交通事故で死亡した場合の賠償金の相場金額
目次
交通死亡事故における賠償金の相場額について解説します。
被害者の方が亡くなった場合、慰謝料や逸失利益などが支払われます。
慰謝料などさまざまな損害項目を合計したものが損害賠償金となり相場金額があるのですが、じつは被害者のご遺族が適切な金額を受取っていないという現実があります。
そこで本記事では、交通事故で被害者の方が亡くなった場合の、
- 賠償金の損害項目別の内容
- 賠償金の正しい相場金額と計算方法
- 示談交渉での注意ポイント
などについて、お話ししていきたいと思います。
これから、交通死亡事故の賠償金の相場金額などについて解説していきますが、その前に交通事故解決までの全プロセスを説明した無料小冊子をダウンロードしておきましょう。
交通死亡事故の賠償金で損をしないための知識
まずはじめに交通事故の賠償金で損をしてしまわないための内容を解説していきます。
交通事故の損害賠償金と示談金、保険金、慰謝料の違いとは?
交通事故で被害者の方が亡くなった場合、賠償金が支払われます。
ところで、交通事故の損害賠償金と示談金、保険金、慰謝料の違いをご存じでしょうか?
損害賠償金
被害者側から見た場合、被った損害を加害者からお金で賠償してもらうので、損害賠償金になります。
示談金
被害者側と加害者側双方で示談によって賠償金額が合意されるので、示談金といいます。
保険金
加害者側の任意保険会社の立場から見ると、保険契約に基づいて被害者側に支払うものなので、保険金になります。
つまり、これらはすべて同じものであって、見る立場や状況によって言い方が異なるだけ、ということになります。
なお、慰謝料というのは、さまざまある損害項目の1つであり、それらを合計したものが損害賠償金となるわけです。
交通事故の慰謝料は1つではない!?
じつは、交通事故の慰謝料というのは1つではありません。
次の4種類があることを覚えておいてください。
入通院慰謝料(傷害慰謝料)
被害者の方が傷害(ケガ)により入通院したことで被った精神的損害に対して支払われるものです。
詳しい解説はこちら
後遺障害慰謝料(後遺症慰謝料)
ケガが完治せず症状固定となると、被害者の方には後遺症が残ってしまいます。
そこで、後遺障害等級認定の申請を行ない、等級が認定されると支払われるのが後遺障害慰謝料です。
・交通事故の入通院慰謝料と後遺障害慰謝料を解説
死亡慰謝料
被害者の方が死亡した場合の精神的苦痛に対して支払われるものです。
なお、被害者の方は亡くなっているので、受取人は相続人になります。
近親者慰謝料
被害者の方のご家族等の近親者が被った精神的苦痛・損害に対して支払われる慰謝料です。
交通死亡事故の慰謝料は誰が受け取ることができるのか?
交通事故の慰謝料は被害者の方に支払われるものですが、死亡事故の場合は被害者の方は亡くなっているので、ご家族が死亡慰謝料を受け取ることになります。
ただし、ご家族であれば誰でも受け取ることができるわけではなく、法的な相続人となることに注意が必要です。
たとえば、相続順位は次のようになります。
第1位 | 子 |
---|---|
第2位 | 親 |
第3位 | 兄弟姉妹 |
- 第1位
- 子
- 第2位
- 親
- 第3位
- 兄弟姉妹
※配偶者がいる場合は、つねに相続人になります。
また、相続順位によって相続(分配)の割合が変わってきます。
慰謝料などの算定では金額が異なる3つの基準が使われる
交通事故の慰謝料などを算定する際、次の3つの基準が使われます。
それぞれで金額が異なることに注意が必要です。
1.自賠責基準
自賠責保険は、自動車やバイクなどを運転する者、所有する者が必ず加入しなければいけないもので、強制保険とも呼ばれます。
自賠責基準というのは、この自賠責保険により定められている基準で、被害者の方への賠償金額がもっとも低くなるものです。
それは、自賠責保険自体が人身事故の被害者の方に最低限の補償を行なうために設立されたものだからです。
2.任意保険基準
自賠責保険には支払限度額があるため、被害者の方の後遺障害が重度の場合などでは賠償金が足りない場合があります。
