人身事故証明書入手不能理由書の書き方と注意すべきポイント
交通事故の被害者となった際、人身事故証明書を取得できないケースでは、「人身事故証明書入手不能理由書」の作成が必要になる場面があります。
人身事故証明書入手不能理由書を適切に作成しないと、人身事故による損害賠償金や慰謝料の適切な金額を受け取れない可能性があるので注意が必要です。
本記事では、人身事故証明書入手不能理由書の正しい書き方と、注意すべきポイントについて詳しく解説します。
目次
人身事故証明書入手不能理由書とは
「人身事故証明書入手不能理由書」は、交通事故の被害者が、やむを得ない事情により交通事故証明書を取得できない場合に作成する書類です。
加害者の保険会社が保険金の支払い手続きのために、被害者に対して理由書の作成を求めることがあるため、必要事項を正しく記載し、提出することが求められます。
通常、人身事故に遭った場合、交通事故証明書によって人身事故の被害を証明します。
しかし、何らかの理由で交通事故証明書を取得できないケースでは、人身事故証明書入手不能理由書を用いて事故の状況を説明する必要があります。
交通事故証明書と
人身事故証明書入手不能理由書の
違い
交通事故証明書は、交通事故の事実を証明する書類であり、交通事故の当事者が適正な補償を受けられるようにするためのものです。
警察の証明資料に基づき、人身事故が発生したことを証明するものとして、自動車安全運転センターが交付を行います。
それに対し、人身事故証明書入手不能理由書は、交通事故証明書が特定の事情で発行困難な場合に作成する代替書類です。
そのため、自動車安全運転センターに請求して交付を受ける書類ではありません。
交通事故証明書が
取得できないケース
警察に対して事故の届け出をしていないと、交通事故証明書を請求することはできません。
交通事故証明書の請求には期限があり、人身事故は事故発生から5年、物件事故は3年を経過すると、原則として交付されません。
また、事故発生時に警察へ人身事故として届け出をしなかった場合、物損事故として処理され、交通事故証明書が発行されないことがあります。
人身事故による損害賠償金や慰謝料の請求には、人身事故があったことを証明することが求められます。
したがって、交通事故証明書が取得できない場合には、保険会社や関係機関に人身事故があったことを証明する書類として、「人身事故証明書入手不能理由書」を作成する必要があります。
人身事故証明書入手不能理由書の
書き方
人身事故証明書入手不能理由書の様式は下記の通りです。
作成時には次のポイントに注意してください。
「人身事故扱いの交通事故証明書が入手できなかった理由をお教えください。」の記載事項
この欄には、人身事故証明書が取得できなかった理由を記載します。
たとえば、医療機関からの診断書を警察に提出しなければ、人身事故として扱われないことを知らなかった場合は、「その他」の欄にその旨を記載してください。
警察に事故発生の届出をしているときは、届出をした警察署の名称、担当者名、届出年月日を記載します。
「人身事故の事実を確認するため、関係者の記名・押印をお願いします。」の記載事項
この欄には、人身事故証明書入手不能理由書を作成した人の氏名・住所・電話番号・記入日を記載し、押印します。
交通事故の被害者が作成する場合は、「当事者」の項目に〇印をしてください。
「交通事故概要記入欄」の
記載事項
交通事故証明書が発行されていない場合、または発行されている交通事故証明書に氏名が記載されていない場合には、裏面の「交通事故概要記入欄」の「当事者」「発生年月日時」「発生場所」を記入してください。
人身事故証明書入手不能理由書を
作成する際の注意点
人身事故証明書入手不能理由書は、交通事故に関する手続きで重要な役割を果たすため、正しく作成する必要があります。
誤った情報を記載すると、損害賠償金や慰謝料の減額、支払遅延が生じるリスクがあるため注意してください。
記載内容の正確性と一貫性
人身事故証明書入手不能理由書の作成には、記載する情報の正確性と一貫性を保つことが重要です。
事故発生日時や場所、関係者の情報を正確に記載し、他の関連書類と矛盾しないようにすることが求められます。
保険会社や関係機関が内容を確認する際、記載内容に不備があると追加の確認作業が発生し、手続きが滞る可能性があります。
曖昧な表現や誇張を避け、事実に基づいた説明を徹底することで、不要なトラブルを防ぐことが大切です。
誤記載による支払遅延
誤った情報を記載すると、損害賠償金や慰謝料の支払いに大きな影響を及ぼす可能性があります。
たとえば、事故の発生日時に誤りがあると、保険会社が事故の実態を把握しづらくなり、請求の審査が厳しくなることが想定されます。
また、加害者または被害者の情報に誤りがある場合、関係者とのやり取りが複雑化し、法的な問題に発展する恐れもあります。
交通事故証明書が取得できない理由について不正確な記述をすると、信頼性が損なわれるため、必要に応じて専門家の助言を受けながら作成することが望ましいです。
人身事故証明書入手不能理由書が必要になるタイミング
