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交通事故の慰謝料を相場以上に増額させる方法

最終更新日 2022年 07月20日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

【動画解説】慰謝料が相場金額より増額する場合と獲得方法

目次

そもそも交通事故の慰謝料とは何なのか?

交通事故の被害者の方は、加害者に対して慰謝料などの損害賠償金を請求することができます。

ところで、この慰謝料とはどういうものか、ご存知でしょうか?

 

(1)慰謝料と損害賠償金は同じもの?

慰謝料と損害賠償金は同じものだと思っている方もいるかもしれませんが、じつはこれは別のものです。

正確にいうと、損害賠償金とは治療費や通院交通費、休業損害、慰謝料、逸失利益、葬儀費用など、さまざまな項目を合計した金額です。

つまり、損害賠償金という大きなくくりの中のひとつの項目に慰謝料がある、ということになります。

(2)交通事故の慰謝料は3種類ある!

慰謝料とは、簡単にいうと、精神的な苦痛を被ったことに対する損害賠償金のことです。

交通事故に関する慰謝料には、死亡慰謝料、後遺症慰謝料、傷害慰謝料の3種類があります。

「死亡慰謝料」

交通事故で被害者の方が死亡したときに、その方が受けた精神的苦痛に対して支払われるものが死亡慰謝料です。

被害者の方は、すでに亡くなってしまっているので、死亡慰謝料を受け取るのは「相続人」になります。

「後遺症慰謝料」

交通事故でケガをして、治療をしたにもかかわらず後遺症が残ってしまった場合には、将来的に後遺症と付き合っていかなければなりません。

後遺症慰謝料は、その精神的苦痛に対して支払われるものです。

「傷害慰謝料」

交通事故でケガをすると、痛みがあり、治療をしなければなりません。

その精神的苦痛に対して支払われるのが傷害慰謝料です。

(3)後遺障害等級は何のためにあるのか?

交通事故でケガ負った場合、まず治療をします。

入院するかもしれないし、退院後も通院することもあるでしょう。

そうすると、治療期間中、治療費や通院交通費、仕事を休んだ休業損害などの損害が発生しますが、それらも当然、交通事故の加害者に賠償してもらわなければなりません。

ところで、交通事故の示談交渉が始まるのは治療が終了してからです。

治療が終了して初めて損害額が確定し、慰謝料などを計算することができます。

治療が終了しても、後遺症が残ってしまった場合には、その後遺症に関する損害も賠償してもらわなければなりません。

そのためには、自賠責後遺障害等級認定を受ける必要があります。

後遺障害等級は1級~14級まで等級が分かれているのですが、慰謝料に関する示談交渉は、この後遺障害等級認定を受けてから行なうことになります。

【参考記事】
国土交通省「自賠責後遺障害等級表

また、被害者の方に後遺症が残った場合、後遺症がなければ将来もっと稼げたはずのお金を得ることができなくなってしまいます。

これを「逸失利益」といいます。

このような、さまざまな損害の合計が示談金としての損害賠償金ということになります。

後遺障害等級認定について、もっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

【参考記事】
後遺障害等級認定とは?認定の仕組みと異議申立のポイント

(4)慰謝料には相場がある!

本来、慰謝料の額については被害者の方が被った精神的損害について、それぞれの事故ごとの事情を考慮して決めていくべきです。

しかし毎回、事案ごとに慰謝料をいくらにするのかをゼロから考えていくのでは時間がかかりすぎてしまいます。

また、精神的な苦痛は人それぞれで客観的にわからないものであることから、裁判官の判断も難しく、そのため裁判官によって金額に大きな差が出てしまうようなことがあっては、交通事故の被害者のためにもなりません。

そこで、これまでの交通事故の裁判で認定された慰謝料額などから、似たような事案では大体いくらくらいの慰謝料を認めているのか、という慰謝料の「相場」が定められているのです。

交通事故の被害者の方は加害者側の保険会社と示談交渉をしなければならないわけですから、自分がいくら慰謝料をもらえるのか、その相場を知っておいたほうがいいでしょう。

慰謝料の相場を知らなければ、加害者側の保険会社と示談交渉しようにも、請求すべき金額がわかりません。

ですから、慰謝料などの損害賠償金の計算は、「保険会社に任せておけばいい」というものではない、ということを覚えておいてください。

みらい総合法律事務所の実際の解決事例を紹介


交通事故の示談交渉で弁護士が入るとどうなるのかを知っていただくためにも、みらい総合法律事務所で実際に解決した、慰謝料などの損害賠償金の驚きの増額事例をご紹介します。

