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加害者が自賠責保険に加入していない場合|政府保障事業

最終更新日 2026年 07月17日

加害者が自賠責保険に加入していない場合

このページでこんなことがわかります
*タップすると解説を見ることができます。

交通事故に遭うだけでも大変なことなのに、いざ相手の情報を確認したら自賠責保険(強制保険)すら未加入だったとなれば、今後の生活や治療に対する不安は計り知れません。

「相手にお金がなければ、賠償金は1円も支払われないのだろうか」と悩んでいませんか?

実は、そんな万が一の事態に備えて、国が被害者を救済する救急網が用意されています。それが「政府保障事業」です。

加害者に支払い能力がない、あるいは相手がわからない(ひき逃げなど)場合でも、この制度を使えば最低限の補償を確保できます。

この記事では制度の概要と、申請の手順を詳しく解説します。

自動車保険の基本をおさらい|
「任意保険」と「自賠責保険」の
仕組みと限界

交通事故の被害に遭った際、治療費や慰謝料がどこから支払われるかを理解するには、まず日本の自動車保険の仕組みを知っておく必要があります。

自動車の保険には、大きく分けて「任意保険」と「自賠責保険(強制保険)」の2種類が存在します。

通常の事故であればこれら2つの保険でカバーされますが、それぞれ役割や補償できる範囲が異なります。まずはそれぞれの特徴と、万が一の「限界」についておさらいしておきましょう。

任意保険制度とは

自動車保険には、自賠責保険と任意保険がありますが、多くの自動車の所有者らは任意保険に加入しています。

それは、交通事故が起きた場合に、被害者が重傷になった場合など、損害額が多額になり、自分では賠償金を支払いきれないことが多いからです。

その点、任意保険で対人賠償無制限に加入しておけば、交通事故を起こしたとしても、保険会社が代わりに損害賠償金を支払ってくれます。

多くの人身事故では、この任意保険を通じて示談交渉が行われ、解決へと至ります。

自賠責保険とは

自賠責保険は、正確には、「自動車損害賠償責任保険」と言い、自動車損害賠償保障法5条で加入が義務づけられている強制保険です。

加入していない場合には、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金という罰則があります(自動車損害賠償保障法86条の3)。

したがって、ほとんどのケースでは、自賠責保険に加入しています。

自賠責保険があれば、人身事故の場合に、一定の金額が支払われることになります。

ただし、自賠責保険は、人身事故の場合に最低限の保障をする趣旨なので、被害者が被った損害の全額を填補することができないことがほとんどです。

その場合には、加害者らに請求をしていく必要がでてきます。

また、中には、自賠責保険に未加入であったり、当初は加入していたが期限が切れてしまっているというケースもあります

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政府保障事業とは

加害者が自賠責保険にすら入っていない無保険状態だったり、ひき逃げで相手が分からなかったりする場合、「賠償金は1円も受け取れないのだろうか」と大きな不安に襲われることでしょう。

しかし、こうした最悪のケースでも被害者が泣き寝入りしなくて済むよう、国が用意している救済制度があります。

それが
政府保障事業(せいふほしょうじぎょう)」です。

ここでは、無保険事故の強い味方となる政府保障事業について、以下の内容を詳しく解説します。

政府保障事業の対象となる場合

政府からの保障を受けることができるのは、以下の場合です(自動車損害賠償保障法72条)。

  • ・交通事故の加害車両の保有者が明らかでない場合
  • ・自賠責保険等の被保険者以外の者が自動車損害賠償保障法3条の責任(運行供用者責任)を負う場合

前者の例としては、ひき逃げで加害者や加害車両が特定できない場合が挙げられます。

後者の例として、今回のように、加害者が自賠責保険に加入していないいわゆる無保険車の場合があります。

保障金額の算定方法は、自賠責保険金額と同じです(平成19年4月1日以降の交通事故)。

すなわち、対象は人身事故のみで、支払限度額は、傷害については120万円後遺障害については、その後遺障害等級に応じて75万円~
4,000万円
死亡事故の場合は
3,000万円
です。

ひき逃げで犯人が見つからない場合の対応(事故直後にやるべきことや、犯人が見つかった後の流れ)は、次の記事で詳しく解説しています。

政府保障事業で慰謝料はいくら支払われるか(計算方法)

