交通事故における実況見分調書の重要性
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突然の交通事故……被害にあった直後は、誰しも動揺しているものです。
しかし、被害者にとってはやらなければいけない大切なことがあります。
そのひとつが、交通事故の現場で警察官が行なう「実況見分調書」(じっきょうけんぶんちょうしょ)と「供述調書」作成への協力です。
映画やドラマ、小説などでも登場する実況見分調書と供述調書ですが、交通事故の現場で作成したら終わりというわけではありません。
交通事故の被害者にとっては、その後の示談交渉などにも関わってくる非常に重要なものなのです。
そこで今回は、実況見分調書と供述調書とはどういうものなのか、またどのように重要なのかについて解説します。
目次
交通事故から示談成立までの流れを確認
まず、交通事故が起きてから加害者側との示談が成立するまでの流れについて簡単に確認しておきましょう。
通常は次のような流れで手続きなどが進んでいきます。
- ①交通事故が発生
- ②事故の状況や相手(加害者)の身元の確認
- ③警察への通報、実況見分調書・供述調書の
作成 - ④加害者、被害者双方の保険会社への通知
- ⑤ケガの治療・入院など
- ⑥治療完了または後遺障害等級の認定により
損害賠償額が提示 - ⑦示談交渉(相手は加害者側の保険会社)
- ⑧示談成立、法的手続き
(決裂した場合は裁判へ移行)
実況見分調書とは?
交通事故が発生した後、警察に通報すると、現場では警察官による実況見分が行なわれます。
その際、事故の状況について当事者である被害者と加害者両方も実況見分に立ち会い、「どこで相手に気づいたか」「どこでブレーキをかけたか」といったそれぞれの主張を警察官に伝えます。
これらを総合して事故の状況を明らかにするために警察官が作成するのが、実況見分調書です。
実況見分調書の記載内容
実況見分調書には、事故現場の見取図や写真などが添付されるほか、主に次のような内容が記載されます。
- ・実況見分を実施した日時、場所、立会人の情報
- ・事故当時の路面状況
- ・事故現場の道路状況(周辺環境、道路の勾配、照明の有無、障害物、交通規制、見通しなど)
- ・事故車両の情報
- ・事故発生状況(走行速度、衝突時の位置、信号の色など)
つまり、実況見分調書は、立会人の説明や事故現場の状況を客観的に記録した書類ということになります。
ちなみに、警察官がこの書類を作る際には、以下のようなルール(犯罪捜査規範 第104条・105条)を守らなければならないと定められています。
※犯罪捜査規範とは、警察官が犯罪の捜査を行う際に守るべきルールを定めた国家公安委員会規則のこと
- 犯罪の現場その他の場所、身体又は物について事実発見のため必要があるときは、実況見分を行わなければならない。
- 実況見分は、居住者、管理者その他関係者の立会を得て行い、その結果を実況見分調書に正確に記載しておかなければならない。
- 実況見分調書には、できる限り、図面及び写真を添付しなければならない。
- 前三項の規定により、実況見分調書を作成するに当たつては、写真をはり付けた部分にその説明を付記するなど、分かりやすい実況見分調書となるよう工夫しなければならない。
記載上の注意)
- 実況見分調書は、客観的に記載するように努め、被疑者、被害者その他の関係者に対し説明を求めた場合においても、その指示説明の範囲をこえて記載することのないように注意しなければならない。
- 被疑者、被害者その他の関係者の指示説明の範囲をこえて、特にその供述を実況見分調書に記載する必要がある場合には、刑訴法第百九十八条第三項から第五項までおよび同法第二百二十三条第二項の規定によらなければならない。
- この場合において、被疑者の供述に関しては、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げ、かつ、その点を調書に明らかにしておかなければならない。
実況見分調書が重要な理由
実況見分調書は、事故直後の現場で警察官が作成する「公文書」です。
実況見分調書は、当事者の主観が入りにくい客観的な資料であり、専門性と信用性が非常に高いためとても重要な書類です。
具体的にどのような場面で使用されるのかを交通事故発生の流れに沿って解説します。
交通事故が発生すると、加害者の処罰を決める「刑事手続」と、被害者への賠償を決める「民事手続」の双方が進行します。
①刑事責任
刑事責任とは、「自動車運転死傷処罰法」や「道路交通法」に基づき、加害者が刑罰を受ける責任です。
警察や検察は、実況見分調書を「加害者がどのような違反をしたか」を判断する極めて重要な証拠として扱います。
検察官による起訴・不起訴の判断や、刑事裁判での判決に直結します。
②民事責任
民事責任とは、被害者が被った損害を金銭で賠償する責任です。
示談交渉において、加害者側の任意保険会社と示談交渉で「過失割合(どちらにどれだけの非があるか)」を協議する際、実況見分調書がその認定の基礎資料となります。
もし交渉が決裂し、民事裁判へ発展した場合でも、裁判所が事故状況を客観的に把握するための第一級の証拠として利用されます。
前述のとおり、実況見分調書は専門性と信用性が非常に高いため、過失割合を決定する際の事実上の「決定打」となります。
このように、実況見分調書は交通事故後の解決過程における、あらゆる場面で極めて高い価値を持つ資料となるため重要なのです。
供述調書とは?
