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【休業損害】主婦・自営業・役員・学生など職業別の計算

最終更新日 2024年 02月17日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

休業損害とは

休業損害とは、交通事故によって負った障害の治療のために休業を余儀なくされ、その間収入を得ることができなかったことによる損害を言います。

ここからはわかりやすくこの休業損害を解説していきます。

休業損害

交通事故の被害にあった場合には、様々な損害が発生しますが、実際に支払いを余儀なくされる損害のほか、本来、交通事故がなかったならば、得られたであろう収入を得られなくなった、と言うものも存在になります。

休業損害は、怪我を治療して完治するかまたは、後遺症が残る場合の治療終了(症状固定)までの間に被害者に生じ生じた収入の減少です。

症状固定後の収入の減少については、休業損害ではなく、後遺障害による逸失利益として計算されます。

休業損害は、実損害となりますので、給料をもらっていて減収がない場合には、休業損害は認められません。

ただし、就職が内定していたなど、交通事故の怪我の治療期間内に就職する蓋然性が高いことを立証した場合には、休業損害が認められます。

休業損害はいつもらえる?


休業損害をもらうためには、休業したことを証明しなければなりません。

休業したことを証明するための書類が、「休業損害証明書」です。

たとえば、給与所得者であれば、勤め先に書いてもらいます。

欠勤した日、有給休暇を消化した日など、休業した日とともに、事故前3ヶ月間の給与、所定勤務時間などを記載します。

給与の場合は、社会保険料・源泉所得税などが差し引かれますが書類には、その総額を記載します。

休業損害証明書を保険会社に提出すると、保険会社の内部の処理スピードにもよりますが、1~2週間で支払がなされることが多いです。

休業損害はいつまでもらえるか?

休業損害は実費ですので、休業をした期間までもらうことができます。

働けるのに休んだ、という場合は、もちろん休業損害をもらうことはできません。休業の必要性相当性が必要となります。

後遺障害が残る場合には、治療を終了しても休業する場合もあります。

この場合には、休業損害は、「症状固定」までもらうことができます

そして、症状固定より後の休業は、「逸失利益」となります。

休業損害は、職業によって算定方法が異なるため、ここでは就労形態別に説明をします。

逸失利益について、もっと詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

【参考記事】
【後遺障害の逸失利益】職業別の計算と早見表

 

給与所得者

給与所得者の休業損害

【認められる金額】
交通事故前の収入を基礎として、ケガによって休業したことによる現実の収入減。

【認められる条件】
ケガを原因として休業したこと。

会社員や公務員のような給与所得者の場合、交通事故前の収入を基礎としてケガによって休業したことによる現実の収入減が休業損害となります。

事故前の収入は、事故前3ヵ月の平均給与をもとに算定することが一般的で、計算式は次のようになります。

3ヵ月の給与額の合計額 ÷ 90日 × 休業日数

 

仕事内容等によって季節的に給与額が大きく変動する場合には、直近の3ヵ月の平均賃金とせずに、前年の同期の収入を参考にすることがあります。

なお、有給休暇を使用した時も休業損害と認められますし、休業に伴う賞与の減額・不支給や昇給・昇格遅延による損害も休業損害と認められています。

当法律事務所の解決事例

23歳男性が、原付バイクで直進中、停車中の自動車のドアが突然開き衝突した交通事故で左前腕骨骨折や鎖骨骨折などのケガを負ってしまいました。

男性は、機能障害と神経症状の後遺障害が残り、自賠責後遺障害等級10級10号と14級9号の併合10級が認定されました。

加害者側の保険会社との示談交渉では、示談金として461万3643円が提示されましたが、男性にはこの金額の妥当性がわからなかったため当法律事務所の弁護士に相談したところ、増額は可能との見解だったために依頼することを決断。

弁護士と保険会社との間では休業損害と慰謝料額が争点となりましたが、最終的には約4.8倍の増額に成功し、2222万1043円で示談が決着しました。

給与所得者の休業損害に関する裁判例


給与所得者の休業損害に関する裁判例をご紹介します。

裁判例①

居酒屋チェーンの店長をしていた27歳男性が、給与をもらっていたにもかかわらず、源泉徴収をされておらず、確定申告もしていなかった事案です。

裁判所は、賃金センサスの男性高卒の25歳から29歳の平均賃金を基礎として休業損害を認めました(東京地裁平成10年11月4日判決、交民31巻6号1699頁)。

裁判例②

34歳女性のエステティシャンが、転職して研修期間中に交通事故の被害にあった事案です。

裁判所は、研修期間中であるために一時的に収入が低額である月額21万円余になっていたものと認定し、交通事故前年のエステティシャンとしての年収493万円を基礎として休業損害を認めました(東京地裁平成18年12月27日判決、交民39巻6号1788頁)。

