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自営業者・個人事業主の慰謝料・逸失利益・休業損害の計算方法

最終更新日 2024年 03月06日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

【自営業者・個人事業主】の慰謝料・逸失利益・休業損害の計算方法

目次


交通事故で傷害(ケガ)を負った場合、被害者の方は損害賠償金の請求をすることができます。

通常、加害者が任意保険に加入していれば、相手はその保険会社です。

損害賠償金の中にはさまざまな項目があり、その中でも慰謝料・逸失利益・休業損害等は金額が大きくなることもあり、加害者側との示談交渉や裁判で争点になることが多いともいえます。

また、これらの金額は被害者の方の職業や年齢などによって変わってきます。

そこで本記事では、自営業者や個人事業主の方が交通事故の被害にあった場合の慰謝料・逸失利益・休業損害の計算方法などについてお話ししていきます。

自営業者・個人事業主が交通事故で請求できる損害項目とは?

(1)入通院して治療をした場合の損害項目例

交通事故で傷害(ケガ)を負い、入院・通院して治療を受けた場合に請求できる損害賠償項目には次のものなどがあります。

「治療費」

必要かつ相当な範囲での実費金額(特別個室、過剰診療等の費用は補償されない可能性がある)

「付添看護費」

看護師・介護福祉士等:実費全額

近親者:入院の場合は1日5500円~7000円
    通院の場合は1日3000円~4000円(幼児・高齢者・身体障害者等で必要のある場合)

看護師・介護福祉士等:実費全額

近親者:
入院の場合は1日5500円~7000円
通院の場合は1日3000円~4000円
(幼児・高齢者・身体障害者等で必要のある場合)

「入院雑費」

1日あたり、1400円~1600円

「交通費」

原則として、本人分の実費

「装具・器具購入費」

車いす・義足・義眼・補聴器・義歯・入れ歯・
かつらなどの購入費・処置費等の相当額

「子供の保育費・学習費など」

実費相当額

「弁護士費用」

訴訟になった場合、裁判所により認容された金額の1割程度

「休業損害」

ケガによって休業したことによる現実の収入減分(事故前の収入を基礎とする)

「入通院慰謝料(傷害慰謝料)」

入通院をして治療をした場合に被った精神的苦痛や損害に対する補償

(2)後遺症が残った場合の損害項目例

ケガの治療をしたものの完治せず、症状固定により後遺症が残ってしまった場合、入院慰謝料と休業損害は受け取ることができなくなります。

その代わり、ご自身の後遺障害等級が認定されれば、新たに「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」などを受け取ることができます。

「将来介護費」

看護師・介護福祉士等:実費全額

近親者:常時介護が必要な場合は1日8000円(平均寿命までの期間について、中間利息を控除した金額)

「家屋・自動車などの改造費」

自動車・家の出入り口・風呂場・トイレなどの改造費や、介護用ベッドなどの購入費の実費相当額

「逸失利益」

事故前の収入額に、労働能力喪失率、就労可能年数、中間利息の控除分をかけた金額

「後遺障害慰謝料(後遺症慰謝料)」

後遺障害が残ったことに対して支払われる補償

よくわかる動画解説はこちら

休業損害と逸失利益は何が違うのか?


前述したように、交通事故のケガによって失われた収入の補償には休業損害と逸失利益があることがわかりました。

では具体的には、この2つは何が、どう違うのでしょうか?

(1)自営業者・個人事業主の休業損害とは?

ケガの治療をして完治するか、または症状固定(これ以上の治療をしても完治しない状態)の診断を受けて後遺症が残るまでの間に被害者の方に生じた収入の減少分が休業損害になります。

<休業損害の計算式>
基礎収入(日額) × 休業日数

※給与所得者の場合の日額 = 3か月の給与額の合計額 ÷ 90日

<認められる期間と金額>
交通事故の前年の確定申告所得を基礎として、ケガにより就労できなかった期間を算出します。

但し、所得全額ではなく、「企業主が生命もしくは身体を侵害されたため、その企業に従事できなくなったことによって生じる財産上の損害額は、原則として、企業収益中に占める企業主の労務その他企業に対する個人的寄与に基づく収益部分の割合によって算定すべきである」(最高裁昭和43年8月2日判決)とされています。

また、休業中の固定費(家賃や従業員給料など)も休業損害として認められます。

<認められる条件>
チェックボックス休業損害は実損害のため、収入の減収がない場合は認められません。

チェックボックス自営業者や自由業者などの事業所得者は、給与所得者のように休業損害について算定しにくい場合があるため、通常は事故の前年の確定申告書に記載してある所得額を基準とします。

