交通事故で、ひき逃げの被害にあって犯人がわからない場合はどうすればいいのですか?

最終更新日 2016年 05月01日
執筆:みらい総合法律事務所 弁護士 谷原誠

ひき逃げ交通事故の問題について、弁護士が解説します。

通常、交通事故の被害に遭った場合、加害者の自賠責保険や任意保険に損害賠償金の請求をすることになります。ところが、ひき逃げの場合のように、加害者が逃げてしまって特定できない場合は、加害者の自賠責保険や任意保険に請求することはできません。

そこで、このような交通事故の被害者を救済するために、自動車損害賠償保障法において、政府保障事業という制度が設けられており、政府からの保障を受けることができます。

政府からの保障を受けることができるのは、交通事故の加害車両の保有者が明らかでない場合と、自賠責保険等の被保険者以外の者が自動車損害賠償保障法3条の責任(運行供用者責任)を負う場合です。(自動車損害賠償保障法72条)

前者の例としては、ひき逃げで加害者や加害車両が特定できない場合が挙げられます。後者の例としては、加害者が自動車損害賠償保障法に違反して自賠責保険に加入していないいわゆる無保険車の場合や、泥棒運転など、被保険者以外の者が自動車を運転していた場合などが挙げられます。

保障金額の算定方法は、自賠責保険金額と同じです(平成19年4月1日以降の交通事故)。すなわち、対象は人身事故のみで、支払限度額は、傷害については120万円、後遺障害については、その後遺障害等級に応じて75万円~4000万円、死亡事故の場合は3000万円です。

ただし、政府保障事業は、強制保険である自賠責保険によっても救済を受けることができない被害者のための最終的な救済制度であるため、被害者が労災保険や健康保険、介護保険などから給付を受けた場合や、将来給付を受けられる場合には、その限度で政府からの保障を受けることはできません。また、無保険車の場合であっても、加害者が損害賠償金を支払った場合には、その分は控除されます。なお、物損に関しては、政府保障事業の対象外のため、加害者が物損を支払ったとしても、政府保障事業には影響しません。

政府が被害者に支払いをした場合は、政府は、加害者に対して求償することができます。したがって、親族間で被害者、加害者となってしまうような親族間の事故の場合は、被害者に支払いをしたとしても、親族である加害者から求償することになってしまい、保障の意味がないため、親族間の事故の場合は原則として政府保障事業の対象となりません。ただし、親族間の事故でも、加害者が死亡し、被害者である遺族が加害者の相続を放棄している等の特段の事情がある場合には、保障がなされる場合もあります。

政府保障事業を請求する場合には、各損害保険会社や共済協同組合にある「自動車損害賠償保障事業への損害てん補請求書」に必要事項を記載し、交通事故証明書や診断書等の必要書類を添付して提出します。事案によりますが、処理には3ヵ月から7ヵ月程度かかるのが一般的のようです。

政府保障事業に対する請求権の時効は、平成19年3月31日以前の事故の場合は2年、平成19年4月1日以降の事故の場合は3年です。起算日は、傷害に関する損害については事故日から、後遺障害に関する損害については症状固定日から、死亡事故の場合は死亡時からです。

政府保障事業の支払いについて、不服がある場合には、政府を被告とする当事者訴訟としての給付の訴え(行政事件訴訟法4条)を起こすことになります。

以上、ひき逃げ交通事故の問題について、弁護士が解説しました。

ひき逃げに関して争いになった場合には、弁護士にご相談ください。

「交通事故の被害者が弁護士に相談すべき7つの理由と2つの注意点」は、こちらです。