休業損害証明書とは?書き方や記入例を解説
交通事故の怪我が原因で収入が減った場合、保険会社等に対して休業損害の補償を求めることができます。
会社員などが補償を受けるためには休業損害証明書が必要となりますが、記載内容に誤りがあると、補償額が減ってしまうので気を付けてください。
本記事では、休業損害証明書の入手方法と記載のしかた、休業損害の補償を請求する際に注意すべきポイントを解説します。
目次
休業損害証明書とは?
休業損害証明書は、被害者の仕事内容等によって必要になるケースと、不要なケースがあります。
休業損害証明書が必要になるのは給与所得者
会社員など、勤務先から給与を得ている人(給与所得者)は、保険会社に休業損害を請求する際、休業損害証明書を提出することになります。
休業損害証明書は、交通事故が原因で仕事を休んだことで生じた損害を証明するための書類をいい、証明書では交通事故が原因で休業した状況や収入状況等を記載します。
証明書は被害者の勤務先が作成することになるため、加害者の保険会社から送付されてきた用紙は勤務先の総務課等に渡してください。
また、休業損害証明書の用紙は被害者が入手することもできますので、一定期間を過ぎても保険会社から用紙が送られてこない場合には、被害者自身が休業補償証明書を用意してください。
個人事業主・自営業者は休業損害証明書は不要
個人事業主や自営業者は、確定申告書の控えなどで交通事故による休業状況や、減少した収入金額等を証明します。
休業損害証明書は、勤務先が被害者の収入や仕事を休んだ日数などを証明するための書類ですので、雇用主がいない個人事業主等は休業損害証明書を用意する必要はありません。
専業主婦が休業損害証明書を必要とするケース
休業損害は会社員だけでなく、アルバイトやパートに対しても認められますので、専業主婦(主夫)がパート等で給与所得を得ている場合、休業損害による補償を求めることができます。
アルバイトやパートも給与所得者ですので、休業損害補償を求める際は勤務先に依頼し、休業損害証明書を作成してもらう必要があります。
パート等で収入を得ていない専業主婦は収入の減少はありませんが、家事や育児といった外注した際に報酬が生じる労働をしている方は、休業損害を請求することが可能です。
パート等をしていないので休業損害証明書の提出は不要ですが、家事・育児ができないことによる損害を被ったことを証明する書類として、住民票など同居人や家族構成が確認できる書類を提出することになります。
休業損害証明書の書き方および記入例
休業損害証明書は、各保険会社で用意しますが、記載する内容は基本的に同じです。
ここから書き方をわかりやすく解説します。
例として三井住友海上の休業損害証明書も適宜ご参照ください。
職種・役職、氏名、採用日
「職種・役職」の欄には被害者の役職等(例:事務職など)を記載し、氏名と採用日も漏れなく記載してください。
休業期間の内訳
休業期間における休業開始日と休業終了日および、休業期間の内訳として休暇等の状況も記載します。
保険会社によっては遅刻と早退は別で記載するケースもあるため、休業期間に遅刻と早退が含まれるか確認してください。
- 欠勤
- 半日欠勤
- 年次有給休暇
- 半日有給休暇
- 時間有給休暇・遅刻・早退
※年次有給休暇は労働基準法第39条に定められる、使途を限定しない年次有給休暇をいいます。
具体的な休暇状況
休業損害証明書では、交通事故による休業時期を具体的に明記する必要があるため、休業期間中の休暇等の状況を証明書の表に記入します。
欠勤など、休んだ内容によって記載する印(〇や◎など)が異なりますので、記載漏れや記入誤りには注意してください。
休業中の給与
休業期間中(有給休暇を除く)の給与の支払い状況を記載します。
給与の一部支給または一部減額に該当する場合は、その金額および計算根拠も記載してください。
- 全部支給した
- 全部支給しなかった
- 一部支給
- 一部減額
交通事故による休業前直近3か月の月例給与
休業補償を受けるために、交通事故による休業がない直近3か月の月例給与の明細を記載します。
給与状況を記載する際は、給与の毎月締切日と所定勤務時間(休憩時間を除いた1日実働を含む)、給与計算基礎(月給・日給・時給)も記載することになります。
- 稼働日数
- 支給金額(本給・付加給)
- 社会保険料
- 所得税
- 差引支給額
休業補償給付・傷病手当金等の有無
社会保険(労災保険、健康保険等で、公務員共済組合を含む)からの休業補償給付や、傷病手当金の給付の有無についても記載を要します。
給付を受けている場合は名称および電話番号を記載し、給付の手続き中や給付を受けていないときは、所定の欄に〇を付けてください。
休業損害証明書を記載する際の注意点
休業損害証明書は、補償額を算出する際の基礎となる書類です。
記載誤りがあると補償額が減ってしまう可能性もあるので、下記の事項に注意してください。
- 休業開始日と休業終了日は正しいか
- 欠勤・有給、遅刻、早退の記載が正確であるか
- 仕事を休んだ日に応じた欠勤等の記載に誤りはないか
- 記載内容と勤務先の勤怠情報が一致しているか
- 休んだ日の給与は実際に支給した額を記載しているか
休業損害証明書のダウンロード方法
休業損害証明書は加害者の保険会社から送付されますが、保険会社から休業損害証明書が届かないときは、保険会社のホームページからダウンロードしてください。
休業損害証明書の記載事項は、どの保険会社も基本的に同じです。
しかし、保険会社によっては用紙のフォーマットが異なる場合や、追加で記載する事項が含まれているケースもあるため、用紙は保険会社のホームページにあるものを使用してください。
休業損害の請求で必要なその他の書類
給与所得者は、休業による損害額を計算する際の資料として、交通事故が発生した前年の源泉徴収票が必要になります。
源泉徴収票は勤務先から得た1年間の収入金額等が記載された書類であり、該当年分の翌年1月頃に勤務先から交付されます。
源泉徴収票を紛失した場合や、他の用途で源泉徴収票を使用して手元にないときは、勤務先の総務課・経理担当等に再交付を依頼するか、役所で課税証明書を取得します。
個人事業主が休業損害を請求する場合には、交通事故が発生した前年の確定申告書の控えを用意します。
専業主婦については、同居家族の人数等を確認する書類として、役所で住民票を取得してください。
休業損害証明書を自分で書いてしまった場合は?