チェックボックスただし、実際の所得額よりも低く申告しているケースでは、自分の行為に自己矛盾があるため、容易には認められません。

申告額以上の収入があったことを帳簿や請求書、領収書等の資料から確実に証明できたなら、申告額を超える収入額が認められる可能性もあります。

チェックボックスしかし、税対策などのために収入を過少に申告しているような場合、裁判所としては「同じ国の機関である税務署には過少に申告しておきながら裁判所には多く申告し、損害金だけは実際の収入額に応じて受け取ることができる」ということは安易に認めるわけにはいかないため、証明するハードルはかなり高くなります。

そのため、こうしたケースでは修正申告を行なって、きちんと税金を納めることを検討する必要があります。

チェックボックス確定申告をしていなくても相当の収入があったと認められる場合は、賃金センサスの平均賃金を基礎として休業損害を算定することが認められています。

※賃金センサス:厚生労働省が毎年実施している「賃金構造基本統計調査」の結果をまとめたもの。職業別・年齢別などによって労働者の平均賃金がわかるようになっている。

違法な個人事業の場合でも、原則として、休業損害が認められるのが原則ですが、(最高裁昭和39年10月29日判決)無免許営業に関しては、その確実性、永続性において不安定であるとして、収益額を控え目に計算した裁判例もあります(東京地裁昭和56年3月30日判決)。

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(2)後遺障害逸失利益とは?

交通事故で負った後遺症のために以前のように働くことができなくなり、将来的に得ることができなくなってしまった収入分を後遺障害逸失利益といいます。

<後遺障害逸失利益の計算式>

基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数=後遺障害逸失利益

チェックボックス主治医から症状固定の診断を受けて後遺症が残った場合は休業損害を受けられなくなりますが、その代わりにご自身の後遺障害等級が認定されると後遺障害逸失利益を受けることができます。

【参考情報】
「自賠責後遺障害等級表」(国土交通省)

チェックボックス実際の交通事故の損害賠償実務では、上記の算定式を基本としながら、さまざまな要因、たとえば①労働能力の低下・喪失の程度、②収入の変化、③将来の昇進、転職、失業などの可能性、④日常生活でどのような不便があるのかなどを考慮しながら算定します。

チェックボックス被害者の方が亡くなった場合の逸失利益は、死亡逸失利益といいます。

実際に自営業者・個人事業主の後遺障害逸失利益を計算する


ここでは、上記の計算式を使って実際に後遺障害逸失利益を計算してみます。

(1)基礎収入

チェックボックス原則として、被害者の方が事故前に得ていた収入額を基礎とします。

ただし、将来的に現実収入額以上の収入を得られる立証があれば、その金額が基礎収入となります。

チェックボックス現実の収入額が賃金センサスの平均賃金を下回っていても、将来、平均賃金程度の収入を得られる蓋然性があれば、平均賃金を基礎収入として算定します。

※蓋然性:ある事柄が起こる確実性、真実として認められる確実性の度合いのこと。

(2)労働能力喪失率

チェックボックス後遺障害等級ごとに決められたパーセンテージがあるため、これを基本として用います。

ただし実際の算定では、①被害者の方の職業、②年齢、③性別、④後遺症の部位と程度、⑤事故前後の労働状況などから総合的に判断していきます。

<労働能力喪失率>

等級 労働能力喪失率
1級 100%
2級 100%
3級 100%
4級 92%
5級 79%
6級 67%
7級 56%
8級 45%
9級 35%
10級 27%
11級 20%
12級 14%
13級 9%
14級 5%

【出典】「労働能力喪失率表」(厚生労働省)

(3)労働能力喪失期間

チェックボックス被害者の方が、あと何年間働くことができたのかを仮定するものです。

原則として67歳までとされますが、未成年者や高齢者の場合は修正が加えられる場合があります。

チェックボックス労働能力喪失期間の始期は症状固定日です。

ただし、被害者の方の職種や地位、能力、健康状態などによっては違う判断をされる場合もあります。

チェックボックス症状固定時の年齢が67歳以上の場合は、原則として労働能力喪失期間を簡易生命表の平均予命の2分の1とします。

チェックボックス症状固定時から67歳までの年数が簡易生命表の平均余命の2分の1より短くなる場合は、原則として平均余命の2分の1とします。

【参考情報】(厚生労働省)
令和2年簡易生命表(男)
令和2年簡易生命表(女)