そうした事態に備えて運転者や自動車の所有者が加入するのが任意保険です。
任意保険基準は、各損害保険会社がそれぞれ独自に設定しており非公表となっているので、正確な数値はわからないのですが、自賠責基準より少し高い金額になるように設定されていると思われます。
3.弁護士(裁判)基準
3つの基準の中では、もっとも高額になるのが弁護士(裁判)基準です。
弁護士が被害者の方の代理人として、加害者側と交渉する際に用いる基準です。
過去の多くの裁判例から導き出されている基準のため、裁判になった場合に認められる可能性が高いものです。
弁護士(裁判)基準で算定した慰謝料などの賠償金こそが被害者の方が受け取るべき正当な金額になります。
交通死亡事故の賠償金の項目(慰謝料以外)と相場金額
交通死亡事故で被害者の方のご遺族が受け取ることができる損害賠償項目(慰謝料以外)には主に次のものがあります。
葬儀関係費
自賠責保険からは定額の60万円が支払われます。
この金額を超えた時は、「社会通念上、必要かつ妥当な実費」として、100万円まで認められる場合があります。
多くの場合、加害者側の任意保険会社が提示してくる金額は120万円以内となっています。
弁護士に依頼して訴訟を起こした場合は弁護士(裁判)基準で算定した金額を主張していくので、裁判で認められる金額は150万円が上限になります。
墓石建立費、仏壇購入費、永代供養料などは、事故の各事案によって個別に判断されます。
死亡逸失利益
被害者の方が交通死亡事故にあわずに生きていれば将来的に得られたはずのお金、収入のことです。
死亡逸失利益は、次の計算式から求めます。
(年収)×(就労可能年数に対するライプニッツ係数)×(1-生活費控除率)=(死亡逸失利益)
基礎収入(年収)
・被害者の方が事故の前年に得ていた収入額。
・年金なども基礎収入に含まれます。
就労可能年数
・原則、18歳から67歳まで。
・ただし、被害者の方の状況(職種、地位、能力など)によっては67歳を過ぎても就労することが可能だったと判断され、その分の年数が認められる場合もあります。
参考情報:令和2年簡易生命表(男)(厚生労働省)
参考情報:令和2年簡易生命表(女)(厚生労働省)
ライプニッツ係数
・将来に受け取るはずだった収入を前倒しで受け取るのが死亡逸失利益のため、将来的にお金の価値が変動した際に差額が生じてしまいます。
これを調整するために用いるのがライプニッツ係数です。
・ライプニッツ係数は、あらかじめ定められている係数表から年齢によって求めます。
参考情報:「就労可能年数とライプニッツ係数表」(国土交通省)
生活費控除率
・生きていれば、かかっていたであろう生活費分を控除するもので、被害者の方の家庭での立場や状況によって相場の割合が決まっています。
被害者が一家の支柱で被扶養者が1人の場合 | 40% |
---|---|
被害者が一家の支柱で被扶養者2人以上の場合 | 30% |
被害者が女性(主婦、独身、幼児等含む)の場合 | 30% |
被害者が男性(独身、幼児等含む)の場合 | 50% |
- 被害者が一家の支柱で被扶養者が1人の場合
- 30%
- 被害者が一家の支柱で被扶養者2人以上の場合
- 30%
- 被害者が女性(主婦、独身、幼児等含む)の場合
- 30%
- 被害者が男性(独身、幼児等含む)の場合
- 50%
詳しい内容や実際の計算例などは、こちらのページを参考にしてください。
・【死亡事故の逸失利益】職業別の計算と早見表
弁護士費用
加害者側の任意保険会社との示談交渉が決裂した場合は、提訴して裁判に進みます。
裁判になると、ご遺族だけでは対応できないため弁護士に依頼することになりますが、最終的に判決までいった場合は、そこで認められた賠償金の10%程度が相当因果関係のある損害ということで、弁護士費用相当額として加算されます。
なお、判決までいった場合は遅延損害金というものも加算されます。
「裁判はしたくない」というご遺族もいらっしゃるのですが、賠償金が増額されることを知ったうえで、提訴するかどうか、弁護士に依頼するかどうかを検討するのがいいでしょう。
よくわかる動画解説はこちら
交通死亡事故の慰謝料はいくらになるのか?
