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【主婦(専業・兼業)】の慰謝料・逸失利益・休業損害の計算方法

最終更新日 2021年 11月22日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

交通事故で主婦の慰謝料・逸失利益・休業損害の計算方法


【交通事故】主婦の慰謝料・逸失利益・休業損害

交通事故の被害にあい、入通院してケガの治療をした場合、また後遺症が残ってしまった場合、被害者の方は慰謝料や逸失利益、休業損害などを受け取ることができます。

では、交通事故の被害者が主婦の場合、これらは一体、いくらくらいになるのでしょうか?

どのように計算するのでしょうか?

たとえば、休業損害というのは交通事故でケガをしたために仕事を休んだ際の補償になりますが、専業主婦でも受け取ることができるのでしょうか?

よく慰謝料という言葉が使われますが、交通事故で被害者の方が受け取ることができる慰謝料は1つではないことをご存じでしょうか?

本記事では、主婦の方が交通事故被害にあった場合の補償に関する疑問について解説していきます。

これから交通事故で主婦の方が請求できる慰謝料・逸失利益・休業損害の計算について解説していきますが、その前に交通事故解決までの全プロセスを説明した無料小冊子をダウンロードしておきましょう。

交通事故の慰謝料は何種類ある?

交通事故の慰謝料は1つではなく、次の4つがあります。

①入通院慰謝料
被害者の方が入院・通院して治療をした場合に受け取ることができる慰謝料です。

②後遺障害慰謝料
ケガが完治せず後遺症が残ってしまい、後遺障害等級が認定された場合に受け取ることができる慰謝料です。

③死亡慰謝料
被害者の方が亡くなった場合に支払われるもので、受取人は相続人になります。

④近親者慰謝料
被害者の方に後遺症が残ったり、亡くなった場合にご家族などの近親者が被った精神的苦痛や損害に対して支払われるものです。

休業損害と逸失利益の違いとは?計算方法は?


休業損害と逸失利益はともに交通事故による傷害(ケガ)を負ったことによる収入減についての補償ですが、何が違うのでしょうか?

(1)休業損害とは?

交通事故でケガを負い、入院・通院をして治療を受けたために会社を休んだり、仕事ができなかったことで得ることができなかった収入(賃金)分を休業損害といいます。

休業損害は次の計算式で求めます。

基礎収入(日額) × 休業日数

※給与所得者の場合は、
日額 = 3ヵ月の給与額の合計額 ÷ 90日

☑休業損害は、ケガの治療をして完治するか、または症状固定(これ以上の治療をしても完治しない状態)の診断を受けて後遺症が残るまでの間に被害者の方に生じた収入の減少分です。

☑給料を得ていて減収がない場合は、休業損害は認められません(休業損害は実損害のため)。

☑休業日数(期間)は、実際にいつ、どれくらいの期間・日数について家事ができなかったのかを証明するのが難しいため、一般的に通院期間や日数を参考にします。

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(2)逸失利益とは?

交通事故の被害者の方に後遺症が残ってしまい、以前のようには働くことができなくなったため、将来的に得るはずだったのに得ることができなくなってしまった利益(収入)を後遺障害逸失利益といいます。

交通事故の損害賠償実務では、さまざまな要因(労働能力の低下・喪失の程度や収入の変化、将来の昇進、転職、失業などの可能性、日常生活でどのような不便があるのかなど)を考慮しながら逸失利益を算定しますが、基本的な計算式は次のとおりです。

<後遺障害逸失利益の計算式>
基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
= 後遺障害逸失利益

☑後遺障害逸失利益は、被害者ご自身の後遺障害等級が決定することで計算することができます。

【参考情報】
「自賠責後遺障害等級表」(国土交通省)

