【時効消滅】交通事故の示談金を失わないために知っておくべきこと
この記事を読むとわかること
この記事では、交通事故の後遺障害等級や示談金(損害賠償金、保険金ともいいます)の金額、示談交渉の内容から、示談金の消滅時効の期限までを解説していきます。
具体的には、この記事を読むと次のことがわかります。
- 交通事故の示談金が消えてなくなる!消滅時効とは?
- 示談金の時効の期限は?
- 弁護士に相談・依頼するメリット
ぜひ、最後まで読んでください。
時効の種類と期限について
法律の世界には「時効」というものがあるのをご存知でしょうか?
消滅時効とは簡単にいうと、一定の時間が経過したために、あることの効力が無効になることです。
交通事故の被害者が行なう損害賠償請求にも時効があることをご存じでしょうか?
被害者の方にとって、突然の交通事故の被害でケガをして、後遺症という大きな損害を受けたうえに、時効により損害賠償金を受けとることができない状況などあってはならないことです。
そこで、まずは交通事故の全体の流れを知っていただくためにも、各ポイントでの注意点などから順に解説していきます。
図解でわかる!交通事故の各手続と全体の流れ
交通事故が発生してから被害者の方が示談金を受け取るまでには、さまざまな手続きがあり、通常は次のような流れで進行していきます。
今後、被害者の方やご家族は後遺障害等級認定や示談交渉など重要な手続きを行なわなければなりませんが、まずは全体像と大まかな流れを理解しておくことが大切です。
損害賠償請求権の時効について
交通事故における被害者の方の損害賠償請求権には、時効があります。
その期限は損害賠償の内容によって次のように異なります。
(1)自賠責保険に対する被害者請求の時効
交通事故については、傷害・死亡の場合は事故の翌日から3年、後遺障害がある場合は症状固定日の翌日から3年です。
(2)加害者に対する被害者請求の時効
・加害者に対する損害賠償請求の時効は、「損害及び加害者を知った時」(民法724条)から物損については3年、人身損害部分については5年です。
・あるいは、損害及び加害者がわからなかったとしても、事故日から20年を経過すれば時効により消滅します。
・後遺障害がある場合には、症状固定した時点で初めて後遺障害を含む損害について知ったことになるので、人身損害の時効は症状固定日から5年となります。
より正確には、事故等の時点が午前零時でない限り、初日不算入とされますので、当該日の翌日が起算点となります。
(最高裁昭和57年10月19日判決)
時効を完成させない方法とは?
被害者の方が肉体的、精神的につらいので示談交渉を延期したいという場合や、なかなか示談交渉が解決しない時など、さまざまな理由から時効を完成させないというケースが発生することがあります。
そのような場合は、一例として次のような方法があります。
・加害者側に債務を承認する書面(同意書)を書かせる
・賠償金の一部を支払わせる
・裁判を起こす
・加害者に内容証明郵便を送付する など
なお、内容証明郵便(催告)によって時効が延長される期限は6ヵ月です。
この場合には、6ヵ月以内に裁判等を起こす必要があります。
また、書面又は電磁的記録によって、損害賠償に関して協議を行なう旨の合意を加害者との間で取り交わした時には、以下のいずれか早い時までの間、時効は完成しないこととなります。
①その合意があった時から1年
②その合意において当事者が協議を行う期間(1年未満)を定めた時は、その期間
あやふやな知識で消滅時効を完成猶予又は更新させようとして、失敗すると損害が大きいので、時効に対する対応は弁護士に行なってもらうようにしましょう。
損害賠償請求の時効に関する注意点
(1)異議申立を何度も行なっていたり、交渉が上手くいかずに放置したままで時効期間が経過してしまったような場合には、時効によって請求権が消滅してしまうので注意が必要です。
(2)時効が成立してしまうと、その後は一切の損害賠償請求をすることができなくなってしまうので、時効の管理はしっかりしなければなりません。
(3)時効の更新とは、それまでの期間がリセットされることです。
たとえば、2年が経過した時点で更新した場合、再開した時点からまた3年、あるいは5年後に時効がくることになります。
そのため、内容証明郵便を加害者に何度も送っておけば時効は成立しない、ということがいわれたりしますが、それは法的には誤りなので注意が必要です。
(4)加害者本人や加害者が加入している任意保険会社が被害者の方の治療費を医療機関に支払った場合、また休業損害を被害者の方に支払ったような場合は、債務の一部承認とみなされます。
そのため、時効は最後の支払いがあった時から、また新たに進行することになります。
(5)示談交渉の際、加害者側の任意保険会社が「損害額計算書」などで示談金額を提示している場合も債務の一部承認となるので、時効は提示日から新たに進行することになります。
なぜ示談交渉では争いになることが多いのか?