裁判例③

32歳の男性銀行員が、四肢麻痺及び高次脳機能障害で後遺障害等級1級1号が認定された事例です。

裁判所は、交通事故前の年収は639万円であったところ、同期社員のその後の昇給状況を勘案し、症状固定まで年5%の上昇を前提とした年収を基礎として休業損害を認めました(東京地裁平成16年12月21日判決、出典:交民37巻6号1721頁)。

個人事業者(自営業者)

個人事業者(自営業者)の休業損害

【認められる金額】
交通事故の前年の確定申告所得を基礎として、ケガにより就労できなかった期間。
また、休業中の固定費(家賃や従業員給料など)。

【認められる条件】
ケガによって就労できなかったこと。
休業中の固定費については、事業の維持・存続のために必要やむを得ないものであること。

自営業者や自由業者などの事業所得者は、給与所得者のように容易に休業損害について算定できないこともあります。

収入の証明には、通常は事故の前年の確定申告書に記載してある所得額を基準とします。

実際の所得額よりも低く申告しているケースでは、申告額以上の収入があったことを帳簿や請求書、領収書等の資料から確実に証明できた場合には、申告額を超える収入額が認められる場合もあります。

しかし、節税対策などのために収入を過少に申告しているようなケースでは、裁判所としても、納税義務をきちんと果たしていないのに損害金だけは実際の収入額に応じてもらえる、というような事態を安易には認めるわけにはいかないので、証明のハードルはかなり高くなります。

そうした場合には、修正申告を行なって税金をきちんと納めることも検討する必要があります。

なお、確定申告をしていない場合でも、相当の収入があったと認められる時には、賃金センサスの平均賃金を基礎として休業損害を算定することが認められています。

では、違法な個人事業の場合は、休業損害は認められるのでしょうか。

無免許営業による現実収入源があった場合について、交通事故の事案ではありませんが、自動車運送事業者の債務不履行による損害賠償の事案について、「私法上当然無効となるべき筋合のものではなく、・・・得べかりし利益の喪失は、民法416条により賠償を受け得る通常生ずべき損害に該ある」(最高裁昭和39年10月29日判決)としたものがあります。

しかし、無免許営業に関しては、その確実性、永続性において不安定であるとして、収益額を控え目に計算した裁判例もあります(東京地裁昭和56年3月30日判決)。

ちなみに、賃金センサスとは、厚生労働省が毎年実施している「賃金構造基本統計調査」の結果をまとめたもので、たとえば「日本人で、30歳の会社員であれば平均賃金が〇万円」というように、就労形態別の労働者の賃金の実態がわかるようになっています。

 

個人事業主の休業損害に関する裁判例


個人事業主の場合の、休業損害に関する裁判例をピックアップしました。

裁判例①

54歳男性の電気工事業者が交通事故に被害に遭った事案です。

裁判所は、確定申告額が100万円余であり、原則として、その金額で計算すべきところ、事故前の収入及び経費について、主な受注先への売上が640万円あって経費が93万円であるとして、年額550万円を基礎として休業損害を認めました(大阪地裁平成13年2月15日判決、交民34巻1号224頁)。

裁判例②

53歳の建設業を営む断裁が、交通事故前の3年間、低い所得額で確定申告をしていた事案です。

裁判所は、

・事故前3年間の申告所得額は収入金額に比較して低額に過ぎ、到底現実の生活水準が維持できないとみられること

・従業員10数名を雇用して個人で建設業を営んでいたこと

から、賃金センサス男性学歴計50歳から54歳平均687万5000円を基礎収入とし、事故後半年期間の売上は前年同期と比較して35.5%減少していることから、症状固定まで35.5%の減収として休業損害を計算しました(大阪地裁平成20年3月11日判決、出典:交民41巻2号283頁)。

主婦

主婦の休業損害

【認められる金額】
賃金センサスの産業計・企業規模計・学歴計女子労働者全年齢平均の賃金を基礎として、ケガのため家事を行えなかった期間。

【認められる条件】
ケガを原因として家事を行なえなかったこと。

主婦は、家事を行なっていても、その対価として現実的に金銭を受け取っているわけではありません。

そのため、主婦には休業損害はないと思っている方もいるかしれませんが、主婦でも休業損害は発生します。

なぜなら、事故の影響で家事を行なえなくなれば、誰かがそのしわ寄せを受けることになりますし、場合によっては、家政婦などを頼まざるを得ない事態も考えられるからです。

つまり、主婦業も金銭的に評価されるのです。

主婦の場合、賃金センサスの産業計・企業規模計・学歴計の女子労働者全年齢平均の賃金を基礎として、ケガのために家事を行なえなかった期間について認められます。

 