☑入院・通院してケガの治療をしても、これ以上回復しない、完治しない状態になると医師から症状固定の診断を受けます。

症状固定後は、休業損害を受け取ることができなくなります。

☑症状固定後は後遺症が残ってしまうため、ご自身の後遺障害等級の認定を受ける必要がありますが、等級が決定すると逸失利益を受けとることができるようになります。

☑金額的には、休業損害より逸失利益のほうが大きくなります。

☑なお、被害者の方が亡くなった場合は死亡逸失利益を加害者側に請求することができます。

(3)主婦の休業損害について

専業主婦の場合、給与を得ていないため休業損害と逸失利益は認められないと思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、そんなことはありません。

たとえ金銭的対価を得ていなくても、家事は労働として金銭的に評価されるのです。

☑主婦の方の休業損害は、家事ができなくなったと認められた場合、「賃金センサスの産業計・企業規模計・学歴計の女子労働者全年齢平均の賃金」を基礎として、ケガのために家事を行なえなかった期間について認められます。

☑賃金センサスとは、厚生労働省が毎年実施している「賃金構造基本統計調査」の結果をまとめたもので、職業別・年齢別などによって労働者の平均賃金がわかるようになっています。

☑兼業主婦の場合は、現実の収入額と「賃金センサスの産業計・企業規模計・学歴計の女子労働者全年齢平均の賃金」のいずれか高いほうを基礎として算定します。

(4)主婦の逸失利益について

☑賃金センサス第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、女性労働者の全年齢平均の賃金額を基礎として算定します。
(最判昭和49.7.19 判時748・23)

☑兼業主婦の場合は、実収入が上記の平均賃金以上の時は実収入、平均賃金以下の時は賃金センサスの平均賃金によって算定しますが、一般的には家事労働分の加算は認められません。

☑専業主婦の場合、家事労働は労働とされるため、逸失利益は認められます。

被害者が主婦の場合の慰謝料を計算してみる


次に、実際の慰謝料について概ねの金額がいくらくらいになるのか、例をあげて考えてみます。

慰謝料等の算定では、①自賠責基準、②任意保険基準、③弁護士(裁判)基準が使われます。

示談交渉の相手である加害者側の任意保険会社は、もっとも安い自賠責基準の金額を提示してきます。

しかし本来、被害者やご遺族が受け取るべきなのは、もっとも高額になる弁護士(裁判)基準で計算した金額です。

これは忘れないでください。

(1)ケガが完治した場合の慰謝料の計算例

①入通院慰謝料(自賠責基準の場合)

自賠責基準での入通院慰謝料は、1日あたりの金額が定められています。

そのため、慰謝料の対象となる入通院が何日間になったのかによって金額が決まります。

<入通院慰謝料の計算式>
4300円(1日あたり) × 入通院日数
= 入通院慰謝料

☑自賠責基準により、1日あたりの金額は
4300円と定められています。

※こらは、改正民法(2020年4月1日施行)により改定された金額です。
※2020年3月31日以前に発生した交通事故の場合は、4200円(1日あたり)で計算します。

☑入通院をして治療した場合の対象日数は、次のどちらか短いほうが採用されます。
・「実際の治療期間」
・「実際に治療した日数×2」

たとえば、入院はせず、治療期間が1か月(30日)で、3日に1回(計10日間)通院したとすると、
・4300円 × 30日 = 129,00円
・4300円 × (10日 × 2)
= 86,000円
となるので、
入通院慰謝料は20日分の86,000円が採用される、ということになります。

☑後遺症のないケガに対する自賠責保険金の上限は120万円です。

そのため、治療費や入通院慰謝料などで上限を超えてしまう場合がありますが、その場合は、上限を超えた分を加害者側の任意保険会社に請求していくことになります。

②入通院慰謝料(弁護士(裁判)基準の場合)

