高次脳機能障害の家族がまずやるべきこと | リハビリや公的支援の手引き
交通事故によって家族が高次脳機能障害と診断された場合、日常生活には大きな変化が生じます。
突然の状況に戸惑い、何から手を付ければよいのかわからなくなることがありますが、必要な情報を得ることで適切な対応が取りやすくなります。
本記事では、高次脳機能障害の診断を受けた後の対応とリハビリの進め方、活用できる公的支援の種類など、家族が取り組むべきポイントをわかりやすく解説します。
目次
高次脳機能障害とは
高次脳機能障害は、脳の損傷によって記憶や注意、感情のコントロールといった機能が低下する状態をいいます。
脳卒中や交通事故による外傷性脳損傷などが原因で発症することがあり、症状によっては日常生活や仕事に大きな支障が生じる場合があります。
代表的な症状には、同じ会話を繰り返す記憶障害、集中が続きにくい注意障害、段取りが苦手になる遂行機能障害などが挙げられます。
また、言葉が出にくくなる失語症や、怒りっぽくなる、落ち込みやすくなるといった社会的行動障害がみられることもあります。
高次脳機能障害の回復の見通し
脳の傷は再生することが無いと言われており、高次脳機能障害が完全に治った人はいないとされています。
しかし、高次脳機能障害の症状は、リハビリによって一定程度改善することが見込まれます。
国立障害者リハビリテーションセンターの「高次脳機能障害者支援の手引き」によると、障害尺度に改善がみられたケースの74%は6か月、97%は1年で成果が得られたとのデータがあります。
一方で、高次脳機能障害には様々な症状があり、回復する早さや程度には個人差があります。
そのため、症状に合った適切なリハビリを早期に実施することが望まれます。
高次脳機能障害と診断されたら、
家族がやるべきこと
家族が高次脳機能障害と診断された際には、戸惑いや不安を抱えやすいです。
そのため、家族だけで抱え込まず、利用できる支援や専門機関を早めに活用することが、その後の生活を安定させるための一歩になります。
ここでは、家族が高次脳機能障害と診断された際にやるべきことを解説します。
本人の変化を「障害の症状」
として理解する
高次脳機能障害の症状は、骨折などと違い外見から判断するのが難しく、周囲からの理解を得られにくい特性があります。
たとえば、交通事故で高次脳機能障害を負った場合、急に性格が変わったように見えることがありますが、性格が変化したように見えるのも高次脳機能障害の症状の一つです。
また、本人が気づきにくい症状もあるため、家族が障害による症状と正しく理解することが大切です。
公的な支援制度の確認と相談
高次脳機能障害の症状は、脳のどの部位が損傷したかによって異なるため、症状に応じた支援が必要になります。
症状によっては家族だけで対応するのが難しいケースも多いため、診断を受けた段階で利用できる公的制度を整理しておくことが大切です。
ただし、制度の対象となる範囲や申請方法にはわかりにくい点が多いです。
そのため、福祉行政の窓口や主治医などに相談しながら、対応方法や手続きを進めると安心です。
高次脳機能障害患者の家族が
抱える主なストレス
高次脳機能障害を負った場合、本人だけでなく、支える家族もストレスを受けやすくなります。
日常生活で生じる負担
記憶障害や注意障害、感情コントロールの不安定さは日常生活に大きな変化をもたらします。
たとえば、以前は本人が担っていた役割を果たせなくなることで、家族は身の回りのサポートだけでなく、予定管理や金銭管理なども行う必要が出てきます。
また、同じ説明を繰り返すことや急な感情変化への対応は、家族の精神的な疲労につながります。
感情面でのストレス
怒りっぽくなる、感情の起伏が激しくなる、無気力になるなど、感情面の変化は家族に戸惑いを与えます。
高次脳機能障害を負う前とのギャップが大きい場合には、家族が以前の姿と比較してしまうことで負担感が強まることがあります。
また、親戚や地域住民から障害が理解されないことで孤立感が生まれ、家族のストレスが増すことも懸念されます。
将来への不安
高次脳機能障害を負った場合、就労の可否、介護の必要性、経済的負担など、長期的な課題が重なります。
症状はリハビリによって改善することもありますが、改善の程度には個人差があります。
また、家族が高齢の場合には、将来的に介護ができなくなる不安がストレスになることもあります。
ストレス軽減に向けた
家族の取り組み
高次脳機能障害のある方を支える家族は、日常的に負担を抱えやすく、心身の疲労が蓄積しやすい状況にあります。
長期的な生活の安定には、家族自身が無理をしすぎず、継続して支えられる体制を整えることが大切です。
家族自身のケア方法
家族が心身の健康を保つことは、本人を支えるうえで欠かせません。
短時間でも休息を確保する、趣味の時間をつくる、信頼できる人に気持ちを話すなど、日常の中で負担を軽減する工夫が求められます。
また、自分だけで抱え込まず、必要に応じてカウンセリングや家族支援プログラムを利用することで、心の負担を和らげることも大切です。
相談窓口・支援団体の活用
相談窓口や支援団体を活用することは、家族の負担を軽減するうえで有効な手段です。
