後遺障害11級の認定基準・慰謝料額と増額事例
目次
☑交通事故の被害者の方が、加害者側から慰謝料などの損害賠償金を受け取るためには、後遺障害等級認定を受ける必要があります。
☑後遺障害等級は1級から14級までが設定されており、等級が下がるにしたがって判断が難しくなっていく面があります。
☑後遺障害11級は、脊柱や胸腹部臓器、手足への傷害による変形障害や機能障害、眼や耳、歯、指などの障害によって10の分類がされており、労働能力喪失率は20%になっています。
☑少しの判断の違いが慰謝料などの損害賠償金の損失につながってしまうので、後遺障害11級でも慎重な判断や医師とのコミュニケーションも大切になってきます。
これから、交通事故の後遺障害11級の「認定基準」や「慰謝料額と算定方法」、「慰謝料等の増額事例」などについて解説していきますが、その前に交通事故解決までの全プロセスを説明した無料小冊子をダウンロードしておきましょう。
後遺障害11級の認定基準を確認しましょう
後遺障害11級の認定基準と、弁護士(裁判)基準による後遺障害慰謝料の相場金額は次のようになります
自賠責後遺障害等級表
自賠法別表第2
後遺障害 | 後遺障害慰謝料 (弁護士(裁判)基準) |
---|---|
1.両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの 2.両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの 3.一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの 4.10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの 5.両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの 6.一耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの 7.脊柱に変形を残すもの 8.一手のひとさし指、なか指又はくすり指を失ったもの 9.一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの 10.胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの |
420万円 |
【参考記事】:「自賠責後遺障害等級表」(国土交通省)
「11級1号」
・両眼の眼球に著しい調節機能障害や運動障害を残した場合が該当します。
・眼球の調節機能とは、水晶体がピントを合わせる機能のことで、具体的には次のような障害が該当します。
遠くや近くなどを見て眼のピントを合わせる機能が、健康時の2分の1以下になった場合。
<運動障害>
注視野(頭部を固定した状態で眼球の動きのみで見える範囲)が2分の1以下になった場合。
なお、年齢によって「2分の1」の範囲は変わっていくため、専門医の検査をしっかり受けることが必要になってきます。
「11級2号」
・まぶたの動きには、開ける、閉じる、瞬きの3つがあります
顔面や側頭部などへの衝撃による視神経や外眼筋等の損傷のために、これらの動きができにくくなる症状が問題となってきます。
・具体的には、まぶたを開けているつもりでも十分に開かずに瞳孔(瞳の中心部分)が隠れたままの状態(眼瞼下垂)や、まぶたを閉じているにも関わらず角膜を完全に覆うことができない状態(兎眼)などの運動障害が残った場合が該当します。
・まぶたの欠損は外貌の美醜にも関わってくるため、上位の等級に認定される場合があります。
外貌醜状については、男女の区別はありません。
「11級3号」
・片方のまぶたの全部、または大部分に欠損が生じてしまい角膜を完全に覆うことができない場合が該当します。
・右眼か左眼かの区別はありませんが、両眼の場合には9級4号が認定されます。
・11級2号と同様に、まぶたの欠損は外貌の美醜にも関わってくるため、上位の等級に認定される場合があります。
