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交通事故で相場計算以上の後遺障害逸失利益を獲得する方法

最終更新日 2021年 11月10日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

交通事故で相場計算以上の後遺障害逸失利益を獲得する方法


交通事故の損害に含まれる「後遺障害逸失利益」は、まず自賠責保険による認定を得て、その基準に沿い計算するのが原則です。

ただし、必ずしも上記の通りとは言えません。

主に裁判(訴訟)で損害賠償請求を行うケースでは、個別事情が汲まれて「労働能力への影響がより強い」と判断されることがあります。

当てはまる過去の判例からは、自賠責だと上位等級を獲得できないケースでどうやって逸失利益を適正化できるのか、その条件と方法が見えてきます。

まずは、動画で逸失利益について概要を確認してみましょう。

後遺障害逸失利益の判断基準

はじめに「後遺障害逸失利益」の意味をおさらいしましょう。

考えたいのは、事故で負った傷害の影響により、心身のどこかに症状が残ってしまったケースです。

症状は被害者の普段の暮らしに影響し、特に仕事では何かと不都合が生じるでしょう。

少なくとも職場復帰のため一定の努力は強いられ、重い症状なら配置換えや退職もやむを得ず、結果として事故前より収入が減ってしまうのが普通です。

以上のような減収は、交通事故によって被った損害の一部と考えます。

被害者の過失その他の事情を考慮した上で、加害者に対して補償を求められるのです。

【後遺障害逸失利益の計算方法】
基礎収入(A)×労働能力喪失率(B)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数(C)

A 事故前の収入
B 労働能力の減少率(事故前=100%)
C 先払いの利益として控除される中間利息を計算するための係数

職業別の後遺障害逸失利益についてもっと詳しく知りたい方は、次の記事を参考にしてください。

【後遺障害の逸失利益】職業別の計算と早見表

原則は後遺障害等級に沿って計算する

後遺障害逸失利益の金額は、原則として自賠責保険の基準で審査された「後遺障害等級認定」の結果に基づきます。

等級別に労働能力喪失率の基準が定められ、ひいては認定状況により損害額も変わってくるのです。

そこで、逸失利益等の損害額が少なすぎると分かったケースでは、まず異議申立(=認定審査の再請求)で等級を修正できないか検討します。

それでも増額が見込めないのなら、最終手段として裁判(訴訟)を起こす他ありません。

【参考】労働能力喪失率表(平成22年6月10日以降の事故に適用)

後遺障害等級 労働能力喪失率
第1級 100%
第2級 100%
第3級 100%
第4級 92%
第5級 79%
第6級 67%
第7級 56%
第8級 45%
第9級 35%
第10級 27%
第11級 20%
第12級 14%
第13級 9%
第14級 5%

裁判で認定状況と異なる評価がされる場合もある

実のところ、自賠責保険による等級認定基準は、あくまでも同保険の補償額を定めるためのものに過ぎません。

民事訴訟も自賠責の基準に沿うのが通例ですが、判断は独自に行われます。

裁判では、年齢・性別・職業と言った個別的事情を考慮し、必要なら自賠責とは異なる評価をすることもあるのです。

実際、自賠責の認定より上位の等級に該当する、あるいは労働能力喪失率を基準より高く評価すべきと判断されるケースは多数存在します。

交通事故の裁判のメリットについてもっと詳しく知りたい方は、次の記事を参考にしてください。

交通事故裁判で得する人、損する人の違いとは

自賠責認定より高い後遺障害逸失利益が認められるケース


交通事故による後遺障害を裁判で扱う場合、その判断は自賠責の認定基準より柔軟です。

判例上、等級や労働能力喪失率が高めに評価されたケースは、大まかに下記どちらかに該当します。

・認定基準を満たす医学的資料はないものの、重い症状であると十分確信できる
・生活や就労状況から、後遺障害による重大な影響が出ていると予測される

以降では、よく見られる認定の理由を4つに分け、判例と共に逸失利益を高く評価するためのポイントに触れます。

有力な医学的資料(所見・医師の見解等)がある

稼働能力に影響を及ぼす後遺障害の中には、認定システムが策定されていても、しばしば過小評価されるものがあります。

自賠責側で適正な評価が得られないなら、裁判だとどうでしょうか。

結論として、以下の判例から分かるように、被害者が積み上げた担当医の所見やセカンドオピニオンから等級が見直される可能性があります。

東京地裁平成21年11月4日判決(第12級相当)