(4)ライプニッツ係数

チェックボックス逸失利益は、将来に受け取るはずだった金額(収入)を前倒しで受け取るものです。

現在と将来ではお金の価値に変動がありますが、将来的な金利分を差し引かずに、そのまま支払ってしまうと保険会社は損をします。

そこで、その差を調整するために用いるのがライプニッツ係数です。

チェックボックスライプニッツ係数の算出は複雑で難しいため、あらかじめ算出されている「ライプニッツ係数表」を使用します。

【参考】就労可能年数とライプニッツ係数表(国土交通省)

チェックボックス通常、基準時は症状固定時とします。

チェックボックス2020年4月1日以降に起きた交通事故の場合は、ライプニッツ係数の法定利率は3%で計算します。(以降は3年ごとに見直されるようになっています)

チェックボックス原則として、後遺症がある場合は生活費を控除しませんが、死亡事故の場合は控除します。

(5)自営業者・個人事業主の逸失利益の計算と注意ポイント

チェックボックス自営業者や自由業者、農林水産業などの個人事業主は申告所得を参考にします。

ただし、申告額と実収入額が異なる場合は、立証があれば実収入額を基礎とします。

チェックボックス所得が、資本利得や家族の労働などのトータルなものの場合は、所得に対する本人の寄与部分の割合によって逸失利益を算定します。

チェックボックス現実の収入が平均賃金以下の場合、平均賃金が得られる蓋然性があれば、男女別の賃金センサスを用います。

なお、現実の収入の証明が困難な時は各種統計資料によって算定する場合もあります。

(6)自営業者・個人事業主の後遺障害逸失利益の計算例

ここでは次の条件で自営業者・個人事業主の方が交通事故で後遺障害を負った場合の逸失利益を計算してみます。

・60歳(男性)
・基礎収入:20,000,000円(確定申告済の金額)
・後遺障害等級:9級11号(胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの)
・労働能力喪失率:35%(後遺障害等級9級)
・ライプニッツ係数:9.954(60歳での就労可能期間12年の数値を用いる)

「計算式」
20,000,000円 × 0.35 ×
9.954 = 69,678,000円

後遺障害逸失利益は、6967万8000円

(7)死亡逸失利益を計算してみる

死亡逸失利益は、次の計算式で算出します。

<死亡逸失利益の計算式>
(基礎年収額)×(就労可能年数に対するライプニッツ係数)×(1-生活費控除率)
= (死亡逸失利益)

※生活費控除率は、被害者の方の家庭での立場や状況によって、概ねの相場の割合が決まっています。

<生活費控除率の目安>

被害者が一家の支柱で被扶養者が1人の場合 40%
被害者が一家の支柱で被扶養者が2人以上の場合 30%
被害者が女性(主婦、独身、幼児等含む)の場合 30%
被害者が男性(独身、幼児等含む)の場合 50%
被害者が一家の支柱で被扶養者が1人の場合 40%
被害者が一家の支柱で被扶養者が2人以上の場合 30%
被害者が女性(主婦、独身、幼児等含む)の場合 30%
被害者が男性(独身、幼児等含む)の場合 50%

<死亡逸失利益の計算例>

ここでは、次の条件で計算をしてみます

・60歳(男性)
・基礎収入:20,000,000円(確定申告済の金額)
・労働能力喪失率:100%
・ライプニッツ係数:9.954(60歳での就労可能期間12年の数値を用いる)
・生活費控除率:30%

「計算式」
20,000,000円 × 9.954 ×
(1-0.3) = 139,356,000円

死亡逸失利益は、1億3935万6000円

こちらの記事でも詳しく解説しています

交通事故被害で請求できる慰謝料の計算方法

被害者が自営業者・個人事業主の場合の慰謝料の注意ポイント

慰謝料等の計算では、①自賠責基準、②任意保険基準、③弁護士(裁判)基準の3つが使われます。

加害者が任意保険に加入しているなら、示談交渉の相手はその保険会社です。

ここで気をつけなければいけないのは、保険会社はもっとも安い自賠責基準の金額を提示してくる場合がほとんどだということです。

しかし本来、被害者やご遺族が受け取るべきなのは、もっとも高額になる弁護士(裁判)基準で計算した金額です。

ですから、被害者やご遺族としては、弁護士(裁判)基準による慰謝料を主張していくことが大切なのです。

ケガが完治した場合の慰謝料の計算例

①入通院慰謝料(自賠責基準の場合)

