注意!交通事故慰謝料の3つの計算基準
目次
【解説動画】交通事故で高額の弁護士基準で示談するために大切なこと
交通事故の被害者の方が受け取ることができる損害賠償項目は様々ありますが、その中でももっともよく知られているのが慰謝料でしょう。
この慰謝料、加害者側との示談交渉では争いになることが多くあります。
その原因としては次のことがあげられます。
金額が大きくなるため
被害者側と加害者側で考えや利害が一致しないため
ここで大きく関わってくるのが、慰謝料などの計算で使われる「3つの計算基準」です。
一体どういうことでしょうか…解説していきます。
これから、交通事故の慰謝料の「3つの計算基準」について解説していきますが、その前に交通事故解決までの全プロセスを説明した無料小冊子をダウンロードしておきましょう。
みらい総合法律事務所で実際に解決した慰謝料増額事例
これから示談交渉に入るという被害者の方やご家族のために、みらい総合法律事務所で実際に解決した慰謝料増額事例をご紹介します。
弁護士を立てて示談交渉をすると、慰謝料などの損害賠償金はどのくらい増額するのか、参考にしてください。
55歳の男性が道路を横断していた際、直進車に衝突された交通事故。
被害者男性は、頭部皮下血種などの傷害を負い、後遺障害等級は12級14号が認定されました。
加害者側の任意保険会社は、示談金(損害賠償金)として48万1569円を提示。
被害者の方が交渉しましたが、「弁護士ではないから、弁護士基準の金額は提示できない」とのことで、保険会社は増額には応じませんでした。
そこで、みらい総合法律事務所に示談交渉を依頼。
弁護士が交渉し、最終的には340万円で解決した事例です。
当初提示額から、約7倍に増額したことになります。
自転車で走行中の79歳女性が、後方から自動車に衝突された交通死亡事故。
ご遺族が加害者側の任意保険会社と交渉すると、保険会社は示談金として2017万6744円を提示。
この金額の妥当性を確認するため、みらい総合法律事務所の無料相談を利用したところ、弁護士の見解は「金額が低すぎる」というものだったため、示談交渉のすべてを依頼されました。
弁護士が保険会社と交渉し、弁護士(裁判)基準に準じる金額まで増額したため、示談成立。
約2000万円増額の4000万円で解決した事例です。
35歳の男性がバイクで交差点に進入した際、対向右折車に衝突され、右鎖骨遠位端骨折などのケガを負った交通事故。
治療のかいなく症状固定となり、右肩関節可動域制限の後遺症が残り、後遺障害等級12級6号が認定。
加害者側の任意保険会社は治療費などの既払い金の他に、慰謝料などの損害賠償金として476万0806円を提示しました。
この金額が正しいものかどうか判断できなかった被害者の方が、みらい総合法律事務所の無料相談を利用。
弁護士からは、「まだ増額は可能」との意見があったことから、示談交渉を依頼することにしました。
弁護士が保険会社と交渉したところ、弁護士(裁判)基準で妥結し、当初提示額から約2倍に増額の1016万0427円で解決した事例です。
まずは知っておきたい交通事故の慰謝料の基礎知識
交通事故の被害者の方、ご家族が受け取ることができる損害賠償金の項目のひとつが慰謝料です。
交通事故の慰謝料は、交通事故で負った傷害(ケガ)や後遺症、死亡などの苦しみや悲しみといった精神的苦痛を慰謝し、損害を償うために支払われるものです。
じつは慰謝料は1つではありません。
被害者本人に支払われるもののほかに、ご家族などの近親者に支払われるものなど全部で4つの種類があります。
治療費や逸失利益、将来介護費など、被害者の方が請求できる損害賠償項目はさまざまありますが、慰謝料は金額が大きくなることもあって、加害者側との示談交渉で争いになることが多いことに注意が必要です。
交通事故の慰謝料は全部で4種類!漏れなく請求する
(1)入通院慰謝料(傷害慰謝料)
交通事故で傷害(ケガ)を負い、入通院した場合に受け取ることができる慰謝料です。
対象となる期間は、ケガをしてから治療を続け、症状固定までとなります。
