交通事故で自賠責保険への被害者請求の手続と金額
*タップすると解説を見ることができます。
交通事故で後遺症が残ってしまったとき、多くの人が直面するのが「適切な補償を受けられるのか」という不安です。
通常、後遺障害の申請は加害者側の保険会社に任せる「事前認定」が一般的ですが、じつは被害者自身が直接自賠責保険へ請求する「被害者請求」という選択肢があります。
自分で手続きをするのは面倒と思う方も多いでしょう。
しかし、被害者請求は納得のいく後遺障害等級認定を得るための有力な手段であり、示談を待たずにお金を受け取れるという大きなメリットもあります。
本記事では、自賠責保険の支払い限度などの詳しい解説や、被害者請求の具体的な進め方から等級ごとにもらえる金額の目安、必要な書類一覧ともらい方など、専門知識がない方にもわかりやすく解説します。
目次
自賠責保険とは?任意保険との
違いは?
まず、改めて自賠責保険について解説します。
自賠責保険は、正式名称を「自動車損害賠償責任保険」といいます。
自動車やバイクを運行の用に供する際、法律によってすべての所有者などが強制的に加入しなければならない損害保険のため、強制保険と呼ばれる場合もあります。
自賠責保険は、人身事故の被害者を救済するために作られた保険であるため、自損事故によるケガや物損事故には適用されません。
保険金などが支払われるのは、人身事故で被害者の方がケガや死亡した場合のみです。
これに対して、任意保険はドライバーや自動車の所有者などが任意で加入する保険で、各損害保険会社がさまざまな内容の保険を販売しています。
自賠責保険の金額
自賠責保険から支払われる金額は法律によって決まっています。
ここでは、ご自身の状況に合わせて確認できるよう、以下の3つの区分に分けて詳しく解説します。
傷害部分
傷害部分として自賠責保険に請求できる金額としては、以下のものがあります。
- ・治療関係費
- ・文書料
- ・休業損害
- ・慰謝料
- ・その他の費用
治療関係費は、ケガの治療に関係する費用で、応急手当費、診察料、入院料、投薬料、手術料、処置料等、通院費、転院費、入院費又は退院費、看護料、諸雑費、柔道整復等の費用、義肢等の費用、診断書等の費用などです。
休業損害は、休業による収入の減少があった場合又は有給休暇を試用した場合に、1日について原則として6,100円です。
慰謝料は、1日につき4,300円です。
慰謝料がもらえる日数は、被害者の傷害の態様、実治療日数その他を勘案して、治療期間を限度とします。
後遺障害部分
後遺障害部分について、自賠責保険から支払われるものとしては、逸失利益と慰謝料等があります。
逸失利益
逸失利益(いっしつりえき)とは、交通事故に遭わなければ将来得られたはずの収入(利益)のことで、交通事故による死亡や後遺障害のために、働く能力が失われたり低下したりしたことに対する補償のことです。
逸失利益の算定方法は、以下の計算式を用います。
(後遺障害確定時の年齢における
就労可能年数のライプニッツ係数)
年収は、有職者の場合は、事故前1年間の収入額と後遺障害確定時の年齢に対応する年齢別平均給与額の年相当額のいずれか高い額を基準とします。
家事労働者は、全年齢平均給与額の年相当額を基準とします。
労働能力喪失率は、認定された後遺障害等級に応じて、以下のように定められています。
【労働能力喪失率】
| 等級 | 労働能力喪失率 |
|---|---|
| 1級 | 100% |
| 2級 | 100% |
| 3級 | 100% |
| 4級 | 92% |
| 5級 | 79% |
| 6級 | 67% |
| 7級 | 56% |
| 8級 | 45% |
| 9級 | 35 |
| 10級 | 27% |
| 11級 | 20% |
| 12級 | 14% |
| 13級 | 9% |
| 14級 | 5% |
ライプニッツ係数は、交通事故の損害賠償で将来得られるはずだった収入(逸失利益)を、中間利息を控除して現在の価値に換算するために使われる係数のことです。