自賠責基準での入通院慰謝料は、1日あたりの金額が定められているため、慰謝料の対象となる入通院が何日間になったのかによって金額が決まります。

<入通院慰謝料の計算式>
4300円(1日あたり) × 入通院日数
= 入通院慰謝料

チェックボックス自賠責基準により、1日あたりの金額は4300円と定められています。

※この金額は、改正民法(2020年4月1日施行)により改定されたもので、2020年3月31日以前に発生した交通事故の場合は4200円(1日あたり)で計算します。

チェックボックス入通院をして治療した場合の対象日数は、次のどちらか短いほうが採用されることに注意が必要です。
・「実際の治療期間」
・「実際に治療した日数×2」

たとえば、むちうちの軽症で、入院せず、治療期間が2か月(60日)で、3日に1回(計20日間)通院したとすると、実際の治療期間で計算すると、4300円×60日=258,00円になります。

しかし、実際に治療した日数×2で計算すると、4300円×(20日×2)=172,000円となるので、入通院慰謝料は172,000円が採用される、ということになります。

チェックボックス自賠責保険金には上限があり、後遺症のないケガの場合は120万円が限度額です。

現実には、治療費や入通院慰謝料などで上限を超えてしまうケースもありますが、その場合、120万円を超えた分については加害者側の任意保険会社に請求して、交渉をしていくことになります。

②入通院慰謝料(弁護士(裁判)基準の場合)

チェックボックス弁護士(裁判)基準での入通院慰謝料は計算が複雑なため、『損害賠償額算定基準』(日弁連交通事故相談センター東京支部刊)に記載されている算定表を使います。

チェックボックス算定表には、ケガの程度によって「軽傷用」と「重傷用」の2種類があります。

「弁護士(裁判)基準による入通院慰謝料(むち打ちなど軽傷)の算定表」

「弁護士(裁判)基準による入通院慰謝料(重傷)の算定表」

チェックボックスたとえば前述と同条件の、入院は0、治療期間が2か月(60日)で、3日に1回(計20日間)通院した場合、軽傷用の「入院0か月」と「通院2か月」が交わったところの「36万円」が慰謝料額になります。

弁護士(裁判)基準による慰謝料は、自賠責基準の2倍以上の金額になるという事実がおわかりいただけるでしょう。

後遺障害が残った場合の慰謝料の計算方法

後遺症が残った場合、申請するとその程度によって1級から14級までのいずれかの後遺障害等級が認定されます。

後遺障害等級が何級かによって慰謝料額は変わるのですが、そもそも後遺症による精神的苦痛の程度は事故ごと、被害者ごとで違います。

となると、各事案によって判断するのが難しく、膨大な時間がかかってしまうため、被害者の方に損害賠償金が支払われるまで、かなりの時間がかかってしまうという問題も起きてきます。

そうした事態を避けるため、次の表のように概ねの相場金額が設定されています。

<自賠責基準・弁護士(裁判)基準による後遺障害慰謝料の金額表>

自賠責基準による後遺障害慰謝料の金額表

たとえば、9級の場合、自賠責基準と弁護士(裁判)基準では、被害者の方が受け取る金額は2.8倍も違ってきます。

慰謝料などの示談は、弁護士(裁判)基準で解決することが重要な理由をおわかりいただけると思います。

死亡慰謝料の金額について

①自賠責基準による死亡慰謝料の相場金額

自賠責保険では、死亡慰謝料は被害者本人の死亡慰謝料と、ご家族などの近親者慰謝料の合算として扱われます。

チェックボックス被害者本人の死亡慰謝料:400万円(一律)

チェックボックス近親者慰謝料:配偶者・父母(養父母も含む)・子(養子・認知した子・胎児も含む)の人数によって金額が変わります。
・1人の場合/550万円
・2人の場合/650万円
・3人の場合/750万円
※被扶養者の場合は上記の金額に200万円が上乗せされます。

②弁護士(裁判)基準による死亡慰謝料の相場金額

被害者の方が、家庭でどのような立場だったかといった状況の違いなどによって、次のように相場金額が設定されています。

被害者が一家の支柱の場合 2800万円
被害者が母親・配偶者の場合 2500万円
被害者がその他(独身者・幼児・高齢者など)の場合 2000万~2500万円
被害者が一家の支柱の場合
2800万円
被害者が母親・配偶者の場合
2500万円
被害者がその他(独身者・幼児・高齢者など)の場合
2000万~2500万円

※ただし、事故の状況、加害者の悪質性などによって金額が変わる場合があります。

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ここまで、自営業者の方が交通事故の被害にあった場合の慰謝料や逸失利益などの計算についてお話ししてきましたが、正確で適切な金額を算出して加害者側の保険会社に認めさせることは難しいと感じた方もいらっしゃると思います。

示談交渉がなかなか進まない、損害賠償金額に不満があるような場合は一度、交通事故に強い弁護士に相談してみることをおすすめします。

【動画解説】自営業者・個人事業主の慰謝料・逸失利益・休業損害

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