人身事故証明書入手不能理由書は、交通事故の被害者が加害者側の自賠責保険に対して賠償金を請求する際に必要になります。
交通事故証明書が取得できない場合でも、理由書を提出することで、人身事故としての補償を受けられる可能性があります。
また、加害者が任意保険に加入している場合、任意保険会社が自賠責保険の対象となる部分を含めて損害賠償金を支払うことがあるため、任意保険会社から理由書の提出を求められた際は、速やかに作成して提出してください。
人身事故証明書入手不能理由書を
出すことによる影響・デメリット
人身事故証明書入手不能理由書は、交通事故証明書を取得できない場合に提出する書類ですが、作成する際はいくつか注意点があります。
人身事故証明書入手不能理由書の効力
通常の交通事故証明書は、警察の証明資料に基づき作成されるため、証拠能力は高いです。
一方、人身事故証明書入手不能理由書は、交通事故の被害者などが作成する代替書類であるため、証拠能力は交通事故証明書には劣ります。
事故状況の証明力が弱い場合、保険会社が保険金の支払いに難色を示したり、審査に時間を要したりすることが懸念されます。
また、記載内容に不備・不足があると、保険会社や関係機関から追加の確認や修正を求められ、手続きが長引く可能性があります。
そのため、交通事故に関する手続きのトラブルを避けるためには、記載内容の正確性を十分に確認することが重要です。
損害賠償金・慰謝料への影響
交通事故証明書がない状態で損害賠償金・慰謝料を請求する場合、審査が通常より厳しくなる可能性があります。
交通事故証明書があれば、人身事故の発生が証明され、被害者側が提示した損害賠償金や慰謝料の妥当性が認められやすくなります。
しかし、人身事故証明書入手不能理由書のみでは、事故状況の証明が不十分と判断され、保険金の支払いが認められない場合があるので注意が必要です。
人身事故の証明を補完する方法
交通事故証明書を取得できない場合には、人身事故証明書入手不能理由書だけでなく、状況に応じた証拠資料の活用や目撃証言の収集、事故記録を提示することで、人身事故が発生したことを証明する必要があります。
<人身事故を証明するための措置>
手段 | 内容 |
---|---|
証拠資料の 活用 |
事故発生時の診断書や治療記録を提出し、交通事故が原因で負傷した事実を証明する |
目撃証言の 収集 |
事故当事者や目撃者の証言を文書化し、事故状況の説明を補強する |
事故記録の 確認 |
警察に事故記録が残っている場合、それを証拠資料として活用し、事故発生の経緯を明確にする |
後遺障害認定への影響
後遺障害等級認定を受けるには、後遺障害診断書(正式名称:自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書)の提出が必要です。
後遺障害とは、交通事故による後遺症を指し、後遺障害慰謝料を請求する際は等級認定を受けなければなりません。
後遺障害の有無や等級によって慰謝料の額は変動するため、適正な等級認定を受けるためにも、診断書の記載内容の正確性は極めて重要です。
後遺障害診断書は医師が作成しますが、交通事故が原因で障害を負ったことを証明できなければ、診断書を作成してもらえません。
また、事故が物損事故として処理されている場合、後遺症の発生と交通事故の因果関係を証明することが難しくなる可能性があります。
過失割合への影響
交通事故が発生した場合、事故の状況に応じて過失割合が決定されます。
たとえば、加害者に全面的な非があるケースでは、過失割合が10対0となり、交通事故による損害の全額を加害者に賠償請求できます。
一方、被害者にも一定の過失が認められる場合、過失分だけ賠償額が減額されます。
交通事故が人身事故として処理されていれば、警察が作成した実況見分調書を証拠資料として活用することが可能です。
しかし、物損事故として処理された場合、実況見分調書が作成されていないこともあるため、事故状況の証明が難しくなることが想定されます。
客観的に事故の状況を証明できない場合、過失割合で揉めることも考えられます。
そのため、交通事故証明書を取得できないケースでは、人身事故証明書入手不能理由書などを用いて、事故発生時の状況を説明する必要があります。
人身事故証明書を取得できないときは弁護士に要相談
人身事故の交通事故証明書を取得できない場合、人身事故証明書入手不能理由書の作成が必要になることがあります。
記載内容に誤りや不足があると、保険請求や法的手続きに影響を及ぼすだけでなく、手続きの遅延や補償を受けられないリスクが生じます。
書類作成には専門的な知識が求められるため、トラブルを回避するためにも、事前に弁護士へ相談することが望ましいです。
弁護士の助言を受けることで適切な対応が可能となり、事故後の手続きを確実に進められるようになりますので、交通事故に遭った際は専門家のサポートを積極的に活用しましょう。
人身事故証明書入手不能理由書でお困りの場合は、まずは一度、みらい総合法律事務所の無料相談をご利用ください。
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代表社員 弁護士 谷原誠