「11級4号」
・10本以上の歯を失ったり、著しい損傷を受けたために「歯科補綴(しかほてつ)」をした場合が該当します。
・人間の永久歯は、上下それぞれ14本ずつの計28本ありますが、そのうちの約3分の1以上に障害が残った状態ということになります。
・歯科補綴とは、差し歯や入れ歯、クラウン、ブリッジ、インプラントなどで欠損した歯の機能や見た目を治療することで、こうした歯科補綴を施した歯に対して等級が認定されます。
・なお、14本以上の歯を失ったり、著しい損傷を受けたために歯科補綴をした場合には10級4号が認定されます。
「11級5号」
・両耳の聴力が1m以上離れた距離では小声の話し声を聴き取るのが困難な状態が該当します。
具体的には、純音聴力レベルが40dB以上となっています。
・認定の際には、単純な音が聴き取れるか(純音)、言葉を言葉として聴き取れるか(明瞭度)の2種類の検査を行ないます。
「11級6号」
・片方の耳の純音聴力レベルが70dB~80dB未満で、明瞭度は最高で50%以下の場合が該当します。
「11級7号」
・脊柱が変形したままになってしまった場合が該当します。
・脊柱とは、いわゆる背骨のことで、これを構成する一つひとつの骨を脊椎といいます。
脊柱は7つの頸椎、12の胸椎、5つの腰椎、仙椎、尾椎の計26個の椎骨から成り立っています。
・これらの骨が変形したケースの具体例は次の通りです。
②椎間板ヘルニアの手術で脊椎固定手術が行なわれ、骨移植や人工関節が埋め込まれたもの
③脊柱管狭窄症、後縦靱帯骨化症等により3椎以上の椎弓の切除や拡大形成術を受けたもの
・なお、11級7号は脊柱の変形のみで、神経麻痺や運動障害がある場合は6級5号や8級2号が認定されます。
「11級8号」
・片方の手の人差し指、中指、または薬指のうち、いずれか1本を失った場合が該当します。
・後遺障害等級において「指を失った」というのは、親指の場合は第一関節より先、それ以外の4本の指の場合は第二関節より先を失った状態をいいます。
・指を失った手が、右手か左手かの区別はありません。
「11級9号」
・片方の足の親指を含む2本以上の指の用を廃した場合が該当します。
「用を廃する」とは、次のような状態をいいます。
②親指は第一関節から先、それ以外の指の場合は第二関節から先の可動域が2分の1以下になった場合
・指を失った足が、右足か左足かの区別はありません。
・なお、すべての指の用を廃した場合は9級15号が認定されます。
「11級10号」
・健常者と同じ仕事に就くことはできるものの、胸腹部の内臓のケガによる障害のために仕事の内容に相当の支障が生じる場合が該当します。
・障害の残った内臓は、肺などの呼吸器系や心臓などの循環器系、胃腸などの消化器系、肝臓、腎臓、泌尿器系、生殖器など多岐におよびます。
・内臓の障害は症状固定後に悪化するケースも多くみられるため、将来の再発、悪化に備えて検査の結果や病状の経過を記録として残しておくことも重要です。
・また、後遺障害診断書の内容によって等級が上がったり下がったりするので、診察する医師には過不足なく記載してもらう必要があります。
後遺障害等級は、1級でも違うと賠償金額が大きく違ってきます。後遺障害等級認定の申請は専門家に相談しながら進めましょう
みらい総合法律事務所で解決した慰謝料等増額事例集
- 次に、みらい総合法律事務所で実際に解決した後遺障害11級の事例をご紹介していきます。
- 加害者が任意保険に加入している場合、加害者側の保険会社は、被害者の方に対して、かなり低い金額を提示してくることが多いです。
- 金額に納得がいかなければ、被害者の方は示談交渉に進むわけですが、結果どうなるでしょうか?
解決事例から次のようなことがおわかりいただけると思います。
・後遺障害11級では、加害者側の保険会社はどのくらいの金額を提示してくるのか?
・被害者の方が直接・単独で示談交渉をしても、保険会社は増額の要求を受け入れない現実。
・そこで弁護士が示談交渉に入ると、どのくらい金額が増額するのか?