解決事例①:後遺障害等級1級の46歳男性の慰謝料等が約1億9860万円増額

交通事故の被害により、46歳の男性が頚髄損傷の重傷を負い、四肢麻痺の後遺症が残ってしまった事例です。

自賠責後遺障害等級は、もっとも重い1級1号が認定され、これに対し加害者側の任意保険会社は慰謝料などの損害賠償金として7800万円を提示しました。

被害者の方は、この金額で示談するべきなのかどうか判断がつかなかったため、みらい総合法律事務所の無料相談を利用し、弁護士の意見を聞きました。

弁護士が検討したところ、「大幅な増額が可能」という見解だったことから、弁護士に委任し、裁判を行なうことを決意されました。

四肢麻痺の後遺障害があったため、慰謝料や将来の介護費用が争点となりましたが、弁護士が丁寧な立証を積み重ねた結果、最終的に当事務所弁護士の主張が認められ、約2億7700万円で解決。

当初提示額から約1億9860万円も増額したことになります。

解決事例②:後遺障害等級12級の46歳女性の慰謝料等が約11倍に増額

交通事故の被害により、46歳の女性(主婦)に嗅覚脱失の後遺障害が残ってしまいました。

自賠責後遺障害等級を申請すると12級が認定され、加害者側の任意保険会社は慰謝料などの損害賠償金として約89万円(既払金をのぞく)を提示しました。

被害者の方は、この金額が妥当なものかどうか確認するために、みらい総合法律事務所の無料相談を利用。

内容を精査した弁護士の見解は「増額可能」というものだったことから、示談交渉のすべてを依頼されました。

弁護士が保険会社と交渉を開始。

保険会社は、被害者の方が仕事に就いていない主婦であることを理由に逸失利益について争ってきましたが、最終的には弁護士の主張が認められ、約985万円で示談することができました。

当初提示額から約11倍に増額して解決した事例です。

解決事例③:85歳専業主婦の女性が1000万円の増額を獲得!

85歳専業主婦の女性の交通死亡事故。

事故の状況は、被害者女性が交差点を歩行していた際に右折車に追突されたというものでした。

加害者側の任意保険会社は、ご遺族に対し慰謝料などの損害賠償金として約2200万円を提示。

ご遺族は何度も示談交渉の場を持ちましたが保険会社が増額に応じないため、みらい総合法律事務所に示談交渉のすべてを依頼することにしました。

弁護士が保険会社と交渉したところ、最終的には当方の主張が認められ、約1000万円増額の3200万円で示談解決となりました。

ご遺族が交渉しても増額しなかったものが、弁護士が交渉したら約1000万円も増額したことになります。

慰謝料の計算で使われる3つの基準に要注意!


