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相場より高額の後遺障害逸失利益を獲得した5つの事例

最終更新日 2024年 06月17日

相場より高額の後遺障害逸失利益を獲得した5つの事例

交通事故で傷害(ケガ)を負い、治療を続けたものの、症状固定となると、被害者の方には後遺症が残ってしまうことになります。

その場合は、ご自身の後遺障害等級の認定を受ける必要があります。
なぜなら、後遺障害等級が決まることで、損害賠償額が算定できるからです。

ところで、この損害賠償金(保険金とも示談金ともいいます)ですが、じつは1つのまとまったものではありません。
ケガの治療中にかかる治療費、入院費、休業損害、入通院慰謝料。
また、後遺障害等級認定後の後遺障害慰謝料、逸失利益、将来介護費など。
さまざまな項目があるのですが、その中でも金額が大きくなるものの1つに逸失利益があります。

逸失利益とは、交通事故の被害にあわなければ、将来的に得られるはずだった利益(収入)のことです。

ところで、加害者側の任意保険会社は、逸失利益をできるだけ低く抑えようとしてきます。
そこで、被害者の方としては示談交渉で逸失利益や慰謝料などの増額を主張することができます。

もっとも、保険会社が提示してくる金額が低すぎるので、適切な金額を主張していくだけなのですが、保険会社はそれに応じることは少ないのが現実です。
そのため、示談交渉がなかなか進まず、最終的には決裂して、裁判での決着という流れになるわけです。

そこで本記事では、裁判で高額な後遺障害逸失利益が認められた判例を解説しながら、被害者の方が損をしないための対処法などについても、お話ししていきたいと思います。

交通事故における被害者の逸失利益について

交通事故における被害者の逸失利益について

逸失利益とは?

交通事故の被害にあい、後遺症が残ってしまった場合、あるいは亡くなってしまった場合は、それまでのようには働くことができなくなるので収入が減ってしまいます。

逸失利益というのは、交通事故被害のために将来的に得ることができなくなった=失ってしまった利益(収入)のことです。

後遺症が後遺障害と認められ、後遺障害等級が認定された場合に受け取ることができるのが「後遺障害逸失利益」、被害者の方が亡くなった場合は「死亡逸失利益」を受け取ることができます。

逸失利益の算定方法

逸失利益は、次の計算式で算定します。

「後遺障害逸失利益」
基礎収入 × 労働能力喪失率 × 就労可能年数に対応するライプニッツ係数

 

「死亡逸失利益」
基礎収入 × (100% - 生活費控除率) × 就労可能年数に対応するライプニッツ係数

 

逸失利益は、事故後から就労可能年(通常は67歳)まで、事故前年の収入額を基本として算定するので、損害賠償項目の中でも金額が大きくなるものの1つになります。



 

相場より高額の後遺障害逸失利益を獲得した5つの裁判例

相場より高額の後遺障害逸失利益を獲得した5つの裁判例
ここでは、交通事故の示談交渉が決裂して裁判に進み、最終的に高額な後遺障害逸失利益が認められた裁判例を5つご紹介します。

裁判では、後遺障害逸失利益はどのくらいの増額し、そのくらいの金額が認められる可能性があるのか?
その実例として参考にしてください。

判例①:43歳男性(競艇選手)の逸失利益が平均年収の1.5倍で認定された事案

広島地裁 平成17年9月20日判決
事件番号 平成16年(ワ)第657号 損害賠償請求事件    
<出典> 自動車保険ジャーナル・第1612号

【事故の概要】
2001(平成13)年9月28日、43歳男性(競艇選手)が広島市内のはみ出し追い越し禁止道路を自動二輪車で走行中、右折しようとしたところ、対向車線にはみ出して追い越しをかけ、走行車線に戻ろうとした加害者(被告)の普通貨物車と接触。
転倒した被害者男性は、外傷性くも膜下出血、脳挫傷等を負い、高次脳機能障害の後遺症が残り、後遺障害等級は2級3号が認定された。
そこで、被害者(原告)は、既払金6,136万8,707円を控除し、3億3,000万7,103円、妻は440万円を求めて訴えを提起した。

【判決の内容】
逸失利益について、原告は事故当時、最上級のA1クラスに属し、全競艇選手の平均よりも明らかに活躍しており、事故前3年間の年収が40~44歳の 平均年収の約1.5倍であることを踏まえて、症状固定日より10年間は競艇選手として稼働可能であったと認定。
3年は事故前3年間の平均年収で、その後7年は競艇選手の平均年収の1.5倍の年収が期待できたとし、そこから経費として35%を控除した額で、以降67歳までは平成14年賃金センサス男子労働者の対応年齢の平均年収で認めた。

