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交通事故の脊柱圧迫骨折(頸椎・胸椎・腰椎)で慰謝料が増額した3つの解決事例

最終更新日 2021年 10月28日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

交通事故の脊柱圧迫骨折(頸椎・胸椎・腰椎)で慰謝料が増額した3つの解決事例

交通事故の衝撃で椎体が砕ける「脊柱圧迫骨折」は、慰謝料等が高額化する重篤な症状のひとつです。

治療のかいなく脊柱変形が見られることが多く、痛みや動きづらさを慢性的に覚え、結果として仕事や家事への完全復帰を断念せざるを得なくなる可能性すらあります。

問題は、深刻な影響が懸念されるにも関わらず、慰謝料等として妥当性のない低い金額が提示されやすい点です。

その原因として、獲得した等級が低すぎたり、慰謝料算定で加害者に有利な事情ばかり考慮されていたりする可能性が考えられます。

適切な対応で大幅な増額に繋がったケースが少なくないことから、加害者への請求は決して妥協すべきではありません。

本記事では、脊柱圧迫骨折の損害賠償請求で増額解決に至った事例と共に、後遺障害等級認定の基準や示談のポイントを紹介します。


【動画解説】 交通事故の脊柱圧迫骨折における慰謝料獲得法

脊柱圧迫骨折とは


脊柱圧迫骨折とは、交通事故や高所からの転落によって力が加わり、椎体(椎骨のうち円柱のような形をしている部分)が圧迫で潰された状態を指します。

損傷部位を撮影してみると、損傷部分の高さが減り、椎体全体が変形して楔型になっているのが一般的です。

なお、「圧迫骨折」は、損傷で生じた骨片が脊柱管を圧迫するには至っていない点で、「破裂骨折」よりは軽度とされています。

その特徴に伴い、感覚麻痺等の神経症状は通常見られません。

また、損傷した椎体の場所により、「頸椎圧迫骨折」「胸椎圧迫骨折」「腰椎圧迫骨折」等と称される場合もあります。

付け加えると、圧迫骨折の症例全体では、「尻もちをつく」「勢いよく前屈する」等の軽微な事故で発生するものが多くあります。

骨粗鬆症や加齢の影響で骨がもろくなっていると、こうした日常的な動作にも耐えられず、骨折に至ってしまうのです。

個別のケースで今後の対応(治療方針等)を決める時は、体質と事故のどちらが原因なのか、厳格に区別しなければなりません。

脊柱圧迫骨折の後遺症

圧迫骨折の症例では、治療の末に骨が癒合しても、脊柱に変形を残す場合が多くあります。

脊柱変形の影響は、頸椎なら頭部・胸椎や腰椎なら体幹とのように、それぞれのバランスを保ち動かす機能に及びます。

主観的には、痛みや動かし辛さが慢性的に生じたり、身体を支持するため装具が必要になったりする等、生活上の支障は回避できません。

また、治療の過程では、骨癒合が遅れる「遅延治癒」や、癒合が停止して骨がぐらぐらとした状態になる「偽関節」等と診断される可能性があります。

より重篤なのは、骨折が進行して神経圧迫に至り、通常ないとされる麻痺等の症状が生じてしまうケースです。

【脊柱圧迫骨折による後遺症の例】
・立つ・座る・お辞儀する等の動作が制限される
・上記動作をしようとすると、つっぱったり痛くなったりする
・杖がないと歩けない(歩行障害)
・歩行中に脚が痺れる、力が入らなくなる(間欠性跛行)
・失禁する、上手く排便できない(膀胱直腸傷害)
・疼痛や発汗の異常が生じる(CRPS/複合性局所疼痛症候群)