では次に、供述調書について見ていきます。
供述調書とは、交通事故の当事者である被害者と加害者、さらに目撃者がいれば警察がその供述を聞き取り、内容をまとめた書類です。
通常、実況見分調書とセットで作成されるものです。
実況見分調書が1種類作成されるのに対し、供述調書は供述を行なった人数分が作成されます。
そのため、それぞれ内容に違いがある可能性があります。
供述調書を作成する目的とは?
供述調書を作成する目的は、実況見分調書と同様に刑事事件や民事訴訟において事故の状況を明らかにするために、その証拠として利用することです。
また、供述調書を作成するのは加害者が虚偽の申告をすることを防ぐという目的もあります。
たとえば、加害者は事故直後の供述から一転して刑事裁判では自分の過失などを否認する場合があります。
そうした場合に、供述書は重要な証拠となるのです。
さらに、損害賠償の示談や民事訴訟でも過失割合などの判断で大切な資料となるのは実況見分調書と同じです。
実況見分調書と供述書の作成での
注意ポイント
実況見分調書と供述書の作成の際、注意していただきたいことがあります。
それは、曖昧なことや自分の記憶とは違うことを供述してはいけない、ということです。
突然の交通事故にあってケガをしているのですから、「落ちついて!」と言われても冷静になれるものではないでしょう。
そうした時、人は思いもしないことや事実と違うことを言ってしまうことがあるものです。
また、実況見分での警察官はその交通事故を直接見ているわけではないので、ある程度、憶測や予測で話をします。
「こういう状況だったのではないですか?」
という感じで誘導尋問のように質問をしてくることがあるのです。
すると、人は「そうだったような気がする…」と感じて事実とは違うことを言ってしまうことがあるのです。
しかし、これは注意が必要です。
なぜなら、実況見分調書も供述調書も1度作成されると後から書き直すことが難しいからです。
その場で適当なことを言ってしまったり、「後から修正してもらえばいいだろう」などと安易に考え、曖昧な供述をしてしまったために、自分(被害者)にとって不利になるような実況見分調書や供述調書ができてしまうと、こんなことが起きる可能性があります。
・示談交渉や民事訴訟で被害者が本来受け取るべきだった金額より低い損害賠償金額が認められてしまう
交通事故の被害者としては、こんな状況は避けたいことでしょう。
ですから、警察官から聞き取り調査を行なわれる際は、曖昧で適当なことは話してはいけません。
警察官から聞かれたことが少しでも事実と違うならば、きっぱり、しっかりと自分の記憶や感じていることを主張するべきです。
実況見分調書と供述調書のまとめ
ここでは、実況見分調書と供述調書の大切なポイントをまとめます。
◆交通事故の被害にあった場合、加害者が「警察に通報しないでほしい」、「この場で示談をしませんか」などと言ってくることがありますが、絶対に応じてはいけません。
大したことのないケガだと思ったものが、後から重症化したり、示談金(損害賠償金)で大きな損をしてしまう場合があるからです。
交通事故が起きた場合は必ず警察に通報しましょう。
◆警察官は交通事故の現場で実況見分調書や供述調書を作成しますが、その際は適当な発言をしてはいけません。
これらの書類は、後々の刑事裁判や示談交渉、民事訴訟の際に重要な資料となるので、被害者としては正しい主張をして、できるだけ正確な書類を作成してもらうべきです。
被害者にとって示談交渉は、肉体的にも精神的にも大きな負担になります。
また、被害者が直接加害者側の保険会社と交渉をしても、通常は低い金額を提示されてしまい、適切な損害賠償金を手にすることができない場合がほとんどです。
その際は、交通事故問題に精通した専門性の高い弁護士に相談することをお勧めします。
みらい総合法律事務所では、交通事故被害者の方の無料相談を行なっています。
まずは一度、相談をしていただければと思います。
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