これ以上の治療を続けても完治しない状態を症状固定といい、主治医が診断します。
症状固定後は後遺症が残ってしまうため、被害者の方はご自身の後遺障害等級認定を受ける必要があります。
(2)後遺障害慰謝料
症状固定の診断がされると入通院慰謝料を受けることができなくなります。
しかし、後遺障害等級が認定されると、後遺障害慰謝料を受け取ることができるようになります。
つまり、症状固定の前後で交通事故の損害賠償のステージが変わっていくことを覚えておいてください。
後遺障害等級は、1級から順に14級までが設定されており、もっとも重度なのが1級です。
また、後遺障害が残った体の部位によって各号数が決められます。
【参考情報】
「自賠責後遺障害等級表」(国土交通省)
後遺障害等級認定の申請は、「事前認定」と「被害者請求」という2つの方法があります。
事前認定は、加害者が任意保険に加入していれば、その保険会社を通して手続きをしてもらう方法です。
被害者請求は、ご自身で自賠責保険に対して請求する方法です。
どちらの申請方法にも、それぞれメリットとデメリットがあるので、ご自身の経済状況や立場などによって選択するのがいいでしょう。
(3)死亡慰謝料
被害者の方が亡くなった場合に支払われるのが、死亡慰謝料になります。
死亡慰謝料は被害者の方に支払われるものですが、すでに亡くなっているため受取人は法的な相続人になります。
交通死亡事故の場合、加害者の刑事事件が終了する前に示談を成立させないほうがいいです。
というのは、先に死亡慰謝料などを受け取ってしまうと、裁判では「加害者は一定の償いをした」と判断されて刑事罰が軽くなってしまうことがあるからです。
また、裁判には「被害者参加制度」というものがあります。
加害者の刑事裁判に参加したい場合は一度、弁護士に相談してみることをおすすめしています。
【参考記事】
交通事故の被害者参加制度とは
(4)近親者慰謝料
被害者の方の近親者(ご親族)が被った精神的苦痛や損害に対して支払われる慰謝料です。
ただし、すべてのケースで認められるわけではありません。
両親(父母)や配偶者(夫・妻)、子供には、通常の場合、被害者ご本人への死亡慰謝料の2~3割の額が認められます。
その他、内縁の夫や妻、祖父母、兄弟姉妹に近親者慰謝料画認められる場合もあります。
なぜ交通事故の慰謝料でもめることが多いのか?
交通事故の示談交渉は、被害者側と加害者側が損害賠償金について話し合いで解決していくものです。
しかし、じつは示談交渉がすんなりと解決することは多くはありません。
もし、スムーズに解決したという人がいるなら、それは被害者の方が慰謝料などの損害賠償金の真実を知らなかったのか、あるいは低い金額で示談を成立させてしまったからかもしれません。
(1)被害者と加害者の利害は一致しない
被害者の方としては、突然の交通事故で健康を失い、精神的な損害も被ったのですから、損害賠償金はできるだけ多く償ってほしいと思うでしょう。
そこで示談交渉が必要になってくるのですが、加害者が任意保険に加入していれば相手はその保険会社になります。
では、加害者側の保険会社の考えはどうでしょうか。
保険会社というのは営利法人ですから、その大きな目的は利益の追求です。
被害者の方に支払う慰謝料などは会社の支出になるのですから、これをできるだけ低く抑えたいと考えます。
つまり、被害者側と加害者側では利害がまったく正反対で一致しないため、慰謝料は示談交渉での大きな争点のひとつになってしまうのです。
(2)慰謝料の金額は大きい
損害賠償金の内訳を見ると様々な項目があるのですが、その中でも慰謝料は金額が大きなものになります。
保険会社としては、減額できるのはどこかといえば…慰謝料や逸失利益(後遺症を負わなければ将来的に仕事で得ることができたはずの収入)など金額が大きい部分ということになります。
そのため、慰謝料が示談交渉での大きなポイントになることが多いのです。
示談交渉では保険会社の言うこと、提示金額を鵜呑みにして示談を成立させてしまうと、被害者の方は大きな損をしてしまうことになりかねないのです。