【参考記事】「脊椎椎体骨折」公益社団法人日本整形外科学会

脊柱圧迫骨折で交通事故慰謝料を増額できた事例


はじめに解説した症状から、交通事故で脊柱圧迫骨折を負った場合、被害者に支払われるべき額(慰謝料・逸失利益・将来介護費用等)は相当に高額化します。

問題は、出来るだけ金銭負担を減らしたいと考える加害者によって、著しく低く妥当性のない金額が提示されやすい点です。

実際、提示額に疑問を抱く等して被害者が弁護士に依頼したケースでは、示談や訴訟を通じて適正額への増額に至ったものが多くあります。

以降で紹介するのはそうした事例のごく一部に過ぎませんが、弁護士相談前の提示額の低さに加え、交渉でもめやすい部分について理解できます。

【後遺障害等級11級】50歳男性が約1200万円の増額に成功した例

50歳男性が自動車で進行していたところ、急に車線変更してきた車に衝突された事故です。

被害者は脊柱変形の後遺症を負い、後遺障害等級11級に認定されました。

加害者側の保険会社は当初656万0209円の支払いを提示しており、この金額について弁護士は「増額可能」と判断しました。

その後、みらい総合法律事務所が加害者との交渉にあたり、訴訟対応も粘り強く行った結果、最終的には1825万円(約1200万円増額)で解決しています。

この事例では、逸失利益・慰謝料・過失割合の3つが争点となりました。

【後遺障害等級11級→8級】異議申立で約1500万円の増額に成功した例

46歳男性が自転車で走行していたところ、対向してきたバイクに衝突された事故です。

被害者は第三腰椎圧迫骨折等の重傷を負い、治療のかいなく脊柱変形の後遺症(後遺障害等級11級)が生じました。

みらい総合法律事務所への相談のきっかけは、保険会社から388万円7840円の支払いを提示され、妥当性に疑問を持ったことです。

対応した弁護士がその判断に沿って異議申立をした結果、より上位である8級に認定されました。

その後の保険会社との交渉は決裂し、訴訟に発展しましたが、最終的には1819万円(約1500万円増額)で解決しています。

弁護士による的確な対応で、結果として多額の損失を避けられた事例です。

【後遺障害等級6級】32歳男性が3300万円の獲得に成功した例

32歳男性がバイクで直進中、急発進したタクシーに衝突された事故です。

被害者は胸椎圧迫骨折の重傷を負い、治療のかいなく脊柱変形の後遺症(後遺障害等級6級)が生じました。

弁護士に相談したきっかけは、タクシー会社の対応に不信感を覚えたことです。

状況を受け、みらい総合法律事務所が等級認定の申請から実施しましたが、やはり加害者との交渉は激しい抵抗に遭って難航しました。

しかし、訴訟まで粘り強く対応した結果、3300万円を獲得し解決しています。

本事例が難航したのは、加害者側が「被害者の労働能力喪失率は30%に過ぎない」と強弁するのに加え、被害者に収入増が見られたことが原因です。

【参考記事】みらい総合法律事務所の解決実績はこちら

後遺症の状況やその影響につき、経験・知識共に豊かな弁護士によって具体的事実に基づく立証がなされた結果、納得できる金額の獲得に成功しています。

脊柱圧迫骨折の慰謝料が低くなる理由


それでは、交通事故に遭い脊柱圧迫骨折という重い診断が下されたにも関わらず、解決事例のように当初低い金額が提示されるのは何故でしょうか。

理由として、下記で挙げるものが考えられます。

・保険会社の独自基準で算定されている
・後遺症による生活・収入への影響が過小評価されている
・既往症(骨粗鬆症等)を理由に「素因減額」が主張されている
・被害者の過失割合が大きく評価されている
・獲得した後遺障害等級が適切でない

慰謝料で損をする直接的な原因は、自力での交渉です。

事故被害者がもらい受ける額は、後遺症や事故の状況、さらに事故以前の被害者の状況等を総合的に勘案し、「弁護士基準」(裁判基準)に沿って検討しなければなりません。

これには知識と経験が不可欠であり、身の回りの事例しか知らない被害者とその家族だけでは困難です。

対する加害者は、ほとんどの場合、損害賠償請求の対応に慣れた保険会社が主張を整理し、示談にあたります。

このような当事者間のスキルの差が、支払いの減額を一方的に飲まされる原因になるのです。

脊柱圧迫骨折の等級認定基準


交通事故で慰謝料等を最大限獲得するために、何よりもまず症状に合う後遺障害等級を得なければなりません。

圧迫骨折による脊柱変形が認定され得る等級は、その後遺症の程度により、原則として6級5号・8級相当・11級7号のいずれかです。

なお、平成16年7月以降に発生した交通事故における等級認定基準は、さかのぼること同年6月に見直された労災の基準に準じています。

左記基準では、頸椎・胸椎・腰椎等の圧迫骨折による後遺症全般を「変形障害」「運動障害」「荷重障害」の3つに分類した上で、それぞれX線撮影(レントゲン)等による画像所見を重視しつつ、以下のように認定します。