頚から後側頭部の痛み、左上肢のしびれ、腰臀部の痛みを訴える会社員男性の例です。

裁判所は、MRI検査の結果より「訴えと所見が一致している」とし、後遺障害等級第12級に相当すると判断しました。

その結果、30年間に渡って14%の労働能力喪失率が認められています。

東京地裁平成24年12月18日判決(第12級→第5級)

ふらつき・めまいの後遺障害で第12級13号とされた、大工の男性の例です。

本事例では、びまん性脳損傷ないし軸索損傷を示す画像所見、認知能力に関する神経心理学的所見、そして複数の医師による「高次脳機能障害」との見解が注目されました。

結果、第5級2号に該当するものとし、37年間に渡って79%の労働能力喪失が認められています。

京都地裁平成26年5月20日判決(第14級→併合11級)

右膝等の疼痛・左上肢等のしびれにより、第14級9号に認定された男性調理師の例です。

問題になったのは右膝の疼痛であり、自賠責の認定基準上、複合性局所疼痛症候群(CRPS)には該当しないとされていました。

しかし裁判所は、日本版CRPS判定指標には該当しているとした上で、本症状を第12級13号(併合11級)と認めています。

職業・生活に具体的な支障がある

後遺障害逸失利益を争う裁判では、医学的資料と並んで「症状による具体的な影響」も重視されます。

職業上あるいは普段の暮らしぶりを立証することで、労働能力喪失率につき、自賠責の基準より高く見積もられる場合があるのです。

名古屋地裁平成20年2月27日判決
(喪失率25%→45%)

脊柱の運動障害(第11級)・口が開きにくく物が咬みにくい症状(第14級9号)により併合11級の認定を得ていた、運送会社会社員の男性の例です。

問題になったのは、自賠責で非該当とされた胸腰椎部の運動障害です。

裁判所はまず、これを労働能力に影響すると認めました。

次に腰脊部通の痛みに着目し、重いものを持つ・長時間座る・歩行する等の行動に困難があり、実際に事故後は稼動していないことを取り上げています。

これらの事情から、労働能力喪失率は基準より25%高い45%とされました。

大阪地裁平成22年1月25日判決(喪失率5%→10%)

頸部神経症状、肩関節脱臼後の疼痛と圧痛、左膝や左肘の痛み等で併合14級とされた女性の例です。

被害者はエステティックサロンを経営しており、後遺症による施術のつらさのせいで顧客を減らしていました。

施術中、肘の痛みによる震えに加え、頸部の痛みが増強するような状況です。

裁判所はこれらの事情等を考慮し、労働能力喪失率を基準より5%高い10%と評価しました。

神戸地裁令和1年7月24日判決(喪失率5%→45%)

右腰部臀部痛の後遺傷害につき第14級に認定された、塗装業務従事者の男性の例です。

他に右下肢全体の症状(痛み・しびれ・知覚低下・弛緩性麻痺)があったところ、自賠責では非該当とされていました。

医学的な目線で裁判所が汲んだのは、画像所見はないものの腰部神経根の損傷があったと推測される等の診断内容です。

その上で、右足による自立困難、実際に装具を必要としていること、そして退職し就労できないまま職業訓練学校に通っている状況が総合的に勘案されました。

結果、1下肢の3大関節中の1関節の用廃(第8級)と同程度の後遺障害として、労働能力喪失率は45%と認めています。

症状の数や部位・相互の関係が考慮される

自賠責の等級認定システムには、複数の症状を「併合」または「加重」して高く評価する仕組みが導入されています。

そうは言っても機械的なもので、症状の重さ、そして労働能力への影響を個別に推し量ろうとするものではありません。

裁判では上記のような実情を認め、逸失利益をより高く評価する場合があります。

東京地裁平成25年12月27日判決(喪失率92%)