☑弁護士(裁判)基準での入通院慰謝料は計算が複雑です。

そのため、交通事故の損害賠償実務では、日弁連交通事故相談センター東京支部が毎年発行している「損害賠償額算定基準」という本に記載されている算定表を使います。

☑ケガの程度によって「軽傷用」と「重傷用」の2種類の算定表があります。

「弁護士(裁判)基準による入通院慰謝料(むち打ちなど軽傷)の算定表」

「弁護士(裁判)基準による入通院慰謝料(重傷)の算定表」

☑たとえば、入院はせずに1か月通院した場合、軽傷用の「入院0か月」と「通院1か月」が交わったところを見ると「19万円」となっています。

弁護士(裁判)基準による慰謝料は、自賠責基準の2倍以上の金額になることがおわかりいただけると思います。

(2)後遺症が残った場合の慰謝料の計算例

後遺障害慰謝料について、自賠責基準と弁護士(裁判)基準それぞれの金額について表にまとめました。

後遺症が残った場合、その程度によって1級から14級までのいずれかの後遺障害等級が認定されます。

この後遺障害等級によって、慰謝料を算出するのですが、後遺症による精神的苦痛の程度は事故ごと、被害者ごとで違います。

すると、各事案によって判断するのが難しく、膨大な時間がかかってしまうため、損害賠償金の支払いが滞ってしまうという弊害が起きてきます。

そうした事態を避けるため、次の表のように概ねの相場金額が設定されています。

<自賠責基準・弁護士(裁判)基準による後遺障害慰謝料の金額表>

たとえば、もっとも重度の1級の場合、概ねの金額でも基準が違うことで、被害者の方が受け取る金額は1650万円も違ってきます。

やはり、弁護士(裁判)基準で解決することがいかに重要か、おわかりいただけると思います。

(3)死亡慰謝料について

①自賠責基準の死亡慰謝料の相場金額

自賠責保険では、死亡慰謝料は被害者本人の死亡慰謝料と、ご家族などの近親者慰謝料の合算として扱われます。

☑被害者本人の死亡慰謝料:400万円(一律)

☑近親者慰謝料:配偶者・父母(養父母も含む)・子(養子・認知した子・胎児も含む)の人数によって金額が変わります。
・1人場合/550万円
・2人場合/650万円
・3人場合/750万円

※被扶養者の場合は上記の金額に200万円が上乗せされます。

②弁護士(裁判)基準の死亡慰謝料の相場金額

被害者の方の家庭での立場や状況などによって、次のように相場金額が設定されています。

被害者が一家の支柱の場合 2800万円
被害者が母親・配偶者の場合 2500万円
被害者がその他(独身者・幼児・高齢者など)の場合 2000万~2500万円
被害者が一家の支柱の場合
2800万円
被害者が母親・配偶者の場合
2500万円
被害者がその他(独身者・幼児・高齢者など)の場合
2000万~2500万円

ただし、事故の状況、加害者の悪質性などによって金額が変わる場合があります。

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被害者が主婦の場合の逸失利益を計算してみる


<後遺障害逸失利益の計算式>
基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数 = 逸失利益

(1)基礎収入

☑原則として、被害者の方が事故前に得ていた収入額を基礎としますが、将来的に現実収入額以上の収入を得られる立証があれば、その金額が基礎収入となります。

☑現実収入額が賃金センサスの平均賃金を下回っていても、将来、平均賃金程度の収入を得られる蓋然性があれば、平均賃金を基礎収入として算定します。

(2)労働能力喪失率

☑労働能力喪失率は、後遺障害等級ごとに決められたパーセンテージがあるため、これを基本として用います。

☑実際の算定では被害者の方の職業や年齢、性別、後遺症の部位と程度、事故前後の労働状況などから総合的に判断していきます。

詳しい数値については次のサイトを参考にしてください。

【参考情報】「労働能力喪失率表」(労働省)

(3)労働能力喪失期間

☑被害者の方が、あと何年間働くことができたのかを仮定するものです。

原則として67歳までとされますが、未成年者や高齢者の場合は修正が加えられる場合があります。

また、被害者の方の職種や地位、能力、健康状態などによっては違った判断がされる場合もあります。

☑労働能力喪失期間の始期は症状固定日となります。

【参考情報】(厚生労働省)
令和2年簡易生命表(男)
令和2年簡易生命表(女)