変形障害の認定基準

変形障害に関しては、脊柱の後彎または側彎の程度を「著しい変形」「中程度の変形」「変形を残す」の3段階で評価されます(下記参照)。

なお、後湾の程度を捉える時は、椎体の前方(腹側)の圧壊を原因とする場合、圧壊部分の高さと同椎体の後方部分の高さを比較する手法を用います。

一方の側彎に関しては、「コブ法」で変形の角度を測ります。

【6級】「せき柱に著しい変形を残すもの」とは
①2個以上の椎体の前方椎体高が「著しく減少※」し、後彎が生じているもの
②1個以上の椎体の前方椎体高が「減少※」して後彎が生じ、かつ、側彎度が50度以上となっているもの

※「著しく減少した」とは…
(A)減少した全ての椎体の後方椎体高の合計から、(B)減少後の前方椎体高の合計を引き、その結果がAの1個当たりの高さ以上であること

※「減少した」とは…
(A)減少した全ての椎体の後方椎体高の合計から、(B)減少後の前方椎体高の合計を引き、その結果がAの1個当たりの高さの50%以上であること

【8級】「せき柱に中程度の変形を残すもの」とは
①6級に認定される変形障害のうち②に該当する後彎が生じているもの
②側彎度が50度以上であるもの
③環椎または軸椎の変形や固定(環椎と軸椎との固定術が行われた場合含む)により、A~B※のいずれかの状態になっているもの

※要件は以下の通りです。
A 60度以上の回旋位となっているもの
B 50度以上の屈曲位または60度以上の伸展位となっているもの
C 側屈位で、「矯正位の頭蓋底部の両端を結んだ線」と「軸椎下面との平行線が交わる角度」が30度以上の斜位となっているもの

【11級】「せき柱に変形を残すもの」とは
①画像検査でせき椎圧迫骨折等が確認できるもの
②せき椎固定術が行われたもの※
③3個以上のせき椎につき、椎弓切除術等の椎弓形成術を受けたもの

※移植した骨が脊椎に吸収されたものを除く

【参考情報】国土交通省「自賠責後遺障害等級表」

運動障害の認定基準

運動障害に関しては、画像所見と処置の内容が①~③に当てはまっていれば等級認定の対象です。

かつ、頸部や胸腰椎の可動域を「著しい運動障害を残す」「運動障害を残す」の2段階で評価する手法により、6級または8級に認定されます。

①画像検査により、頸椎または胸腰椎に圧迫骨折等が残っていると確認できる
②頸椎または胸腰椎に脊椎固定術が行われた
③項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められる

【6級】「せき柱に著しい運動障害を残すもの」とは
→上記①~③のいずれかに該当し、かつ、頸部および胸腰部が「強直した」場合

【8級】「せき柱に運動障害を残すもの」とは
→上記①~③のいずれかに該当し、かつ、頸部または胸腰部の可動域が「参考可動域角度の2分の1以下に制限」された場合

荷重障害の認定基準

荷重障害とは、自分で身体を支えられない後遺症を指します。

等級認定の審査の対象となるのは、「画像所見等から原因が明らか」かつ「硬性補装具を常に必要とする場合」です。

提出された資料から荷重障害と判断された場合には、障害が現れた部位により6級または8級に認定されます。

【荷重障害】後遺障害等級6級に認定されるもの
→頸部と腰部の「両方」の保持に困難があるもの

【荷重障害】後遺障害等級8級に認定されるもの
→頸部または腰部の「いずれか」の保持に困難があるもの

脊柱圧迫骨折の診断方法

脊柱圧迫骨折の診断では、初診からX線撮影・MRI撮影の両方を実施し、経時的かつ立体的な変化を捉える必要があります。

「経時的」とするのは、急性期には椎体がそれほど変形していなくとも、自重と骨内部の損壊が複雑に絡み、徐々に圧壊が進行する可能性が考えられるからです。

急性期のX線写真だけでは、せいぜい僅かな椎体の突出や断裂しか確認できず、専門医でも圧迫骨折を見落としてしまいかねません。

そして、このような検査の不足・不備は、適正な後遺障害等級を獲得できない原因になります。

また、関連医学会の検討で作成した「椎体骨折評価基準」に沿って診断されるかどうかも、後遺障害等級認定の申請で考慮しなければなりません。

なお、上記の評価基準は平成24年に改訂されています。

改訂版では、①椎体骨折を簡便に判定する半定量的評価方法(SQ法)の導入、②X線写真で椎体の傾斜や立体構造を考慮すべきこと、③MRI画像の評価方法の3つが追記され、より早期かつ正確な診断が促されました。

【参考記事】
「脊椎圧迫骨折(脊椎椎体骨折)」ドクターズファイル

脊柱圧迫骨折の後遺障害慰謝料


脊柱圧迫骨折で後遺障害等級に認定された場合は、被害者の精神的苦痛にかかる「後遺障害慰謝料」に加え、労働能力に伴って失われた将来の収入である「逸失利益」を請求できます。慰謝料の目安と労働能力喪失率は、下記表のように定められています。