前述したように、慰謝料の算定ではどの基準を用いるかで金額が大きく変わってきます。
自賠責基準による死亡慰謝料
自賠責基準では、①被害者本人の死亡慰謝料、②近親者慰謝料(ご遺族分)の合算として死亡慰謝料が扱われます。
被害者本人:400万円(一律)
ご遺族:配偶者・父母・子の人数によって次のように変わる。
・2人場合/650万円
・3人場合/750万円
※ご遺族が被扶養者の場合は上記の金額に200万円が上乗せされます。
※父母には、養父母も含まれます。
※子には、養子・認知した子・胎児も含まれます。
こちらの記事でも詳しく解説しています
・自賠責保険金の請求手続きを解説(死亡事故編)
なお、自賠責保険では保険金全体の上限額が決められており、被害者死亡の場合は3000万円になります。
この金額を超えた分は、ご遺族にとっては不足分になるため、任意保険会社と示談交渉していく必要があります。
任意保険基準による死亡慰謝料
被害者の方の家庭での立場や属性などによって金額が変わってきます。
任意保険基準は各社非公表のため正確ではありませんが、経験上多くの場合に、次のような金額になります。
一家の支柱(一家の生計を立てている者):
1500~2200万円
専業主婦(主夫)・配偶者:1300~1800万円
子供・高齢者など:1100~1700万円
弁護士(裁判)基準による死亡慰謝料
弁護士(裁判)基準でも死亡慰謝料は被害者の方の家庭での立場や状況によって変わってきます。
もっとも注目していただきたいのは、やはり3つの基準の中では弁護士(裁判)基準による金額が断然高額になるという事実です。
被害者が一家の支柱の場合 | 2800万円 |
---|---|
被害者が母親・配偶者の場合 | 2500万円 |
被害者がその他の場合(子供・高齢者など) | 2000万~2500万円 |
- 被害者が一家の支柱の場合
- 2800万円
- 被害者が母親・配偶者の場合
- 2500万円
- 被害者がその他の場合(子供・高齢者など)
- 2000万~2500万円
詳しい解説はこちら
近親者慰謝料で注意するべきポイント
受取人が両親(父母)、配偶者(夫・妻)、子供の場合の近親者慰謝料は、概ね被害者ご本人の慰謝料の1~3割ほどの金額になります。
内縁の夫や妻、兄弟姉妹、祖父母にも認められる場合があるので該当する方は一度、弁護士に相談してみることをおすすめします。
よくわかる動画解説はこちら
示談交渉が極めて大切な理由と知っておくべきポイント
示談交渉が重要。ということはわかってはいるものの、難しくて理解しづらいもの。
わかりやすく解説いたします。
加害者側の任意保険会社は正しい賠償額を提示してこない
「保険会社が言うのだから、この金額で正しいのだろう…」
そう考えてしまうご遺族がいます。
また、「示談交渉が長引くのはつらい」「保険会社と交渉するのに疲れた…」、提示金額で示談を成立させてしまう方もいます。
しかし、ちょっと待ってください!
保険会社は被害者の方とご遺族が受け取るべき正しい金額を提示してこないのです
保険会社は営利会社ですから、利益を上げることを目的としています。
賠償金を支払うことは簡単にいえば会社の損失ですから、これをできるだけ低く抑えようとします。
そのため、加害者側の任意保険会社からの提示額は、かなり低いのです。
2分の1、3分の1,さらには10分の1以上も低い金額を提示してくる場合もあります。
ですから、亡くなったご家族のためにも、ご遺族は保険会社の提示する賠償金で示談してしまってはいけないのです。
・交通事故で保険会社が低い慰謝料を提示してくる理由
保険会社からの提示金額と損害項目を確認する
ですから、保険会社から提示金額に関する書面が届いたら、必ず提示金額と損害項目を確認してください。
抜けている項目はないか、金額は妥当か…ただ、交通事故被害など初めての経験という方がほとんどだと思います。
そうであれば、すべての損害項目や正しい賠償額などわからないのも無理はありません…。
慰謝料自動計算機を使ってみる
みらい総合法律事務所では、どなたでもすぐに慰謝料などの賠償金額を知ることができる「慰謝料自動計算機」をWEB上でご提供しています。
当事務所所属の交通事故実務の経験豊富な弁護士が監修しています。
指示に従って数字を入力していくだけで、概ねの金額がわかるようになっています。
(実際の損害賠償実務では、弁護士がさらに詳しく金額を算定していきます)
この自動計算機で出た金額と保険会社の提示額を比べてみてください。
おそらく、ほとんどの場合で提示額はかなり低いはずです。
この自動計算機が算定する金額が、本来であればご遺族が受け取るべき金額になります。
実際、自動計算機で出た数字を持参して当法律事務所に相談に来られる相談者の方も多くいらっしゃいます。
保険会社から賠償金の提示があったら、まずは自動計算機を利用してみてください。
交通事故に強い弁護士に依頼するメリット
加害者側の任意保険会社の担当者は保険と交渉のプロです。
毎日、何件もの交渉をこなしているのですから、そうした相手とご遺族が交渉して、賠償金の増額を勝ち取るのは、かなり難しいことと言わざるを得ません。
保険会社との示談交渉が上手く進まない、賠償金額に不満があるという場合は、ぜひ1度、ご相談ください。
ご遺族は、煩わしい保険会社との交渉から解放され、賠償金の増額を受け取ることができるなど多くのメリットを実感していただくことができると思います。
交通事故で大切なご家族を亡くした方に、わかりやすい動画解説をご用意しています。
ぜひ参考になさってください。