本来なら数十年かけて手にするお金を今一括でもらうと、そのお金を運用して利息(中間利息)を得ることができてしまう可能性があるため、この「もらいすぎ」を調整するためにライプニッツ係数を用いて計算します。
「就労可能年数とライプニッツ係数表」国土交通省
慰謝料等
後遺障害等級慰謝料等の金額についても、認定された後遺障害等級によって定められています。
自賠責法別表第1
| 等級 | 保険金額 |
|---|---|
| 第1級 | 1,650万円 |
| 第2級 | 1,203万円 |
自賠責法別表第2
| 等級 | 保険金額 |
|---|---|
| 第1級 | 1,150万円 |
| 第2級 | 998万円 |
| 第3級 | 861万円 |
| 第4級 | 737万円 |
| 第5級 | 618万円 |
| 第6級 | 512万円 |
| 第7級 | 419万円 |
| 第8級 | 331万円 |
| 第9級 | 249万円 |
| 第10級 | 190万円 |
| 第11級 | 136万円 |
| 第12級 | 94万円 |
| 第13級 | 57万円 |
| 第14級 | 32万円 |
死亡事故
死亡事故の場合に、自賠責保険に請求できる金額は、(1)葬儀関係費用、(2)慰謝料、
(3)死亡逸失利益です。
葬儀関係費用
死亡事故の場合に、自賠責保険に請求できる葬儀関係費用は、100万円です。
慰謝料
死亡事故の場合に、自賠責保険に請求できる慰謝料は、被害者本人分とご遺族の慰謝料があり、被害者本人分は400万円です。
ご遺族の分としては、父母(養父母を含む)、配偶者、子供(養子、認知した子、胎児を含む)がもらうことができます。
ご遺族の人数によって以下のように異なってきます。
| 1人 | 550万円 |
|---|---|
| 2人 | 650万円 |
| 3人以上 | 750万円 |
被害者に被扶養者がいる場合は、これに200万円が加算されます。
死亡逸失利益
死亡逸失利益というのは、死亡事故に遭わなければ、将来得たであろう収入を損害とするものです。
計算式としては、以下です。
就労可能年数に対するライプニッツ係数
年間生活費は被扶養者がいる場合は年収の35%、いない場合は50%です。
ライプニッツ係数は、後遺障害の箇所で述べたとおりです。
自賠責保険の金額には支払限度が
ある
自賠責保険で補償される保険金額は法律によって、次のように支払限度が定められています。
| 被害者が死亡した場合 | 3,000万円 |
|---|---|
| 傷害による損害の場合 | 120万円 |
| 傷害により後遺障害が残り、介護が必要な場合 | 4,000万~3,000万円 |
| その他の後遺障害の場合 | 1級から14級の後遺障害等級に応じて3,000万円~75万円 |
- 被害者が死亡した場合
- 3,000万円
- 傷害による損害の場合
- 120万円
- 傷害により後遺障害が残り、介護が必要な場合
- 4,000万~3,000万円
- その他の後遺障害の場合
- 1級から14級の後遺障害等級に応じて
3,000万円~75万円
自賠責法別表第1
| 第1級 | 4,000万円 |
|---|---|
| 第2級 | 3,000万円 |
自賠責法別表第2
| 第1級 | 3,000万円 |
|---|---|
| 第2級 | 2,590万円 |
| 第3級 | 2,219万円 |
| 第4級 | 1,889万円 |
| 第5級 | 1,574万円 |
| 第6級 | 1,296万円 |
| 第7級 | 1,051万円 |
| 第8級 | 819万円 |
| 第9級 | 616万円 |
| 第10級 | 461万円 |
| 第11級 | 331万円 |
| 第12級 | 224万円 |
| 第13級 | 139万円 |
| 第14級 | 75万円 |
自賠責保険への被害者請求とは?