高次脳機能障害支援センターや自治体の障害福祉担当窓口、医療機関などでは、高次脳機能障害に関する情報提供や相談支援を受けられます。
また、高次脳機能障害の家族会に参加することも選択肢の一つです。
家族会は、高次脳機能障害のある方とその家族が集まり、体験や悩みの共有、情報交換や交流を行う場です。
同じ経験を持つ家族との交流は孤立感を和らげるだけでなく、生活上の工夫や制度利用のポイントを知る機会にもなります。
高次脳機能障害支援に関する
主な制度
高次脳機能障害のある方が安心して生活を続けるためには、公的サービスや福祉制度を適切に活用することが欠かせません。
高次脳機能障害支援に関する主な制度は以下です。
一つずつ詳しく解説します。
福祉サービス
高次脳機能障害を負った場合、様々な福祉サービスを利用できます。
ただし、原因となった疾患や年齢によって利用できる制度やサービスは異なるため、市区町村の障害福祉担当窓口に相談しながら適切な支援を受けることが大切です。
障害者総合支援法に基づく
障害福祉サービス
障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスには、「介護給付」と「訓練等給付」があります。
介護給付は、入浴・排泄・食事などの日常生活の支援や、創作的活動・生産活動の機会提供を含むサービスです。
訓練等給付は、生活の自立や就労を目指すための訓練・支援を行うサービスです。
また、市区町村では、地域特性や利用者の状況を踏まえて、相談支援や地域活動支援などの地域生活支援事業を実施しています。
障害者手帳
障害者手帳を所持すると、障害福祉サービスを利用できるだけでなく、税金や公共料金の控除・減免などの支援も受けられます。
利用できる制度や支援内容は自治体によって異なるため、お住まいの市区町村の福祉担当窓口で確認することが大切です。
介護保険制度による
介護サービス
介護保険制度による介護サービスでは、ホームヘルプ、住宅改修、デイサービス、入所施設など、日常生活を支える多様なサービスを利用できます。
対象者は、支援や介護が必要と認められた65歳以上の方、または脳血管疾患などの特定疾病により要支援・要介護状態となった40〜64歳の方です。
介護サービスは障害者福祉サービスより優先されますが、自立訓練や就労移行支援など、介護保険にないサービスについては、障害者福祉サービスを利用することができます。
高次脳機能障害者支援法の施行
高次脳機能障害者支援法は、令和8年4月1日に施行された法律です。
この法律は、高次脳機能障害への理解を社会全体で深めるとともに、高次脳機能障害のある方が自立し、地域で安心して生活し続けられるよう、医療・リハビリから生活支援、社会参加支援までを切れ目なく受けられる体制を整えることを目的としています。
<高次脳機能障害者支援法の概要>
スムーズな社会復帰に向けた
リハビリテーションの進め方
高次脳機能障害のある方の社会復帰には、医療機関でのリハビリだけでなく、家庭での支援や社会とのつながりを取り戻すための取り組みが欠かせません。
リハビリには、医学的リハビリテーション・社会リハビリテーション・職業リハビリテーションの3つがあります。
それぞれ詳しく解説します。
医学的リハビリテーション
医学的リハビリテーションは、医療機関で行われる専門的な訓練を中心とした取り組みです。
リハビリでは、目標の実現に必要な計画や具体的なプログラムを立てて実施します。
将来の目標は、疾病の診断・治療だけでなく、疾病がもたらす機能障害や活動制限の評価、当事者の生活歴、社会経済的環境、家庭環境などを踏まえて設定します。
リハビリを開始してから一定期間後に再評価を行い、その結果に応じて目標やプログラムを修正しながら、最終的な目標の達成を目指します。
社会リハビリテーション
社会リハビリテーションは、日常生活や地域社会での活動を再び行えるようにするための取組みです。
「高次脳機能障害情報・支援センター」の生活訓練プログラムでは、生活リズムの確立、生活管理能力の向上、社会生活技能の向上などの訓練内容が盛り込まれています。
職業リハビリテーション
職業リハビリテーションは、職業訓練や就労支援などを通じて、職場復帰や新規就労を目指す取り組みです。
働く意欲がある場合には、就労移行支援により、就労に必要な知識や能力を高めるトレーニングを行います。
また、適性に合った職場探しだけでなく、就労後の職場定着の支援なども受けられます。
まとめ
高次脳機能障害は長期的な支援が必要になることが多く、家族だけで対応し続けるのは大きな負担になります。
そのため、数年後や10年後を見据えて、早い段階で障害福祉サービスなどの公的制度を確認し、支援を受けられる体制を整えておくことが求められます。
なお、交通事故が原因で高次脳機能障害を負った場合には、後遺障害等級の認定手続きや損害賠償請求などの対応が必要です。
専門的な判断が求められる場面も多いため、一度弁護士に相談することをおすすめします。
交通事故による高次脳機能障害でお困りの場合は、まずは一度、みらい総合法律事務所の無料相談をご利用ください。
↓↓
弁護士へのご相談の流れ
↑↑
代表社員 弁護士 谷原誠