家事従事者の休業損害に関する裁判例


家事従事者の休業損害はどうなるのか?実際の裁判例を見てみましょう。

裁判例①

24歳専業主婦が交通事故の被害に遭い、自賠責後遺障害等級9級10号が認定された事案で、裁判所は、休業損害の計算において、交通事故により家事ができなかった期間について、賃金センサスによる計算ではなく、家政婦雇用費を認めました(横浜地裁平成7年9月29日判決、交民28巻5号1443頁)。

裁判例②

52歳男性の交通事故について、妻が正社員として働き、被害者は専業主夫として洗濯、掃除、料理等の家事労働を行っていた事案です。

裁判所は、休業損害を、賃金センサス女性学齢計全年齢平均を基礎に計算しました(横浜地裁平成24年7月30日判決、交民45巻4号922頁)。

裁判例③

36歳の会社員の女性が育児休業中に交通事故の被害にあった事案で、職場復帰予定日に復帰できなかった事案です。

裁判所は、
・育児休業中は賃金センサス女性学歴計の金額を基礎収入とし、
・復帰予定日から実際に復帰した日までは育児休業前の年収である642万円を基礎収入とし、
休業損害を計算しました(大阪高裁平成16年9月17日判決、出典:自保ジャーナル1588号2頁)。

会社役員

会社役員の休業損害

【認められる金額】
交通事故のケガによって就労できなかった期間の労務提供の対価部分。

【認められる条件】
ケガを原因として就労できなかったこと。

会社の取締役などの役員が受け取る報酬としては、利益配当的な部分と労務の対価としての給与部分に分けることができます。

労務の対価としての給与部分は、就労不可能になり会社から支給されなくなれば、当然その分が休業損害と認められます
しかし、利益配当的な部分は、働くかどうかに関係ないので、休業損害とは認められません。

問題は、この労務提供の対価部分の金額です。

実際には明確に算定することが困難なため、賃金センサスの平均賃金を参考にしつつ、会社の規模や被害者の役割などを総合的に考慮して、労務提供の対価部分を算出することになります。

 

会社役員の休業損害に関する裁判例


会社役員の場合の事例はどうなのか?こちらも実際の裁判例をご紹介します。

裁判例①

建物解体工事・建材卸業等を目的とする会社の代表者が交通事故の被害に遭った事案です。

裁判所は、個人会社で被害者の職務内容も肉体労働が多い、ということを理由として、月額100万円の役員報酬の全額を労務対価部分と認め休業損害を計算しました(千葉地裁平成6年2月22日判決、交民27巻1号212頁)。

裁判例②

72歳の会社役員の事案です。

裁判所は、

・被害者が特殊車輌の設計・製作技術者として高度な能力を有していたこと

・会社には当該役員の労務を代替しうる社員がおらず同人がもっぱら実務を担当していたこと

から、役員報酬全額を労務の対価とみるべきであるとして、事故前3年間の平均年収743万円を基礎収入として休業損害を計算しました(大阪地裁平成13年10月11日判決、出典:交民34巻5号1372頁)。

裁判例③

61歳男性会社社長の事案です。

裁判所は、

・一分上場企業の子会社の雇われ社長である

として、給与1320万円全額を労務対価部分として認めました(東京地裁平成15年3月27日判決)。

失業者

失業者の休業損害

【認められる金額】
交通事故のケガによって就労できなかった期間について、事故前の実収入や賃金センサスの平均賃金を減額した金額。

【認められる条件】
労働能力及び労働意欲があり、就労の蓋然性が認められる者であり、かつ、受傷によって就労できなかったこと。

失業中の人には原則として休業損害は発生しません。
休業損害とは事故による現実の収入減に対して認められるものですが、失業者には現実の収入減がないからです。

しかし、就職活動を行なっていたり、就職が内定していたというように労働能力及び労働意欲があり、就労の蓋然性がある場合には認められます。

基礎となる収入額は、実際に就職先が既に決まっていた場合には、その就職先の給料が基礎となります。

就職活動中で、まだ就職先が決まっていなかった場合には、就労の確実性が低いとされ、賃金センサスの平均賃金あるいは平均賃金の7、8割程度を基礎として認められる可能性があります。