精神障害、胸腹部臓器の障害、脊柱運動障害等、全身に第12級から第7級までの6つの行為障害が認定された男性土木作業員の例です。

裁判所は、障害が多方面に渡り、かつ外貌醜状を除くいずれもが労働能力に申告な影響を与える点から「通常の併合基準を適用すべきでない」と判断しました。

最終的に第4級相当とし、労働能力喪失率を92%と認めています。

東京地裁平成14年1月29日判決(喪失率14%→20%)

坐骨神経痛等の後遺障害につき、第14級10号と認定された会社員男性の例です。

裁判所は、腰部・臀部・大腿部付近の神経症状を第12級12号、頸部痛を第14級10号と認定しました。

その上で、身体の離れた異なる部位の神経症状が併存・競合していることから、第12級12号の後遺障害が1つだけ残存する事例より「稼働能力が著しく制約される可能性が高い」としています。

結果、労働能力喪失率は20%と認められました。

治療・手術の影響がある

裁判では、治療や手術の影響を労働能力喪失率に加味することがあります。

治療で被害者に過大な負担をかかっていたり、あるいはやむを得ず行った治療が症状を引き起こしていたりする場合です。

仙台地裁平成16年9月3日判決(喪失率14%→20%)

右臀部から下肢にかけての冷感・疼痛等座骨神経症状につき、第12級に認定された看護師の例です。

裁判所の判断に影響したのは、事故後5年間に渡って400回を超える神経ブロック治療を受けていた事実です。

これにより、労働能力喪失率は基準より6%高い20%と評価されています。

京都地裁平成28年6月14日判決(第14級→第9級)

左臀部の疼痛につき、第14級9号に認定された主婦の例です。

被害者は65歳と高齢で、負担を考慮しインプラントの除去手術はあえて行われていません。

加えて、その突出部位の刺激が症状の原因との診断も一貫しています。

これらの治療状況を考慮し、第12級13号に相当すると裁判所は判断しました。

逸失利益が認められにくい後遺障害の種類


一部の後遺障害は、たとえ自賠責で喪失率が定められていたとしても、示談・訴訟だと「労働能力に影響がない」として逸失利益が認められにくいものがあります。

そうかと言って、すぐに諦めるべきではありません。

以降紹介するように、裁判の結果、自賠責の基準通りかそれ以上の喪失率が認められることもあるからです。

外貌醜状

外貌醜状(第7級12号・第9級16号・第12級14号)で逸失利益が認められるのは、職業上容姿の重要性が高いケースです。

容姿が稼働能力そのものですらある舞台俳優等に関しては、労働能力喪失率が高く評価される傾向にあります(東京高裁平成28年12月27日)。

また、営業等の対面機会の多い職種であれば、少なくとも自賠責基準の労働能力喪失率が認定される傾向です。

他にも、以下のような事情も勘案されます。

・人目が気になる・コミュニケーションで消極的になる
…東京地裁平成27年1月30日判決、等

・就職で不利になる可能性がある
…名古屋地裁平成24年4月13日判決、神戸地裁平成26年11月26日判決、等

なお、自賠責における外貌醜状の認定基準には、平成22年の改訂まで男女差がありました。

同年6月10日以降発生の事故では男女同一の基準で認定されますが、裁判による逸失利益の判断では、社会状況に照らし合わせて格差が未だ多少あると考えられます。

外貌醜状の後遺障害についてもっと詳しく知りたい方は、次の記事を参考にしてください。

外貌醜状の後遺障害等級認定と慰謝料の相場と増額

味覚や嗅覚の障害

味覚や嗅覚の脱失(12級相当)、あるいは減衰(14級相当)は、職業上の要否で逸失利益の評価が大きく変わります。

労働能力喪失率が高く評価されやすいのは、調理師や主婦等「料理の味見」を職業とする人です(東京地裁平成13年2月28日判決等)。

嗅覚障害について言えば、喪失率が自賠責の基準に沿って評価される例として、過去に以下のような職業が確認できています。

・花屋経営者
…錯覚臭が業務中の体調に影響しているため(東京地裁平成18年3月14日判決)

・教師
…指導や避難誘導に支障をきたすため(大阪地裁平成20年10月21日判決等)

・電池製造に関わる技術職会社員
…嗅覚に頼る状況が職務遂行上少なからずあり、将来経済的不利益が生じる恐れが高いため(名古屋地裁平成21年1月16日判決)