慰謝料の計算基準は3つ!違いをしっかり理解しておく
慰謝料などの損害賠償金の計算では、次の3つの基準が使われます。
どの基準で計算したかによって金額が大きく変わってくるので、その違いを理解することが大切です。
(1)自賠責基準
法律により、自動車やバイクを運転する人は自賠責保険への加入が義務付けられていますが、この自賠責保険による基準です。
3つの基準の中では、もっとも金額が低くなるのですが、それは自賠責保険が人身事故の被害者への最低限の補償のために設立されているからです。
加害者側の任意保険会社は、この基準で計算した金額を提示してくることもよくあります。
<自賠責保険の支払限度額>
被害者が死亡した場合:3000万円
傷害による損害の場合:120万円
傷害により後遺障害が残り、介護が必要な場合:4000万~3000万円
その他の後遺障害の場合:1級から14級の後遺障害等級に応じて3000万円~
75万円
「支払限度額1」
神経系統の機能、精神、胸腹部臓器への著しい障害により介護が必要な場合(被害者1名につき)
自賠責法別表第1
常時介護を要する場合 (後遺障害等級1級) |
最高で4000万円 |
---|---|
随時介護を要する場合 (後遺障害等級2級) |
最高で3000万円 |
「支払限度額2」
上記以外の後遺障害の場合
第1級:最高で3000万円~第14級:最高で75万円
自賠責法別表第2
第1級 | 3000万円 |
---|---|
第2級 | 2590万円 |
第3級 | 2219万円 |
第4級 | 1889万円 |
第5級 | 1574万円 |
第6級 | 1296万円 |
第7級 | 1051万円 |
第8級 | 819万円 |
第9級 | 616万円 |
第10級 | 461万円 |
第11級 | 331万円 |
第12級 | 224万円 |
第13級 | 139万円 |
第14級 | 75万円 |
(2)任意保険基準
ケガが重症で、後遺障害等級も重度の場合、自賠責保険から支払われる金額だけでは損害賠償金が足りないケースがあります。
そうした場合に備えて加入するのが任意保険で、各任意保険会社が独自に設定しているのが任意保険基準です。
各社が非公表としていますが、自賠責基準より少し高いくらいの金額になるように設定されていると考えられます。
(3)弁護士(裁判)基準
過去の多くの判例から導き出されている基準で、法的根拠がしっかりしているため、3つの中でもっとも高額になります。
弁護士が被害者の方の代理人として加害者側に主張するのが、この基準で計算した金額であり、裁判でも認められる可能性が高いものです。
本来は、弁護士(裁判)基準で計算した金額が被害者の方が受け取るべき正しい慰謝料になります。
自賠責基準と弁護士(裁判)基準の金額の違いを知る
実際の慰謝料は、どのくらいになるのでしょうか?
ここでは、例としてもっとも金額の低い自賠責基準と、金額の高い弁護士(裁判)基準で入通院慰謝料を計算してみます。
各基準で計算した金額の違いを知って、示談交渉に備えましょう。
(1)自賠責基準による入通院慰謝料
①入通院慰謝料は日額が決まっている
自賠責基準での入通院慰謝料は、1日あたりの金額が4300円と定められています。
そのため、慰謝料の対象となる入通院の日数によって金額が決まります。
<入通院慰謝料の計算式>
4300円(1日あたり) × 入通院日数
= 入通院慰謝料
※改正民法(2020年4月1日施行)により改定されたもので、2020年3月31日以前に発生した交通事故の場合は4200円(1日あたり)で計算する。
②入通院慰謝料は対象となる日数に注意
入通院をして治療した場合は、対象日数に注意が必要で、次のどちらか短いほうが採用されます。
A)「実際の治療期間」
B)「実際に治療した日数×2」
たとえば、入院せず、治療期間が4か月(120日)で、平均5日に1回(計24日間)通院した場合で考えてみます。
A)4300円×120日=516,00円
B)4300円×(24日×2)
=206,400円
となるので、