政府保障事業から支払われる慰謝料は、自賠責保険の支払基準に準じて計算されます。

怪我(傷害)の慰謝料は、1日あたり4,300円です。

対象となる日数は、「実際に治療した日数の2倍」と「治療期間の総日数」のいずれか少ない方とされています。

例えば、治療期間3ヵ月(90日)のうち実際の通院日数が30日の場合、少ない方の「30日 × 2倍 = 60日」が対象となり、慰謝料は4,300円 × 60日 = 25万8,000円となります。

ただし、傷害分の支払いは、治療費や休業損害なども含めて合計120万円が限度です。

死亡事故の場合の慰謝料は、亡くなった方本人分が400万円、遺族分が請求する人数に応じて550万円〜750万円(被扶養者がいる場合はさらに加算)とされ、葬儀費や逸失利益と合わせて3,000万円が限度となります。

注意していただきたいのは、これらはあくまで「最低限の保障」である自賠責基準の金額だという点です。

裁判所が用いる基準(弁護士基準)で計算した本来の損害額はこれより高額になることが多く、その差額は、後述のとおり加害者ら本人に請求していくことになります。

政府保障事業の対象とならない場合

政府保障事業は、強制保険である自賠責保険によっても救済を受けることができない被害者のための最終的な救済制度であるため、被害者が労災保険や健康保険、介護保険などから給付を受けた場合や、将来給付を受けられる場合には、その限度で政府からの保障を受けることはできません。

また、無保険車の場合であっても、加害者が損害賠償金を支払った場合には、その分は控除されます。

なお、物損に関しては、政府保障事業の対象外のため、加害者が物損を支払ったとしても、政府保障事業には影響しません。

親族間の事故の場合

政府が被害者に支払いをした場合は、政府は、加害者に対して求償することができます。

したがって、親族間で被害者、加害者となってしまうような親族間の事故の場合は、被害者に支払いをしたとしても、親族である加害者から求償することになってしまい、補償の意味がないため、親族間の事故の場合は原則として政府保障事業の対象となりません

ただし、親族間の事故でも、加害者が死亡し、被害者である遺族が加害者の相続を放棄している等の特段の事情がある場合には、補償がなされる場合もあります

政府保障事業の手続等

政府保障事業を請求する場合には、各損害保険会社や共済協同組合にある「自動車損害賠償保障事業への損害てん補請求書」に必要事項を記載し、交通事故証明書や診断書等の必要書類を添付して提出します。

請求書類は、全国どの損害保険会社(共済協同組合)の窓口でも受け付けています。加害者側の保険会社である必要はなく、お近くの店舗で手続きできます。

制度の内容や手続きについてわからないことがある場合には、国土交通省の政府保障事業の窓口や、ナスバ(独立行政法人自動車事故対策機構)の交通事故被害者ホットラインなどでも相談することができます。

事案によりますが、処理には3ヵ月から7ヵ月程度かかるのが一般的のようです。

政府保障事業に対する請求権の時効は、3年です。

起算日は、傷害に関する損害については事故日から、後遺障害に関する損害については症状固定日から、死亡事故の場合は死亡時からです。

政府保障事業の支払いについて、不服がある場合には、保障の内容等が記載されている文書の問い合わせ先に、不服内容や根拠等を記載して問い合わせを行うと、その回答により判断の訂正等が行われる場合もあります。

それでも納得のいく回答が得られない場合には、政府を被告とする当事者訴訟としての給付の訴え(行政事件訴訟法4条)を起こす必要があります。

政府保障事業で賄い切れない損害については、加害者らに直接請求

政府保障事業で賄い切れない損害については、加害者たちに直接請求していくことになります。

交通事故は運転手の過失に基づいて発生するものであるため、運転手に損害賠償を請求できる事はもちろんです。

その他に、自賠法により、運行供用者に損害賠償請求できる権利が定められています。

運行供用者と言うのは、自動車の所有者等自動車の運行を支配し、運行から利益を受ける者のことです。

また、仕事中の事故と言うことになれば、加害者を雇用する会社に請求できる場合もあります。これを使用者責任といいます。

このように、自賠責保険がない場合には、被害者が被った損害の全額を回収するのは、かなり大変な作業となります

誰にいくら請求できるのか、相手に支払能力があるのかといった見通しの判断には専門的な知識が必要ですので、無保険車の事故でお困りの場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

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監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠
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