後部座席のシートベルト義務と罰則|違反時の点数などを徹底解説
自動車のシートベルトは、後部座席に座っている人も着用が義務付けられています。
着用しない場合は違反となるだけでなく、交通事故が発生した際の重傷・死亡リスクが大幅に高まる原因となるので注意が必要です。
本記事では、シートベルト着用義務の範囲と違反した際の罰則、そして事故発生時のリスクについて解説します。
※本記事は、2025年12月時点の法令を前提としています。
目次
後部座席でもシートベルトは義務?
道路交通法で定められたルール
道路交通法では、運転者だけでなく、すべての同乗者にシートベルト着用が義務付けられています。
シートベルト着用義務の規定
道路交通法第71条の3第2項では、自動車の運転者は座席ベルトを装着しない者を、運転者席以外の乗車装置に乗車させて自動車を運転してはならないと定めています。
したがって、病気などやむを得ない理由がある場合を除き、運転者は助手席だけでなく、後部座席に乗る人にもシートベルトの着用を求めなければなりません。
この規定を守らず違反した場合、運転者は行政処分の対象となります。
後部座席のシートベルト着用
義務化の経緯
日本では長らく前席のみがシートベルト着用義務の対象でしたが、2008年(平成20年)の道路交通法改正で後部座席にも着用義務の範囲が拡大しました。
座席ベルトの着用の有無は、致死率や車外放出割合に大きく影響します。
国土交通省の「後部座席ベルトシートベルトリマインダに係る国際基準の検討状況(報告)」によると、後部座席のシートベルト非着用による致死率は着用時の約4.5倍、死亡者の車外放出割合は約9.5倍と極めて高水準です。
こうした背景から後部座席の安全確保を目的に義務化が進められ、現在では乗車位置を問わずシートベルト着用が基本ルールとなっています。
後部座席でシートベルトを
しないとどうなる?
罰則・違反点数まとめ
後部座席でシートベルトを着用しない場合の罰則は、運転者に対して行われます。
違反点数制度の仕組みと影響
点数制度は、自動車等の運転者の過去3年間の交通違反や交通事故に一定の点数を付け、その合計点数(累積点数)に応じて運転免許の停止や取消などの処分を行う制度です。
たとえば、行政処分前歴が0回で違反点数が7点の人は、30日間の停止処分を受けることになります。
点数制度は累積方式のため、軽微な違反点数でも、合計が所定の点数に達した時点で行政処分の対象となるので注意が必要です。
違反点数の有無と反則金の扱い
後部座席でシートベルトを着用しなかった場合の罰則は、一般道路と高速道路で扱いが異なります。
高速道路で後部座席のシートベルト着用義務違反があった場合、運転者に対して行政処分の基礎点数1点が付されます。
一般道路でもシートベルトの着用義務はありますが、違反点数が付くのは高速道路に限られます。
<後部座席のシートベルト着用義務違反に対する罰則>
| 一般道路 | 高速道路 | |
|---|---|---|
| 違反点数 | なし(口頭注意) | 1点 |
| 反則金 | なし | なし |
| 罰金 | なし | なし |
シートベルトの着用義務が
免除されるケース
シートベルトは、後部座席であっても基本的に着用しなければなりません。
しかし、疾病のため座席ベルトを装着させることが療養上適当でない者を乗車させる場合や、やむを得ない理由があるときは着用義務が免除されます。
「やむを得ない理由」に該当するケースとしては、負傷や障がい、妊娠中であることにより、座席ベルトを装着することが療養上または健康保持上適当でない場合が挙げられます。
さらに、著しく座高が高い・低い、著しく肥満しているなど、身体の状態により適切に座席ベルトを装着できない場合も含まれます。
このようなケースに該当するときは、例外的にシートベルトを着用しなくても違反にはなりません。
なぜ後部座席のシートベルトが
重要なのか|事故時の死亡リスクと
安全効果
後部座席のシートベルト着用が義務化されたのは、交通事故の衝撃から身を守るために不可欠だからです。
後部座席でシートベルトを
着用しないリスク
後部座席でシートベルトの着用が義務付けられた主な理由としては、次の3点が挙げられます。
- 車内で全身を強打するリスク
- 車外に放り出されるリスク
- 前席の人が被害を受けるリスク
交通事故で車同士が衝突した場合、シートベルトを着用していないと強い力で前席や天井、ドアなどにたたきつけられます。
衝突の勢いが激しい場合には、後席から車外に放り出され、硬いアスファルトに体を打ち付けられます。
また、車外に出てしまうと、後続車両にひかれる可能性もあるため大変危険です。
後部座席でシートベルトを着用していない場合、その影響は運転席や助手席の人にも及びます。
後席の人が前方に投げ出されると前席に衝突するだけでなく、運転席や助手席の人がエアバッグと後席乗員に挟まれ、頭部に大怪我を負う危険があります。
事故時の致死率・重傷率の
データ
後部座席でシートベルトを着用していない場合、着用している場合に比べて致死率は大幅に高くなります。
警察庁の資料によれば、シートベルトの着用有無による致死率の差は顕著であり、高速道路では非着用時の致死率が着用時の約16.6倍に達するなど、シートベルトの使用は生死を左右します。
