交通事故の示談の流れを弁護士が徹底解説
交通事故では、「示談交渉」という言葉をよく耳にすると思います。
示談交渉は、被害者にとって非常に重要なプロセスなのですが、詳しい内容や具体的な手続きなど、じつはよく知らないことも多いのではないでしょうか。
そこで今回は、示談交渉の流れに沿って、手続きの方法や注意しなければいけないポイントなどについて解説します。
【動画解説】交通事故の示談交渉でやってはいけない7つのこと
目次
交通事故の示談解決までの流れを理解する
交通事故が発生してから示談が成立するまでの流れは通常の場合、次のように進んでいきます。
1.交通事故が発生
2.事故状況や相手(加害者)の身元の確認
3.警察への通報、実況見分調書の作成
4.加害者、被害者双方の保険会社への通知
5.ケガの治療
6.治療完了または後遺障害等級の認定により賠償損害額確定
7.示談交渉
8.示談成立、法的手続き(決裂した時は紛争処理機関、法的機関へ)
この流れをまとめたものが下の図になります。
交通事故の被害で後遺症などを負ってしまった被害者は肉体的、精神的につらい日々を送っておられると思いますが、まずはこの流れをしっかり理解しておくことが大切です。
交通事故での示談交渉とは?
交通事故が起きた場合、被害者と加害者ともに次のことが問題になってきます。
-
どのような損害が生じたのか?
その損害額はいくらになるのか?
支払い方法はどのようにするのか?
示談とは、こうした問題について被害者と加害者が話し合いによって解決をして、和解することをいいます。
法律の条文を見てみましょう。
「民法」第695条(和解)
和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生ずる。
つまり、示談交渉とは裁判のように白黒決着をつけるのではなく、基本的には交通事故の当事者同士がお互いに譲歩して、話し合いによって損害賠償の内容を決定していくことなのです。
話し合いがスムーズに進んで、お互いが納得できて和解することができれば、これほどいいことはありません。
しかし、示談交渉はすんなりと解決しないことが多いのも事実です。
なぜ、交通事故の示談交渉はなかなか解決せずに長引いてしまうのでしょうか?
次に、示談交渉の流れについて見てみましょう。
示談交渉はどのような流れで進んでいくのか?
怪我の場合
交通事故で怪我をした場合には、治療をして、怪我を治すことが先決となります。多くの場合には、加害者が任意保険に加入しており、保険会社が治療費を払ってくれます。
また、働いている人は、怪我で仕事を休まなければならなくなり、生活も厳しくなりますので、やはり保険会社が休業損害を支払ってくれることが多いです。
そこで、交通事故の被害者としては、まずは治療に専念することとなります。
治療を続けると、ある時点で、治療効果が上がらなくなる場合があります。完治すればいいのですが、その時点で障害が残っていると、「後遺症」が残った、ということになります。
交通事故により後遺症が残ってしまった場合、被害者は損害保険料率算出機構という機関に申請して「自賠責後遺障害等級」の認定を受けることになります。
参考情報:国土交通省「自賠責後遺障害等級表」@>
自身の後遺障害等級が決定すると、通常の場合、加害者が加入している任意保険会社から示談金額(損害賠償金額)の提示があり、ここから示談交渉がスタートします。
仮に、この時点で被害者が提示金額に納得して示談書や免責証書に署名押印をすれば示談は成立するので、あとは示談金が振り込まれて手続きは終了です。
死亡事故の場合
死亡事故の場合には、死亡により損害額が確定します。
しかし、すぐに示談交渉を開始していいかどうかは、別問題です。
死亡事故は重大な事故なので、加害者が刑事処分にとわれることも多いです。いわゆる刑事裁判が行われる、ということです。
そこでは、被害者のご遺族の被害感情も加味されて加害者の刑事処分が決められます。
加害者の刑事裁判の時に、示談が成立していると、ある程度遺族感情が緩和された、と評価され、加害者の刑事処分が軽くなる場合があります。
そこで、死亡事故では、多くの場合に、加害者の刑事事件が終了してから示談交渉を開始します。
死亡事故の場合にも、やはりご遺族が示談書や免責証書に証明押印すれば示談が成立し、あとは示談金額が振り込まれて示談が終了します。
示談をする場合には、金額に注意
実際、このようにして示談を成立させている被害者も多いでしょう。
しかし多くの場合で任意保険会社が提示してくる金額は、、被害者が本来受け取ることができる金額よりも低いのが現実です。
なぜなら、保険会社は営利目的で運営されているものですから、支出をできるだけ少なくしようとする力が働きます。
被害者に対して低い金額を提示し、それで示談が成立すれば、差額分が利益になるのです。
特に後遺障害が重大な場合は、それだけ示談金も高額になり、場合によっては数億円にもなるのですから、なおさらです。
つまり、保険会社からの示談金の提示にすぐに同意することは、被害者が損をしてしまうことが多いことに注意が必要です。
そのため、交通事故の被害者は、示談金が提示された場合には、その金額が妥当かどうか、必ず弁護士に相談するようにし、低すぎると意見があった場合には、示談せず、示談交渉を続けていくことになります。
被害者がいくら交渉しても示談金が増額しない理由
そしてさらに、被害者はここでまた大きな問題にぶつかってしまいます。
それは、交渉相手が交通事故の示談交渉のプロだということです。
被害者にとって示談交渉は人生で初めての経験ということがほとんどでしょう。
交通事故の被害にあうことなど、そうそうあることではないからです。
しかし、相手は交通事故の示談交渉のプロです。
何年も、毎日、さまざまな損害賠償の交渉をしてきているのです。
それが彼らの仕事なのですから、損害賠償についての知識のない被害者が太刀打ちできるわけはありません。
彼らは、こんなことを言うかもしれません。
「当社の正しい基準に基づいて提示した金額ですから、これ以上は増額できません」
「そちらにも、これだけの事故の過失があったのだから、この金額は妥当です」
「裁判をしたいなら、どうぞしてください。こちらも徹底的に争いますよ」
その時、あなたはどうしますか?