後遺障害
等級
自賠責基準の
慰謝料
弁護士基準の
慰謝料
労働能力喪失率
6級5号 512万円 1180万円 67%
8級相当 331万円 830万円 45%
11級7号 136万円 420万円 20%

表中の「自賠責基準の慰謝料」は、最低保障額にすぎません。

加害者から自賠責基準とそう遠くない金額を提示される例も少なからず見られますが、脊柱変形等の後遺症に苦しめられる身としては、到底受け入れられるものではないでしょう。

提示された金額に少しでも違和感を覚えたら、弁護士基準による算定額をベースに個別検討し、少なくとも「請求できる額」をはっきりとさせるべきです。

【参考記事】
交通事故の慰謝料で被害者がやってはいけない6つのこと

脊柱圧迫骨折の示談交渉で争点になりやすいポイント


交通事故の損害賠償では、提示額が低すぎると訴えても、なお加害者に有利な主張を繰り返されがちです。

特に、圧迫骨折後に生じる脊柱変形の後遺症では、失われた将来の収入である「逸失利益」の評価を巡って争いになるケースが多く見られます。

各等級で定められる喪失度が目安に過ぎないことから、失った労働能力を過小評価するような主張や、労働能力の喪失を全面的に認めない主張がなされるのです。

では、脊柱変形の後遺症を負った1人ひとりの被害者につき、どのように逸失利益を正しく評価すればいいのでしょうか。

この点に関し、赤い本講演※において判例を分析した小沼日加利裁判官から、訴訟では下記のような評価基準があるとの重要な見解が示されています。

・6級に認定されるケース
…等級表上の労働能力喪失率を前提として、脊柱変形による具体的症状や、事故前後の就労状況、既往障害の存在が考慮される。

・8級に認定されるケース
…脊柱の支持機能に対する支障が相当程度評価され、40%から20%台の労働能力喪失を認定される場合が多い。

・11級に認定されるケース
…6級や8級よりも脊柱の支持機能に対する支障の程度が軽微であることを前提に、より個別具体的に就労や日常生活への具体的影響がどの程度か、慎重に考慮する必要がある。

※2021年版「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」下巻収録分
→各等級の逸失利益における判断基準は、収録された講演録の内容を元に編集しています。

以上の小沼裁判官の分析から、たとえ多少違和感を覚える程度のごく軽い後遺症であっても、それをもって逸失利益=ゼロとは主張できないことが分かります。

6級に認定される重篤な症状は言うまでもなく、8級以下であっても、症状がもたらす生活上の困難を評価すべきです。

さらに言うと、逸失利益に関する交渉で難航するポイントは、失った労働能力の評価だけに留まりません。

加害者との話し合いで「労働能力喪失率に争いの余地がない」となると、算定で他に勘案される下記要素へと争点が移る可能性が考えられます。

・神経症状の有無
…通常はないとされる麻痺等の症状があるか

・被害者の職業
…労働能力の喪失は、実際にどの程度就労に支障をきたしているのか

・被害者の年齢
…加齢に伴って症状が緩解されたり、就労に慣れて支障が逓減されたりする可能性はあるか

上記いずれにしても、やはり個別具体的な状況を慎重に判断しなければなりません。

加害者がどう主張しようと、そのまま受け入れる必要は当然ありません。

弁護士に普段の生活を見てもらう等、丁寧に立証しつつ粘り強く交渉を進めることで、解決金の増額は十分見込めます。

脊柱圧迫骨折の器質的変化が争われた裁判例

脊柱圧迫骨折の後遺障害事案では、(1)骨折等の器質的変化が存在しているかどうか、(2)可動域制限の程度が器質的変化と対応しているかどうか、などが争点となります。

ここでは、脊柱圧迫骨折等の器質的変化が存在したかどうかが争われた裁判例をご紹介します。

器質的変化を肯定した裁判例

大阪地判平成11年4月20日(出典:交民集32巻2号643頁)