そもそも示談とは、裁判のように争って勝敗を決めるようなものではなく、交通事故の被害者の方と加害者の間で問題となる次のことに関して話し合いで解決することです。
①どのような損害が生じたのか
②その損害額はいくらになるのか
③支払い方法はどのようにするのか
しかし、現実として示談交渉はなかなかスムーズに進まないことが多くあります。
それは、被害者側と加害者側それぞれで慰謝料などの損害賠償金額に対する考えに大きな相違があるからです。
突然の交通事故で、被害者の方とご家族は、それまでの生活と健康を失ってしまうのですから、その償いとして慰謝料などの損害賠償金を適正な金額で求めたいという思いは当然のことでしょう。
一方、加害者側の保険会社は損害賠償金の支払い額を少しでも抑えようとします。
なぜなら、保険会社は営利法人であり、その経営目的は利益を上げることだからです。
このような両者が話し合いで和解を目指すわけですから、示談交渉では争われることが多く、すんなりとは解決しにくいのです。
弁護士が示談交渉に入ると損害賠償金が増額する理由
示談交渉で和解に至らない場合、被害者の方の相談先としては法律事務所の弁護士がいます。
弁護士が被害者の方から依頼を受けると、代理人として示談交渉を進めていきます。
じつは、そうした場合、保険会社が提示してきた示談金額より増額して示談解決となることが多いのですが、それはなぜなのでしょうか?
(1)損害賠償金の計算では3つの基準が使われるから
慰謝料などの損害賠償金の算定方法には、次のような「3つの基準」があります。
「自賠責基準」
自賠責保険で補償される最低限の金額の基準。
自賠責保険の設立の趣旨は、交通事故の被害者の方が最低限の補償を確保し、直接受け取ることができるようにするというものです。
そのため、支払限度額があることから、3つの基準の中ではもっとも低い損害賠償金額になります。
「任意保険基準」
任意保険会社が損害賠償額を算定する際に用いている基準。
各社が独自に設定し、明確な基準を公表していませんが、自賠責基準より高く、弁護士(裁判)基準より低い金額を提示してくることから、おおよその基準が予想できます。
「弁護士(裁判)基準」
これまでの交通事故の裁判例から導き出された損害賠償金の基準。
法的根拠がベースになっているため、裁判をした場合に認められる可能性が高く、3つの基準の中ではもっとも高額になります。
(2)民間の保険会社は利益の追求を目的とする営利法人だから
自動車の運転に関わる保険には次の2つがあります。
「自賠責保険」
すべての運転者が加入する義務がある強制保険。
自賠責保険は対人保険制度であるため、人身事故の被害の場合にのみ保険金が支払われる。
自損事故による傷害(ケガ)や物損事故では保険金は支払われない。
「任意保険」
民間の保険会社が運営する自動車損害保険。
自動車の所有者やドライバーは、自賠責保険金だけでは被害者への損害賠償金をすべて支払えない事態に備えて任意保険に加入する。
前述したように、民間の任意保険会社の目的は利益の追求ですから、利益を上げるために収入を増やし、支出を減らそうとします。
そのため、民間の保険会社は自賠責基準か任意保険基準で計算した低い金額の損害賠償金を被害者の方に提示してくるのです。
(3)弁護士が主張するのはもっとも高額な弁護士(裁判)基準だから
弁護士(裁判)基準は、これまでに積み重ねられてきた過去の裁判例をベースにしているため、法的根拠がしっかりしたものです。
そのため、弁護士が加害者側の保険会社と示談交渉する際には弁護士(裁判)基準で計算した金額を主張していきます。
仮に示談が決裂した場合、弁護士は被害者の方のために提訴して裁判に持ち込みます。
その際も弁護士(裁判)基準で計算した金額を主張していきますし、法的根拠があるので最終的に裁判で認められる可能性が高くなるのです。
これらが、弁護士が示談交渉に入ると加害者の方の慰謝料などの損害賠償金が増額する可能性が高くなる理由です。
弁護士に相談・依頼するメリットは大きいという事実
ここまで読んでいただいたなら、いかに低い賠償金額のまま示談してしまう被害者の方が多いか、また被害者の方が保険のプロである保険会社の担当者と交渉していくのは非常に難しいことなどがおわかりいただけたと思います。
そこで、ぜひ検討していただきたいのが、弁護士に相談・依頼することです。
示談交渉の段階で、保険会社が提示してくる金額が本当に妥当なものかどうか、交通事故や保険の素人である被害者の方が判断するのは難しいと言わざるを得ません。
ですから、少なくともその点は弁護士に相談するべきだと思います。
そして、弁護士に依頼することで、被害者の方は次のようなメリットを手にすることができます。
・難しく、煩わしい示談交渉から解放される
・自分で交渉するより大幅に増額して解決することが期待できる
・保険会社の都合ではなく、法律的に正しい解決ができる