交通事故で不起訴になるのはいつわかる?慰謝料への影響は?
交通事故の加害者が不起訴になると聞くと、自分の被害が軽く扱われたのではないかと不安になるかもしれません。
しかし、不起訴はあくまで刑事手続き上の判断であり、交通事故で被った損害に対する賠償とは分けて考える必要があります。
本記事では、交通事故で不起訴となる割合と起訴・不起訴が決まるまでの流れ、不起訴が損害賠償金や慰謝料に与える影響について解説します。
目次
交通事故の起訴・不起訴とは
交通事故が刑事事件として扱われた場合、起訴・不起訴の判断は検察官が行います。
起訴の種類
起訴とは、検察官が被疑者である加害者を刑事裁判にかけて処罰を求める手続きをいいます。
起訴には次の4種類があります。
- 正式起訴(公判請求)
- 略式起訴(略式命令請求)
- 即決裁判手続
- 在宅起訴
正式起訴(公判請求)は、検察官が正式な刑事裁判を求める手続きです。
一般的な起訴は正式起訴のことをいい、重大な刑事事件では正式起訴が選択されます。
略式起訴(略式命令請求)は、100万円以下の罰金または科料が相当と判断される場合に行われる手続きです。
正式起訴よりも迅速に処理されるのが特徴で、道路交通法違反で起訴された場合は略式起訴となるケースが多くみられます。
即決裁判手続は、検察官が起訴と同時に即決裁判を申し立てる手続きです。
罰金や執行猶予判決が見込まれる争いのない事件に対して用いられます。
これとは別に、「起訴」という言葉を使う用語として、「在宅起訴」があります。
在宅起訴は、逮捕や拘留といった身柄拘束を受けない状態で起訴される手続きです。
加害者に逃亡や証拠隠滅のおそれが高くない場合に選択されます。
加害者が公判請求を受けて刑事裁判を行う場合、被害者やご遺族が加害者の刑事裁判に参加できる「被害者参加」制度があります。
不起訴の種類
不起訴とは、検察官が裁判所に訴えを起こさないと判断した場合をいいます。
交通事故の加害者となった場合でも、一定の条件下では不起訴となることがあります。
不起訴の種類には以下の3つがあります。
一つずつ詳しく解説します。
嫌疑なし
嫌疑なしとは、そもそも犯罪が成立しないと判断される場合をいいます。
たとえば、犯罪を認定する証拠がない場合や、人違いであることが明らかな場合には、嫌疑なしとして不起訴処分となります。
嫌疑不十分
嫌疑不十分とは、犯罪の疑いはあるものの、証拠が不足していて立証が難しい場合をいいます。
被害者が加害者を特定できない場合や、客観的な証拠が乏しく関係者の証言に食い違いがある場合には、嫌疑不十分として不起訴となる可能性があります。
起訴猶予
起訴猶予は、犯罪自体は認められるものの、加害者の反省や示談成立などの事情を考慮して起訴を見送る処分です。
交通事故で被害者が怪我を負ったとしても、加害者が誠実に謝罪し、被害者との示談が成立している場合は、起訴猶予の判断が下されることもあります。
不起訴と無罪の違い
不起訴は、検察官が被疑者を刑事裁判にかけないと判断した場合をいいます。
一方、無罪は、検察官が起訴し、刑事裁判が行われた結果、被告人が罪を犯したことを検察官が証明できていないと認定された場合を指します。
交通事故で被害者が怪我を負ったとしても、加害者が不起訴処分となるケースは少なくありません。
しかし、起訴に至った事件で無罪判決が下されるケースは極めてまれです。
交通事故における不起訴率
交通事故が発生したとしても、すべてのケースで加害者が起訴されるわけではありません。
人身事故と物損事故による違い
交通事故には、人の死傷が発生する「人身事故」と、車両や建物などの物だけが損壊する「物損事故」があります。
たとえば、車と歩行者が接触して歩行者が怪我をした場合は人身事故となり、刑事事件の対象になります。
一方、物損事故は基本的に刑事事件として扱われませんが、事故現場から逃走した場合や、車が民家に突っ込むなど建造物を破壊した場合には、刑事責任を問われる可能性があります。
交通事故で不起訴となる割合
法務省が公表している「令和7年版 犯罪白書」によれば、交通事故に関連する事件では不起訴となる割合が高い傾向にあります。
道路交通法違反の半数は不起訴
交通事故の不起訴率は、事故の態様や加害者の悪質性などによって大きく異なります。
令和6年における交通事件のうち、道路交通法違反で不起訴となった割合は51.6%と、半数以上は起訴されていません。
また、正式起訴(公判請求)の対象となった割合は3.4%にとどまるため、通常の裁判が行われたケースは少数となります。
過失運転致死傷等の8割は不起訴
運転中の不注意により、人を負傷または死亡させた場合、過失運転致死傷罪に問われることになります。
過失運転致死傷等に該当する事件のうち、不起訴となった割合は82.6%と非常に高く、正式起訴された割合は1.8%にとどまります。
危険運転致死傷の起訴率は7割
危険運転致死傷に該当する事件は、正式起訴の対象となる確率が非常に高いです。
危険運転致死傷罪は、アルコール・薬物の影響により正常な運転が困難な状態での運転、制御困難な速度での運転、妨害運転(あおり運転)など、極めて危険な運転行為によって人を死傷させた場合に適用されます。
飲酒運転やあおり運転などは社会問題化していることから、検察官が厳しく対処しており、正式起訴の割合は69.8%と、一般事件(23.1%)の約3倍です。
飲酒運転の罰則や慰謝料については以下の記事で詳しく解説しています。
交通事故の起訴・不起訴は
誰が決める?