鼻(嗅覚障害)の後遺障害についてもっと詳しく知りたい方は、次の記事を参考にしてください。

鼻の後遺障害等級と慰謝料の相場と計算方法

咀嚼機能障害・歯牙障害

咀嚼機能障害(第1・3・4・6・9・10級)も、調理師・主婦を中心に職業上影響があれば逸失利益が認められます。

一方、歯の喪失や欠損(第10級~第14級)については、ボディビルダーのように歯を食いしばる肉体的活動がない限り、逸失利益は認められない傾向です。

口の後遺障害についてもっと詳しく知りたい方は、次の記事を参考にしてください。

口の後遺障害等級と慰謝料の相場と計算方法

鎖骨変形

鎖骨の著しい変形(第12級5号)の逸失利益が認められる可能性があるとすれば、モデルやスポーツ選手等の職業に限られます。

鎖骨の機能は医学的な評価が低く、全摘しても日常生活に重大な支障はないと考えられるためです。

脾臓または1個の腎臓の障害

脾臓あるいは腎臓の片方を失くす障害(第13級11号)は、労働能力に大きく影響することはないと考えられています。

そのため、逸失利益は原則として認められません。

ただ、今後透析等が必要になる可能性を医師が指摘しているような場合は、この限りではありません。

この点を踏まえ、幼児または年少者であれば成人の場合よりも「逸失利益があることの事実上の推定力」が働くとする例があります(横浜地裁平成28年5月31日判決)。

下肢短縮(第13級8号)

左右の脚長の差が3センチ未満の場合、歩行障害は普通見られません。

この点より、1下肢が1センチメートル以上短縮した場合(第13級8号)は、症状固定時の脚長差により逸失利益は原則認められないと考えられます。

ただし、左右バランスよく歩行する必要のある職業は例外です。

鳶職、大工、体育教師等の職業は、労働能力喪失率が自賠責より高く評価される可能性があります。

交通事故の後遺障害で、逸失利益が減額されることがある場合についてもっと詳しく知りたい方は、次の記事を参考にしてください。

交通事故の慰謝料や逸失利益が減額される後遺障害

相場計算以上の逸失利益を目指す時の心得


事故後の症状が稼働能力に及ぼす影響の評価は、説明できる事項が詳細に及ぶほど正確になります。

今後裁判で逸失利益の増額を目指すのであれば、認められる可能性のある医療記録その他の事情につき、極力多くの立証を重ねなければなりません。

交通事故の被害者として心がけたい対応としては、具体的に2つ挙げられます。

症状による具体的な支障を整理する

回復途上に身辺で出来るのは、症状の影響を具体化しつつ整理することです。

勤務中に辛く感じることや、家族等の第三者からの客観的な評価は、些細なことでも意識しておきましょう。

職場復帰のため努力したことも、審理で注目される可能性があります。

より早い段階で弁護士に任せる

後遺障害逸失利益を訴訟で増額させるための活動は、交通事故対応の中でも特に専門性が求められます。

また、治療経過の適切なタイミングで必要な検査を行われ、医師からも先々の可能性を示してもらわなくてはなりません。

事故被害者のベストな選択は、より早い段階での弁護士依頼です。

介入のタイミングが早ければ、それだけ適正な逸失利益を獲得できる期待が上がると言えます。

まとめ

後遺障害逸失利益は自賠責保険の認定に沿って検討するのが原則です。

ただし、認定そのものや労働能力喪失率の基準に柔軟性がなく、実情に沿う金額が判断できないこともあります。

そこで考えられるのが、裁判に後遺障害の判断を委ねる方法です。

医師の見解・職業への具体的な支障等といった要点の立証が出来るなら、より高い等級あるいは労働能力喪失率が認められるでしょう。

一部の逸失利益が認められにくい症状についても、諦めず争うことで必要十分な解決金が得られたケースが多数あります。

交通事故で後遺障害を負ってしまうトラブルは、弁護士の活動が解決の要です。

治療経過で受けるべき検査等の処置、解決金を最大化するための最適解、いずれも高い専門性を要します。

リハビリや職場復帰に専念するためにも、まずは気軽に相談してみましょう。