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死亡事故の損害賠償額の計算から被害者参加までの全知識

最終更新日 2024年 03月21日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

死亡事故の慰謝料増額法とは?損害賠償から刑事裁判対応までの全知識

本記事では、ご遺族にとって大切な損害賠償額の計算方法から、刑事事件への関わり方など、死亡事故でご遺族が知っておくべき知識について、できるだけわかりやすくお伝えしていきます。

死亡事故における損害賠償額の計算方法


慰謝料等の増額法を知るにあたっての前提知識としたいのは、損害賠償額とは死亡慰謝料を指すものではなく、逸失利益等の請求できる費目の合算である点です。

以降では、増額解決のための基礎知識として、費目ごとに請求目安や金額の計算方法を解説します。

被害者本人の慰謝料

生存が叶わなかった事故被害者にかかる死亡慰謝料は、家庭に占める役割で金額の目安が変わります。

以下で紹介するのは、実務家向けに損害賠償額の目安が策定されている『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』(通称“赤い本”)に基づく死亡慰謝料の目安です。

【表】被害者本人の慰謝料の目安(弁護士基準)

家庭内での役割 死亡慰謝料の目安
一家の支柱 2,800万円
母親、配偶者 2,500万円
その他 2,000万円〜2,500万円

繰り返しになりますが、上記金額はあくまでも目安に過ぎません。

事故様態やその他の事情を鑑み、悪質性や亡くなった人の家庭内での役割に増額できることは、すでに述べた通りです。

死亡慰謝料は十把一絡げに判断するのではなく、事故をしっかりと検証して被害者1人ひとりの苦しみに寄り添い、適切に判断しなければなりません。

近親者固有の慰謝料

交通事故で生命が脅かされた被害者は、その「父母、配偶者および子」についても固有の慰謝料が認められます(民法第711条)。

法律では最も近しい身分の人に限定していますが、実際のところ、慰謝料の請求権について続柄にはそれほどこだわりません。

条文で規定されたのと同様の身分関係があり、死亡により甚大な精神的苦痛を受けたことが明らかなら、たとえ血縁のない「義妹・義弟」といった関係でも、近親者固有の慰謝料が認められるのです(最高裁昭和49年12月17日判決)。

逸失利益

逸失利益とは、命と共に失われてしまった被害者の将来の収入を意味します。

その金額は個別に算定する必要があり、その方法は統一されています。

算定の際は、まず①「基礎収入」(=事故前の収入)をはっきりとさせなくてはなりません。

基礎収入が分かれば、②就労可能年数(原則67歳までの年数)を乗じて失われた収入の総額を出します。

その上で、損害賠償によって実質的に収入を先取りすることで発生する③「中間利息」、そして「将来の生活費」を控除した分が請求できる額となります。

以上の計算方法は、もっと簡単に下記の式で表せます。

【死亡逸失利益の計算方法】
基礎収入金額×(100-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数

なお、控除される生活費の割合(%)は、被害者の家庭内での役割や性別によって異なります。

【表】生活費控除率の目安

被害者の属性 生活費
控除率
一家の支柱・
被扶養者が1人の場合
40%
一家の支柱・
被扶養者が2人以上の場合
30%
女性(主婦・独身・幼児等含む) 30%
男性(独身・幼児等含む) 50%