過失割合について、被告の無理な追い越し、制限速度20km/h超過の過失は重大であるが、原告にもあらかじめ車線の右側に寄らず、右折合図を出していない、顎ひもの付いていないヘルメット着用で頭部外傷による後遺障害残存に「原因力を与えた」等から、原告25:被告75と認定した。  

将来介護費について、原告は終生家族介護を必要とする状態と認定。
将来の介護費を、家族による介護1日につき6,000円と認めた。

判決により認定された損害額は、計2億8,472万4,577円であり、その内、逸失利益は、1億7,869万5,341円(競艇選手として、1億7,151万4,160円 会社役員として、718万1,181円)でとした。

過失相殺があり、最終的に判決では計1億7,072万6,944円の支払いが命じられた。

判例②:50歳男性(英国人)の過失割合が0%と認定された事案

東京地裁 平成19年7月31日判決    
事件番号 平成18年(ワ)第21260号 損害賠償請求事件    
<出典> 交民集40巻4号1056頁

【事故の概要】
2004(平成16)年1月21日、50歳の英国人男性(経営コンサルタント)が自動二輪車で片側2車線道路を走行中、センターラインオーバーの加害者(被告)の乗用車に衝突された事案。
被害者(原告)男性は、右大腿骨開放骨折、右前腕骨骨折、右第5中手骨骨折、 右第4PIP関節脱臼、腰椎圧迫骨折、右肋骨骨折等の傷害を負い、脊柱の変形、右手第5中手骨骨折後の同部の痛み、右手中指及び薬指のPIP関節の可動域制限、右前腕手掌表面の感覚減退・痛み、右大腿骨骨折後の右下肢短縮障害等が後遺障害として残り、後遺障害等級は併合第9級が認定された。
そこで、被害者(原告)は、2億7,978万3,572 円を求めて訴えを提起した。

【判決の内容】
被告車は約15m前方に車線を跨いで転回中の訴外車を目撃、回避可能にもかかわらず、センターラインオーバーし、原告車と衝突したとして、被告に100%の過失を認めた。

原告はA会社とコンサルティング・サービス契約を締結、月564万円の給与を得ていたが、契約は平成16年8月まで継続予定であったと認め、事故から8か月間休業したうちの、支払を受けられなかった5か月分の給与2,822円を休業損害と認めた。

逸失利益について、実年収を6,209万円と認めたが、この金額は極めて高額で、コンサルティングサービスの契約先であるA会社とは事故のあった年の8月に契約終了予定だったことから、基礎収入はその8割と認定、労働能力喪失率は35%で算定した。

原告の看護のために英国から来日した妻と娘の交通費、宿泊代95万円を損害として認めた。

判決で認定された損害額は、計2億3,107万7,586円であり、その内、後遺障害逸失利益は、1億8,842万4,078円とした。

既払金があったため、最終的に判決で支払い命じられた金額は、計2億2,571万7,586円となった。

判例③:42歳男性(外科医)の逸失利益が約2億3,800万円と認定された事案

岡山地裁 平成16年4月22日判決    
事件番号 平成13年(ワ)第780号損害賠償請求事件         
平成15年(ワ)第562号損害賠償請求独立当事者参加申立事件    
<出典> 交民集37巻2号531頁

【事故の概要】
2001(平成13)年1月3日、日没後の薄暗い道路で、別件の交通事故で路上に倒れている女性を見つけた被害者(原告)が、医師として救命措置をとるべく、路上で介抱していた際、後方より、考え事をしながら時速50~60km/hで前照灯を下向きのまま漫然と進行してきた加害者(被告)運転の軽4乗用車が追突。
原告は脳挫傷、右急性硬膜外血腫、 右脛骨・腓骨・尺骨・骨幹部骨折・頭蓋骨骨折の傷害を負い、後遺障害等級は脳挫傷が7級、脊柱奇形が11級で併合6級が認定された。

【判決の内容】
原告は3角表示板や発煙筒などを使用した緊急措置をとらず、後続車への合図も不十分のまま、路上で介抱していたが、本件状況下では、万全の安全対策を期待することは至難であり、被告の盲目運転に近い重大な過失を相対的に観察すると、過失相殺はしないものと認めた。

原告は外科医として医療行為を行いながら、病院の理事長を務め、年額4,800万円の給与賞与を得て、約1,280万円の源泉徴収税を納めていた。
高額所得者の基礎収入は、加害者にとって予見しうる通常損害の枠を超える面がある一方、課税される税額も相当多額にわたることに鑑み、公平上、何らかの考慮がなされるべき余地があるとして、月額400万円のところ、院長相当報酬月額210万円を基礎収入として年額2,520万円で損害認定した。
42歳から就労可能67歳までの25年間、6級に相応する67%の労働能力喪失率をライプニッツ係数で控除して約2億3,796万円の後遺症逸失利益を認めた。