また、後部座席でシートベルトを着用していないと、後席乗員が前方に投げ出され前席に衝突することで、前席乗員が重傷を負うリスクも大幅に高まります。
そのため、後部座席に座る際は、同乗者の命を守るためにも、シートベルトを必ず着用してください。
シートベルト着用による
安全効果
シートベルトで身体を座席に固定することで、交通事故の際にハンドルやフロントガラスに頭や胸を強くぶつける危険を抑えることができます。
さらに、シートベルトが衝撃を身体全体に分散させるため、内臓損傷や骨折などの重傷化リスクを軽減します。
後部座席においては、前席の乗員に衝突する危険を抑える効果もあります。
このように、シートベルトの着用は、乗車しているすべての人の重傷リスクを大幅に減らす重要な役割を果たします。
子どもを後部座席に乗せるときの
注意点
小さい子どもを自動車に乗せる際は、チャイルドシートやジュニアシートの使用が義務付けられています。
チャイルドシート・
ジュニアシートの義務化
6歳未満の子どもを乗車させる場合、道路交通法第71条の3第3項によりチャイルドシートやジュニアシートの使用が義務付けられています。
これは子どもの体格が小さく、通常のシートベルトでは十分な保護ができないためです。
チャイルドシートは、乳幼児をしっかり固定し、衝突時の衝撃を分散させる効果があります。
ジュニアシートは、成長に合わせて座高を補い、シートベルトが正しい位置にかかるよう調整します。
年齢・体格に応じた
適切な着用方法
子どもにシートベルトを着用させる際は、年齢や体格に応じて適切な種類を選ぶことが重要です。
小柄な子どもに大人用のシートベルトをそのまま使用すると、首や腹部に過度な圧力がかかり、事故時に危険となる場合があります。
6歳以上の子どもでも、ジュニアシートを使用することでシートベルトが肩と腰の正しい位置にかかり、衝撃を効果的に分散できます。
成長に合わせてチャイルドシートからジュニアシートへ移行し、通常のシートベルトを安全に使用できるようになるまで段階的に対応することが求められます。
保護者が注意すべきポイント
チャイルドシート・ジュニアシートは、法律上の義務であると同時に、子どもの命を守るために欠かせないものです。
子どもを後部座席に乗せる際は、シートベルトやチャイルドシートを正しく装着しているか必ず確認してください。
装着が緩んでいたり、誤った位置にベルトがかかっていると、事故時に十分な効果を発揮できません。
また、子どもが嫌がって外さないためにも、長時間の乗車ではベルトが食い込まないよう調整するなどして、快適さと安全性を両立させる工夫も大切です。
タクシーやバスの後部座席でも
シートベルトは必要?
後部座席のシートベルト着用が義務付けられているのは、自家用車だけではありません。
タクシー利用時の
シートベルト義務化のルール
タクシーも自家用車と同様、後部座席のシートベルト着用は道路交通法で義務付けられています。
法律上では運転者に同乗者へのシートベルト着用を義務付けているため、義務自体はタクシー運転手に課されています。
したがって、タクシー利用者がシートベルトを着用していない場合には、運転者が取り締まりの対象となります。
なお、身体的な問題などやむを得ない理由がある場合には、シートベルトを着用しないことが認められるケースもあります。
バスにおける着用義務の範囲
バスの場合も、原則としてシートベルトの着用が義務付けられています。
しかし、都市部を走る路線バスなど、立ち乗りを前提とした車両にはシートベルトが設置されていないことが一般的です。
これは道路運送車両の保安基準第22条の3において、専ら乗用の用に供する自動車のうち、乗車定員10人以上で高速道路などを運行しないものについては、シートベルトの着用範囲を「運転者席及びこれと並列の座席」と規定しているためです。
そのため、路線バスにおいて、乗客のシートベルト着用は義務付けられていません。
ただし、高速バスや観光バスなど、シートベルトが設けられている車両では、乗客自身の安全を守るためにも着用を徹底する必要があります。
タクシー・バスで
シートベルトを
着用しなかった場合
タクシーやバスでも、後部座席でシートベルトを着用していない乗客がいる場合は取り締まりの対象となります。
特に高速道路での事故は、シートベルトの着用の有無によって重傷率や死亡率が大きく変わるため、警察も注視しています。
未着用が発覚しても、乗客自身が直接罰則を受けることはないとされています。
しかし、交通事故の際に重大な被害を受けるのは、シートベルトを着用していなかった本人自身です。
交通事故は突然発生するため、自分の身を守るためにも、乗車時には必ずシートベルトを着用することが安全確保の基本です。
まとめ|後部座席のシートベルト
義務化を正しく理解しよう
後部座席のシートベルト着用は道路交通法で義務付けられた交通ルールであり、違反すれば罰則や取り締まりの対象となります。
タクシーやバスを含め、シートベルトが設置されている座席では必ず着用することが求められます。
交通事故に遭遇した際のリスクを軽減し、乗員全員の安全を守るためにも、後部座席だからといって油断せず、日常的にシートベルトを着用する習慣を徹底しましょう。
代表社員 弁護士 谷原誠