交通事故の被害者の方は、加害者側との示談が成立する前であっても、自賠責保険金を受け取ることができます。
そのためには、加害者が加入している自賠責保険の取り扱い会社に対して、直接「損害賠償請求額」の支払いを請求することになります。
法律上は、「損害賠償額の支払をなすべきことを請求」と言いますが、一般的には、これを「被害者請求」といいます。
これに対し、加害者がまず被害者の方に損害賠償金を支払い、その後にこの金額を保険金として請求する手続を加害者請求といいます。
そもそも、保険というものは契約者(加害者)が請求するものですから、法律上もこの加害者請求が基本の形とされています(自動車損害賠償保障法15条)。
しかし、加害者請求しか認められないとすると、加害者が支払いに応じない場合に被害者はいつまでも救済されません。
そこで、被害者の方を保護するため、契約当事者ではない被害者が直接、加害者の自賠責保険に損害賠償額を請求できるという被害者請求の手続を定めたのです(自動車損害賠償保障法16条)。
被害者請求には2種類の方法がある
ここでは、具体的な被害者請求の方法について解説します。
①仮渡金請求
被害者の方は、加害者から交通事故に基づく損害賠償金の支払いを受けられないなどの場合、当面の治療費や生活費のための費用として、一時金を請求することができます。
死亡事故の場合は290万円、それ以外の場合は傷害の程度に応じて、40万円・20万円・5万円に分かれています。
なお、請求は1度だけで、被害者の方のみが可能です。
②本請求
交通事故によるケガの治療が完了、あるいは後遺障害の症状が固定して全損害額が確定した段階で請求することができます。
請求できる金額には、前述したとおり上限があることに注意が必要です。
加害者が加入している自賠責保険会社に必要書類を提出して請求します。
被害者本人でなくても、被害者から委任を受けた者は請求できます。
なお、以前は内払金請求というものがありましたが、本請求と統一されたため現在はありません。
被害者請求で必要な書類一覧
自賠責保険への被害者請求は、自賠責保険会社に対して書類を提出することによって行います。
被害者請求に必要な主な書類には以下のものがあります。
各書類について、説明します。
保険金(共済金)・
損害賠償額・仮渡金支払請求書
保険金支払請求書は、加害者の自賠責保険会社から書式をもらって、事故年月日、被害者名、加害者名、連絡先、保険金の振込口座など必要事項を記入します。
加害者の自賠責保険会社は、交通事故証明書に記載があります。
交通事故証明書には、自賠責保険会社名のみで、保険会社の連絡先などの記載はありませんが、インターネットで保険会社のホームページをみて電話をかけ、交通事故の被害者で、被害者請求をしたいと言えば、担当を教えてくれたり、必要書類を郵送してくれたりと対応してくれます。
交通事故証明書(人身事故)
交通事故証明書は、各都道府県にある自動車運転安全センターに申請します。
警察署やセンターに備え付けてある交付申請書に必要事項を記入して提出するか、センターのホームページからインターネットで申請することもできます。
交付手数料は1通につき800円です。
交通事故証明書は、事故を警察に届けていないと発行できません。
あるいは、被害者が自分で申請しなくても、既に加害者の任意保険会社が入手している場合もありますので、その場合には保険会社にコピーを送ってもらうように頼めば大丈夫です。
なお、自賠責保険は、人身事故の場合のみ請求できますので、物損事故の場合は適用されません。
事故が比較的軽微で、当初物損事故の扱いをされたが、後に痛みなどがでてきて通院した場合は、人身事故に訂正してもらうように警察に届け出るか、「人身事故証明書入手不能理由書」という書面を記入して提出し、事故が原因で治療したことがわかる診断書も一緒に提出していれば、通常は問題にはなりません。
事故発生状況報告書
事故発生状況報告書は、事故の原因、状況、現場の見取り図などを記載したものです。
自賠責保険会社から送られてくる書式に手書きで記入したものでもいいですし、自分でパソコンなどで作成したものでもかまいません。
そこまで正確なものでなくても、通常は大丈夫です。
医師の診断書または死体検案書
(死亡診断書)
交通事故が原因で治療を行ったことがわかる診断書を、治療を受けた病院で出してもらいます。
死亡事故の場合には、死体検案書になります。
診療報酬明細書
診断書と同様、治療を受けた病院で出してもらうものです。
レセプトともいいます。
傷病名、治療内容、通院日、入院日、診療単価、支払者などが記載されています。
通院交通費明細書
通院に交通費がかかった場合に提出します。
電車、自動車、タクシーなどを使った場合です。
なお、タクシーを利用する場合は、医師からタクシー通院をすすめられた、ケガの状態や病院と自宅との位置関係から電車などの移動は難しい場合など、やむを得ない事情が必要です。