【参考情報】:「就労可能年数とライプニッツ係数表」国土交通省

その他の損害費目

その他の費目として、ここで紹介する「治療・救命中にかかる費用」や「死亡で生ずる支出分」等も請求できます。

金額は慰謝料や逸失利益に比べると小さくなりますが、診療明細書等の負担額を証明できる資料を取り寄せ、正確に計算して請求額に含めなくてはなりません。

なお、カッコ内で示すように、実務上目安となる金額が定められている費用もあります。

・治療・救命中にかかる費目
…付添看護費(近親者付添人は日額6500円/職業付添人は実費)、通院交通費、宿泊費、入院雑費(日額1500円)、休業損害

・亡くなった後にかかる費目
…葬儀関係費用(原則として上限150万円)、遺体搬送料

・その他の費目
…文書料、死体検案料、警察対応のための交通費、被害者死亡によりやむを得ず生じた廃業費用、等

死亡慰謝料等を増額するためのチェックポイント


死亡慰謝料等の増額、つまり慰謝料の増額事由も加味しつつ適正額に修正するための交渉では、加害者からその提示額の正当性を示す主張が飛び出します。

慰謝料増額にばかり気を取られず、特に争点となりやすい下記3点に関しても、それぞれ解説する対応をとらなくてはなりません。

過失割合が事故状況に即して公正に判断する

過失割合とは、被害者の事故に対する責任の割合(%)を意味します。

被害者に過失割合が10%でもあれば、その分に相当する損害賠償額の負担が加害者から免ぜられるのです(民法第722条2項)。

そして、高額請求となる死亡事故においては、加害者が被害者に責任をなすりつける等、過失割合が主な争点となりがちです。

過失割合を判断する上での最大の問題点は、民事の分野かつ「死人に口なし」である以上、当事者の責任の大きさはどうとでも決められてしまう点です。

そして、事実誤認や見落とし、あるいは立証手段の不足により、結果的に被害者側の過失割合が大きく評価されてしまう可能性は否めません。

幸い、過失割合の評価には一定の基準があり、過去の判例に基づいて事故類型ごとに細かく整理されています。

ただ、事故ごとに様態が違う点を踏まえて、事故当時の状況を総合的に判断しなければならない点は留意しなければなりません。

遺族として真相究明に手を尽くし、事故状況に見合う公正な過失割合が提示されていないなら、毅然と主張・立証する必要があります。

【参考】過失相殺能力について
被害者の年齢によっては、過失として適用すべきでないと判断される場合があります(最高裁昭和31年7月20日判決)。

現在の実務では、小学校へ入学する年齢である5歳~6歳が「事理弁識能力」が備わる時期と考えるのが一般的です。

つまり、上記年齢未満の幼児は、両親等の監督義務者に特に落ち度がない限り、物事を分別する能力がなかったものとして過失割合を考慮しません。

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逸失利益の算定ベースとなる基礎収入を適正評価する

逸失利益は、特に若年者であるほど高額化しやすい性質を持ちます。

そうした事情も踏まえ、加害者が過少評価するケースがよく見られます。

そうしたケースの多くは、給与明細や源泉徴収票が出る就労形態ではなく、基礎収入についてはっきりとした数値が出ないことが原因です。

しかし、個別事情を加味しつつ実務上の評価方法(下記参照)に基づいて適正評価できれば、加害者の言い分は覆せます。

・専業主婦(主夫)、未成年者
…最新の賃金センサス(政府作成の賃金に関する統計資料)を基準とし、未成年者に関しては就職予定等も考慮する

・個人事業主
…前年度の確定申告書を基準とする(前々年度の確定申告書や統計資料を参考する場合あり)

・会社経営者
…役員報酬を基準とし、うち労務提供の対価部分を逸失利益の評価ベースとする(財務状況や会社規模等を総合的に勘案)

・高齢者
…就労の意志・能力・実績があれば、賃金センサスを基準とする。

受給していた老齢年金についても、平均余命年数分を逸失利益とする※。

※年金受給資格が確定するに留まっていた場合も、予想できる支給開始までの年数を限度に逸失利益として請求できます。

被害者側に減額事由がないか確認する

その他に確認・検証しておきたいのは、被害者側に不利となる「減額事由」の存在です。

万一にも存在した場合、過失割合の考え方に応じて請求できる額が少なくなってしまう点を踏まえ、今後の示談や訴訟対応の方針を固めなくてはなりません(下記具体例)。

・被害者の過失
…シートベルト不装着、好意同乗で同乗者や運転者に過失があった場合、その他過失割合の評価で「修正要素」(加算)と判断されるような事情、等

・素因減額
…交通事故の被害の拡大に繋がったと考えられる疾患等※

※裁判所は素因減額には慎重です。例えば、骨粗鬆症等の「加齢による変性」は考慮されません。

死亡事故での増額解決は資料収集が要になる

死亡事故の損害賠償請求では、どの費目についても被害者の主張の根拠を示す資料が欠かせません。

なかでも特に重要なのが、検証によって過失割合や慰謝料の増額事由の決め手となる「事故の原因・様態・周辺事情」が分かる資料です。

早々に散逸したり、欲しい情報が集まりきらなかったり可能性を考えて、左記資料は「より早く・より広い範囲で」集めるよう心がけなくてはなりません。

過失割合や悪質性にかかる資料の入手方法

事故検証と損害賠償請求時の立証のために優先的に入手したいのは、捜査機関によって作成される「刑事記録」です。

ただ、記録作成のための捜査が足りていない、あるいは捜査関係者は把握していても記載されない(マスキングされている等)といったことはあり得ます。

そういった場合には、事故現場の撮影、現場周辺施設への映像提供の依頼、専門機関への分析依頼等といった「遺族独自の調査活動」によって情報を集めなくてはなりません。

【一例】死亡慰謝料等の請求&増額に欠かせない資料

映像資料 ・ドライブレコーダー
・近隣の店舗(コンビニ等)の防犯カメラ
※重要なポイントをコマ送りにして静止画にする方法も
あり
現場の
写真
・実際に足を運んで撮影した写真
・Googleストリートビューで入手した画像
第三者の証言 ・事故当時に居合わせた人の証言
・事故前に加害者と会っていた人の証言
工学
鑑定書
・専門機関から取得したもの
※刑訴法により鑑定が命じられ、刑事事件の記録に含まれる場合がある