休業損害証明書は、会社が被害者の勤務状況や休業期間等を示すものですので、被害者が勤務している会社が必要事項を記載することになります。
本記事では休業損害証明書の記載方法について解説していますが、休業損害証明書を被害者が作成することは認められていません。
被害者自身が休業損害証明書を作成してしまうと、記載内容の真偽が不確かになるだけでなく、示談交渉が難航することも予想されますので、保険会社から送付された休業損害証明書は勤務先に渡して記載を求めてください。
休業損害証明書を会社が書いてくれない場合の対処法
万が一、勤務先から休業損害証明書の記載を断られてしまった場合、休業損害証明書以外の書類等で休業による損害を証明することも選択肢となります。
交通事故の前年の収入状況は源泉徴収票や課税証明書で確認できますし、休業期間における減収は勤怠表(勤怠管理表)や給与明細で確認することも可能です。
ただし、休業損害証明書を提出できないことが原因で示談交渉が滞ることも考えられますので、勤務先が休業損害証明書の記載を断った際は、最初に弁護士を通じて作成を求めることが望ましいです。
休業損害補償の請求手続きの流れ
勤務先から作成した休業損害証明書を受け取りましたら、保険会社に対して休業損害の補償を求める手続きを行います。
必要書類を揃えて保険会社に提出する
給与所得者が休業損害の補償を請求する場合、休業損害証明書と源泉徴収票を用意してください。
源泉徴収票は交通事故が発生した前年分のものとなるため、年末に交通事故の被害に遭ったときは、添付する源泉徴収票の年分誤りに注意が必要です。
個人事業主が休業損害を請求する際は確定申告書の控えを、専業主婦については同居家族の記載がある住民票を用意します。
休業損害証明書等の提出先は、加害者が加入している保険会社です。
加害者が任意保険に加入している場合には任意保険会社となりますが、任意保険未加入のケースでは、自賠責保険会社に対して書類を提出することになります。
保険会社との示談交渉
休業損害証明書等を提出した後は、加害者の保険会社と示談交渉を行うことになりますが、被害者本人が示談交渉を行うことも可能です。
保険会社は提出を受けた休業損害証明書等を参考に休業損害に対する補償額を計算し、示談交渉の場で提示してきます。
また、交通事故による損害は休業損害以外にもありますので、示談交渉の場で休業損害を含めた損害賠償金の額を決めます。
提示額に納得できる場合は示談を成立させ、補償額を受け取ることになりますが、条件面で納得できないときは交渉を継続します。
休業損害の補償を満額受けたい場合、弁護士を代理人として立て、示談交渉することが望ましいです。
交通事故で心身を負傷した状態で示談交渉の場に臨むのは大変ですし、交渉するのに疲弊したことで、補償内容を妥協してしまう可能性もあります。
保険会社は事故に関する交渉を幾度となく行っているプロですので、交渉の経験が少ない被害者が交渉を有利に進めるのは難しいです。
交通事故に関する交渉・手続きは、後遺障害に対する補償や心身に苦痛を受けたことに対する慰謝料など多岐にわたるため、弁護士に一任することも検討してください。
示談成立後は指定された口座に補償額が振り込まれる
示談が成立しましたら示談書を作成し、合意した休業損害に対する補償額が指定口座に振り込まれます。
任意保険会社との示談が成立した後に補償金が振り込まれるまで日数の目安は、示談成立してから1週間から2週間程度です。
自賠責保険会社については、提出書類に不備がなければ、手続きをしてから1週間から2週間程度で振り込まれます。
まとめ
休業損害証明書は被害者の勤務先が記載する書類ですので、被害者本人が証明書を作成することがないよう注意してください。
勤務先の会社においては、従業員等から休業損害証明書の作成依頼があった場合、適切に作成することが求められます。
証明書の記載内容に不備が原因で補償額が減少すれば、交通事故の被害者である従業員との間でトラブルになることも考えられるので気を付けてください。
交通事故に関する手続きは、休業補償以外にもありますので、一連の手続きを弁護士に任せるのも選択肢です。
交通事故専門の弁護士は手続きに慣れていますし、示談交渉もスムーズに行えますので、円滑に交通事故の後処理を終わらせたい方は、交通事故専門の弁護士を代理人として選んでください。
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代表社員 弁護士 谷原誠