領収書も提出する必要があります。
付添看護自認書または
看護料領収書
幼児や高齢者の場合や、傷害が重傷である場合など、通院や入院の際の付添や看護の必要があった場合です。
休業損害証明書または
確定申告書(控)など
治療のため休業した場合は、給与所得者は雇い主に休業損害証明書を書いてもらいます。
自営業者の場合は、税務署や市区町村が発行する納税証明書、課税証明書、あるいは事故前に提出した確定申告書控えが必用です。
請求者の印鑑証明
自賠責保険の受領者が本人であることを証明するために必要です。
印鑑登録している市区町村から取り寄せます。
委任状および委任者の印鑑証明
(第三者に委任する場合)
自賠責保険の請求を第三者に委任する場合には、被害者から委任者に保険金の請求及び受領を委任する旨の委任状と、委任者の印鑑証明が必要です。
戸籍謄本
死亡事故の場合、被害者と保険金の請求権者との関係を確認するために必要です。
本籍のある市区町村から取り寄せます。
後遺障害診断書
後遺障害が残った場合、病院で後遺障害診断書を作成してもらいます。
後遺障害診断書や診断書に、傷病名や自覚症状、後遺障害の程度、レントゲンやMRIの画像の診断結果、検査結果などの他覚所見がきちんと書かれていないと、後遺障害等級が認められず後遺障害に関する保険金がでない場合がありますので、注意が必要です。
レントゲン写真等
レントゲンやMRIなどを撮影した場合には必要です。
特に、後遺障害の請求をする場合、傷害の程度を証明するためには重要です。
被害者請求で必要な書類の
もらい方
以上のうち、病院で作成してもらうものや、戸籍や印鑑証明など自分で取り寄せる書類を除けば、書類の書式は保険会社からもらうことができます。
加害者の自賠責保険会社に、被害者請求の書類一式をくださいと伝えれば大丈夫です。
また、もし書類が不完全だったとしても、保険会社から連絡がきて、言われた書類を後から提出すれば問題ありません。
自賠責保険金の減額・免責
被害者請求は、適切な賠償を受けるための強力な手段ですが、請求すれば必ず満額が支払われるわけではありません。
自賠責保険には、事故の状況や過失の割合に応じて支払額が制限される「減額」や、支払いが受けられなくなる「免責」というルールが存在します。
ここでは、どのようなケースで支給額に影響が出るのか、その具体的な基準について解説します。
重過失減額
通常の示談交渉では、被害者側にも過失がある場合には、その過失割合に応じて示談金(賠償金)から差し引かれます。
これを「過失相殺」といいます。
たとえば、過失割合が、加害者90%、被害者10%で、損害額が1,000万円だとします。
そうすると、被害者の過失割合分が差し引かれ、示談金額は900万円となります。
しかし、自賠責保険は、被害者保護の観点から、上記のような過失相殺は行われず、被害者の過失割合が70%以上の場合に限って減額されることとなっています。
逆に、被害者の過失が7割未満であれば、一切減額されません。
具体的には、以下のとおりです。
【傷害部分】
| 被害者の過失割合 | 減額内容 |
|---|---|
| 7割以上10割未満 | 2割減額 |
【後遺障害部分】
| 被害者の過失割合 | 減額内容 |
|---|---|
| 7割以上8割未満 | 2割減額 |
| 8割以上9割未満 | 3割減額 |
| 9割以上10割未満 | 5割減額 |
因果関係不明の減額
交通事故による受傷と死亡または後遺障害との間の因果関係の有無の判断が困難な場合は、死亡による損害と後遺障害による損害は、以下のようになります。
自賠責保険の免責事由
実は、自賠責保険金が支払われない免責事由があります。
一つ目は、保険契約者又は被保険者の悪意による損害です。
悪意というのは、確定的故意がある場合であり、損害の発生を意欲して事故を起こしたような場合が該当します。
もう一つは、重複契約の場合です。
重複契約というのは、1台の自動車に2つ以上の自賠責保険契約が締結されている場合です。
この場合には、1つの契約以外の契約については、免責とされ、自賠責保険金は支払われません。
被害者請求でお困りの場合は
弁護士にご相談ください
今回解説したように、被害者請求には「納得いく証拠を出せる」「示談前にお金を受け取れる」といった、事前認定にはない大きなメリットがあります。
一方で、過失割合に応じた「重過失減額」などのルールを正しく理解しておくことも欠かせません。
もし、「書類の書き方がわからない」「自分の過失割合でいくらもらえるか不安」という方は、一度交通事故に強い弁護士へ相談してみることをおすすめします。プロの視点が入ることで、手続きの負担を減らし、最大限の補償を目指すことが可能になります。
みらい総合法律事務所は無料相談を行なっています。ぜひご利用ください。
↓↓
弁護士へのご相談の流れ
↑↑
代表社員 弁護士 谷原誠


