刑事記録の取り寄せ方


事故の検証・立証手段として有力だと指摘した「刑事記録」は、事件を担当する検察庁に謄写請求(コピーの請求)をすることで入手できます。

【参考】刑事記録の内容

資料名 内容
実況見分調書 事故の状況(図解付き)、現場の状況、発生日時、等
供述調書 取り調べ時の供述、被害者の供述、目撃者の証言、等
捜査報告書 捜査の経緯、犯人の特定に至った経緯、等
起訴状 加害者の氏名、犯行日時、罪名、等
※検察官が公訴するにあたって作成される文書

刑事記録の取り寄せについて注意したいのは、捜査中の閲覧や謄写請求は出来ない点です(刑事訴訟法47条)。

記録が開示されるのは起訴または不起訴の処分が下ってから、つまり刑事裁判になるか・ならないかがはっきりとしてからなのです。

この点を押さえた上で、不起訴・起訴の2パターンに分け、刑事記録の取り寄せ方をさらに詳しく解説します。

不起訴になった場合の取り寄せ方

不起訴になった場合の刑事記録は、法律により「不起訴記録」として非公開扱いとなります。

この点、平成20年11月19日付の法務省刑総第1595号刑事局長依命通達「被害者等に対する不起訴事件記録の開示について」までの一連の通達によって、運用の柔軟性が高まりました。

現在のところ、不起訴記録の取り寄せは以下いずれかの方法で可能です。

・被害者等※による閲覧・謄写請求を行う
・法23条の2による弁護士照会を行う
・民事で提訴し、その事件が継続する裁判所に「文書送付嘱託」を依頼する

※被害者等とは…その配偶者、直系の親族、兄弟姉妹、または法定代理人(親権者や後見人)

なお、不起訴記録の請求の目的は、基本的に「被害回復のための損害賠償請求権その他の権利の行使」に限られます。

例外的に、被害者参加制度対象事件だけは、単に「事件の内容が知りたい」というだけでも閲覧目的として認められます。

請求目的の他に留意したいのは、供述調書のみ取り寄せにかかる条件が厳しい点です。

関係者に対するプライバシー侵害や捜査遂行の阻害が懸念されることから、本来はいかなる理由でも公開されないものにあたるからです。

【不起訴記録中の「供述調書」の開示要件】

・民事事件において、文書送付嘱託がなされている

・その内容が、当該民事訴訟の結論を直接左右する重要な争点に関するものであり、かつ、その争点に関するほぼ唯一の証拠であるなど,その証明に不可欠である

・民事訴訟においてその供述を顕出することができない場合※である、または当該供述調書の内容が供述者の民事裁判所における証言内容と実質的に相反する場合である

・開示によって,捜査・公判への具体的な支障または関係者の生命・身体の安全を侵害する恐れがない、かつ、関係者の名誉・プライバシーを侵害する恐れがあるとは認められない

