や逸失利益の請求につながるため、制度の理解と資料の整備が重要です。
後遺症と後遺障害の違い
後遺症とは、治療後も身体に残る症状全般を指し、痛み、しびれ、可動域の制限などが含まれます。
一方、後遺障害は、後遺症のうち自賠責保険制度に基づいて医学的・法律的に認定されたものを指します。
交通事故後に後遺症が残っても、後遺障害の認定を受けなければ、後遺障害に対する慰謝料や逸失利益を請求することができません。
また、認定には症状の持続性、画像診断、医師の診断書などの客観的資料が必要です。
症状の改善が見られない場合は、後遺障害の認定を受けることを前提とした準備が求められます。
後遺障害等級認定の基準と
申請手続き
後遺障害等級は、自賠責保険に基づき1級から14級までの等級で認定されます。
骨挫傷による症状が長期にわたり、医学的に証明可能な場合には、12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)または14級9号(局部に神経症状を残すもの)が認定される可能性があります。
申請には、後遺障害診断書、画像診断結果、通院記録などの資料が必要です。
医師に診断書の作成を依頼するだけでなく、必要に応じて弁護士のサポートを受けることで、申請の精度と認定の可能性を高めることができます。
医師の診断書と画像診断の役割
後遺障害認定において、医師の診断書は最も重要な資料の一つです。
診断書には、症状の持続性、治療経過、神経症状の有無などが詳細に記載される必要があります。
MRIやCTなどの画像診断は、骨挫傷の存在や神経への影響を客観的に示す証拠となります。
また、神経症状の後遺障害を証明するためには、「症状固定(治療を続けても症状の改善が見込めない状態)」となったことを示す必要があります。
その証明には、症状固定までの継続的な通院記録が不可欠です。
診断書の内容は認定の成否を左右するため、医師との十分なコミュニケーションを図り、資料の整合性を確保することが重要です。
交通事故の骨挫傷に対する
慰謝料の種類と相場
交通事故による骨挫傷では、治療期間や後遺障害の有無に応じて、請求できる慰謝料の種類が変わることがあります。
対象となる慰謝料の種類や算定基準を正しく理解することで、適正な補償を受けるための準備が整います。
骨挫傷における
主な損害賠償の内訳
骨挫傷の後遺障害に関する損害賠償項目には、主に精神的苦痛に対する慰謝料と、将来的な収入減に対する逸失利益があります。
慰謝料は、治療期間中の精神的負担に対する「入通院慰謝料」と、後遺障害が残った場合に等級に応じて支払われる「後遺障害慰謝料」に分類されます。
また、後遺障害によって労働能力が低下し、将来の収入が減少すると認められた場合には、「逸失利益」として損害賠償を請求することも可能です。
慰謝料算定の基準と相場感
慰謝料の算定には、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判基準)の3つがあります。
<慰謝料の算定基準>
自賠責基準 | 交通事故の被害者に対して、 自賠責保険が最低限の補償額を 算定するための基準です。 補償額は低く、十分な賠償を 受けるには不十分なケースが 多く見られます。 |
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任意保険基準 | 保険会社が独自に設定する基準で、自賠責基準より高額になる傾向が あります。 ただし、基準は会社ごとに異なる ため、金額の妥当性を判断するのが難しい場合も あります。 |
弁護士基準 (裁判基準) |
過去の判例に基づいて算定される 基準で、3つの中では最も高額な 慰謝料が認められる可能性が あります。 適用するためには、根拠となる 書類等の提出が求められます。 |
たとえば、後遺障害等級14級9号と認定された場合、自賠責基準の相場は32万円程度です。
一方、弁護士基準の相場は110万円程度と、認定された後遺障害の等級が同じでも、採用する基準によって2〜3倍の差が生じることがあります。
慰謝料交渉を有利に進める
弁護士の役割と時期
交通事故による骨挫傷では、治療、後遺障害の認定、慰謝料請求など、専門的かつ煩雑な手続きが必要になります。
弁護士に相談することで、法的・医学的な観点から適切なサポートを受けられ、正当な補償を得るための体制を整えることができます。
示談交渉で損をしないために
知っておくべきこと
慰謝料の金額は、示談交渉の内容によって大きく変動します。
保険会社は、自賠責基準や任意保険基準をもとに金額を提示することが多く、弁護士基準と比べて低額になる傾向があります。
被害者がこれらの基準の違いを理解していない場合、適正額よりも低い金額で示談が成立してしまうリスクがあります。
交渉を有利に進めるためには、通院記録、診断書、後遺障害認定書などの客観的資料を整備することが不可欠です。
また、弁護士に依頼することで、弁護士基準に基づいた主張が可能となり、慰謝料の増額につながる可能性が高まります。
弁護士が果たす
多面的な支援の役割
弁護士の支援は、単なる慰謝料の増額交渉にとどまりません。
保険会社とのやり取りを代行することで、被害者の精神的負担を軽減し、安心して治療に専念できる環境を整えます。
後遺障害の認定においては、必要な診断書や画像資料の収集・整備をサポートし、適正な等級認定の取得を目指します。
さらに、通院記録の整理や症状の経過管理など、法的根拠に基づいた資料作成を通じて、損害賠償請求の裏付けを強化します。
弁護士による包括的な支援により、手続きの精度と効率が向上し、結果として補償額の最大化が期待できます。
交通事故で骨挫傷を負ったら
弁護士に要相談
交通事故に遭った場合は、弁護士への相談を早期に検討することが重要です。
骨挫傷は外見に異常がないため軽視されがちですが、放置すると慢性痛や神経症状など、深刻な後遺症につながる可能性があります。
特に尾てい骨の損傷は日常生活への影響が大きく、後遺障害の認定や慰謝料請求には、医学的根拠と法的知識が不可欠です。
正当な補償を受けるためにも、交通事故に詳しい弁護士に早い段階で相談し、証拠の整理や交渉を専門的に進めることが大切です。
交通事故による骨挫傷の後遺症でお困りの場合は、まずは一度、みらい総合法律事務所の無料相談をご利用ください。
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代表社員 弁護士 谷原誠