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高次脳機能障害、てんかん、半盲症により併合1級で慰謝料増額した裁判例

最終更新日 2021年 07月31日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

【動画解説】 交通事故の高次脳機能障害の解決事例

後遺症が残った場合の示談交渉のポイント

交通事故で被害を受けた場合には、被った損害を全て正確に請求していく必要があります。

そのために必要な事は、いかなる損害を受けたのかを主張立証できるようにすることです。

受けた損害を正確に主張するためには損害を特定しなければなりません。

後遺症が残った場合には、損害を正確に主張するためには、その後遺症がどの程度重いのか、将来にわたってどのような障害が発生するのかを明らかにしなければなりません。

そのための手続きが、自賠責後遺障害等級認定です。

自賠責後遺障害等級認定は、損害保険料率算出機構という独立の団体が行っていますが、常に正しい判定がされるとは限りません。

認定が誤っている場合には、異議申し立てという手続きにより、正しい等級を認定してもらう必要があります。

今回は、高次脳機能障害について解説をしますが、正しい後遺障害等級認定をしてもらうためには、高次脳機能障害という症状を知り、かつ、自賠責後遺障害等級で何級が認定されるのかを知っておく必要があります。

そこで以下では、この点について解説をします。

【参考記事】
損害保険料率算出機構「当機構で行う損害調査」

高次脳機能障害とは

交通事故で脳挫傷などにより、脳に損傷を受けた場合、後遺症として、「高次脳機能障害」が残ることがあります。

高次脳機能障害とは、脳卒中や脳の器質的損傷(脳外傷)の影響で、認知機能の働きに問題が生じた状態をいいます。

高次脳とは、言葉どおり、高次の機能であり、高次脳機能障害になると、以下のような様々な障害が出ます。

☑注意障害 作業に集中できない
☑記憶障害 記憶に障害が出る
☑失語症 言葉が出てこない
☑地誌的障害 地図が読めない
☑遂行機能障害 作業を計画的にこなせない
☑社会的行動障害 衝動的な行動が多くなり、怒りっぽくなる
☑半側空間無視 空間の半分に注意が向かない
☑失行症 意図した動作ができない
☑半側身体失認 麻痺した側の身体に注意が向かない

高次脳機能障害は、身体障害ではないため、見た目では判断できません。

したがって、注意深く症状を見極めることが重要です。

【参考記事】
国立障害者リハビリテーションセンター「高次脳機能障害を理解する」

高次脳機能障害の後遺障害等級

交通事故で高次脳機能障害の後遺症が残った場合には、自賠責後遺障害等級認定を受けることになりますが、主に、以下の等級が認定されることになります。

1級1号「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」

① 食事・入浴・用便・更衣等に常時介護を必要とする場合
② 高度の痴呆や情意の荒廃のため、常時監視を要する場合

見た目の障害はありませんが、高次脳機能障害のため、日常生活の維持に必要な身の回り動作に全面的な介助が必要となる状態です。

2級1号「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの」

① 食事・入浴・用便・更衣等が一人でできず、随時介護を要する場合
② 痴呆、情意の障害、幻覚、妄想、頻回の発作性意識障害等のため、随時監視を必要とする場合
③ 自宅内の日常生活動作は一応できるが、1人で外出することなどが困難であり、随時他人の介護を必要とする場合

高次脳機能障害のため、1人で外出することができず、日常の生活の範囲は自宅内に限定されます。排泄、食事などの活動を行なうことができても、生命維持に必要な身辺動作に常時とは言わないまでも、随時、家族からの声掛けや看視を欠かすことができない状態です。

3級3号「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの」

① 職場でコミュニケーションを図ることができない
② 仕事を手順どおり進めることができず、働くことができない
③ 集中力が維持できず、作業を終えることができまない
④ 突然、感情を爆発させたりするため、他の人と共同で働くことができない

生活範囲は自宅に限定されておらず、声掛けや介助なしでも日常の動作を行なえますが、高次脳機能障害のため、働くことができない状態です。

5級2号「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの」

次のうち、ひとつ以上の能力の大部分が失われているか、あるいは半分程度が失われていることにより、正常に働くことができません。

可能な労働は、単純な繰り返し作業などの軽易な労働に限定されます。また、頻繁な助言などが必要となります。

また、新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題があります。就労の維持には職場の理解と援助を欠かすことができません。

