下請で依頼を受けた工事作業中に、工事車両で交通事故を起こしてしまった場合、元請業者にも損害を賠償してもらうことができますか?

下請工事車両の交通事故での元請業者の責任について、弁護士が解説します。

注文者と元請業者、元請業者と下請業者の関係は、それぞれ工事の完成を約束し工事が完成したら料金を支払うという内容になりますので、請負契約となります。

請負契約の場合、民法716条では、注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害について責任を負わない、と規定されています。本条は、注文者と請負人との関係についての規定ですが、元請業者と下請業者との請負契約でも状況は類似していますので、下請業者が、工事作業中に工事車両で交通事故を起こし、第三者に損害を与えた場合でも、原則として元請人は責任を負わないと考えます。

ただし、民法第716条ただし書では、注文または指図について注文者に過失があったときは責任を免れない旨規定されているので、元請業者が下請業者に対して行った注文または指図について元請業者に過失があった場合には、責任を負う場合もあります。

また、民法の規定とは別に、自動車損害賠償保障法による運行供用者としての責任を負う場合もあります。

運行供用者とは、自動車損害賠償保障法第3条に規定されている「自己のために自動車を運行の用に供する者」のことで、自動車の使用についての支配権を有し、かつ、その使用により享受する利益が自己に帰属する者を意味します。

元請業者に工事車両の使用についての支配権及び利益の帰属が認められれば、運行供用者に該当することになります。この場合、元請業者は、その交通事故に関して、①自己及び運転者が自動車の運行について注意を怠らなかったこと、②被害者または運転者以外の第三者に故意または過失があったこと、③自動車に構造上の欠陥または機能の障害がなかったこと(自動車損害賠償保障法3条ただし書)をすべて証明できない限り、運行供用者としても責任を負いますので、被害者は元請業者に対し損害賠償を請求することができます。

裁判例では、下請業者が、下請現場に向かう途中で起こした交通事故について、下請業者の作業について、元請業者が見回りや監督を行っていた等の事情を考慮し、元請業者の運行供用者責任を認めたものがあります。ただし、元請業者が、下請業者の作業について、具体的な指揮監督等を行っていないなどの事情がある場合には、元請業者の責任が認められない可能性もあります。したがって、交通事故の事案ごとに判断をしていく必要があると考えます。

以上、下請工事業者による交通事故の問題に関し、弁護士が解説しました。

下請工事業者による交通事故に関して争いになった場合には、弁護士にご相談ください。

「交通事故の被害者が弁護士に相談すべき7つの理由と2つの注意点」は、こちらです。
交通事故弁護士