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交通事故の加害者が未成年者の場合、親に慰謝料を請求することができるか?

最終更新日 2024年 06月17日

交通事故の加害者が未成年者だったのですが、親に損害を賠償してもらうことができますか?

加害者が未成年者の場合の問題点

交通事故で被害を受けた場合には、加害者らに対して、被害者が被った損害を賠償請求していくことになります。

自動車の所有者等は、自賠責保険に加入する法的義務があります。

しかし、自賠責保険は、人身傷害があった場合の最低限の保障を定めるものです。

後遺障害部分の保険金の最高額は4000万円で、死亡事故の場合は3000万円です。

しかし、多くの場合に、この金額ではとても損害の全てをまかなうことはできません。そこで、自動車の所有者等は、ほとんどの場合、任意保険に加入して、不足する損害賠償を補おうとしています。

加害者等が任意保険に加入していない場合には、加害者等の個人に対して損害賠償請求をしていくことになります。

しかし、交通事故の損害賠償で、特に重傷の場合には、金額が高額になります。個人の資力がなければ賠償金を支払う能力がない、というケースがあります。

特に、未成年者が運転する自動車やバイクなどに衝突された場合で、任意保険に加入していない場合には、未成年者個人に請求することになります。

しかし、未成年者は、働いていないことも多いので、賠償金を支払う能力がないことも多いと推測します。

そこで、このような場合に、未成年者の親などに賠償請求できないか、が問題となります。

【参考情報】国土交通省「自賠責保険(共済)の限度額と保障内容」
http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/resourse/data/kijyun.pdf

親が責任を負う場合

720

監督義務者の責任

民法712条は、未成年者が他人に損害を与えた場合、自己の行為の責任を弁識する能力を備えていなかった場合は、その行為について責任を負わない、と規定されています。この自己の行為の責任を弁識する能力を、責任能力といいます。

民法712条
未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。

未成年者に責任能力が認められない場合、民法714条1項では、その未成年者を監督する法定の義務を負う者(一般的には親)が、その損害を賠償する責任を負うと規定されています。したがって、交通事故の加害者が未成年だった場合でかつ責任能力が認められない場合は、親に損害賠償を請求することができます。

民法714条1項
前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

責任能力

責任能力が何歳から認められるのかについて規定はありません。裁判例では、具体的な行為の内容や、その未成年者の状況などを個別に考慮し決定しており、11歳11ヶ月の少年の責任能力を認めたもの、反対に12歳2ヶ月の少年の責任能力を否定したものなどがありますが、おおむね11~12歳で判断が分かれることになるでしょう。

ただ、未成年者が運転者といっても、10歳以下の者が運転するケースは稀なケースであると考えられます。

多く問題となるのは、免許を取得できる年齢に達した者です。この場合に、親に損害賠償請求をすることができるのかどうかが問題となります。

まず、未成年者であっても、バイクや自動車の免許を取得して運転をしているような年齢に達している場合には、交通事故で、通常責任能力が認められると考えられますので、親が民法714条1項の監督義務者としての責任を負うことはありません。

親自身の不法行為責任

親の不法行為責任が認められる要件

しかし、この場合でも、親の監督義務違反と未成年者の不法行為との間に因果関係が認められるときは、親に民法709条の不法行為責任が生じるとした裁判例もあります。

ですので、未成年者の交通事故が、親の監督義務違反によって生じたと認められるような事情がある場合には、親にも責任が生じる場合があると考えます。

ただし、この責任は、先ほどの714条の責任ではなく、親自身の不法行為責任です。

したがって、過去の裁判例では、①監督義務者が相当の監督をすれば加害行為の発生が防止され得たこと、②その監督を現実になし得たこと、③監督をせずに放任しておけば当該加害行為が発生するとの蓋然性が一般的にも強い場合であったこと、が必要であるとしています(東京高裁昭和52年3月15日判決)。

親の責任を否定した裁判例

但し、責任能力がある子の交通事故について、親自身の損害賠償責任が認められるためには、親に具体的な監督義務違反があることが必要となります。

過去の裁判例に、東京地裁平成7年11月22日判決があります。

この事例は、普通自動車免許を持っている未成年の子が交通事故を起こしたものです。

被害者は、親権者が子の運転技術が未熟であることを十分に知り、又は知り得たにもかかわらず監督義務を怠ったとして損害賠償請求をしました。

しかし、裁判所は、仮に子の運転技術が未熟であることを認識していたとしても、ただちに親権者が運転免許を有する子の運転を制止すべき監督上の義務があるとはいえない、として、親の責任を否定しました。

運行供用者責任

また、未成年者が運転していたバイクや自動車が、親の名義で、自賠責保険なども親が加入していた場合などは、監督義務者としての責任とは別に、親に運行供用者責任が認められる場合があります。

運行供用者とは、自動車損害賠償保障法第3条に規定されている「自己のために自動車を運行の用に供する者」のことで、自動車の使用についての支配権を有し、かつ、その使用により享受する利益が自己に帰属する者を意味します。したがって、親に自動車の使用権と利益の帰属が認められるならば、運行供用者として親に損害賠償を請求できる場合もあります。

使用者責任


また、当該未成年者が働いており、事故を起こした時に、仕事中であるような場合には、使用者責任として、未成年者の雇い主に対して損害賠償請求をできる場合があります。

民法715条は、「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」と規定しています。

この使用者責任については、従業員が会社に無断で運転した場合の責任や従業員のマイカーでの通勤途中での事故の責任などの論点があります。

また、相手に請求がむずかしい場合、被害者自身がかけている任意保険で支払われる場合もありますので、確認した方がいいでしょう。

【参考記事】
従業員が業務中に交通事故を起こした場合、会社にも損害賠償を請求できるか?

自賠責保険に請求

親に損害賠償請求ができない場合で、任意保険未加入の場合はどうしたら良いでしょうか。

その場合には、自賠責保険に対する請求を検討します。
自動車損害賠償保障法により、自動車の運行供用者は、自賠責保険に加入しなければなりません。

自賠責保険に加入していない場合には、罰則の適用もあります。

ただし、自賠責保険に請求できるのは、人身事故の場合だけで、物損事故のみの場合には請求することができません。

また、自賠責保険は、最低限の保障を定めるものであり、自賠責保険金だけで損害の全額を補償してもらう事は難しい場合が多いです。

それでも、死亡事故の場合には、最高3000万円まで、後遺障害の場合には、最高4000万円まで補償されますので、請求できる場合には、請求した方が良いでしょう。

【参考記事】
【交通事故の保険金】自賠責保険への被害者請求の方法を解説

政府保障事業に請求


未成年者の車に、任意保険も加入しておらず、自賠責保険にすら加入していない場合にはどうしたらいいでしょうか。

この場合には、政府保障事業への請求を検討します。
これは、政府からの補償を受けることができる制度です。

要件としては、

・交通事故の加害車両の保有者が明らかでない場合

・自賠責保険等の被保険者以外の者が自動車損害賠償保障法3条の責任(運行供用者責任)を負う場合です。(自動車損害賠償保障法72条)

保障金額は、自賠責保険金額と同じです。つまり、対象となるのは、人身事故のみとなり、死亡事故の場合には最高3000万円まで、後遺障害の場合には、最高4000万円までとなっています。

【参考記事】
「政府保障事業について(ひき逃げ・無保険事故の被害者の救済)」国土交通省

監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠
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