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ひき逃げの犯人が見つからない場合はどうする?保障を受ける方法と対処法

最終更新日 2026年 07月23日

ひき逃げの犯人が見つからない場合の対処法

「ひき逃げに遭い、犯人も見つからない・・・」といった状況のように、突然の事故で犯人が不明な場合、治療費や今後の生活に対する不安は計り知れません。

しかし、たとえ犯人が捕まっていなくても、被害者救済のための「国の制度」を利用することで、賠償金に代わる補償を受けられる可能性があります。

本記事では、ひき逃げ被害で犯人が不明な場合に取るべき対応と、事故直後にやるべきことから、補償を受ける方法、犯人が見つかった後の流れまでわかりやすく解説します。

通常の場合の示談交渉

交通事故の被害にあった場合には、被害者にいろいろな損害が発生します。

怪我をした場合には治療費がかかりますし、仕事を休まざるを得なくなれば給料が減ってしまうため「休業損害」が発生します。

これらの損害は加害者の過失によって生じたものなので、当然、加害者側へ請求することになります。

日本では、自動車の所有者に「自賠責保険」への加入が法律で義務付けられているため、通常は損害の一部を自賠責保険から回収できます。

さらに、多くのドライバーは自賠責だけでは足りない賠償金に備えて「任意保険」にも加入しているため、通常の交通事故では、相手が加入している任意保険会社と示談交渉を進めるのが一般的です。

ところが、これが「ひき逃げ事故」となると状況は一変します。

警察の捜査を経ても加害者が見つからない場合、相手の自賠責保険も任意保険も使えないため、保険会社と示談交渉をすることができません。

それどころか、加害者が誰かも分からないため、慰謝料などの損害賠償を直接請求することすら不可能です。

このような絶望的な状況におかれたとき、被害者は一体どうすればよいのでしょうか。

ひき逃げの犯人が見つからないときに、まずやるべきこと

犯人が見つからない不安の中でも、被害者の方が先にやっておくべきことがあります。

ポイントは次の3つです。

1つずつ詳しく解説します。

警察に届け出て「人身事故」として処理してもらう

まだ届け出ていない場合は、必ず警察に届け出てください。

届出がないと「交通事故証明書」が発行されず、後述する政府保障事業の請求や、自分の保険の利用に支障が出るおそれがあります。

また、怪我をしているのに「物損事故」として処理されてしまうと、慰謝料などの補償の面で不利になる場合があります。

医師の診断書を警察に提出し、「人身事故」として処理してもらいましょう。

証拠を確保する(ドライブレコーダー・防犯カメラ・目撃者)

犯人の特定につながる証拠は、時間がたつほど失われていきます。

自分や同乗者のドライブレコーダーの映像は上書きされる前に保存し、現場付近の防犯カメラの存在や目撃者の連絡先は、できるだけ早く警察に伝えましょう。

加害車両の塗膜片やミラーの破片など、現場に残された物も手がかりになりますので、現場の写真を撮っておくことも有効です。

警察が動いてくれないと感じたときの対処法

「捜査してくれているのかわからない」「警察が動かない」と感じたときは、まず事故を届け出た警察署の担当者に捜査状況を問い合わせてみましょう。

その際、新しく見つかった目撃情報やドライブレコーダー映像などがあれば、あわせて提供すると捜査が進みやすくなります。

警察庁の統計では、死亡ひき逃げ事件の検挙率は例年100%に近いとされており、重大な事故ほど犯人が見つかる可能性は高くなっています。あきらめずに情報提供を続けることが大切です。

なお、犯人が見つからないままでも、次に解説する政府保障事業などで補償を受けることは可能です。

政府保障事業とは

通常、交通事故の被害に遭った場合、加害者の自賠責保険や任意保険に損害賠償金の請求をすることになります。

ところが、ひき逃げの場合のように、加害者が逃げてしまって特定できない場合は、加害者の自賠責保険や任意保険に請求することはできません

そこで、このような交通事故の被害者を救済するために、自動車損害賠償保障法において、政府保障事業という制度が設けられており、政府からの保障を受けることができます

政府からの保障を受けることができるのは、以下2つのケースがあります(自動車損害賠償保障法72条)。

保障を受けることができるケース
交通事故の加害車両の保有者が
明らかでない場合
ひき逃げで加害者や加害車両が特定できない場合
自賠責保険等の被保険者以外の者が
運行供用者責任を負う場合
  • ・加害者が自動車損害賠償保障法に違反して自賠責保険に
    加入していないいわゆる無保険車の場合
  • ・被保険者以外の者が自動車を運転していた場合
交通事故の加害車両の保有者が
明らかでない場合
(例)
ひき逃げで加害者や加害車両が
特定できない場合
自賠責保険等の被保険者以外の者が
運行供用者責任を負う場合
  • (例)
    ・加害者が自動車損害賠償保障法に違反して
    自賠責保険に加入していない
    いわゆる無保険車の場合
  • ・被保険者以外の者が自動車を
    運転していた場合

保障金額の算定方法は、自賠責保険金額と同じです。

すなわち、対象は人身事故のみで、支払限度額は、傷害については120万円後遺障害については、その後遺障害等級に応じて75万円~4,000万円死亡事故の場合は3,000万円です。