・最終的に裁判を起した場合、どのくらいの増額が可能なのか? - 被害者の方は今後の示談交渉のためにも、ご自身の状況と照らし合わせて参考にしていただければと思います。
増額解決事例①:49歳男性の慰謝料等が約3.84倍に増額
引用元:みらい総合法律事務所
49歳の男性が高速道路を走行中、後方から加害車両に追突された交通事故。
被害者男性には脊柱変形の後遺症が残り、後遺障害等級は11級7号が認定され、加害者側の任意保険会社は慰謝料など損害賠償金(示談金)として、約522万円を提示。
この金額が妥当なものかどうか確認するため、被害者の方が、みらい総合法律事務所の無料相談を利用し、その後の対応をすべて依頼されました。
弁護士が保険会社と交渉し、最終的には約2,006万円で示談解決。
当初提示額から約3.84倍に増額したことになります。
詳細はこちら→
「解決実績」
増額解決事例②:42歳男性の慰謝料等が約4.25倍に増額
引用元:みらい総合法律事務所
自動車同士の出合い頭の事故で、42歳の男性(会社員)が腰椎圧迫骨折のため脊柱変形の後遺症を残して症状固定しました。
後遺障害等級は11級7号が認定され、加害者側の保険会社は慰謝料などの損害賠償金として約488万円を提示してきました。
この金額について、みらい総合法律事務所の無料相談を利用したところ、「金額が低すぎる、まだ増額が可能」との回答を弁護士から得たことで、被害者の方は示談交渉のすべてを依頼することにしました。
その後、弁護士が保険会社と交渉を行ない、約2,076万円で解決。
当初提示額から約4,25倍に増額することができた事例です。
詳細はこちら→
「解決実績」
増額解決事例③:43歳男性の慰謝料等が約1,100万円の増額
引用元:みらい総合法律事務所
43歳の男性が自動車の助手席に同乗中の交通事故で、第三胸椎圧迫骨折などの傷害(ケガ)を負いました。
治療をしましたが後遺症が残り、後遺障害等級は脊柱変形で11級7号、外傷性頚部症候群(むち打ち症)の神経症状で14級9号の併合11級が認定され、加害者側の任意保険会社は慰謝料などの損害賠償金として約691万円を提示してきました。
この金額の妥当性に疑問を感じた被害者の方が、みらい総合法律事務所の無料相談を利用。
弁護士の見解は「増額可能」とのことだったため、示談交渉のすべてを依頼されました。
弁護士が保険会社と交渉した結果、約1,788万円で解決。
保険会社の当初提示額から約2.59倍、約1,097万円も増額したことになります。
詳細はこちら→
「解決実績」
増額解決事例④:28歳男性の慰謝料等が128倍に増額
引用元:みらい総合法律事務所
28歳の男性がタクシーに衝突された交通事故で、脊柱圧迫骨折の傷害(ケガ)を負い、脊柱変形の後遺症が残ってしまいました。
後遺障害等級認定の申請を行なったところ、11級7号が認定され、加害者側のタクシー会社は慰謝料など損害賠償金として10万円を提示。
この金額に疑問を感じた被害者の方が、みらい総合法律事務所の無料相談を利用したところ、弁護士の見解は「かなりの増額が見込める」というものだったため、その後の対応のすべてを依頼されました。
当事務所の弁護士が被害者の方の代理人としてタクシー会社と交渉し、最終的には1,280万円で示談解決となりました。
当初提示額から、128倍に増額したことになります。
詳しくは、こちらの記事を参考にしてください。
詳細はこちら→
「解決実績」
増額解決事例⑤:50歳男性の慰謝料等が約2.82倍に増額
引用元:みらい総合法律事務所
50歳の男性(公務員)の方が自動車を運転中、交差点で出合い頭に起きた交通事故で、第四胸椎破裂骨折の傷害を負いました。
後遺障害等級は11級7号が認定され、加害者側の任意保険会社は約408万円の示談金(損害賠償金)を提示。
この段階で被害者の方が、みらい総合法律事務所の無料相談を利用。
内容を精査した弁護士の見解は「増額可能」というものだったことから、被害者の方は示談交渉のすべてを依頼されました。
弁護士が保険会社と交渉したところ、「事故後に被害者の給料が上がっている」として逸失利益の支払いを拒否してきましたが、弁護士が主張・立証を重ねて、676万円で妥結。
最終的にはトータル1,150万円、当初提示額から約2.82倍で示談解決となった事例です
逸失利益は金額が大きくなるため、示談交渉では争点になることが多い損害賠償項目の1つです。
動画でも解説していますので、ぜひ視聴してください。
詳細はこちら→
「解決実績」
慰謝料・損害賠償金の自動計算機をご利用ください!