(4)ライプニッツ係数

☑お金の価値は、現在と将来では変動があるため、その差を調整するために用いるのがライプニッツ係数です。

☑逸失利益というのは、将来に受け取るはずだった金額(収入)を前倒しで受け取ることになります。

保険会社としては将来的な金利分を差し引かずに、そのまま支払ってしまうと損をすることになってしまうため、その差を調整することが必要になってくるのです(専門的には、中間利息を控除する、といいます)。

☑ライプニッツ係数の算出は複雑で難しいため、あらかじめ算出されている「ライプニッツ係数表」を使用します。

☑なお、以前は5%とされていましたが民法改正により、2020年4月1日以降に起きた交通事故の場合は、ライプニッツ係数の法定利率は3%で計算します。(以降は3年ごとに見直されるようになっています)

☑死亡事故の場合、生活費を控除しますが、後遺症がある場合は原則として控除しません。

【参考】就労可能年数とライプニッツ係数表(国土交通省)

<後遺障害逸失利益の計算例>
ここでは、次の条件で計算をしてみます。

・40歳の専業主婦
・基礎収入:3,819,200円
・後遺障害等級:6級(脊柱変形による運動障害)
・労働能力喪失率:67%(後遺障害等級9級と仮定)
・ライプニッツ係数:18.327(就労可能期間27年(40~67歳)の数値を用いる)

「計算式」
3,819,200円 × 0.67
× 18.327 = 46.896,300円

後遺障害逸失利益は、4689万6300円

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死亡逸失利益を計算してみる


死亡逸失利益は、次の計算式で算出します。

<死亡逸失利益の計算式>
(基礎年収額) × (就労可能年数に対するライプニッツ係数) × (1-生活費控除率)
= (死亡逸失利益)

※生活費控除率は、被害者の方の家庭での立場や状況によって、概ねの相場の割合が決まっています。

<生活費控除率の目安>

被害者が一家の支柱で被扶養者が1人の場合 40%
被害者が一家の支柱で被扶養者が2人以上の場合 30%
被害者が女性(主婦、独身、幼児等含む)の場合 30%
被害者が男性(独身、幼児等含む)の場合 50%
被害者が一家の支柱で被扶養者が1人の場合 40%
被害者が一家の支柱で被扶養者が2人以上の場合 30%
被害者が女性(主婦、独身、幼児等含む)の場合 30%
被害者が男性(独身、幼児等含む)の場合 50%

<死亡逸失利益の計算例>

ここでは、次の条件で計算をしてみます

・40歳の専業主婦
・基礎収入:3,819,200円
・ライプニッツ係数:18.327(就労可能期間27年(40~67歳)の数値を用いる)
・生活費控除率:30%(女性・主婦)

「計算式」
3,819,200円 × 18.327
× (1-0.3)
= 48,966,135円

死亡逸失利益は、4896万6135円

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交通事故の示談交渉は弁護士に相談・依頼するべき理由


ここまで、主婦の方が交通事故の被害にあった場合の慰謝料、逸失利益、休業損害についてお話ししてきました。

もし、加害者側の任意保険会社から金額の提示があった場合は、金額を比較してみてください。

おそらく、保険会社の提示額はかなり低いのではないでしょうか?

保険会社は営利法人ですから、収入を増やして、支出を減らそうとします。

被害者の方への慰謝料や逸失利益などを合計した損害賠償金は保険会社にとっては支出ですから、これを低く抑えようとするわけです。

一方、被害者やご家族が受け取るべき金額は、弁護士(裁判)基準で計算した金額です。

しかし、たとえ弁護士(裁判)基準による正しい金額を割り出しても、加害者側の任意保険会社はその金額を認めることはありません。

そこで頼りになるのが、交通事故に精通した弁護士です。

慰謝料・逸失利益・休業損害などでお困りの場合や、示談交渉が上手く進まない場合などは一度、交通事故に強い弁護士に相談してみることをおすすめします。