① 職場で他の人とコミュニケーションを図る能力
②手順通りに仕事を進める能力
③ 集中して作業をする能力
④ 感情を制御する能力

7級4号「神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外に労務に服することができないもの」

高次脳機能障害のため、作業手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどの理由により、一般人とは同等の作業はできません。時々、助言などが必要となります。一般就労は可能です。

9級10号「神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」

一般就労を維持することはできるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業持続力などに問題がある場合です。

後遺障害等級を認定するための4つの能力

高次脳機能障害の後遺障害等級を認定するには、次の4つの能力を念頭において判断します。

意思疎通能力  職場において他人との意思疎通を適切に行えるかどうか等について判定します。主に記銘・記憶力、認知力、言語力の側面から判断を行うことになります。

問題解決能力  作業課題に対する指示や要求水準を正確に理解し適切な判断を行い、円滑に業務が遂行できるどうかについて判定します。主に理解力、判断力、集中力について判断を行います。

作業負荷に対する持続力・持久力  一般的な就労時間に対処できるだけの能力が備わっているかどうかについて判定します。精神面における意欲、気分又は注意の集中の持続力・持久力について判断を行います。

社会行動能力  職場において他人と円滑な共同作業、社会的行動ができるかどうか等について判定します。協調性が重視されます。

【参考情報】
2018年5月31日「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムの充実について」(報告書)

重度の高次脳機能障害では介護費用の立証がポイント

重度の高次脳機能障害が残った場合には、将来の介護費用の主張立証が大切になります。

特に、自賠責後遺障害等級1級で常時介護を必要とする場合や、2級で随時介護を必要とする場合です。

このような場合には、将来の介護費用が、数千万円となることが多いので、介護費用の立証によってかなりの賠償額に違いが生じてきます。

介護費用の立証方法については、いろいろな方法がありますので、交通事故に精通した弁護士に依頼をして、正しく将来の介護費用を主張立証してことが大切になります。

【参考記事】
高次脳機能障害:交通事故の被害者が知るべきこと、注意するべきこと

てんかんの後遺障害等級


てんかんは、反復するてんかん発作を主症状とする慢性の脳障害であり、そのてんかん発作とは、大脳のある部分の神経細胞が発作的に異常に過剰な活動を起こし、これがある程度広範な領域の神経細胞をまきこんで、一斉に興奮状態に入った場合に生ずる運動感覚、自律神経系または精神などの機能の一過性の異常状態のことを言います。

てんかんの診断については、発作の型の特定や脳波検査が重要とされており、MRI、CT等の画像診断が、発作の原因を判断するのに有効とされています。

てんかんの後遺障害等級は、以下のとおりです。

5級2号

1ヶ月に1回以上の発作があり、かつ、その発作が意識障害の有無を問わず転倒する発作、または、意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作。

7級4号

転倒する発作等が数ヶ月に1回以上あるもの、又は転倒する発作等以外の発作が1ヶ月に1回以上ある場合。

9級10号

数ヶ月に1回以上の発作が転倒する発作等以外の発作であるもの、又は、服薬継続によりてんかん発作がほぼ完全に抑制されている場合。

12級13号

発作の発現はないが、脳波上に明らかにてんかん性棘波を認める場合。

【参考情報】
「てんかん」厚生労働省

てんかんの有無が争われた裁判例

症状固定時36男性の交通事故です。自賠責後遺障害等級は、平衡機能障害として、12級12号が認定されました。

被害者は、てんかんを主張しましたが、裁判所は、発作の有無については、小発作はあったが、病院への搬送がなかったことからすれば、1日に7回もの大発作(後遺障害診断にいう全身性強直間代性けいれん)はなかったと認定しました。

そして、発作の原因については、「外傷性てんかんとする根拠の大半に疑問がある上(これは、客観的証拠に必ずしも合致しない原告の問診内容に依拠していることによる。)、脳波検査に異常がないこと、画像診断においても外傷による病変の存在が認められないことを総合すると、」医師の鑑定が指摘したとおり、外傷性てんかんである可能性は低いといわざるを得ない、として、てんかんの後遺症を否定しました(東京地判平成11年11月26日、交民32・6・1867)。