みらい総合法律事務所では、交通事故慰謝料・損害賠償金がすぐにわかる自動計算機をご用意しています。
リンク先の「(8)後遺症慰謝料」の部分で簡単に計算できますので、ご気軽に使ってみてください。
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後遺障害11級の慰謝料で大切な2つのポイント
慰謝料は4種類あります
じつは交通事故の慰謝料は1つではなく、次の4種類があります。
①傷害慰謝料(入通院慰謝料)
交通事故で傷害(ケガ)を負った被害者の方が、入通院して治療を行なった際に被った精神的苦痛や損害に対して支払われる。
こちらは「交通事故の入通院慰謝料は1日いくら?通院6か月目の相場金額は?」でも詳しく解説しています。
②後遺障害慰謝料
・ケガの治療を続けたものの、症状固定の診断を受けて後遺症が残り、後遺障害等級が認定された場合の精神的苦痛や損害に対して支払われる。
・被害者の方が認定された後遺障害等級(1級から14級)によって金額が大きく変わってくる。
③死亡慰謝料
・交通事故で亡くなった被害者の方の精神的苦痛や損害に対して支払われる。
・被害者の方はすで亡くなっているため、受取人はご家族などの相続人になる。
・法的に相続順位や分配割合が規定されていることに注意が必要。
こちらは「【死亡事故の相続の分配】誰が慰謝料・損害賠償金をもらえるのかを解説」でも詳しく解説しています。
④近親者慰謝料
・被害者の方の近親者(家族など)が被った精神的苦痛や損害に対して支払われる。
・被害者の方が亡くなった場合や、重度の後遺障害が残り、将来に渡る介護が必要な場合などで請求することができる。
慰謝料は算定基準の違いで金額が大きく変わります
交通事故の慰謝料の算定では、次の3つの基準が使われるのですが、注意していただきたいのは、どの基準で計算するかによって金額が大きく変わってくることです。
1.自賠責基準
自賠責保険で定められている基準で、もっとも金額が低くなる。
2.任意保険基準
各任意保険会社が独自に設定している基準(各社非公表)で、自賠責基準より少し高い金額になる。
3.弁護士(裁判)基準
・もっとも金額が高くなる基準で、被害者の方が本来受け取るべき金額が算定される。
・過去の多くの裁判例から導き出されている基準で、弁護士や裁判所が用いる。
・弁護士が被害者の方の代理人として加害者側の任意保険会社と示談交渉をする際、さらには裁判になった場合でもこの基準で計算した金額を主張・立証していく。
被害者の方が高額(じつはこれが適正金額なのですが)な慰謝料を望むなら、弁護士(裁判)基準で計算した金額を主張・立証して、加害者側の任意保険会社に認めさせる必要があるのです。
後遺障害11級の正しい慰謝料額と計算方法
傷害慰謝料(入通院慰謝料)の計算方法と相場金額
①自賠責基準で算定する場合
傷害慰謝料を自賠責基準で計算する時は、次の計算式を用います。
ただし、入通院日数(治療の対象日数)は次のどちらか短いほうが採用されることに注意が必要です。
A)「実際の治療期間」
B)「実際に治療した日数×2」
ここでは、上記A)、B)の違いを次の条件で考えてみます。
- 治療期間:1か月の入院+3か月通院……120日間/li>
- 実際に治療した日数:入院1か月+通院3か月のうち平均で週1回の通院をしたと仮定……30日+13日(13週×1日)=43日間
A)4,300円×120日=516,000円
B)4,300円×43日=184,900円
この場合、日数が短いB)が採用されるため、傷害慰謝料は184,900円が認められることになります。
弁護士(裁判)基準で算定する場合
弁護士(裁判)基準による傷害慰謝料の算定では計算式は使いません。
『損害賠償額算定基準』(日弁連交通事故相談センター東京支部発行)に記載されている「入通院慰謝料の算定表」から金額を算出します。
算定表には、ケガの程度によって「軽傷用(むち打ち症で他覚症状がない場合)」と「重傷用」の2種類があります。
<弁護士(裁判)基準による傷害慰謝料(入通院慰謝料)の算定表(軽傷用)>
<弁護士(裁判)基準による傷害慰謝料(入通院慰謝料)の算定表(重傷用)>