なぜ解決事例のように、弁護士が示談交渉に入ると慰謝料などの損害賠償金が増額することが多いのかというと、じつは交通事故の損害賠償には3つの基準があるからです。

①自賠責保険基準

交通事故の被害者の方に対する最低限の保障をするために自賠法によって定められているのが、自賠責保険基準です。

したがって、自賠責保険基準によって支払がなされても、被害者の方が得られる金額のすべてではない、というところに注意する必要があります。

②任意保険基準

各保険会社が、それぞれに定めている支払基準を任意保険基準といいます。

任意保険基準は、自賠責保険基準よりは高く、弁護士(裁判)基準より低く設定されているのが通常です。

③弁護士基準

被害者の方が裁判を起こしたときに、判決により認められる支払基準を弁護士基準といいます。

本来、この金額が被害者の方に支払われるべき金額となります。

弁護士基準での支払いを受けるべき理由


交通事故の被害者の方としては、弁護士基準で計算された示談金額(損害賠償金額)で示談を成立させるべきです。

では、弁護士基準による慰謝料は、どのように計算するのでしょうか。

慰謝料の相場は、日弁連交通事故相談センター東京支部が毎年発行している「損害賠償額算定基準」という本に記載されています。

この本は表紙が赤いため、通称「赤い本」と呼ばれ、交通事故を扱う裁判官や弁護士が必ず持っていて参考にするものです。

ただし、赤い本に記載されている慰謝料の相場は、あくまで目安であって、必ずその金額にしなければならない、というものではありません。

最終的には、具体的な事故の事情によって認定されることになるので、相場よりも低い慰謝料額になる場合もあります。

逆に、それぞれの交通事故の事情によって、相場より高い慰謝料が認められる場合もあります。

ところで、保険会社が提示してくる慰謝料などの示談金は、弁護士基準による相場よりも少ない金額で提示してくる場合が多いので注意が必要です。

つまり、保険会社は弁護士基準ではなく、自賠責基準や任意保険基準で示談金を提示してくると思っておいたほうがいいということです。

ですから、示談金額の提示のときに保険会社の担当者が、「この金額が限界です」と言った場合、それは支払われるべき賠償額の限界という意味ではなく、「保険会社の担当者として、私が提示できる金額の限界」という意味になるのです。

被害者の方やご家族としては、本当の限界、つまり弁護士基準の金額は、もっと高いところにあるということを覚えておいてください。

なぜ保険会社は低い金額の慰謝料を提示してくるのか?


保険会社が適正な基準である弁護士基準で慰謝料などの示談金を提示しないのは、なぜでしょうか?

それは、保険会社の多くが営利企業だからです。

営利企業は利益を上げることが至上命題ですから、売上を伸ばすと同時に支出を減らさなければなりません。

保険会社の支出の多くは保険金の支払いです。

つまり、保険金の支払いを減らせば減らすほど保険会社は儲かるわけですから、被害者の方に対する慰謝料の提示も少なくなってしまうのです。

そして、実際に保険会社と交渉してみればわかりますが、いくら被害者本人が頑張って交渉しても、保険会社はなかなか慰謝料を増額してくれません。

なぜなら、示談交渉はあくまで話し合いなので、保険会社としては「これが限界です」と言い続ければ、それ以上増額する必要に迫られないためです。

ところが、被害者の代理人として弁護士が出てきた場合は状況がガラリと変わります。

弁護士と慰謝料の示談交渉をして、示談が決裂したら、どうなるでしょうか?

裁判を起こされてしまいます。

そして、任意保険基準より高額の弁護士基準で慰謝料を支払わなければいけなくなります。

さらに、判決までいったときは、事故日から支払日までの遅延損害金や弁護士費用相当額を余分に支払わなければならなくなります。

おまけに、裁判になると、保険会社も弁護士に依頼しないといけないので、その弁護士費用もかかってしまいます。

保険会社としては裁判になるのは損なので、被害者側で弁護士が出てくると慰謝料の増額に応じるようになるのです。

被害者の方やご家族としては納得できないところだと思いますが、これが交通事故の示談交渉の現実なのです。

保険会社が低い金額を提示してくる理由と弁護士が示談交渉すると慰謝料が増額する理由について、もっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

【参考記事】
交通事故で弁護士が示談交渉すると慰謝料が増額する理由

弁護士基準における慰謝料の相場額とは?


ところで、日本の裁判には、弁論主義と処分権主義があり、当事者が主張したことしか判決の基礎にならないし、判決で認定する範囲も当事者が主張した範囲に限られる、ということをご存知でしょうか?

つまり、相場より高い額の慰謝料が認められる可能性がある事案であったとしても、被害者側の主張が相場の金額であった場合、裁判官が「この場合は相場よりも高額な慰謝料が認められますよ」などとは言ってはくれない、ということです。

たとえば、慰謝料の相場が1000万円である事案で、慰謝料を増額させる特別な事情があるので、慰謝料として1200万円が認定される事案があるとします。

この場合、適切な慰謝料は1200万円ということになるのですが、被害者の方が慰謝料として相場の1000万円を請求したときは、裁判所は1000万円までしか慰謝料を認めることができないのです。

これは、被害者の方が弁護士に依頼した場合も同じです。

慰謝料増額に関して、どの弁護士でも詳しいわけではありませんから、交通事故に強くない、知識がない弁護士では、慰謝料増額事由に気づかない、という可能性もあります。

被害者側が弁護士に依頼した場合、その弁護士が請求した慰謝料額が基礎となり、その請求額以上の判決はでません。

ですから、仮に慰謝料が相場よりも多く認められる可能性がある事案の場合には、被害者側でその旨を積極的に主張していくことが、慰謝料を増額させる秘訣のひとつとなります。