日本では、起訴する権限は検察官にのみ与えられており、警察官が起訴することはできません。
警察や被害者が起訴を望んだとしても、検察官の判断によっては不起訴となる場合があります。
警察は事故現場の調査や関係者への聴取など、刑事事件の第一次的な捜査を担当します。
警察が収集した証拠は検察へ送致され、検察官が事故態様、行為態様、証拠の確実性、示談の有無などを総合的に勘案し、起訴・不起訴を判断します。
交通事故で不起訴になるケース
交通事故で被害者に怪我を負わせた場合、刑事事件となる可能性がありますが、被害が比較的小さい場合には不起訴となりやすいです。
たとえば、追突事故の場合、被害者の怪我が軽微であり、当事者間で示談が成立しているときは、不起訴になる確率が高いです。
また、ひき逃げ事故であっても、被害が軽微であり、加害者の悪質性が低いと判断されるような状況であれば、不起訴となることもあります。
交通事故の起訴・不起訴が
決まるまでの流れ
交通事故が発生した際には、警察による捜査から検察官の判断まで、いくつかの手続きを経て処分が決まります。
事故発生から
警察の実況見分まで
交通事故が発生した場合、負傷者の救護や警察への連絡を行います。
これらは義務であり、怠ると道路交通法違反となります。
警察が現場に到着すると、実況見分が行われます。
実況見分は、警察が事故現場で状況を確認し、位置関係や痕跡を記録するなどして証拠を保全する捜査活動です。
捜査が終わると、警察は実況見分調書や供述調書を作成します。
逮捕・呼び出し
交通事故で逮捕されるかどうかは、事故の状況によって異なります。
被害者の怪我が軽微な場合には、逮捕されないことも多いです。
その際には、捜査機関からの呼び出しに応じて取り調べを受け、検察官の判断を待つことになります。
一方、重大な事故が起きた場合や、加害者に逃亡や証拠隠滅のおそれがあると認められる場合には、逮捕され、その後取り調べを受けることになります。
検察官による
起訴・不起訴の判断
検察官は、警察から送致された捜査記録だけでなく、自ら収集した情報も踏まえて、起訴・不起訴の判断を行います。
不起訴となった場合には刑事裁判は開かれず、刑罰を受けることもありません。
一方、起訴された場合には刑事裁判を受けることになります。
日本の刑事裁判の有罪率は99%を超えるとされているため、極めて高い確率で有罪判決が下されます。
不起訴でも損害賠償請求はできる
危険運転致死傷罪に該当しない交通事故では、不起訴となるケースが多くみられます。
しかし、不起訴はあくまで刑事手続き上の判断であり、不起訴になったとしても加害者の民事責任が否定されるわけではありません。
交通事故で負傷した場合、被害者は治療費や入通院費、休業損害などを請求できます。
後遺症が残った場合には、後遺障害等級認定を受けることで、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求することも可能です。
これらの請求額は、不起訴となっても減少することはありません。
損害賠償金や慰謝料の額は当事者間の話し合いで決まりますが、加害者が保険に加入している場合には、保険会社と示談交渉を行うことになります。
保険会社は交渉の専門家であるため、被害者だけで対応するのが難しい場面もあります。
また、提示された金額が適正かどうかを判断するのは容易ではないため、交通事故の被害に遭った際は、弁護士に示談交渉を依頼することも有効な選択肢です。
交通事故の対応方法は
弁護士に要相談
交通事故における起訴・不起訴の判断は検察官が行うものであり、被害者は民事上の問題を別途進める必要があります。
適切な補償を受けるためには、加害者が不起訴になった場合でも、示談交渉を通じて損害賠償金や慰謝料の支払いについて話し合わなければなりません。
示談交渉では、加害者が加入する保険会社とのやり取りが中心となり、専門的な知識が求められる場面も少なくありません。
事故後の対応を誤ると、本来受け取れるはずの補償額が大きく減ってしまうおそれがあります。
そのため、対応に不安や疑問がある場合には、交通事故に詳しい弁護士に相談することが推奨されます。
弁護士に相談すれば、請求可能な損害の範囲や適切な手続きの進め方を確認できます。
被害回復を確実に進めるためにも、早い段階で専門家の助言を得ることが大切です。
交通事故における起訴・不起訴の判断でお困りの場合は、まずは一度、みらい総合法律事務所の無料相談をご利用ください。
↓↓
弁護士へのご相談の流れ
↑↑
代表社員 弁護士 谷原誠

















