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ひき逃げ被害で犯人不明な場合はどうする?政府補償事業とは?

最終更新日 2021年 08月30日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

交通事故で、ひき逃げの被害にあって犯人がわからない場合はどうすればいいのですか?

通常の場合の示談交渉

交通事故の被害にあった場合には、被害者にいろいろな損害が発生します。

怪我をした場合には治療費がかかりますし、怪我で仕事ができないような場合には、給料をもらえないのが原則なので、休業損害が発生します。

そして、このように被害者に損害が発生したのは、加害者の過失によるものなので、加害者に請求することになります。

自動車の所有者等は、法律によって、自賠責保険への加入が義務付けられていますので、通常は、損害の一部を自賠責保険に請求することができます。

また、多くの自動車の所有者は、自賠責保険で賄い切れない損害賠償金について、任意保険に加入しています。
したがって、通常の交通事故では、加害者が加入している任意保険会社と示談交渉します。

ところが、ひき逃げ交通事故の場合、加害者が見つかれば良いのですが、警察の捜査によっても、加害者が見つからない場合があります。
そのような場合には、加害者の自賠責保険も任意保険もわからないことになりますので、任意保険会社と示談交渉することができません。
そればかりか、加害者が誰かもわからないため、加害者に対し、慰謝料請求をすることもできません。

このような場合には、被害者は、どうしたらよいのでしょうか。

【参考記事】
交通事故の示談交渉で被害者が避けておきたい7つのこと

政府保障事業とは


通常、交通事故の被害に遭った場合、加害者の自賠責保険や任意保険に損害賠償金の請求をすることになります。ところが、ひき逃げの場合のように、加害者が逃げてしまって特定できない場合は、加害者の自賠責保険や任意保険に請求することはできません。

そこで、このような交通事故の被害者を救済するために、自動車損害賠償保障法において、政府保障事業という制度が設けられており、政府からの保障を受けることができます。

政府からの保障を受けることができるのは、交通事故の加害車両の保有者が明らかでない場合と、自賠責保険等の被保険者以外の者が自動車損害賠償保障法3条の責任(運行供用者責任)を負う場合です。(自動車損害賠償保障法72条)

前者の例としては、ひき逃げで加害者や加害車両が特定できない場合が挙げられます。後者の例としては、加害者が自動車損害賠償保障法に違反して自賠責保険に加入していないいわゆる無保険車の場合や、泥棒運転など、被保険者以外の者が自動車を運転していた場合などが挙げられます。

保障金額の算定方法は、自賠責保険金額と同じです。すなわち、対象は人身事故のみで、支払限度額は、傷害については120万円、後遺障害については、その後遺障害等級に応じて75万円~4000万円、死亡事故の場合は3000万円です。

政府保障事業から支払を受けられない場合


政府保障事業は、強制保険である自賠責保険によっても救済を受けることができない被害者のための最終的な救済制度です。

そのため、被害者が労災保険法に基づく障害年金を受給している場合には、当該受給権に基づき被害者が支給を受けることになる将来の給付分も含めた年金の額は、政府保障事業における損害の填補の計算から控除されます(最高裁平成21年12月17日判決、判例時報2066号49頁)。

同じように、被害者がや健康保険、介護保険などから給付を受けた場合や、将来給付を受けられる場合には、その限度で政府からの保障を受けることはできません。

また、無保険車の場合であっても、加害者が損害賠償金を支払った場合には、その分は控除されます。なお、物損に関しては、政府保障事業の対象外のため、加害者が物損を支払ったとしても、政府保障事業には影響しません。

支払後の処理と請求の仕方


政府が被害者に支払いをした場合は、政府は、加害者に対して求償することができます。したがって、親族間で被害者、加害者となってしまうような親族間の事故の場合は、被害者に支払いをしたとしても、親族である加害者から求償することになってしまい、保障の意味がないため、親族間の事故の場合は原則として政府保障事業の対象となりません。

ただし、親族間の事故でも、加害者が死亡し、被害者である遺族が加害者の相続を放棄している等の特段の事情がある場合には、保障がなされる場合もあります。

政府保障事業を請求する場合には、各損害保険会社や共済協同組合にある「自動車損害賠償保障事業への損害てん補請求書」に必要事項を記載し、交通事故証明書や診断書等の必要書類を添付して提出します。事案によりますが、処理には3ヵ月から7ヵ月程度かかるのが一般的のようです。

政府保障事業に対する請求権の時効は、3年です。起算日は、傷害に関する損害については事故日から、後遺障害に関する損害については症状固定日から、死亡事故の場合は死亡時からです。

政府保障事業の支払いについて、不服がある場合には、政府を被告とする当事者訴訟としての給付の訴え(行政事件訴訟法4条)を起こすことになります。

【参考記事】
「政府保障事業について(ひき逃げ・無保険事故の被害者の救済)」国土交通省

自分の保険も確認する

また、自分の保険も確認しましょう。

自分の保険に「無保険車傷害特約」がついている場合には、交通事故の相手方が自動車保険・自動車共済に加入していない、または加入していても補償内容が不十分である場合に補償を受けられる場合があります。

また、「人身傷害保険」がついている場合には、自動車事故で自分(主に運転される方・記名被保険者)やその家族、および契約車両に乗っている人が死傷した際に、過失割合に関係なく保険金額を上限として補償を受けられる場合があります。

ひき逃げ犯人が見つかった時

加害者と直接示談交渉をする

後日、ひき逃げ犯人が見つかることがあります。

その場合には、通常の損害賠償手続に戻ります。

加害者側に任意保険があれば、被害者が被った損害額に不足する部分について、示談交渉をし、不足額について示談を成立させます。

では、任意保険がない場合は、どうしたらよいでしょうか。

その場合には、加害者本人と示談交渉をすることになります。

しかし、加害者に財産があるとは限りません。

そこで、加害者以外に請求できる者がないかどうか、検討することになります。

自動車損害賠償保障法では、自動車の運行供用者に損害賠償責任を負わせています。

運行供用者というのは、自動車の運行について、運行支配と運行利益を得ている者のことです。

典型的には、自動車の所有者ということになります。

また、加害者が仕事中の事故であれば、会社などの使用者に損害賠償請求をできる場合があります。

そのようにして、できるだけ資力がある者に対して損害賠償請求をしていくことも検討することになります。

示談が成立しない時は裁判を起こす

ひき逃げが加害者と示談交渉をしても、示談が成立しない場合があります。

その場合には、裁判を起こし、判決を得て、強制執行をすることにより、損害賠償金を回収することになります。

強制執行というのは、裁判所の力を借りて、加害者側の財産を強制的にお金にし、回収する手続のことです。

強制執行の対象は、財産的価値のあるものであり、預金、不動産、株式、自動車、売掛金などです。

これらの手続は、専門的知識が必要となりますので、弁護士に依頼することをおすすめします。

【参考記事】
交通事故裁判で得する人、損する人の違いとは

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