入通院慰謝料はB)の206,400円が採用されることになります。
なお、自賠責保険では後遺症が残らなかったケガの場合は、支払いの上限金額が120万円になります。
治療費や入通院慰謝料などで120万円を超えてしまう場合、その分は加害者側の任意保険会社に請求しますが、保険会社が認めない場合は交渉をしていく必要がります。
(2)弁護士(裁判)基準による入通院慰謝料
弁護士(裁判)基準での入通院慰謝料は計算が複雑なため、日弁連交通事故相談センター東京支部が発行している『損害賠償額算定基準』に記載されている算定表を用います。
この算定表は弁護士や裁判所も使用するもので、ケガの程度によって「軽傷用」と「重傷用」の2種類の算定表があります。
「弁護士(裁判)基準による入通院慰謝料の算定表(むち打ちなど軽傷用)」
「弁護士(裁判)基準による入通院慰謝料の算定表(重傷用)」
たとえば、入院は0、治療期間が4か月(120日)の場合、軽傷用の「入院0か月」と「通院4か月」が交わったところの数字「67万円」が弁護士(裁判)基準による入通院慰謝料になります。
弁護士(裁判)基準と自賠責基準では3倍以上も金額が違ってくる場合もあるのですから、やはり弁護士(裁判)基準で示談解決することが重要になってくるのです。
後遺障害慰謝料と死亡慰謝料の相場金額を知っておく
(1)後遺障害慰謝料も弁護士(裁判)基準が断然高くなる!
後遺症が残ってしまったことによる精神的苦痛の程度は事故ごと、被害者ごとで違います。
そのため、各事案によって個別に判断するのが難しく、等級認定までに膨大な時間がかかってしまうという問題もあります。
すると、被害者の方は慰謝料をいつまでも受け取ることができないという弊害が起きてしまうことから、後遺障害慰謝料は次の表のように概ねの相場金額が、あらかじめ設定されています。
<自賠責基準・弁護士(裁判)基準による後遺障害慰謝料の金額表>
たとえば、むち打ち症では12級か14級が認定されるのですが、12級では自賠責基準と弁護士(裁判)基準の違いは196万円にもなります。
やはり、弁護士(裁判)基準で示談解決するのが重要だということがおわかりいただけるでしょう。
(2)死亡慰謝料の相場金額にも注意が必要
死亡慰謝料も基準によって金額が違ってきます。
また、相場金額というものを知っておくことで、被害者の方が提示された金額が適正なものなのかどうかの判断ができると思います。
①自賠責基準による死亡慰謝料の相場金額
自賠責保険における死亡慰謝料は、「被害者本人の死亡慰謝料」と「ご家族などの近親者慰謝料」の合算として扱われます。
・被害者本人の死亡慰謝料:400万円(一律)
・近親者慰謝料:配偶者・父母(養父母も含む)・子(養子・認知した子・胎児も含む)の人数によって金額が変わります。
1人の場合/550万円
2人の場合/650万円
3人の場合/750万円
※被扶養者の場合は上記の金額に200万円が上乗せされます。
②弁護士(裁判)基準による死亡慰謝料の相場金額
被害者の方の家庭での立場の違い等によって、次のように相場金額が設定されています。
被害者が一家の支柱の場合 | 2800万円 |
---|---|
被害者が母親・配偶者の場合 | 2500万円 |
被害者がその他(独身者・幼児・高齢者など)の場合 | 2000万~2500万円 |
- 被害者が一家の支柱の場合
- 2800万円
- 被害者が母親・配偶者の場合
- 2500万円
- 被害者がその他(独身者・幼児・高齢者など)の場合
- 2000万~2500万円
ただし、事故の状況、加害者の悪質性などによっては慰謝料額が増額する場合があります。
正しい慰謝料額がわからない、加害者側との示談交渉が進まない、といった場合は、交通事故に強い弁護士に相談してみることをおすすめします。
ここまでお話ししてきたように、慰謝料などの損害賠償金は弁護士(裁判)基準での金額で解決するのが大前提です。
みらい総合法律事務所は、随時、無料相談を行なっています。
まずは一度、相談をしてみて、本当に交通事故に強い弁護士を実感してみてください。