本件事故による後遺障害によって、自己の能力を発揮した活躍の可能性を奪われ、 失意のうちに生きる生活を余儀なくされた原告の無念さは十分に推察されるところであり、その精神的苦痛を慰謝すべき後遺障害慰謝料は、1,180万円を下らないと認めた。

裁判所が認定した損害額は、計2億5,739万7,771円であり、その内、後遺障害逸失利益は、2億3,796万1,408円とした。

判例④:50歳男性(コンサルタント)の人身損害額が約4億3,328万円万円と認定された事案

横浜地裁 平成29年7月18日判決    
事件番号 平成27年(ワ)第24号 損害賠償請求事件(第1事件)         
平成27年(ワ)第1005号 損害賠償等請求事件(第2事件)    
<出典> 自保ジャーナル・第2008号         

【事故の概要】
2012(平成24)年11月1日、被害者(原告)が神奈川県藤沢市内の信号のない交差点を自動二輪車に搭乗して進行中、加害者(被告)が運転する(他者所有)の乗用車に衝突された事案。
原告は、外傷性くも膜下出血、急性硬膜外血腫、頭蓋底骨折・ 脳挫傷等の傷害を負い、252日入院、5日実通院して、平成26年3月6日症状固定。四肢麻痺等の後遺症のため、後遺障害等級は1級1号が認定された。
原告は既払金174万9,531円を控除して、4億7,660万6,813円を求め、妻は691万2,840円、2名の子は各165万円を求めて第1事件を提起した。

【判決の内容】
原告は、一時停止規制がされ、右方の見通しの悪い交差点の手前において一時停止し、交差点内の安全確認を行ったうえで、徐行して本件交差点に進入する義務を負っていたが、これを怠り、一時停止せずに時速約40km/hで交差点に進入した過失がある。
また、原告はヘルメットを適正に装着する義務を負っていたにもかかわらず、これを怠った過失があり、傷害や後遺障害の程度に大きく寄与したといえることから、人身損害については、過失割合を原告75%、被告25%とするのが相当であるとした。
また、物件損害に関しては、一時停止をせずに本件交差点に進入した原告の過失の方が、被告の過失よりも大きいといえ、過失割合は原告65%、被告35%とするのが相当であるとした。

入院付添費は日額6,500円、自宅付添費等は日額8,000円とし、将来介護費については、妻が65歳になるまでの13年間は妻と職業介護人による介護を合わせて1万5,000円、妻が65歳になってから原告が平均余命の82歳になるまでの14年間は、職業介護人による介護費を2万円と認めるのが相当であるとした。

休業損害、後遺障害逸失利益については、原告は会社から報酬を日本円で受領しており、休業期間の為替レートの平均は1米ドルおよそ96円であることからすれば、事故当時に会社から受領した基本給は、年収2,400万円になるとして、67歳までの15年間は100%の労働能力喪失で認めた。

裁判所が認定した損害額は、計4億3,328万6,963円であり、その内、後遺障害逸失利益は、2億4,911万2,800円となった。

判例⑤:40歳男性(ITコンサルタント)の逸失利益が約2億8,100万円と認定された事案

横浜地裁 平成20年8月28日判決(控訴中)    
事件番号 平成19年(ワ)第3220号 損害賠償請求事件    
<出典> 自動車保険ジャーナル・第1760号           

【事故の概要】
2005(平成17)年7月16日、横浜市中区内でITコンサルタント会社代表の被害者(原告)が大型自動二輪車を運転、交差点を直進中、加害者(被告)運転の乗用車が一時停止道路から交差点に進入してきて衝突。
被告は、リフスラン関節骨折等で1年8か月後、左足関節拘縮等の後遺症のため、後遺障害等級6級が認定。
原告本人は2億8,138万3,446円、原告会社は3,569万4,445円を求めて訴えを提起した。

【判決の内容】
原告、ITコンサルタント業代表者の労働対価は「対価性の高いもの」である等、その割合は相当高いとして「80%と認める」として、労働対価年収を2,976万円と認定した。
原告は、左足関節拘縮等で6級後遺障害を残し、「機敏に行動」することが困難で、「経済的労働能力の喪失率は、相当高い」ので、「職務への影響が比較的小さいからといって、原告の労働能力喪失率を低いものと認定するのは相当ではない」として、67%の労働能力喪失率を認定した。

その結果、後遺障害逸失利益2億8,102万円余、原告会社には3,569万4,445円を認めた。

優先道路進行中の原告側の過失1割、原告会社が代位請求する、原告通院中に支給の報酬も1割相殺で認容した。

判決で認められた損害額は、計3億0,759万9,640円であり、その内、後遺障害逸失利益は、2億8,102万1,090円とした。

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監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠
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