上記の算定表から、自賠責基準での計算例と同条件(1か月の入院+3か月の通院)で金額を割り出してみます。
「重傷用」の表で、「入院1か月」と「通院3か月」が交わった部分を見ると、「115」となっているので、弁護士(裁判)基準での傷害慰謝料は「115万円」になるわけです。
ここで注目していただきたいのは、自賠責基準と弁護士(裁判)基準の金額の違いです。
ここでは単純計算をしていますが、それでも約6.2倍も金額が違ってくるのです。
いかに、弁護士(裁判)基準で計算した金額で解決することが大切か、おわかりいただけると思います。
後遺障害慰謝料の計算方法と相場金額
後遺障害慰謝料は、等級(1級~14級)によってあらかじめ概ねの金額が決められており、後遺障害が重度なほど金額は大きくなります。
<自賠責基準・弁護士(裁判)基準による後遺障害慰謝料の早見表>
実際の損害賠償実務では、さまざまな要因や状況によって金額は増減しますが、後遺障害11級場合、算定基準が違うだけで概ねの金額で284万円も差が出てくるのです。
交通事故の被害者が知らないと損をする5つのポイント
フローチャート解説:交通事故の発生から解決まで
- 交通事故の発生から示談成立で被害者の方が慰謝料などの損害賠償金を受け取るまで、どのような流れで進み、どういった手続きが必要になるのでしょうか。
- まずはフローチャートで全体像を確認しておきましょう。
加害者側の保険会社から症状固定を求められたらどうする?
- 症状固定とは、これ以上の治療を継続しても回復や完治の見込みがない状態のことで、主治医が行なうものです。
- 症状固定後は後遺症が残ってしまうため、この後は後遺障害等級認定の申請、加害者側からの慰謝料などの損害賠償金の提示、示談交渉へと進んでいきます。
- ところで、医師が症状固定の判断をする前に加害者側の保険会社が「もう症状固定にしてください。治療費の支払いは終了します」などと言ってくる場合がありますが、これを信じてはいけません。
症状固定かどうかは、保険会社が決定する権限を持っているわけではありません。 - 症状固定の診断はあくまでも担当の医師が行なうものです。
医師からの症状固定の診断がなければ、まだ治療効果が上がっているということですから、これまでのように普通に治療を受けてください。 - その際、治療費の領収書などは必ず保管しておくようにしましょう。
あとで加害者側の保険会社にまとめて請求するためです。
なぜ後遺障害等級が必要なのか?
①後遺症と後遺障害の違いとは?
- 後遺症とは、医学的には被害者の方に残った機能障害や運動障害、神経症状などのことです。
- 後遺障害とは、後遺症について次の要件が認められることで定義され、損害賠償請求の対象となるものです。
・交通事故が原因であると医学的に証明されること
・労働能力の低下や喪失が認められること
・その程度が自動車損害賠償保障法(自賠法)で定める後遺障害等級に該当すること - しかし、被害者の方が後遺症の症状を感じていても、そのすべてが後遺障害と認められるわけではない、ということに注意する必要があります。
②後遺障害等級が重要な理由
- 加害者側へ損害賠償請求する際は、入通院費や治療費、逸失利益や慰謝料、将来介護費などの各項目についてそれぞれ計算し、それらを合計して損害賠償金額を算出します。
- その際、難しいのは被害者の方一人ひとりで後遺障害の程度や症状に違いがあるため、個別に計算するには膨大な時間と労力が必要となってしまうことです。
さらに、慰謝料は被害者の方が抱える苦痛に対して支払われるわけですが、一人ひとりが感じている精神的、肉体的苦痛を正確に数値化するのは不可能だという問題もあります。 - そうした問題を解消し、損害額を迅速かつ公平に算出するために設定されたのが後遺障害等級です。
そして、被害者の方それぞれがどの等級に該当するかを判断し、認定する手続きを正式名称で自賠責後遺障害等級認定というのです。
後遺障害等級認定には法律知識だけでなく、医学的な知識や後遺障害等級システムの知識も必要です。交通事故に精通した弁護士にお任せください。
後遺障害等級認定の申請方法とは?