51歳タクシー運転手の男性の交通事故です。

第1腰椎椎体圧迫骨折等のケガを負い、自賠責後遺障害等級は、脊柱変形で11級7号が認定されました。

被告は、原告に第1腰椎椎体圧迫骨折は存しないとして争いましたが、裁判所は、後遺障害等級11級7号を認定し、労働能力喪失率14%、喪失期間5年間を認めました。

理由は以下のとおりです。

裁判所は、

・入院先の病院の医師は第1腰椎椎体部の腹側面に圧迫骨折を示唆する所見が認められると判断していること

・自賠責の顧問医も受傷日のX線写真上第1腰椎に楔状圧迫骨折が認められ、約3か月後のX線写真上楔状変化が認められたと判断していること

からは、腰椎部の画像は少なくとも第1腰椎椎体圧迫骨折があると判断してもおかしくはないものであるとしました。

また、

・本件事故態様(歩行中の原告の背中に、後進していた被告車両が衝突した)によれば、原告は後頭部や腰臀部に後ろからの衝撃を受けて前のめりに倒れたのであるから、腰付近を急激に前方向に折り曲げる力を受けたこと、本件事故直後、第1腰椎の棘状突起痛が非常に強かったことを考え併せると、右に述べたとおり、第1腰椎椎体圧迫骨折があると認定することができるとしました。

【本判決の分析】
本判決は、第1腰椎椎体圧迫骨折が事故後初診時には判明せず、その後に圧迫骨折を示唆する所見が認められたことから、被告が被告側医師の第1腰椎椎体圧迫骨折は存在しないという意見書を提出して争ったものです。

裁判所は、被告側医師の意見書にもかかわらず、入院先医師及び自賠責顧問医が骨折を認めていること、及び事故状況から圧迫骨折を認定したものと考えられます。

脊柱圧迫骨折で基準より低い労働能力喪失率が認定された裁判例


脊柱圧迫骨折では、骨折等の器質的変化が存在しているかどうかとともに、労働能力喪失率が争われることも多いです。

そして、裁判例の中には、自賠責後遺障害等級で認定された等級に対応する労働能力喪失率よりも低い喪失率を認定する裁判例も複数あります。

そこで、ここでは、そのような裁判例をご紹介します。

横浜地判平成20年4月17日(出典:自保ジャーナル1747号)です。

36歳男性会社員の交通事故です。

ケガは、第5頸椎破裂骨折(その後頸椎前方固定術の手術を受けた)、第2胸椎圧迫骨折で、自賠責後遺障害等級は、併合10級(①脊柱変形11級7号、②神経症状12級12号)が認定されました。

被告は、当該障害は、日常生活に全く影響していないことを理由として、後遺障害等級12級相当であると主張しました。

相場となる労働能力喪失率は27%であるところ、裁判所は、後遺障害等級は10級と認めたものの、労働能力喪失率は20%と認定しました。

裁判所は、被告が指摘するように日常生活に支障はないかもしれないが、

・長時間の労働、就労ということになると、現在の原告の就労状況からしても、デスクワークであっても、首に痛みが発生し、普通の労働時間(たとえば、朝9時に出勤し、午後6時まで働くこと)を維持することが難しい様子が認められる。

・職種としても、力を必要とする労働、肉体を使用する労働は困難であろう。

・特に、固定隣接椎間の変性による症状の悪化のおそれがあるため、体を動かすことの多い職種には就けないことが認められる。

・このような状況からすると、後遺障害による労働能力喪失は、首の痛みだけであり、局部に頑固な神経症状を残すことによる喪失のみであるということはできず、脊柱変形障害による就労の難しさも出ていると認められる。

【判決の分析】
本判決は、脊柱障害が日常生活に支障はないとはしながらも、当該後遺障害が就労に及ぼす支障について、現実の就労のみならず将来の転職まで考慮した上で喪失率を判断しており、参考になると考えられます。

まとめ

交通事故で重傷を負っても、なお加害者は一方的に支払い額を少なく見積もろうとしがちです。

相手からある程度高額と思える金額が提示されても、妥協すべきではありません。

脊柱圧迫骨折を負ったケースでは、画像検査で経時的・立体的に状態を捉えつつ、適切な等級認定に繋げるのが対応の第一歩です。

続く示談では、争点になりやすい逸失利益等の費目を中心とする丁寧な検証と根拠の提示が、慰謝料等の増額に繋がります。

紹介した増額事例のように、弁護士の経験と知識があれば、後遺障害等級認定の申請や異議申立の段階から適切に対処できます。

脊柱等の重要な部位に現れた後遺症と付き合う上で、出来るだけ慰謝料を確保すること以上に安心できる対応はありません。

示談についてほんの少しでも不安が生じたら、すぐに弁護士に相談しましょう。

【参考記事】
【脊椎圧迫骨折】交通事故の頸椎・胸椎・腰椎の後遺症と慰謝料増額事例