無職者の休業損害に関する裁判例


無職の方の休業損害の場合はどうなるのか?こちらも裁判例をご紹介します。

裁判例①

女性のスタイリスト・デザイナーが、約5年前の交通事故から無職であった事案です。

裁判所は、

・本件交通事故の直前には就労可能な程度に回復していたこと

・就職活動をしていた矢先の交通事故であったこと

を理由として、賃金センサス女性全年齢の8割を基礎として休業損害を認めました(東京地裁平成7年7月18日判決、交民28巻4号1077頁)。

裁判例②

62歳の元大工の事案です。

裁判所は、

・就職先を探していたことから、大工として稼働する意思と能力があったこと

・専門技術性に照らし後進の指導も含めて稼働先が見つかる可能性も十分あること

から、賃金センサス男性学歴計60歳から64歳平均8割を基礎収入として、症状固定まで323日間329万円の休業損害を計算しました(札幌地裁平成13年11月29日判決、出典:自保ジャーナル1462号6頁)。

学生や幼児など

学生・幼児の休業損害

【認められる金額】
原則として認められないが、収入があれば交通事故のケガによって就労できなかった期間の収入。

【認められる条件】
収入があり、ケガによって就労できなかったこと。

学生や幼児の場合は、収入がないので原則として休業損害は認められません。

ただし、学生でアルバイト収入があった場合は、休業損害として認められる可能性があります。

また、事故によるケガのために就職活動ができず、就職が遅れてしまった場合には、賃金センサスの平均賃金に基づいて、就職が遅れた期間についての休業損害が認められる可能性があります。

学生・幼児の休業損害に関する裁判例


学生、幼児の休業損害の裁判例を見ていきます。

裁判例①

18歳高校3年生の女性の交通事故において、裁判所は、

・事故に遭わなければ卒業後就労したと認められること

・平成元年に結婚しているが家事労働を含めて平成5年7月12日(症状固定日)まで就労不可能であったこと

から、賃金センサス女性高卒年齢別平均額を基礎として、年度ごとに休業損害を認めました(横浜地裁平成10年6月8日判決、出典:判例タイムズ1002号221頁)。

裁判例②

20歳の短大生の女性の事案です。

裁判所は、交通事故により、事故後就職活動を行うことができず、1年間の就職の遅れが生じたと認定し、賃金センサス女性短大卒20歳から24歳平均を基礎収入として、1年分を休業損害として認めました(横浜地裁平成11年7月28日判決、出典:自保ジャーナル1335号2頁)。

外国人

外国人の休業損害

外国人も働いている場合には、当然休業損害が発生します。

しかし、外国人の場合には、在留資格との関係で問題となります。

その収入にの継続性や安定性が問題となるためです。

(1)永住者としても在留資格を持っている場合
永住者としても在留資格を持っている外国人の場合には、日本人と同様に計算することになります。

(2)就労可能な在留資格を持っている外国人の場合
特殊技能者等の就労可能な在留資格がある外国人の場合には、日本において得ていた収入額を基礎として、休業損害を計算することになります。ただし、在留期間の定めがあるので、休業期間がこの期間を超えるときは、在留期間が更新される相当程度の可能性が立証されることを条件に、この更新後の期間も休業損害の計算に含めることになります。

(3)日本で働いていなかった外国人の場合
外国では働いていたものの、日本で働いていなかった場合で、本国の休業損害が発生した場合は、本国の収入を基礎として計算することになります。

(4)不法就労していた外国人の場合
就労資格はあったけれども、在留期間経過後も不法就労していた場合について、休業損害の計算方法には争いがあります。

①被害者の出国先で得られたであろう収入額もしくは被害者の出国先の賃金センサスの額を基準とする見解、②比較的短期間である数年を日本で得ていた賃金額を基礎として計算し、その後は①と同様に計算する見解、③日本における収入額を基礎として計算する見解などがあります。

外国人の休業損害に関する裁判例

実際に起きた裁判の例を見てみましょう。

裁判例①

キックボクサーのカナダ人男性が、日本で空手道連合との間で、1年間キックボクサーとして稼働し、住居費及び交通費を支給される契約をしていました。

この事案で、裁判所は、交通事故により契約を解除されたことから、日本での住居費1年分のうち、3分の2を休業損害と認めました(東京地裁平成17年3月15日判決、出典:交民38巻2号379頁)。

裁判例②

24歳の女性留学生の事案です。

裁判所は、

・夏期休暇中は中国へ帰省する予定ではなかったこと

・事故による受傷で日常生活に不自由が生じたために帰省したこと

・日本に帰国後約2ヶ月経って立ち仕事中心の飲食店等のアルバイトを再開したこと、

からおよそ1ヶ月半の帰国のうち31日分17万円余を休業損害として認めました(名古屋地裁平成27年11月27日判決、出店:交民48巻6号1443頁)。

【6分で解説!】記事の内容を動画で解説しています。

【動画解説】休業損害は、どこまで請求できるか?

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