※供述者の死亡、所在不明、心身の故障もしくは深刻な記憶喪失等によるもの

参考:「不起訴事件記録の開示について」法務省

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起訴された場合の取り寄せ方

一方、交通事故の加害者が起訴された場合には、刑事記録の取り寄せが法律で認められています(下記参照)。

【刑事事件に係属中の場合】
検察庁への犯罪被害者保護法第3条に基づく閲覧・謄写請求、民事事件が係属する裁判所による「文書送付嘱託」

【刑事事件が確定した場合】
検察庁への刑事訴訟法53条に基づく閲覧申請、民事事件が係属する裁判所による「文書送付嘱託」

ポイントは、刑訴法に基づく閲覧申請の場合、条文に「謄写」に関する規定がない点です。

そのため、まずは閲覧の許可が下りるのを待ち、実際に資料を確認してから検察庁の内部規定によりコピーを許可してもらわなくてはなりません。

謄写も許可されている不起訴記録の取得方法との決定的な違いです。

最も気がかりなのは、起訴されるケースにおける全般的な問題として、刑事記録が入手できるようになるのは第1回の公判期日後になる点です。

そこで、迅速性確保のために考えられるのが、以降で解説する「被害者参加制度」です。

刑事事件にかかる被害者参加制度とは


被害者参加制度とは、一定の重大犯罪の被害者等を対象に、被告人に対する質問等といった刑事裁判への参加を認める制度です。

利用する場合はあらかじめ検察官に申し出る必要があり、かつ、事件が係属する裁判所に許可をもらわなくてはなりません。

対象とする事件等を含め、ここでは被害者参加制度の利用条件にかかる基本事項を押さえます。

被害者参加制度の対象となる事件

被害者参加制度の対象になるのは、死亡慰謝料の増額事由として挙げたような「故意または重過失」があるケースです。

法律上、交通事故については以下のような罪に問われるケースが対象とされています。

【被害者参加制度の対象となる罪】※交通事故の場合

・故意の犯罪により人を死傷させた罪(危険運転致死傷罪等)
・過失運転致死傷罪
・過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪
・無免許過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪

被害者参加制度を利用できる人

被害者参加制度を利用できるのは、下記①~⑤にあたる人です。

被害者本人が死亡もしくは心身に重大な障害がある場合は、②以下の近親者等が参加することになります。

  1. 被害者本人
  2. 配偶者
  3. 直系の親族
  4. 兄弟姉妹
  5. 法定代理人(親権者や後見人)

被害者参加制度で出来ること

被害者参加制度を利用すると、その名の通り「裁判手続への参加」(刑事訴訟法第316条の34~第316条の38/下記参照)が可能になります。

これは、法廷で行われる手続きを「見るだけ」のものである裁判傍聴と決定的に異なる点です。

①公判期日への出席
…裁判が開かれる日に出席し、着席できる

②検察官に対する意見陳述
…検察官の権限行使について意見を述べたり、説明を求めたりできる

③情状事項に関する証人尋問
…証人の情状(実際の事情)に関する証言で、その証明力を糺す内容の質問ができる

④被告人への質問
…意見を述べ、被告人の発言内容の矛盾点を指摘できる

⑤事実や法律の適用に関する意見陳述
…犯罪事実の範囲内で、その事実やどんな法律が適用されるべきか意見を述べられる

弁護士に代わりに出席してもらうことも可能

裁判手続に参加できると言っても、大切な家族を奪った加害者と同席するのは、とても辛いことです。

この点、公判期日や公判準備において証人尋問または検証が行われる場合に、委託した弁護士に代わりに出席してもらえます。

なお、たとえ自ら裁判と向き合う気力があるとしても、弁護士に参加を依頼するのがベターです。

ここから説明する本制度のメリットの中で、弁護士にどんな役割が期待できるのか触れてみましょう。

参考記事:「刑事手続における犯罪被害者のための制度」裁判所

被害者参加制度のメリット


交通事故で家族を喪ったケースでは、被害者参加制度の積極的な利用が望ましいと考えられます。

ここで紹介する2つのメリットから分かるように、慰謝料増額と加害者に対する厳罰、その両方に繋げられる「他にない機会」だからです。

公判期日前でも事件記録を取り寄せられる

被害者参加制度の第1のメリットは、通常起訴される場合とは異なり、公判期日前でも刑事記録の開示に応じてもらえる点です。

平成26年10月21日付の最高検企第436号「犯罪被害者等の権利利益の尊重について」(依命通達)によって始まった上記運用により、重大事故について刑事記録をより早く・より広く入手するための手段として、本制度が活かされるようになりました。

厳罰に繋がる事実を法廷で明らかに出来る

公判の進行は当事者抜きだと事務的になりがちであり、現場で起こったことに即する判決が期待できない場合が多々あります。

そこで挙げられる被害者参加制度の第2のメリットは、遺族自ら被告人質問や意見陳述を通して「何が起こったのか」糺せる点です。

結果としてまず、厳罰の期待値が高くなるだけでなく、被害者参加人が矛盾点を指摘した時の加害者の発言等といった「損害賠償請求の結果を左右する情報」も公判記録に残されるようになります。

問題は、質問や意見陳述の効果です。

いきさつや感情を自分で十分に整理できているつもりでも、望ましい表現に置き換えつつ文面や発言に落とし込めるかは、また別の問題だと言わざるを得ません。

そこで、自分で参加したい気持ちが強くても、敢えて弁護士に参加を依頼するのが望ましいと言えます。

加害者から決定的な事実を引き出せる効果的な質問を用意しつつ、遺族の考えや感情を適切に整理・表現できるからです。


 
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