①後遺障害等級認定の申請方法は2種類あります
【被害者請求】
被害者ご自身が直接、加害者が加入している自賠責保険会社に申請する方法。
- 後遺障害等級が認定された場合、最終的な示談の前に自賠責保険金がまとまった金額で支払われるため、被害者の方やご家族は金銭的な余裕をもって保険会社と示談交渉を行なうことができる。
- 被害者側で提出資料を集めて申請するため、手続きの流れや提出する書類を自分で把握できる。
- 提出する資料や書類は被害者の方が用意しなければいけないため手間がかかってしまう。
そのため、提出書類にもし不備や不足があった場合には医師に新たな検査を依頼するなどして資料や書類を集める必要がある。 - 最終的に裁判まで進んで、判決があった場合、損害賠償金には事故時からの遅延損害金などがプラスされるが、被害者請求で最初にまとまったお金を受け取ると、最後に受け取る損害賠償金が少なくなるので、遅延損害金も少なくなってしまう。
こちらは「遅延損害金|交通事故の損害賠償金に利息をつけて払ってもらえる?」でも詳しく解説しています。
【事前認定】
加害者が加入している任意保険会社を通して自賠責保険に申請する方法。
こちらは「交通事故における任意保険の「一括払い制度」とは?」でも詳しく解説しています。
- 加害者側の任意保険会社が手続きを行なってくれるため、被害者請求ほどの手間がかからない。
- 裁判まで進んだ場合、判決の際には損害賠償金にプラスして事故時から計算される遅延損害金がつく。
- 被害者の方としては事前認定で申請しておいて、判決後に損害賠償金を受け取ったほうが遅延損害金は多くなるため、最終的な受取金額も増える。
- 被害者の方は、どういった書類が提出されているのかわからないため、提出書類に不足があっても確認することができない。
- そのため、等級が認定されない、間違った後遺障害等級が認定されてしまう、といった問題が生じることがある。
こちらは「交通事故の被害者が知っておくべき保険の知識」でも詳しく解説しています。
②後遺障害等級認定の申請で必要な提出書類
☑後遺障害等級認定を申請するには、次のような書類や資料が必要です。
- 支払請求書兼支払指図書
- 交通事故発生状況報告書
- 交通事故証明書
- 診療報酬明細書
- 通院交通費明細書
- 医師の診断書(死亡の場合は死亡診断書)
- 委任状(被害者自身が請求できない場合)
- 休業損害証明書
- 後遺障害診断書
- レントゲン・MRI等の画像 など
☑これらの内容に間違いがあったり、書類の不足があったりした場合は正しい後遺障害等級が認定されなくなってしまいます。
☑注意点としては、被害者ご自身で用意していくのは大変な作業であること、また交通事故の後遺障害等級認定システムに詳しくない医師の場合、書類の内容に不備ができてしまう可能性があることなどです。
後遺障害等級に不服があれば異議申立ができる
- 後遺障害等級認定を申請したのに等級が認定されなかったり、低い等級が認定されたため不服である、といった場合には異議申立をすることができます。
- 後遺障害等級認定の手続きは、「損害保険料率算出機構」(損保料率機構)という機関が行なっているので、異議申立もこの機関に対して行なうのですが、簡単に認められるわけではありません。
- その際、医師によって自覚症状欄や他覚所見、運動障害などが漏れなく記載された「後遺障害診断書」や、レントゲン画像では確認できなかった箇所が詳しくわかるようなCT画像やMRI画像など、さまざまな書類や資料を提出し直す必要があります。
- 間違った後遺障害等級が認定されてしまうと、被害者の方は損害賠償金で大きな損をしてしまう可能性があるので、あきらめずに、しっかり異議申立をしていくことが大切です。