あきらめて、書類に判を押しますか?
それとも、交渉を決裂させて訴訟を起こしますか?
交通事故の法律や保険の知識もない、訴訟の経験もないならば、どうやって保険会社と裁判で闘えばいいのでしょうか?
示談金には3つの支払い基準がある
さて、示談交渉の次の流れです。
示談金が提示されるとします。
計算の基準について説明します。
基準とは、物事を比較・判断する時にその根拠となる一定の数値などのことです。
基準が何種類もあっては、どれを根拠に物事を判断すればいいのか、わからなくなってしまいます。
ところが、じつは交通事故の示談金(損害賠償金)には3つの支払い基準があるのです。
一体、どういうことでしょうか?
(1)自賠責保険基準
支払われる金額が法律で決められており、必要最低限の金額が設定されているのが、自賠責保険基準です。
ケガや障害により働いて収入を得ることができなくなった損害を休業損害といいますが、これは1日につき原則5700円、慰謝料は1日につき原則4200円、被害者が死亡した場合の死亡慰謝料は350万円です。
また、もっとも後遺症の程度が重い後遺障害等級1級では、最大で3000万円又は4000万、一番等級の低い14級では75万円になっています。
(2)任意保険基準
それぞれの任意保険会社が独自に内部基準で決めているのが任意保険基準です。
これは公表されているものではありませんが、前述したように被害者が本来受け取ることができる金額よりも低く設定されているのが通常です。
自賠責保険から支払われる金額だけでは足りない場合に、任意保険基準により金額が提示されます。
(3)弁護士(裁判)基準
裁判をした場合に認められる可能性の高い示談金額の基準です。
日弁連交通事故相談センター東京支部が毎年出している「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称を「赤い本」)という書籍をもとに金額を算出します。
3つの基準の中では、もっとも金額が高くなるので、被害者としてはこの裁判基準にできるだけ近い示談金を勝ち取ることが最善です。
この基準を知っているかどうかで、金額に大きな差が出てしまうので重要な基準です。
示談交渉で注意するべきポイントとは?
加害者側の保険会社と示談交渉をする際、注意するべきポイントがあります。
(1)損害賠償金額と項目の確認
加害者側の任意保険会社から提示される「損害賠償金額の計算書」は必ずチェックをしましょう。
なぜなら、本来あるべき項目が漏れている場合や金額が間違っている場合があるからです。
ちなみに、損害賠償金の項目には次のようなものがあります。
-
治療費、付添費、将来介護費、入院雑費、通院交通費、装具・器具等購入費、家屋・自動車等改造費、葬儀関係費、休業損害、傷害慰謝料、後遺症慰謝料、逸失利益、修理費、買替差額、代車使用料
など
じつは損害賠償金というのは、ひとつのまとまったものではないのです。
上記のように、被害者が負った損害についてさまざまな項目があるのです。
よく、損害賠償金と慰謝料は同じものと思っている人もいますが、慰謝料というのは数ある損害賠償項目の中のひとつだということは覚えておくと役立つと思います。
また、金額が間違っているといった信じられないことがある場合があります。
単純なミスの場合もあれば、任意保険会社が実際よりも少なく見積もっている場合もあります。
一度、示談が成立してしまうと、あとから「項目の漏れがあった」、「金額の間違いが見つかった」といっても新たに請求することはできません。
ですから、損害賠償金額と項目をしっかり確認することは、とても大切なことなのです。
(2)損害賠償請求の時効を確認
交通事故の損害賠償請求にも時効があります。
加害者に対する損害賠償請求の時効は、「損害及び加害者を知った時」(民法724条)から物損については3年、人身損害部分については5年です。あるいは、損害及び加害者がわからなかったとしても、事故日から20年を経過すれば時効により消滅します。
後遺障害がある場合には、症状固定した時点で初めて後遺障害を含む損害について知ったことになるので、人身損害の時効は症状固定日から5年となります。
時効が成立してしまうと、その後は一切請求することができなくなってしまうので注意が必要です。
重要項目の確認や難しい交渉は弁護士に相談を!
ここまで、交通事故の被害者が示談交渉で行なうべき手続きや注意ポイントなどについてお話してきましたが、いかがでしょうか、示談交渉は「難しい」、「大変だ」と感じたかもしれません。
自身の後遺障害等級が本当に正しいのか?
正しい損害賠償項目や金額はどうやって判断すればいいのか?
加害者側の保険会社の担当者に正しい主張をして、納得させることができるか?
裁判になった場合、法律知識もないのに闘えるのか?
交通事故で負った後遺障害による精神的、肉体的苦痛を背負ったまま、示談交渉を進めていくのは大変なことです。
そして、本来であれば受け取るべき金額の示談金を、結局は手に入れることができないなどということがあっては、被害者にとっては大きな損害になってしまいます。
そんな時、強い味方になるのが我々、交通事故問題に精通した弁護士集団です。
弁護士であれば、示談交渉の煩わしさや苦痛から被害者を解放できます。
そして、示談金の増額を勝ち取ることができます。
つまり、被害者を万全にサポートしていくことができるのです。
みらい総合法律事務では、専門的な知識と豊富な経験を持った弁護士たちが無料で相談をお受けしています。
死亡事故や後遺症が残った方は、ぜひ一度、ご連絡をいただければと思います。