58歳男性の交通事故です。自賠責後遺障害等級は、てんかんについて非該当でした。

しかし、裁判所は、てんかんの後遺症で後遺障害等級9級であると認定し、59歳から70歳までの11年間について、労働能力喪失率35%を認めました。

理由は、以下のとおりです。

外傷性てんかんの診断基準として広く用いられるWalker、A.E.の診断基準を検討し、

①その発作がまさしくてんかんであること

②外傷以前にてんかん発作を起こしていないこと

③他に脳又は全身疾患を持たないこと

④外傷は脳損傷を起こし得る程度の強さであったこと

⑤最初のてんかん発作は、受傷後あまり長くない時期に発生していること

⑥てんかんの型、脳波所見及び脳損傷部位が一致していること

のうち、②③⑤に該当することは問題がなく、①に関しても、当初から、発作時の状況を聞き取った医師が、確定的ではないとしながらも、外傷性てんかんの発作である可能性が高いとして、抗てんかん薬の投薬を開始して、その効能から判断して外傷性てんかんとの診断を行っていることなどから該当するとしました。

また、④⑥に関しては、受傷時に意識障害を伴わないような軽微頭部損傷でも、てんかんが発作する場合がないわけではなく、脳波についても、発作間欠期のてんかん性放電が出現しない場合も少なくないと認められることからすると、それまで、意識喪失発作を起こしたことのなかった原告が、本件事故による頭部打撲を契機に変調を訴え、本件事故の約5か月後から、度々(約10か月間に5回)、意識喪失の発作を起こしたが、外傷性てんかんが疑われるとして抗てんかん薬の投与が開始された後(平成12年4月以降)は、平成12年に3回、平成13年及び平成14年は各1回の発作のみであることなどからこれにも該当するとし、原告が本件事故によって外傷性てんかんを発症したものと認定しました。

半盲症とは


半盲症とは、視神経線維が、視神経交叉又はそれより後方において侵されるときに生じるものであって、注視点を境界として、両眼の視野の右半部または左半部が欠損するものをいいます。

両眼同側が欠損するものは同側半盲、両眼の反対側の欠損するものは異名半盲といいます。

自賠責後遺障害等級としては、以下のようになります。

・第9級 3号   両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
・第13級2号   1眼の半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの

慰謝料が増額した裁判例

事案の概要

東京地裁平成16年6月29日判決(交通事故民事裁判例集37巻・3号・838頁)

【死亡・後遺障害等級】
後遺障害等級併合1級

【損害額合計】
359,780,289円

【慰謝料額】
合計38,000,000円
後遺症慰謝料の本人分として、30,000,000円
近親者2名(被害者の両親)に各4,000,000円

【交通事故の概要】
平成9年4月24日午前10時50分ころ、神奈川県足柄上郡内の高速道路において、被害者が乗用車の助手席に同乗中、運転者が運転操作を誤り中央分離帯等に衝突しました。

被害者は急性硬膜下血腫、脳挫傷、肋骨骨折、外傷性くも膜下出血、肺挫傷、両側前腕開放骨折等の傷害を負い、平成11年8月2日に症状固定しました。

被害者の障害は、幼児がえり等の重度の高次脳機能障害、てんかん等で後遺障害等級1級3号、半盲症について9級3号、併合で1級に認定されました。

被害者は、事故当時25歳の男性で、大学院の博士課程に在籍していました。

原告は、被害者、被害者の両親です。
原告らが弁護士に依頼し、弁護士が代理人として提訴。

判決のポイント

相場の慰謝料 28,000,000円

本件交通事故では、以下の事情から、合計で、38,000,000円の後遺症慰謝料を認めました。

①被害者が交通事故により受けた脳損傷の程度はかなり高度であり、認知障害、記憶障害などの重度の高次脳機能障害を負い、知能及び人格の面でも大人から幼児に変わってしまったことが認められること。

②被害者は大学院の博士課程に在籍し、学業優秀であり、奨学金を受け、就職先も内定していたが、交通事故により労働能力を100%喪失し、常に他人の介護が必要となってしまったこと。

③被害者の両親は、以前の輝かしい生活と洋々たる前途を一瞬にして奪われた被害者を常時身近にいて見守り看護せざるを得ず、被害者の死亡にも比肩すべき精神的苦痛を被ったというべきであること。

以上、交通事故で重度の高次脳機能障害等で後遺障害等級1級が認定された事案について、慰謝料を増額した判例を弁護士が解説しました。

後遺障害等級1級で慰謝料増額が争いになった時は、弁護士にご相談ください。

【参考記事】
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