交通事故で「警察に通報しない」「加害者とその場で示談する」のがダメな理由
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交通事故の被害にあってしまった場合、被害者の方は次のことに注意してください。
- 交通事故を警察に通報しないと、法律違反になります。
- 警察に通報しないと交通事故として処理されなくなってしまい、交通事故証明書や実況見分調書が作成されず、示談交渉でトラブルになってしまう可能性があります。
- 特に実況見分調書は、過失割合を決める際に重要な書類になるので、交通事故の被害にあった場合は必ず警察に通報することが必要です。
- 事故現場で加害者から、「この場で示談しましょう」と持ちかけられたとしても応じてはいけません。
- その場で示談をしてしまうと、相手の言い値(適正ではない低い金額)になったり、請求漏れが生じるなどして、被害者の方が大きな損失を被ってしまう可能性があります。
- 後から体の不調が出たとしても、示談が成立してしまうと、加害者等に治療費などを請求することができなくなってしまいます。
この記事では、「警察に通報しない」「加害者とその場で示談する」ことがダメな理由についてわかりやすく解説します。
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目次
交通事故発生から示談成立までの流れと各手続き
交通事故の被害にあった場合、まず何をやるべきなのか、その後はどのような流れで進んでいくのか。
全体の大まかな流れを知っておくと、スムーズな示談解決に役に立ちます。
<交通事故の全体の流れと各手続>
(1)交通事故が発生
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(2)事故の状況を確認し、加害者の身元・連絡先などを控えておく
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(3)警察へ通報
※現場検証が行なわれる。実況見分調書などの作成に協力する。
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(4)保険会社に連絡
※加害者側と被害者ご自身が契約している保険会社の双方に連絡する。
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(5)入院・通院をしてケガの治療を受ける
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(6)主治医から症状固定の診断
※治療が終了し、後遺症が残る。
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(7)自賠責後遺障害等級の認定を受ける
※等級に不服があれば異議申立をする。
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(8)加害者側の保険会社から損害賠償額(示談金額)が提示
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(9)加害者側の保険会社と示談交渉を開始
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(10)示談が成立し、損害賠償金(示談金)を受け取る
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(11)示談が決裂した場合は紛争処理機関や法的機関に相談
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(12)弁護士に依頼し、裁判での決着へ
加害者がその場で示談をしたがる理由
交通事故が発生した際、加害者はなぜ、「警察に通報しないでほしい」「この場で示談をしてほしい」と言うことがあるのでしょうか?
それには次のような理由が考えられます。
- ・免許の取り消しや停止処分を受けたくない
- ・自身が契約している損害保険の等級を下げたくない
- ・家族や勤務先などに知られたくない
人として、そうした理由があるのもわからないではない、という方もいらっしゃるでしょうが、被害者の方としては加害者からのそうした申し出には乗ってはいけません。
その理由をお話ししていきます。
交通事故を警察に通報するのは法的な義務である
ご存じない方もいらっしゃるかもしれませんが、そもそも交通事故が起きた場合、運転者等の加害者が警察に通報するのは法的な義務なのです。
②当該車両等の運転者(運転者が死亡し、または負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む)の警察官に、
・当該交通事故が発生した日時および場所
・当該交通事故における死傷者の数および負傷者の負傷の程度並びに損壊した物およびその損壊の程度
・当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置
を報告しなければならない。
(「道路交通法」第72条第1項より抜粋して再構成)
①は、「救護義務」ともいわれるもので、次のことを行なわないと、加害者には、10年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。
- ・負傷者の救護
- ・道路上の危険の除去
- ・警察への報告
なお、被害者の方が傷害(ケガ)を負ったり、亡くなってしまった場合は、「過失致死傷罪」に問われ、7年以下の懲役、または100万円以下の罰金となります。
さらに、「ひき逃げ事件」となると、これら2つの併合罪となり、15年以下の懲役となります。
②については、「報告義務違反」に問われる可能性があります。
罰則は、3か月以下の懲役、または5万円以下の罰金となります。
ですから、どのような事故でも警察に連絡し、人身事故として報告することが大切なのです。
警察に通報しないことで被害者が受ける損害とは?
実況見分調書や交通事故証明書が重要な理由
通報を受けると、警察官は現場検証を行ない、被害者と加害者双方に対して聞き取り調査を行ないます。
これらの結果をもとに作成されるのが「実況見分調書」です。
実況見分調書は、刑事事件の際に使われるもので、警察から検察に送られ、加害者の最終的な刑が決定されます。
また、被害者の方としては事故後、治療を行なったり、加害者側と慰謝料などの損害賠償金の示談交渉を行なう可能性もあるのですが、その際にも「実況見分調書」や「交通事故証明書」が必要になります。
事故直後は被害者の方は興奮状態のために体の痛みを感じないこともありますが、数日経過すると首や腰などさまざまな部位に痛みが出てくることがあります。
そこで病院に行く場合、これらの書類や証明書がないと加害者側の保険会社から治療費の支払いを受けることができなくなりますし、仮に後遺症が残った場合でも慰謝料や逸失利益などの損害賠償金を受け取ることができなくなってしまいます。
なぜなら、警察に通報しないと、その交通事故は存在しなかったことになってしまうからです。
口約束でも示談交渉は成立してしまう!?
契約を交わす際、通常は契約書が使われますが、じつは法的には口約束でも、後日その合意を証明できるのであれば、契約は有効になります。
ということは、「この場で示談にしてください」「いいですよ」といったように、交通事故後に被害者と加害者双方が警察に通報せず、その場で合意すれば示談は成立してしまうのです。
すると、どんな問題が起きてくる可能性があるでしょうか?
たとえば、あとから被害者の方に痛みや体の不調が出てきた場合、病院で治療を受けても、治療費はすべて被害者の方の自己負担になってしまいます。
また、後遺症が残ってしまっても、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料、逸失利益などさまざまな損害賠償金を加害者側に請求できなくなってしまう、ということになります。
つまり、被害者の方があとから主張しても加害者側は認めないので、本来の示談交渉ができなくなってしまうわけです。
ですから、交通事故で加害者から「警察を呼ばないでほしい」「この場で示談にしてほしい」と言われても、それに応じてはいけないのです。
交通事故の問題は弁護士に任せてしまってもいい
交通事故の示談交渉というのは利害が絡んでくるので、本来はとてもシビアなものであり、法的な知識が必要なために難しいものです。
ですから、交通事故の被害にあった場合は弁護士にすべて任せてしまうことも検討してみるのをおすすめします。
次の解説記事や動画で、弁護士に相談・依頼するメリットなどについてお話ししていますので、ぜひ参考になさってください。
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※本記事は、2021年5月時点での法律に基づいています。
代表社員 弁護士 谷原誠