では、ここからは、弁護士基準での慰謝料の相場と、どのような場合に慰謝料が増額される可能性があるのかについて説明したいと思います。

死亡慰謝料の相場

死亡慰謝料は、被害者の方が死亡した場合に支払われる慰謝料です。

死亡事故の場合、被害者の方は死亡していて損害賠償金を受け取ることができないため、被害者の方の相続人が受け取ることになります。

弁護士基準で定められている死亡慰謝料の相場は以下のようになっています。

被害者が一家の支柱の場合 2800万円
被害者が母親・配偶者の場合 2500万円
被害者がその他の場合 2000万~2500万円
被害者が一家の支柱の場合
2800万円
被害者が母親、配偶者の場合
2500万円
被害者がその他の場合
2000万~2500万円

これを見ると、死亡慰謝料は被害者の方の家庭での立場によって金額に差がつけられていることがわかります。

「被害者が一家の支柱」の場合とは、その被害者の方の家族が、主に被害者の方の収入によって生活している場合をいいます。

「被害者が母親、配偶者」の場合とは、その被害者の方が子育てを行なっていたり、家族のためにその家庭の家事全般を行なっていたりする場合をいいます。

「被害者がその他」の場合とは、被害者の方が独身の男女、子供、幼児等である場合をいいます。

また、死亡事故の場合は、被害者の方を亡くしたことにより近親者の方も精神的な苦痛を被ることが考えられますので、近親者固有の慰謝料も認められていますが、上記の基準額は原則として、この近親者慰謝料も含んだ金額となっています。

なお、ご遺族が受け取ることができる示談金は、この死亡慰謝料の他、死亡によって将来の収入を失うことから生じる逸失利益や葬儀料などの合計額となります。

死亡慰謝料の相場について、もっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

【参考記事】
必ず役に立つ!交通死亡事故の慰謝料の相場と増額方法

後遺症慰謝料の相場

後遺症慰謝料は、交通事故で後遺障害を負ったことによる精神的、肉体的苦痛に対して支払われる慰謝料です。

後遺症が残った場合には、自賠責後遺障害等級認定を受けることになります。

自賠責後遺障害等級は、1級~14級に分類されており、1級が一番重い後遺障害になります。

弁護士基準で定められている後遺症慰謝料の相場は、認定された後遺障害等級に応じて、以下のようになっています。

後遺障害等級1級の場合
2800万円
後遺障害等級2級の場合
2370万円
後遺障害等級3級の場合
1990万円
後遺障害等級4級の場合
1670万円
後遺障害等級5級の場合
1400万円
後遺障害等級6級の場合
1180万円
後遺障害等級7級の場合
1000万円
後遺障害等級8級の場合
 830万円
後遺障害等級9級の場合
 690万円
後遺障害等級10級の場合
 550万円
後遺障害等級11級の場合
 420万円
後遺障害等級12級の場合
 290万円
後遺障害等級13級の場合
 180万円
後遺障害等級14級の場合
 110万円

このように、自賠責後遺障害等級によって慰謝料額の相場が決められていることから、正しい後遺障害等級認定を受けることがとても大切になってきます。

正しい後遺障害等級認定を受けるために必要なポイントについて、もっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

傷害慰謝料の相場

傷害慰謝料は、入通院慰謝料ともいい、交通事故でケガをして入院や通院を余儀なくされたことで被った精神的、肉体的苦痛に対して支払われる慰謝料です。

入通院慰謝料は算定が難しいので、実務においては、どの程度長い期間入院したか、どの程度通院したか、という日数によって慰謝料を計算することとしています。

前述の、弁護士(裁判)基準を説明する「赤い本」に入通院慰謝料表が記載されていて、入院期間と通院期間が交差する部分の金額を目安としています。

<赤い本 別表Ⅰ>

先にもお話したように、損害賠償金を計算するための弁護士基準はあくまでも相場なので、必ずこの金額になるというわけではなく、相場よりも高額な慰謝料が認められる場合もあります。

傷害慰謝料と後遺障害慰謝料について、もっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

【参考記事】
【慰謝料計算】交通事故の入通院慰謝料と後遺障害慰謝料を解説

相場金額より慰謝料が増額する条件とは?