- 後遺障害等級認定の異議申立は、後遺障害等級認定の判断基準や医学的知識が必要です。弁護士の助言を受けて行なうようにしましょう。
- 逸失利益には「後遺障害逸失利益」と「死亡逸失利益」があり、後遺障害逸失利益の計算式は次のようになります。
逸失利益で損をしないために大切なこと
☑逸失利益は、交通事故の被害にあわなければ、将来的に得られるはずだった利益=収入のことです。
☑さまざまある損害賠償項目の中でも、慰謝料や逸失利益は金額が大きくなるものの1つのため、加害者側の任意保険会社は適正金額よりも低く見積もった金額を提示してくることが多いのが現実です。
☑なぜなら、保険会社が株式会社の場合、利益を上げることを目的として運営されているため、支出となる被害者の方への損害賠償金をできるだけ低く抑えようとするからです。
☑逸失利益には「後遺障害逸失利益」と「死亡逸失利益」があり、後遺障害逸失利益の計算式は次のようになります。
基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
= 後遺障害逸失利益
☑被害者の方としては、適切な逸失利益を受け取ることが大切です。
また、相場金額よりも増額する場合もあるので、交通事故の損害賠償に精通した弁護士に一度、相談されることをおすすめします。
身体障害者手帳の交付を受けると得られるメリット
☑被害者の方に後遺障害が残った場合、後遺障害等級とは別に身体障害等級の認定を受けることができます。
☑身体障害等級が認定されると、「身体障害者手帳」が交付されます。
身体障害者手帳があると各種手当を受け取ることができ、さらには医療費の助成、税金の控除、公共料金の減税、福祉サービスの利用など、さまざまなサービスを受けることができます。
☑また、国や各地方自治体などから、さまざまな福祉支援を受けるとこができる制度もあるので、活用されるといいでしょう。
労災の場合は使える保険が変わってくる
労災とは?
☑仕事中のケガや病気、障害、死亡を労働災害(労災)といい、大きく分けると「業務災害」と「通勤災害」の2種類があります。
☑通勤中の交通事故などによるケガや後遺障害、死亡の場合は通勤災害になります。
通勤災害は仕事中であることを証明する必要があり、通勤とは次の場合をいいます。
②就業場所から他の就業場所への移動
③単身赴任先住居と帰省先住居との移動
☑たとえば、通勤途中に業務とは関係のない飲食店などに立ち寄るなどした場合は通勤ではないとみなされるため、通勤労災は認定されません。
【参考記事】:厚生労働省「労働災害が発生したとき」
東京労働局「通勤災害について」
労災の場合はどの保険を使えばいいのか?
- 原則、交通事故で負ったケガの治療では健康保険を使います。
しかし、通勤災害で労災保険の適用がある場合は、労災保険が優先するため健康保険は使えません。 - 労災保険が適用されて指定医療機関で治療を受ける場合、基本的に被害者の方の一時的な費用負担はありません。
- また場合によっては、加害者側からは受け取れない給付を受けることができるので、通勤中の交通事故被害では手続に多少の手間がかかったとしても、労災申請をしておくのがいいと思います。
ここまで、交通事故で後遺障害11級が認定される場合の条件や慰謝料等の計算方法などについて解説しました。
加害者側の任意保険会社は、かなり低い損害賠償金を提示してくることが多く、被害者の方が単独で交渉しても増額要求を認めることは少ないです。
交通事故の被害にあったら、まずは一度、みらい総合法律事務所の無料相談をご利用ください。
弁護士へのご相談の流れ
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