このうち、加害者が自賠責保険に加入していない「無保険車」の事故については、次の記事で手続きも含めて詳しく解説しています。

政府保障事業から支払を
受けられない場合

政府保障事業は、強制保険である自賠責保険によっても救済を受けることができない被害者のための最終的な救済制度です。

そのため、被害者が労災保険や健康保険、介護保険などから給付を受けた場合や、将来給付を受けられる場合には、その限度で政府からの保障は差し引かれます。

控除の詳しいルールや判例については、上で紹介した政府保障事業の解説記事をご覧ください。

なお、物損に関しては、政府保障事業の対象外のため、加害者が物損を支払ったとしても、政府保障事業には影響しません。

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政府保障事業の請求方法と期限(時効)

政府が被害者に支払いをした場合は、政府は、加害者に対して求償することができます。

つまり、後日ひき逃げの犯人が見つかったとしても、被害者が受け取った保障金を政府に返す必要はなく、政府がその犯人に請求する仕組みです。

政府保障事業を請求する場合には、各損害保険会社や共済協同組合にある「自動車損害賠償保障事業への損害てん補請求書」に必要事項を記載し、交通事故証明書や診断書等の必要書類を添付して提出します。

事案によりますが、処理には3ヵ月から7ヵ月程度かかるのが一般的のようです。

政府保障事業に対する請求権の時効は、3年です。起算日は、傷害に関する損害については事故日から、後遺障害に関する損害については症状固定日から、死亡事故の場合は死亡時からです。

政府保障事業の支払いについて、不服がある場合には、政府を被告とする当事者訴訟としての給付の訴え(行政事件訴訟法4条)を起こすことになります。

自分の保険も確認する

また、自分の保険も確認しましょう。

自分の保険に「無保険車傷害特約」がついている場合には、交通事故の相手方が自動車保険・自動車共済に加入していない、または加入していても補償内容が不十分である場合に補償を受けられる場合があります。

また、「人身傷害保険」がついている場合には、自動車事故で自分(主に運転される方・記名被保険者)やその家族、および契約車両に乗っている人が死傷した際に、過失割合に関係なく保険金額を上限として補償を受けられる場合があります。

さらに、「弁護士費用特約」がついていれば、弁護士への相談・依頼にかかる費用を保険会社が負担してくれるため、犯人不明の事案でも費用の心配をせずに弁護士に相談できます。

なお、弁護士費用特約の保険会社に対する請求については、弁護士費用特約は使えません。

ひき逃げ犯人が見つかった時

後日、ひき逃げ犯人が見つかることがあります。その場合には、通常の損害賠償手続に戻ります。

加害者と直接示談交渉をする

加害者側に任意保険があれば、被害者が被った損害額に不足する部分について、示談交渉をし、不足額について示談を成立させます。

では、任意保険がない場合は、どうしたらよいでしょうか

その場合には、加害者本人と示談交渉をすることになります

しかし、加害者に財産があるとは限りません。そこで、加害者以外に請求できる者がないかどうか、検討することになります。

自動車損害賠償保障法では、自動車の運行供用者に損害賠償責任を負わせています。

運行供用者というのは、自動車の運行について、運行支配と運行利益を得ている者のことです。

典型的には、自動車の所有者ということになります。

また、加害者が仕事中の事故であれば、会社などの使用者に損害賠償請求をできる場合があります

そのようにして、できるだけ資力がある者に対して損害賠償請求をしていくことも検討することになります。

示談が成立しない時は
裁判を起こす

ひき逃げが加害者と示談交渉をしても、示談が成立しない場合があります。

その場合には、裁判を起こし、判決を得て、強制執行をすることにより、損害賠償金を回収することになります。

強制執行というのは、裁判所の力を借りて、加害者側の財産を強制的にお金にし、回収する手続のことです。

強制執行の対象は、財産的価値のあるものであり、預金、不動産、株式、自動車、売掛金などです。

これらの手続は、専門的知識が必要となりますので、弁護士に依頼することをおすすめします。

よくある質問

Q. ひき逃げの犯人が見つかる確率はどのくらいですか?

A. 警察庁の統計では、死亡ひき逃げ事件の検挙率は例年100%に近い数値となっています。軽傷事故を含めた全体でも半数以上が検挙されており、ドライブレコーダーや防犯カメラの普及により犯人が特定されるケースが増えています。

Q. 犯人が見つからないままでも慰謝料は受け取れますか?

A. 犯人不明の間は加害者に請求できませんが、政府保障事業から自賠責保険と同じ基準で補償(傷害は120万円が限度)を受けられる可能性があります。

人身傷害保険など自分の保険から補償を受けられる場合もあります。

Q. 政府保障事業はどこに請求すればいいですか?

A. 各損害保険会社や共済協同組合の窓口で請求書類を受け付けています。

交通事故証明書や診断書などを添えて提出し、処理には3ヵ月から7ヵ月程度かかるのが一般的ですが、複雑な事案の場合は1年以上かかることもあります。

Q. 後からひき逃げの犯人が見つかった場合、受け取った保障金は返すのですか?

A. 被害者が政府に返金する必要はありません。政府が犯人(加害者)に対して求償します。

なお、受け取った保障金の分を差し引いた不足額は、犯人側に損害賠償請求できます。

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監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠
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