慰謝料が相場より高額に認められる可能性のある事案は、大きくわけると次の3つが挙げられます。

・被害者の精神的苦痛がより大きいと思えるような場合
・被害者側に特別な事情がある場合
・その他の損害賠償の項目を補完するような場合

被害者側の精神的苦痛がより大きいと思われる場合

被害者の方の精神的苦痛が通常の事故に比べて大きいと思われる場合には、慰謝料が相場よりも増額される可能性があります。

具体例としては次のようなものがあります。

・交通事故が加害者の無免許、飲酒運転、著しいスピード違反、赤信号無視などの悪質な行為を原因としたもの
・事故後に被害者を助けることなく、ひき逃げ等をしたもの
・事故後、遺族に暴言を吐いたり、反省の態度がまったく見えないもの

また、後遺症の場合は、障害の程度が重度で、被害者本人や、介護する親族の精神的負担が大きいと思われるような場合に、後遺症慰謝料が増額される傾向にあります。

裁判例には、次のものなどがあります。

<死亡慰謝料の裁判例>

【慰謝料増額の裁判例①】

大阪地方裁判所 平成25年3月25日判決
・死亡慰謝料額 4000万円
(相場は2800万円)

・概要

被害者が30歳男性会社員の事案。

加害者は無免許で飲酒運転であったうえ、事故後逃走し、約2.9㎞も故意に被害者を引きずって死亡させていて、通常の交通事犯の範疇を超えて殺人罪に該当する極めて悪質かつ残酷なものであること、引きずられながら絶命した被害者の苦痛苦悶は筆舌に尽くしがたいこと、まだ30歳にして養育すべき妻、子を残して突然、命を奪われた無念さは察するに余りあること等の事情を考慮し、本人分3500万円、妻子各250万円、合計4000万円の死亡慰謝料を認めた。

【慰謝料増額の裁判例②】

大阪地方裁判所 平成18年2月16日判決
・死亡慰謝料額 3900万円
(相場は2000万円~2500万円)

・概要

被害者が17歳・男子高校生の事案。

交通事故の加害者が免許停止処分後、長期間無免許状態で運転していたこと、飲酒運転が常態化し事故時も酩酊状態だったこと、同乗者の制止を無視して赤信号で交差点に進入したこと、衝突後、頭から大量の血を流して倒れている被害者に対して「危ないやないか」と怒鳴りつけ、持ち上げてゆすり、投げ捨てるように元に戻したこと等の事情を考慮し、本人分3000万円、父母各300万円、妹300万円、合計3900万円の死亡慰謝料を認めた。

【慰謝料増額の裁判例③】

東京地方裁判所 平成15年7月24日判決
・死亡慰謝料額 3400万円
(相場は2000万円~2500万円)

・概要

被害者が3歳と1歳の姉妹の事案。

交通事故の加害者が飲酒運転で縁石にぶつかりながら蛇行するなどして、高速道路の料金所の職員から注意されても無視して運転を続け、サービスエリアで飲酒。

さらに、渋滞のために減速した被害車両に追突して炎上させ、車両に閉じ込められた姉妹を焼死させた等の事情を考慮し、本人分2600万円、父母各400万円、合計各3400万円の死亡慰謝料を認めた。

死亡事故の慰謝料の増額について、もっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

【参考記事】
死亡事故の慰謝料増額法とは?示談交渉から被害者参加までの全知識

<後遺症慰謝料の裁判例>

【慰謝料増額の裁判例④】

東京地方裁判所 平成15年8月28日判決
・後遺症慰謝料額 4000万円
(後遺障害等級1級の相場は2800万円)

・概要
被害者は21歳の女性。

高次脳機能障害(1級3号)と1眼摘出(8級1号)により後遺障害等級併合1級の事案で、生死の境をさまよい6回の大手術を受けたこと、若くして重大な障害を負ったこと、外貌にも著しい醜状が残ったこと、両親の介護の精神的負担も重いこと等の事情を考慮し、本人分3200万円、父母各400万円の計4000万円の後遺症慰謝料を認めた。

【慰謝料増額の裁判例⑤】

千葉地方裁判所佐倉支部 平成18年9月27日判決
・後遺症慰謝料額 3800万円
(後遺障害等級1級の相場は2800万円)

・概要

被害者は37歳男性。

交通事故による遷延性意識障害により後遺障害等級1級3号の事案で、症状が重篤であること、加害者が酒気帯びでスピード違反であったなど事故態様が悪質であったこと等の事情を考慮し、本人分3200万円、父母各300万円、合計3800万円の後遺症慰謝料を認めた。

【慰謝料増額の裁判例⑥】

福岡地方裁判所 平成22年7月15日判決
・後遺症慰謝料額 3140万円
(後遺障害等級2級の相場は2370万円)

・概要
被害者は19歳男子高校生。

交通事故の結果、高次脳機能障害により後遺障害等級2級1号の事案で、将来にわたり食事や入浴等の介護や、外出時等の監視や声かけを必要とすること等の事情を考慮し、本人分2500万円、父母各200万円、3人兄弟各80万円、合計3140万円の後遺症慰謝料を認めた。

被害者側に特別な事情がある場合

被害者側に特別な事情があり、通常の交通事故に比べて精神的苦痛がより大きいと思われる場合、慰謝料が相場よりも増額される可能性があります。

具体例としては次のようなケースがあります。

・被害者が女性で、交通事故による傷害のために人工妊娠中絶を余儀なくされた場合
・外貌醜状などの傷害によって婚約破棄されたり、将来の夢をあきらめざるをえなかったり、仕事を続けることができなくなったりした場合
・被害者の死亡や傷害によって、被害者の親族が精神疾患になってしまった場合

裁判例には、以下のものがあります。

【慰謝料増額の裁判例⑦】

仙台地方裁判所 平成20年3月26日判決
・後遺症慰謝料額 1400万円
(後遺障害等級6級の相場は1180万円)

・概要

被害者は早期退職して非常勤嘱託職員に転職した直後の55歳の男性。

高次脳機能障害(7級4号)、左鎖骨の変形傷害(12級5号)、左耳難聴(12級相当)により後遺障害等級併合6級の事案で、本格的に再就職することや、単身赴任のため別居していた家族との同居生活、趣味など、勤務先退職時の希望をほとんどすべてかなえられなくなったこと等の事情を考慮し、本人分1300万円、妻100万円、合計1400万円の後遺症慰謝料を認めた。

【慰謝料増額の裁判例⑧】

大阪地方裁判所 平成17年1月31日判決
・後遺症慰謝料額 1200万円
(後遺障害等級8級の相場は830万円)

・概要

被害者は19歳のアルバイトの女性。

人工肛門、骨盤骨変形等で後遺障害等級併合8級の事案で、女性でありながら生涯にわたり人工肛門を装着しなければならないこと、骨盤骨の変形により通常分娩が困難であること、腹部等に複数の醜状痕を残していること等の事情を考慮し、1200万円の後遺症慰謝料を認めた。

【慰謝料増額の裁判例⑨】

名古屋地方裁判所 平成14年12月3日判決
・死亡慰謝料額 3000万円
(死亡慰謝料の相場は2000万円~2500万円)

・概要

被害者が生後6ヵ月の男児の死亡事故。

交通事故の被害者が不妊治療を受けてようやく生まれた子であること、ベビーカーに乗った子供が飛ばされて道路に投げ出される光景を目撃した母親がPTSDと診断され今後も治療を継続する必要があること等の事情を考慮し、本人分2100万円、父300万円、母600万円、合計3000万円の死亡慰謝料を認めた。

慰謝料の最新情報解説!

その他の損害賠償項目を補完するような場合

これら以外でも慰謝料が相場よりも増額される場合があります。

算定が困難なものを補完する意味合いで慰謝料を増額する次のようなケースです。

・女優が顔に傷を負い、醜状障害で後遺障害等級が認定されたけれども後遺症逸失利益の算定が難しいような場合

・後遺障害等級は認められないけれども労働に影響がでると思われるケガをしている場合

・将来、手術を行なう可能性があるが、現時点ではいつ行なうのか、手術費用がいくらなのか等を算定できない場合や、その際の休業損害や逸失利益が算定できないような場合などに、逸失利益や休業損害等を認めない代わりに慰謝料を相場よりも増額して、損害賠償額全体のバランスをとるような場合

このように、慰謝料額には大体の相場があるのですが、相場よりも高額な慰謝料が認められる場合があります。

そして、その場合、被害者側から主張しない限り、裁判所は慰謝料を増額することなく相場の慰謝料を認定してしまいます。

ご自身や親族が被害者になったとき、慰謝料が増額される可能性が少しでもあるのであれば、たとえ最終的に認められる可能性が低いと思われたとしても、予備的にでも増額した金額を請求しておくことが、慰謝料を増額させる秘訣のひとつです。

このように、交通事故の慰謝料を増額させるためには、知っているのといないのとでは大きく差が出ることがたくさんあります。

交通事故の示談交渉では、知識が力だと思ったほうがいいでしょう。

交通事故の慰謝料について、もっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

【参考記事】
交通事故の慰謝料で被害者がやってはいけない6つのこと

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